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GS横島 〜Beloved You Who Do Not Know Me〜

第二話 残影


投稿者名:お茶くみ
投稿日時:07/ 1/ 9

 2199年、オカルト工学は急速な発展を遂げた。
 悪のレーコ総統はこれを利用し、オカルト工学を利用してあこぎな商売を開始したのである。
 だが、正義を守る伝説のヒーローが、今ここに立ち上がった。
 超煩悩システムを組み込まれたスーパーGS、その名はヨコシマ28号FX!



 まぁ、この物語には一切関係ないけど。

(てか、元ネタわかる奴いるんか?)
(無理だと思いますが……)




第二話 残影


『横島さん、ほっぺにご飯粒が付いていますよ』
 黒髪の少女が、ほっぺたに付いたご飯粒を真っ赤になりがらとってくれる。
 ずっと、君に癒されていた。君が側に居てくれたから、俺は立ち直れた。そして、戦い続けられた。

『何やってるのよ、バカ犬!』
 と、不思議な髪型をした少女がからかうと。
『拙者は狼でござる!』
 銀髪の少女が決まり文句を口にする。
 お前らが、大切なものを失った俺の隙間を埋めてくれた。騒がしくも楽しい日常の象徴だった。

 そして

『───子が、極楽に逝かせてあげる!!』
 緋色の髪の女性の燃えるような魂に、俺は心振るわせる。
 上手く言えないけど、いつもの煩悩じゃなくて、初めて出合った時からずっと憧れていました。


 それは夢、これは夢、遥かな時を超えた夢、日常の夢。
 大切な大切な、魂に刻み込まれた夢のひととき。

 でも、現実の私は……。




「ミス・ヨコシマ、なに居眠りしているんですか」
 ゴツンと言う鈍い音と共に、私の意識は現実に引き戻される。
 どうやら授業中に居眠りをしていたようで、ジェニファ先生が私の頭に教科書を叩き込んだのだろう。寝ぼけ眼で左右を見渡すと、クラスメートが苦笑している。
「はれ? ここは?」
 左右を見渡すけど、美神さんもおキヌちゃんもシロタマも誰もいない。事務所のメンバーは……。事務所? いや、そもそも私はGSなんかじゃないし。

 寝ぼける頭で自分のプロフィールを思い出す。私の名前は横島忠美。華も恥らう15歳、六道女学院霊能課の一年生。こう見えても、街を歩けばナンパ野郎が2〜3人は声をかけてくる美少女だ。
 ……そこ、『胸は無いけど』なんて考えなかった? どーせ私は小学校以来成長の無い扁平胸だよ。低い身長やショートにまとめた髪のせいで、パンツルックだと男の子に間違われるさ(この間、年上のお姉さまに『あら、かわいい坊やね』なんて言われた時は、思わず泣きそうになったわ)。
 ふーん、女の魅力は胸じゃないからいいのさ。

 そんな脳の再起動に時間を要している私の横の横で、親友の女華が『ふしゅるるるるる〜』と言う謎の呼吸音をBGMに自分の口を指差す。あっとっと、よだれが出ていたか・・・・・・女子高だからって、ちょっと気を抜きすぎかな?
「『はれ、ここは』じゃありません!」
 そんな私に語学担当ジェニファ先生は腰に手を当てながら注意する。コメリカ生まれのジェニファ先生は、金髪碧眼のナイスバディだ。
 好んで着る衣装も、肌の露出の多い衣服ばっかり。
 特にそのポーズはとても豊かな胸の膨らみを強調しているとしか思えないわけで。

「生まれる前から愛していましたぁ!」

「女同士でなにを言っているんですかっ! ミス・ヨコシマ!」
 その刺激的な格好に我を忘れた私は、思わずジェニファ先生に飛び掛ってしまう。しかし、先生もさすがに慣れているのか、手に持った教科書で私を迎撃する。
 あっさりと迎撃、私の頭は再度机とらんでぶー。
「かんべんやー。『はっ、おはようございます』と言うつもりが、溢れるフェロモンについ我を忘れて!」
「どういう自我構造しているんですかっ! てか、なんで女性に飛び掛るんですっ!」
「ゴツゴツして臭い男よりやあらかーい女の子の方がいいに決まってるじゃないですかっ!」
 ちなみに、私は間違ってもレズではない。単に男がちょっぴり嫌いで女の子が少しだけ好きなだけである。
「何処のレズですか、あんたはっ!」
「違います! 私はプラトニックな関係が好きなだけで、それでちょっぴりちちしりふとももが好きで、下着が見えたらちょっぴり嬉しくて、だきついた時のやーらかくてあたたかいのが好きなだけです!」
「それをレズって言うんです!」
 先生の叫び声に、クラスの1/3が頷き、同じく1/3がそれは違うと言う。ちなみに残り1/3はビールを片手に観戦モードだ……って、それでいいのか女子高生!?
 あ、薄情なクラスメートの中で親友の女華だけは心配そうに『ふしゅるるるるる〜』とおろおろしている。容姿はごっついけど嫁にしたいぐらい良い子だ。
「違います! 今まで出会ってきた男が嫌いなだけです!」
 あ、おじさまは除く。と、内心で金髪のバンパイア・ハーフに謝っておく。私の中ではピエトロおじさまも時々変な目で私を見るんで同類なんだけど、ストレートに言うとうっとおしいくらい泣くんだよな。900歳の癖にまったく……。
 ちなみに、カオスのじっちゃんは男とか女とかそー言うレベルで無いので除外。マリアさんには同情するよ、ホント……。
「とにかく、私はレズじゃありません。美人な嫁さんをもらって退廃的な生活を送りたいごく普通の女子高生です!」
「それのどこが普通じゃあああああ!!」
 あ、先生が切れた。
 語学教師のくせにAランクGSでもある先生の攻撃的な霊気がこちらに流れてくる。や、やばい……。
「よ、横島忠美はあの日でとってもつらいんで今日は早退します!」
「貴女は、一度徹底的な指導が必要みたいですね……」
 げ、聞いていないよ、先生。
「あ、あの、先生?」
「ふっふっふっふっふ、この学園に赴任してきてから16ヶ月と3日。あのヨコシマ姉ちゃんの娘がいると楽しみにしていたのに、こんな変態さんに育っているなんて……」
 やば、私の知らない私の両親を思い出しているのかも……。このトリップモードになった先生は怖いんだよなぁ。
 とは言え……。
「先生ほど変態さんじゃないですよ」
 自慢じゃないが、私はノーマルだ。というか、変人ぞろいの六道女学院霊能課教師陣の中でも一二を争う変人のジェニファにだけは言われたくない。
「ふっふっふ、なんですって、ヨコシマ? ……いえ、タダミ?」
「いえ、私はごく普通の一般常識人だと自己主張しているワケ」
 ちょこっと、どこぞの呪い屋みたいな口調になってしまった。
「ふっふっふ、伝説の変態一族のヨコシマ家の末裔とは思えませんね」
「アンタもその血が混じってるんでしょう。てか、ショタ趣味でコメリカ追放されたくせに」
「失礼な、誰がショタですかっ! 私は人よりほんのちょこっと可愛い男の子が好きなだけです!! それで、将来はかーいい男の子な妖怪と幸せな家庭を築きたいだけです!!!」
 人、それをショタと言う。 てか、あいかわらず腐ってるな、この人。
「それに、コメリカは追放されたわけじゃありません!」
「あ、男の子を追ってきたんだっけ?」
 ちなみに見事にふられたんだよなー、この人。
 私と先生の間に、強力な霊力が渦巻き始める。
 って、クラスメートは皆教室の外に避難しているやんけ! って、女華までっ! そこ、唐巣ちゃん、あんた泣きながら十字きるなぁ……。
 そんな私の内心のツッコミも神に届くこともなく、視野狭窄に陥った先生はジェノサイドモードに移行する。金色の髪がスーパー○イヤ人のように逆立ち、目に見えるくらいの金色のオーラが吹き上がった。
「クリ○ンのことかー!」
「ク○リンって誰だっ!」
 叫びながら霊波砲を乱射する先生に、私は思わずツッコミを入れる。日本古典マニアの先生の事だ、どーせ古いマンガのキャラかなんかだろう。
「モノローグで『金色の髪がスーパー○イヤ人』って言ったでしょう!」
「台詞になってないモノローグにまでツッコまないでください!」
「ツッコムなんていやらしいわよ! タダミ!!」
「華も恥らう女子高生に何言ってんだ、おばはん! てか、地が出ているわよ」
「キー! どーせわたしはお肌の曲がり角よ!」
 飛んでくる霊波砲をかわしながら罵り合う先生と私。てか、一発でザコ妖怪ぐらいは跡形もなく吹っ飛ばすから、けっこー命がけだ。
 特に私はまともな霊能力が使えないし……。運動神経や反射神経には自信があるけど、霊力に関しては一般人よりちょっぴり高い程度。おじさまの推薦があったとは言え、よく名門六道女学院に入学できたものだと自分でも思う。
 ちなみに、クラスメートはさっきからタダミvsジェニファの賭け事中。私が授業終了まで逃げ切れるか賭けているらしい。つくづくはくじょーなクラスメートである。
「女華、忠美の勝ちにA定食」
「わたし、先生におしんこ30枚」
「せこいですよ、伊達さん……。あ、わたくしは鯖味噌煮定食を先生に」

「って、女華! 今日はアンタが胴元かっ!」

「すいません、忠美。今日は私が日直ですから……」
 日直なら止めろって。
 ちくしょー、本当に奴は私の親友か!? 神は死んだのか!? まぁ、神って言ってもキーやんだし、ろくなことしそうにねえな。
 って、キーやんって誰?
 うーん、なんだか最近、わけのわからない単語が脳裏をよぎるんだよなぁ。一度くらいカウンセリング受けたほうが良いのかな?
 先生の霊波砲を右に左にかわしながら、私はぼんやりと考える。
 けっこー余裕あるな、私」
「HUHUHUHUHUHUHU、GSカラミティ・ジェニファもなめられたものですね」
 突如含み笑いを始める
 って、しまったっ! また、考えていたことが思わず口に出てしまっていたみたいだ。って、先生なんですか、その黒光りする金属製のツールは……。
「余裕があるなら、これを使いましょうか」
 その言葉と同時に、教室に一筋の閃光が迸る。私のスカートの裾を掠めた閃光は、すぐ後ろの机をぶち抜く……、って、危なかった。かわすのが一瞬遅かったら、胴体に風穴が開いている所だった……。
 私は冷や汗を流しながら、いっちゃった風に笑い続ける先生を睨みつける。
「あんた、生徒に向かって何ぶっ放しているんやっ!!!」
「どうせ当たらないじゃない、タダミには」
 いや、当たらなきゃ良いってもんじゃないだろう。
 美神さんだってここまでしないぞ。あの人は女の子にはいちおー手加減していたしなぁ……。
 って、美神さんって誰だ? ほんとにやばいかも、私……。
「さて、それじゃあお仕置きターイム」
「キャー、イヤー、おかーさーん」
 拳銃を片手にあやしげなドス黒いオーラを発揮する先生。
 てか、霊銃を連射すなー。死ぬ死ぬ、あぶないって。廊下で見物していたクラスメートも、流れ弾から泣きながら逃げまとっている。うちのクラスだけ異常に霊的格闘(回避のみ)のスキルが高い理由がわかるわ。
 私も蝶のように舞い、ゴキブリのように逃げながら私は力の限り叫んだ。 
「ちくしょー、今回しか出番がないオリキャラの癖に目立つんじゃねえ―!!!」



「まったく、酷い目にあったわ」
「自業自得ですよ」
 私のぼやきに、女華が半分呆れながら答える。彼女の前には小さなお弁当箱が。家庭的な女華の事だ、きっと自分で作ったのだろう。
──男に弁当を作ってあげるついでに。
「賭けの胴元に言われたくねーわい!」
「まぁまぁ、そう言わないでください。これはお詫びの印に」
 そう言うと女華は私の口に卵焼きを一個くわえさせる。程よい甘味と出汁の風味が実にデリシャス。
「安い謝罪料ね」
 まぁ、私も本気で怒っているわけではないので、苦笑いを浮かべ卵焼きを飲み込む。
「大体、先生をからかうからいけないんですよ。いくら親戚だからって」
「まーそうなんだけどね。あの顔を見ているとついつい。あんたこそ平気なの、道士くんに色目使ったんでしょう、あれ」
 少し前に起きた騒ぎを思い出して、私は頭を抱える。かなり遠い親戚だけど、身内の恥だアレは。
「大丈夫ですよ。私の道士があのような金髪碧眼のチチだけでかいヤンキーになびく訳ありませんから」
 何気に辛辣だな、女華。やっぱあのこと怒っているのか。
「怒っていませんよ、ふしゅるるるるるる〜」
 怒ってる怒ってる。
 さすがの私も怖くなって視線をそらす。
 そして、視線を逸らした先にはパンを抱えた小柄な少女が居た。
「あ、唐巣ちゃんおかえり」
「たっだいまー。あ、タダミちゃんごめん。カレーパンは売れきれだった」
「無かったらしょうがないよ」
 ぽんと焼きそばパンを投げてくる唐巣ちゃんに、私は笑顔で答えた。ちなみに投げる動作で彼女の胸がタユンと揺れる。
 うむ、ロリ風味のくせに巨乳で眼鏡とは。わが親友ながらポイント高いぞ」
「何のポイントですかっ! それとロリって同い年でしょうがっ! 神様が怒りますよ」
 あっとっと、声に出してしまっていたか。
「ごめんごめん。これでゆるして」
 私は謝りながら、買っておいたオレンジジュースを唐巣ちゃんに手渡す。
 でもなー、何故か唐巣ちゃんのところの神様って“迷惑”なだけな気がするんだよね。

(酷いですね、ヨコシマ)
(覗きに誘っておいて一人で逃げりゃ、そう言われても仕方ないんや無いか?)
(貴方だって、キャバクラに誘って逃げたでしょう)
(アレは修羅場やったな……、わてかて痛いのは嫌や。ホント、洒落にならんかった)

「あれ、なんか聞こえなかった?」
「いえ、聞こえませんでしたが?」
「聞こえたって」
 ふと脳裏によぎった声に、私は首をひねる。まぁ、気のせい……

『ピンポンパンポン♪ 1年C組の横島忠美は1230までに来賓室に出頭しろ。なお、これは訓練では無い』

「どこの軍隊だっ!!! うちの学校はっ!!!」
 本当に名門なのか、この学校は?
 頭痛を感じながらも、私はスピーカーにツッコミを入れる。
「忠美、大丈夫ですか? まさか、痴漢行為でも!?」
「まさか、タダミちゃん。また覗きでもしたの!?」
 おいこら、親友ども。
「あんたらがどーいう風に私を見ているかよくわかったわ」
 私は半眼で親友達を睨みながら、焼そばパンを唐巣ちゃんに押し付けて席を立った。


 この時、私は……そして俺は知らなかった。
 新たな運命が動き始めた事を。


「1年C組、横島忠美入ります」
「やあ、横島さん、ひさしぶり」
 来賓室に出頭……もとい、出向いた私を待っていたのは、一人の青年だった。
 年のころは私と同じか少し上くらい。金色の髪に優しげで精悍なマスクの男性。一見すれば高校生ぐらいにしか見えないこの男が、実は数百年も生きる人外だと私は知っている。
 そして、ホモだとも・・・・・・」
「だれがホモですかっ!」
「やべ、また口にしてしもうたっ!」
「ただでさえ、二次創作ではホモだ薔薇だヘタレだ言われてるんですからっ! 悪質なデマは流さないでくださいっ!!」
「じょーだんなんだから堪忍してや、ピエトロおじ様」
 牙を剥き出しに威嚇するバンパイアハーフに、私は笑いながらおどける。
 彼の名前はピエトロ・ド・ブラドー。数百年を生きるバンパイアハーフにして現在最高峰のGS。そしてオカルトGメンのお偉いさんで、ついでに身寄りの無い私の後見人だったりもする。
「まったく、変わりませんね横島さん」
「1月くらいで変わるわけないやん」
 私の答えに、ピエトロおじ様は少し寂しげに笑う。なんでさ?
 だが、次の瞬間には真剣な表情で私を見つめる。
「横島さん、貴女に会って欲しい人たちがいるんです」
「会って欲しい? またなんでこんな時間に」
「僕が来ると逃げるでしょう、横島さん」
 うっ、確かに私はピエトロおじ様を避けているところがある。
 でも、でも……それは。
「だって、ピエトロおじ様の目が怖いんですもの!
『横島さん、貴女をこの時まで育てたのはこの日のためだったんです』
『おじ様、やめて!』
『うわはははははは、TS要素を含んだから、これなら薔薇扱いされません。さあ、横島さん愛し合いましょう』
『いやあああああああああああああああ!』
 って、事しそうじゃないですか!」
「人聞きの悪い事言わないでくださいっ!」
 思いっきりぶん殴られました。


「ぶつぶつぶつ……、なにもぶん殴らなくっても」
「何ぶつぶつ言っているんですか、着きましたよ」
 ピエトロおじ様に案内されたのは、旧市街に位置する一棟の廃屋だった。2〜300年位前の建物だろうか、レンガ作りの建物なのだが、窓と言う窓は全て板で封がされていた。
 なんでだろうか、学校にいた時は『おじさまあぶな〜い』などとジョークをとばしていた私だったが、この建物を見た瞬間そんな意識が吹き飛んでしまった。
 普通に考えれば、うら若き乙女を廃屋に案内されればおじ様相手とは言え警戒するだろう。
 だが、この時の私にはそんな考えは微塵も浮かばなかった。
「知っているの……私は、この建物を……」
 呆然と呟く私。背後にいるだろうおじ様は何も言わない。
 私は夢遊病者のように、ふらふらと建物に近づいていく。

 ドアは開いている。

 階段がある。

 上る。

 この先は、オフィスだったはず。

 ああ、あの机にあの人が……。

 ああ、上からあの二人が……。

 ああ、キッチンからあの子が……。

 何故だろう、初めて来た場所のはずなのに、初めてと言う気がしない。
 どれくらい呆然としていただろうか。
 ふと、背後から燃えるような霊圧を感じた。
 私は振り向く。

 そこに、彼女達がいた。

 彼女は、赤い髪をなびかせていた。
 彼女は、優しげな瞳をしていた。
 彼女は、強い意志を持った瞳をしていた。
 彼女は、絹のような黒髪の持ち主だった。

 赤い髪の女性が私を値踏みするように口を開く。
「ふーん、貴女がピートが言っていた子ね」
 黒い髪の少女が頬を赤くしながら声をかける。
「え、えっと、はじめまして」

 何故だろう、初めて会ったはずなのに。
 何故だろう、初めて声を聞いたはずなのに。
 私の頬には一筋の涙が流れていた。

























「ああ、お嬢さん。さあ、涙を拭いてください。
 あなたのような美しい女性にどのような悩みがあるのかは存じませんが、このGS横島忠夫が貴女の悩みを解決して差し上げましょう。その代わり携帯番号とメルアドを……」


「って、いきなり口説き始めるなっ! このスカポンタン!!!」
「ぶぎゃらぁ」

 いきなりぶっ飛ばされる赤いバンダナの男(の幽霊)。
 なんだか、何もかもぶち壊しだった。

「変わりませんね。横島さんは」

 何故だろう、涙が止まらなかった。




 続く。


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