椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

誰鐘5


投稿者名:核砂糖
投稿日時:06/12/30






「・・・おおイテェ。美神さんもエミさんも、いくらこっちが丈夫だからって、ちょっとやりすぎやないか。つーかいつもあんなに仲が悪いのにこーゆー時だけ阿吽の呼吸で襲い掛かってくるってどーよ?・・・まぁこっちも実は無傷なんだけどさ」

美神、そしてエミの猛攻から開放された横島(ヨーコ)は痛む個所をさすりつつ、試験会場近くのコンビニで購入したペットボトル飲料をあおりながら、プラプラと会場内をお散歩中。理由はもちろん、



「おっ、いたいた。・・・我ながら絞まりのねー顔してやがるなぁ」



過去の自分に会うためである。
横島(ヨーコ)は手にした空のペットボトルを近くのゴミ箱にロングシュートし、



ガン

「・・・・・・・・・・・」



見事に外し、結局近くに行って拾い上げ、捨てなおした。
そして「うわっ、コイツかっこ付けようとしてミスってやんの」ってな顔でこっちを見ている横島の元へと歩み寄った。






「よぉ少年。元気でやってるか?」

「・・・見ての通り逆境の真っ只中だ!事ある毎に現れよって、何をしに来た怪しい奴めがっ!」

気軽に話し掛ける横島(ヨーコ)に、過去横島のバンダナに浮き出た心眼が威嚇する。
どうやら彼(彼女かもしれないが、心眼の事だ)にとって横島(ヨーコ)は、自分の主にとってあまりよろしくないモノと認識されていっぽい。

「つーか今更にクールに決めても、さっきので台無しだっつーの。むしろダサいって」

「・・・言うなよ」

更に追い討ちをかける過去横島に、さすがの横島(ヨーコ)も少しへこんだ。そりゃもうベコンと。
しかし気を取り直して顔上げて、クールなスマイル貼り付ける。

「ま、それはそうと意外だったな。次はあの雪ノ丞がお前の相手だってのに、それほど逃げ腰じゃないじゃねーか」

「ふん!貴様が思っているほど、こやつは腑抜けではないという事よ。
我が主はな、先ほど情け無い敗れ方をした友が落ち込んでいる様子を見て、あの美神が止めるのを聞かずに試合の出場を決心したのだ!

我が主ながら天晴れ!粋な事よ!!」

「おいおいバンダナッ!俺は別にそこまですごくねーし、いい奴じゃねーぞ!?それに美神さんに逆らうのまだ迷ってるし・・・」

心眼は、もし体があったなら、「どーだまいったか、エッヘン!」と、いった感じで胸を張っていそうな雰囲気である。
・・・心眼は、主が横島(ヨーコ)に舐められてるっぽい事を、相当根に持っているらしい。



実は懐かしんでるんだけど・・・その辺は分からなくて当たり前か。
てゆーかこいつってこんな性格だったんか・・・。俺はちょっとしか付き合えんかったから知らんかったな・・・。こいつのこういうトコ



横島(ヨーコ)は、かつての友の意外な一面を見て、ヤクルト一本分の喜びと、そしてお猪口一杯分の寂しさを感じた。そして、



・・・・どうやら過去と同じように物語りは進行しているっぽいな〜。最悪手回しをせにゃアカンかと思ったが、こりゃ俺の出る幕はなさそうだ。



と、少し昔の自分に感心する横島(ヨーコ)。



「で?結局何の用なのだ?我らはこれから次の試合のための霊力を集める為、覗・・・あ〜〜〜。特別な儀式を行わなければならぬのだが」

「・・・いや。特に用があったわけじゃねぇんだ。ちょっと様子見に来ただけだって」



心眼の一つ目でギロリと睨まれて、横島(ヨーコ)はそそくさと退散する。



「お、おいあんた・・・」

「ん?」



そんな横島(ヨーコ)に、最後に過去横島が、遠慮がちに声をかける。



「なぁ。俺にちょっかい出すと思えばアドバイスよこしたり、今度は様子を見に来たり・・・あんた何がしたいんだ?」



そう質問する横島に、横島(ヨーコ)は「ふっ・・・」とクールに笑って、

「それはな、お前が昔の俺に良く似て「はっ!?まさかこの俺の湧き出す色気にやられて!!・・・・・俺は男なんかいやじゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」・・・・台無しかよっ!」



次の瞬間には横島は絶叫しつつその場から走り去り、無意味にクールに決める横島(ヨーコ)が残された。














「やっぱ俺にクールは無理だってゆーんか・・・?」

その背中が、煤けていた。












「ギャラクティカなんとかっ!!!」

バキッ!

「ぎゃーす!!!」


横島(ヨーコ)の、リングにかけろ的霊波付きパンチが対戦選手にクリーンヒット。戦闘終了に陥れる。インパクトの瞬間背景に銀河系が垣間見えたような気がするが、きっと気のせいだ!

確認するまでも無く、審判は横島(ヨーコ)の勝利を宣言し、試合は終了となった。



さてと、あちらさんはどうなっているかな〜?



試合を終えた横島(ヨーコ)は、去り際にちらりと勘九郎の試合に目をやった。
そこではちょうど勘九郎が対戦相手を特大霊波砲で吹き飛ばしているところだった。



・・・勘九郎の奴、今思えば大した実力だ。ま、今の俺の敵じゃぁねーがな。

ぬふふふ・・・。



横島(ヨーコ)は、なんとなく卓越感を感じて頬を緩ませ、コートを出て行く。



問題は・・・次のこの時代の横島試合だ。



殆ど偶然みたいな試合運び・・・バンダナの事・・・。多分何とかなると思うけど。

こりゃ下手に手ぇ出したらえらい事になるからなぁ。














そして次の試合。
過去横島はちゃんと現れた。・・・・変質者を追跡中の警官を大勢引き連れて。



わ、我ながら情けねぇ



と、思う横島(ヨーコ)だったが、そうしなければならない事情があったうえに、かつての自分も全く同じ事をしていた訳で、

言い付けを守らなかった過去横島が美神にド突かれているのを見ながら、自らの頭を抱えるのだった。





とかやっているうちに試合は開始される。










「虚弱で母親に甘えていた俺が、こんなに強くカッコよくたくましくなれたのは、
霊力に目覚めそれを鍛えぬいたからだ・・・!



そして今っ!俺は横道に逸れちまったこの俺を正道に戻してくれようとしている人に出会った!
その人の為にも、俺は負けられん!!



貴様はどことなく俺に似ている、いくぜ!楽しませてくれよっ!」



「前口上長ッ!?・・・そーゆー病んだ心を持っとるのはお前だけじゃっ!

一緒にすなーっ!!」

「やるぞっ!」





とまぁこんな感じで 多少の違いはあるものの、横島バーサス雪ノ丞の戦いは、ほぼ横島(ヨーコ)の経験した通りに始まった。

その後も雪ノ丞が、攻撃がうまくいった「ししょぉぉぉお!!!見ていますかぁぁぁぁっ!?」などと叫びながら、美神と少し離れて(恐かったから)リングサイドで見学していた横島(ヨーコ)に向かってサムズアップしていたり、それを見た過去横島が「あんにゃろぉぉぉやっぱり敵だったんかァァァァァ!!!」と、横島(ヨーコ)に対して殺意を抱いたり・・・・といったイレギュラーはあったものの、「前回」どおりの試合運びが続く。

ナニカを掴んだユッキーは前回よりも技にキレがあったのだが、その分ピート戦での消耗が激しく、結局は試合は拮抗している様だった。




・・・そして、やがて前回と同じように










「バ、バンダナーーーーーッ!」








試合中の横島の身代わりとなり、雪ノ丞の霊波砲の前に踊り出た心眼が弾けとぶ。

そして瀕死状態となった心眼が横島に自分の名前を告げ、最後の激励をし、そして手伝いが出来て楽しかった・・・と礼を言うと、崩れかけていた心眼の霊其構造は結合力を失い、散り散りになってゆく。




リングサイドから横島(ヨーコ)が、そんな心眼の様子を瞬きもせず、ただじっと見つめていた。




そしてバンダナがその使命を全うした後も、試合は容赦無く進み、お互いに霊波の盾を構えた膠着状態にもつれこんだ。


バンダナを失い集中が途切れてしまった横島に対し、まだ少し余裕があるユッキー。
だがしかし、「前回」同様冥子によるリングサイドからのデリカシーゼロな発言によって攻撃を外し、窮地に陥る。

そしてさらにおキヌちゃんの暴走などの偶然が重なって・・・・











「・・・・・これは珍しい!両者KOですーーーー!!」











とまぁ試合は狙った通りに終了し、リングサイドの横島(ヨーコ)はホッと胸をなでおろし、



すっ、と何故か箒とちりとりを取り出すと、救護班に紛れ込んでリングの中に進入していった。











時がたつのは早いもので、横島とユッキーが医務室にぶち込まれている間に、試合は準決勝に至っていた。



「シマタダァァァ!!!あんた今更になって負けたら承知しないわよっ!!」



リングサイドから送られる、もはや応援と言うよりも、脅迫に近い美神(もはや必要ないのでミカ・レイではない)の声援を受けながら、横島(ヨーコ)は危うい所無く、相手選手を下す。



「勝っちゃったか・・・これじゃ殴る理由が無いじゃない」

「ちょっと美神さん?アンタ俺の味方っすよねっ!!??」

「や〜ね〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・冗談よ」

「ボクその間が超気になるんすけどっ!!!」



美神がポツリと呟いた一言に過剰反応しながら、横島(ヨーコ)はリングを出て行く。その時、



『またしても一瞬で相手を下したシマタダ選手。ゆうゆうと試合会場を去ってゆきます!流石は美神除霊事務所の一員、という所でしょうか!』



・・・・アレ?空耳かな。今解説が恐ろしい事を口走ったような気がしたんだけど。



なんか有り得ない内容の解説が耳に入ったような気がする横島(ヨーコ)は、意見を求めるように近くの美神を見た。・・・が目を逸らされる。

恐らく、無名の者が勝ち進んだ為に、余計な注目を集めて潜入捜査がばれるのを防ぐ為の計らいなのだろう・・・・か。しかし横島(ヨーコ)は、なんとなく美神の作為を感じた。特に『事務所の一員』といったあたりに。というか逆にばれるのではないだろうか?



・・・これは下手すっとこのまま美神除霊事務所に就職する羽目になるかも知れんなぁ。まぁ別にいいんだけどさ。

さぁて、そろそろ雪ノ丞が目覚めて証言してる頃か。
そしたら勘九郎のヤツが暴れ始めるだろうから、何とか被害を押さえ込まんと・・・。



横島(ヨーコ)は、打開策を考えようと、一瞬目をつぶって考え込んだ。



文珠は・・・まだ使わない方がいいな。
でもそろそろ『とっておき』を使ってもいいか。火角結界もそれで何とかなるし。

って勘九郎どこだ?さっき隣で試合してたはずなんだが。いねえぞ・・・?




「どうしたの。急にきょろきょろしだして・・・」

挙動不振に陥った横島(ヨーコ)を見て、試合観戦をしていた美神が寄って来る。

「あ、美神さん。勘九郎の奴を知りませんか?つい目を離しちゃって・・・さっきまで試合してたはずなんすけど」

「ああ、あのオカマ?アイツなら試合終えたと思ったらすぐにどっか行っちゃったけど。
トイレでも行ってるんじゃないの?

ってゆーか今までずっと目を離さんで戦ってたんかい・・・嫌味な奴ねぇ」

「・・・しまった!!」


その言葉を聞いた瞬間、横島(ヨーコ)の中である仮定が成り立ったらしい。
突然その場で走りだす。
一瞬、呆気に取られる美神だったが、すぐに自分も走り出す。


「ちょっと、どうしたのよ!」

「美神さん、裏切り者が怪我をして寝込んでいたら・・・どうします?」

「・・・なるほど!それじゃぁ・・・」









―――――――医務室の皆が危ない!!!






チクショー!前回はこんなイベント無かったぞ!!やっぱアレか!?俺が変に介入したせいか?

・・・・その通りだよチクショー!!



横島(ヨーコ)が医務室前にたどり着くと、その目に飛び込んできたのは無残に破壊された医務室の扉だった。

「あんにゃろ、引き戸だってのに押して開けたな!」

すぐさま中に飛び込むと、中はひどい有様だった。医療品はそこら中に散らばり、簡易ベットは殆どひっくり返っている。あちこちで人が倒れており、過去横島に至っては頭から床に突っ込んで犬神家一族の仲間入りだ。やったね!

その真ん中で、魔装術に身を包んだ勘九郎が、片腕でエミの首を締め上げている。

「あら早かったわね。アナタが私から目を離さないものだから、ギリギリの所で雪ノ丞はチクっちゃうし、派手に暴れる羽目になっちゃったわ。
・・・・苦労の甲斐なくメドーサ様の計画はおじゃんよ。よかったわね」

おちょくるような口調で語りかけてくるオカマを無視し、横島(ヨーコ)は素早く部屋中の様子をチェック。



おキヌちゃん・・・気絶。冥子ちゃんも外傷はあんまし無いから多分気絶。ユッキーは重症だけど命に別状は無い・・・か。過去の俺は・・・死んだフリかいィィィィッ!!情け無いっ!!
エミさんは・・・かなりダメージを受けてる上に現在進行形でピンチか。

雪ノ丞死んでねーし、比較的被害がすくねーな。つまりエミさんが必死になって抵抗してくれたっちゅーことか。多分冥子ちゃんも奮闘したんだろうけど、傷の少なさからして・・・かなり早い段階でダウンしたっぽいな。



「美神さん、このオカマは俺が引き受けます。皆を頼みますよ!」

「待ちなさい、コイツ・・・思ったより強いわっ!ってゆーかアンタ右腕折れてんじゃないの!?」

「大丈夫っす!もー治りました!!」

「・・・あんた人間!?」



横島(ヨーコ)は美神の制止を聞かずに突貫。ややダメージの残っている右手を庇ってか、左腕に霊波を纏わせ、勘九郎の顔面目掛けて叩き付ける・・・



「フン、小賢しいわ人間風情・・・・がぁぁぁっ!?」

「あんまし人間舐めんなやゲス野郎っ!(俺も人間じゃねーんだがな)」



フリをして向こう脛に思いっきり蹴りを入れる。

「キ、キサマァァァッ!!!」

勘九郎が激昂して殴りかかろうとした時には、横島(ヨーコ)はもう既にその場にはいなかった。
先ほど作った一瞬の隙を利用して、エミを救出。美神のところまで戦線離脱を果たしている。

「大丈夫っすかエミさん?」

「げほっ、げほっ・・・た、助かったワケ」

「・・・一流GSがアマチュアごときにナニ不覚とってんのよ!」

「うるさい!アタシの黒魔術はガチでやりあうのには向いてないワケッ!!しかもあのオカマ、対ゴーストスイーパー的な戦いを心得ていてやりずらいったらもー!!」

「はっ、どーだか・・・。って喧嘩してる場合じゃないか。シマタダ君、あのオカマを試合会場まで誘導できる?」

「何とか出来ると思いますけど・・・オカマ誘導してどうするんすか?」

「あそこなら広くて戦いやすいし、皆でオカマに当たれるからね。それに小竜姫様もいる」

「でもオカマの仲間のメドーサも居るワケ」

「う・・・・。でもとにかくココよりはマシよ!それに怪我人からオカマ引き離さなきゃ」

「・・・とか言ってる間にオカマ来ましたよっ!!」

「オカマオカマ言うなぁぁぁぁぁっ!!!!」



三人に向かってオカマが突っ込む。
しかし一流GSとあって、インパクトの瞬間、標的たちはひらりと身をかわした。

そしてその内一人は避けると同時に、またもや向こう脛を蹴っ飛ばす。しかも先ほど蹴っ飛ばしたところを狙ってだ。

「ちぇい!」

すこーん!

「ぬがぁぁぁぁぁぁっ!!!貴様・・・絶対殺す!!!」
「やれるもんならやってみな!

・・・っとまたまたすきありぃっ!!」

すこーん!

「うんがぁぁぁぁぁっ!!!!」



怒り狂うオカマを更にキレさせて、試合会場に逃げる自分を追わせると言う手口は、見事なものだった。姑息な手段や小手先のエキスパートである美神たちでさえ、感嘆を隠せない。


「やるわねあいつ・・・」

「にしてもやることがエグいワケ・・・」












「・・・ところで時に横島クン。いい加減死んだフリしてないでこっち来て手伝ってくれる?」

「・・・・えへ、やっぱばれてました?」

「・・・・・・・・もしやと思ってカマかけてみたら、やっぱりかキサマァァァァッ!!!」

「堪忍やー!ってゆーか俺が出てった所で役に立たんでしょーが!!」

「あ・・・それもそーねぇ」

「何気に酷くねっ!?」












・・・っと試合会場までおびき寄せたのはいいものの、この後どないせーちゅーねん。

あ、試験会場の人たちがお札片手に飛び込んできた。
無理だって、今のオカマにゃその程度じゃ・・・・・・ああ、やっぱり返り討ちか。

小竜姫様・・・はメドーサが居るから出てこれねぇか。くぅっ、ドサクサにまぎれてスカート覗くぐらい出来たのにぃ。
つーことは現在頼りにできるのは・・・













唐巣神父とタイガーかぁ・・・・。



「助太刀するよシマタダ君!・・・ってなんだいその不満げな顔は!僕らじゃ役不足だって言うのかい!?」

「ええ・・・なんかこう、ビジュアル的に?
・・・でもこの際贅沢言ってられませんから一緒に頑張りましょうタイガー!神父!」

「酷いですケン・・・」

「・・・君、何時か本当にバチがあたる時が来るよ?」

ジト目で横島(ヨーコ)を睨む唐巣だったが、この人はジョークと本気の区別ぐらいつく大人なので、すぐさま気持ちを切り替え、横島(ヨーコ)の後ろから戦闘に参加する。


「主よ精霊よ!悪を滅ぼすチカラを与えたまえっ!」

ばびゅーん。

「ぐおっ!猪口才な・・・」

唐巣の手の平から、清らかな波動がほとばしり勘九郎に直撃する。
・・・横島(ヨーコ)の頭を掠めて。

「・・・え〜と。やっぱり怒ってる?」

「・・・少し」

「悪口言ってスミマセンデシタ・・・(気持ち切り替わってねーじゃん!)」

「・・・よろしい。

それよりシマタダ君!どういうことだ、攻撃があまり効かないどころか、霊圧のわりにこちらのダメージが大きい!!」

「ワッシの精神感応も効かないケン!」

「それが、あいつの使う霊力は霊力を使う人間に最も作用するらしいんっす!あとタイガー、おめーの精神感応が効かないのはチャオズの超能力がベジータとナッパに効かなかったのと同じ理由だ」「いや、余計に分からないですケン!!」

「なるほど・・・GSバスターと言ったところかね?

ふふふ、久しぶりに燃えてきたっ!」

そう言って唐巣神父は聖書片手に勘九郎目掛けて向かって行った。

「おっさんの出る幕じゃなくってよ!!」

「何おっ!私はまだ・・・・・・・・・・現役だっ!!」

ブオンと音を立てて、いつの間にか手にしていた(原作でもそうだけど。どっから出したんだろ?)ダンビラで、真一文字になぎ払う勘九郎。しかし我らがナイスミドル唐巣神父はスライディングでその刃をかわし、そのままの勢いで向こう脛を蹴っ飛ばす。

「うぐおっ!また同じ所を・・・っ!?」

「・・・神父まで。エグい事するケンの〜」





・・・ジーザス!なんか神父が若々しい!?



この時代に来てから、何故かパワフルになってしまった唐巣神父を見て、横島(ヨーコ)は混乱していた。



いや、待て。確か前に聞いた話じゃかつての唐巣神父ってかなりワイルドだって聞いたことがあるな・・・もしかして何らかの理由で地が出てるとか?



実はその通りだった。
一度未来を経験し、態度のでかくなった横島(ヨーコ)の無礼な態度が、若かりし日の唐巣神父と重なり、普段の苦労人の中に眠っていた熱い魂を呼び覚ましたのだっ!おおまいごっと!!



って見てねぇで俺も参加しないとな。



「援護します神父!」

「ああ!一発ドでかいのを頼むよ!!」

輝かしい笑顔で前線を譲る唐巣神父に若干引きつつ、前へ出る横島(ヨーコ)。しかし攻撃を加えようとした矢先、一瞬手を止める。



・・・はて。どの程度まで本気を出そうか。



一見どうってこと無いような問題だが、無視できない問題だった。
今の横島(ヨーコ)の能力は、全盛期だった魔人横島(ヨーコ)よりもかなり劣る。しかも全力を出そうとすれば、もともとガタのきている身体だ、下手をすると崩壊する。
更に魔力を使わずに酷使できる霊力は殆ど無い。

とは言ったものの、その霊力もこの時点での美神たちを軽くしのぐほどの力はある。
だが、そんなチカラをひょいひょい使っては怪しまれるだろうし、未来がどう転ぶか想像がつかなくなる恐れがある。
なので、今の時点でどれ位チカラをセーブするかは、重要なのだ・・・



ん〜。どないしょ。できるだけセーブしておきたい所だけど、一度美神さんに勝っちゃったしなぁ。下手に押さえてもばれるし、このオカマ強いし・・・。

ってゆーか文珠による肉体変化でムチャクチャ調子わりぃんだよな今・・・。
















・・・もぉ適当で良いや。



・・・重要なのだが、あんまし時間が無かったので、それなりの霊波砲をぶっ放す横島(ヨーコ)だった。


霊波砲は勘九郎の巨体を突き転がし、「ぬおおおっ!?」その巨体を壁に激突させる。「がふっ!!」


「凄いな・・・出力だけなら美神君以上か。流石は彼女に勝っただけはある」

「こちとら美神さんよりも人生長いんで。人間三十路にもなりゃおのずと実力も付くもんっすよ」

「三十路!?・・・もっと若いかと思ってましたジャー。しかし敵さんの方もかなり手ごわいケン・・・アレをくらってまるでダメージが無いとは」

「魔装術って奴はむしろ攻撃力よりも防御力が高いみたいっすね・・・」

ガラガラと瓦礫を掻き分けて、再びゆらりと立ち上がる勘九郎。ダメージこそ無かったものの、衝撃までは殺せなかったのかその動きはぎこちなかった。
そんな隙を見逃すはずも無く、横島(ヨーコ)達は容赦無く攻撃を続けていく。

「途切れなく叩きつづければ、いくら何でも倒せるはずだ。この調子でいくよっ!」

「おいっす!」

「・・・ワッシは応援に専念するケン」←霊波砲撃てない



吹き飛ばす・・・倒れる・・・立ち上がる

吹き飛ばす・・・倒れる・・・立ち上がる

吹き飛ばす・・・倒れる・・・立ち上がる

・・・・。







その頃、観客席には、眼下で勘九郎が次第にボロボロになってゆく様を見下ろしている者がいた。その目線に心配といった感情は皆無であった。

「全く人間って奴は本当にただの役立たずなのねぇ・・・。計画が失敗した以上、暴れる勘九郎を引かせる代わりにあんたの命でも貰おうと思ってたんだけど・・・それすら叶わないなんて」

そう言って彼女―――メドーサは隣で怒りに身を震わせる小竜姫に、挑発するような目線を送る。

「・・・あの人は仮にもあなたの弟子なんでしょう!あなたは弟子を何だと思ってるんですか!?」

「だからさっきも言ったじゃない。役立たずの虫ケラよ」

「・・・おのれ!」

「おっと小竜姫。本当にその剣を抜いていいのかい?私たちが戦い出したら最後、何人死人が出るか解かったもんじゃないよ」



















「・・・おい。お前の上司、あんな事言ってるぞ。オージンジに電話したほーがよくねぇか?」

「・・・」

もう、何十回と床に転がされた勘九郎に、横島(ヨーコ)は語りかけた。
唐巣神父も一旦手を止め、口を開く。

「何故君はココまでしてメドーサに従うんだい?何がそこまで君を・・・」

「・・・ふん。理由なんて忘れたわよ。ただ、チカラさえあればどんな自分だって認めてもらえる、どんな自分の居場所だって出来る・・・そう思ってた時期があったわ。

それで気付いたら今のアタシ。今更引き返す事なんか出来なくてね。しょうがないからこのまま進むしかないのよ」

ぐぐっっと身体を引き起こし、再び戦闘を開始する勘九郎に、横島(ヨーコ)はやるせない思いを押さえられなかった。かつては相手のことなど気にする余裕は無かったのだが、今となっては雪ノ丞と同じくこの男も分かり合える存在なのかもしれない。

「バカヤロウが・・・」

「ふふ・・・百も承知よ」

勘九郎のダンビラが風を断つ。しかし横島(ヨーコ)には太刀筋が読めていた。くるりと半身をずらす事で難なく回避する。

ここで唐巣神父の援護射撃。霊波の塊が勘九郎の胸部に着弾するが、その衝撃を押し込めて勘九郎は振り下ろした刃を横に凪ぐ。

だがこの攻撃も横島(ヨーコ)には予想の範囲。半歩前に身体を進め刀を振りぬかんとする勘九郎の腕を片腕で止めてしまう。

「これで、終わりだ!」

回避不能な至近距離。横島(ヨーコ)は、その間合いから必殺の肘打ちを放とうとした。その時・・・





メリッ!







お・・・。








メキメキメキビキキッ!









ぬおぉぉぉぉっ!?マジっすかァァァァ!!!!






横島(ヨーコ)の全身に激痛が走り、思わず大地に膝をつく。
・・・そう、文珠による肉体変化の効果が終わり、元の体に戻ろうとしているのである。



しまったァァァァッ!!そろそろ切れるの忘れてた!!!しかもよりによってこんな時かいィィィィィ!!!



全身をロードローラーで伸されるような痛みの中、横島(ヨーコ)は己の浅はかさを呪った。



「・・・なんかよく分からないけど。チャンスみたいね」

「・・・出来れば見逃してくれるとボク嬉しいな」

「そいつは無理な相談ね!」

「あああっ!やっぱりィィィッ!?」


助けに入ろうと唐巣神父が走り出すが間に合わない。勘九朗は刀を振り下ろした。



即死しない限りはなんとかなる・・・致命傷だけはさけねーと!!
つーかこんな所で死んだら化けて出るぞホンマに!



迫り来る刃を見据えながら横島(ヨーコ)は、何とか急所を護ろうと身を捩る。

しかし刀が横島(ヨーコ)に当たる寸前、何かが勘九朗を掠め、それに驚いた彼は標的を切りそこなった。


「いきなり外れた・・・」

「もー!何やってんのよ!!」


それはたった今美神たちといっしょに援護に来ていた横島が放ったサイキックソーサーであった。
それは標的である勘九朗に命中しなかったものの、横島(ヨーコ)を救ったばかりでなく、思わぬ結果を巻き起こす。





・・・・ドガァ!

「うっ・・・!?」

「形勢逆転ってやつね・・・!勝手な真似もそこまでよメドーサ!!」


観客席に着弾したサイキックソーサーはなんと言う偶然だろうか小竜姫がメドーサの首に刃をあてるという状況を作り出してしまったのだ。





「シマタダサン、手を!」

「ああ、すまん。タイガー」

更に、影の薄いのを利用して忍び寄ったタイガーが、その隙を突いて身動きの取れない横島(ヨーコ)を救出。

「飛ばしすぎだよシマタダ君。もう少しチカラを押さえて戦わないと・・・。

今回は何とか助かったものの、次はそうも行かないかもしれないよ。・・・君もまだまだだね」

にっこり笑う唐巣神父のアドバイスが傷口に染みた。



(・・・ちがうもん。ホントは俺もっと強いもん!ドチクショー!!!)



そう口に出来ない横島(ヨーコ)は悔しさに歯を食いしばった。





一方、一瞬で様々なチャンスを失った勘九朗は、その怒りを状況を作り出した本人・・・つまり過去横島に向けてぶつけた。

「・・・ザコがっ!!」

「ひっ!」

「横島クンっ!!」

だが大事な従業員を目の前で殺されてたまらないのが我らが美神所長。フルパワーの一撃で勘九朗を食い止める。


ドンッ!!

「ぐおおおおっ!?」


流石は主人公格と言ったところか。その一撃は勘九朗の片腕を吹き飛ばした。










・・・そういえば『前』はこんなふうに事が運んだんだっけ。
しかし雪ノ丞との試合といい、今回もやけに話が出来すぎてる。・・・何故だ?



大立ち回りを繰り広げる美神たちを、苦痛で霞む目で見据えながら、横島(ヨーコ)は疑問に思う。が、その答えはすぐに現れた。



ああ、そうか。これが・・・宇宙意思。
どっかのクソ野郎が言ってた、アシュタロスの大馬鹿野郎を食い止めるために『俺』に仕組まれた、プログラムなのか・・・。



それに気付いて横島(ヨーコ)は、久しぶりに鬱な気分になった・・・。
















一方観客席では、眼下の勘九郎が横島(ヨーコ)達の援護に駆けつけてきた美神に片腕を落とされたのを見て、ついにメドーサは撤退を決意する。

「ここまでのようね・・・。引くわよ勘九郎!!」

「・・・・分かりました!」

彼女の命に従い、勘九朗は撤退の為、秘密兵器をその大地に向かって投下する。


「!?・・・みんな、この場から離れて!!


いち早くその正体に気付いた美神が避難を促すも、

「火角結界・・・!それもでかい!?」

「閉じ込められた!!」


発動したソレ・・・火角結界は試合リングに来ていた仲間たちを完全にキャッチザハート。もはや霊力の結界は皆の心を捕らえて離さない。(いや、身体もだけどさ)

「決着つけられなくて残念だわ。生きてそこを出られたらまた会いましょう!」

「ち、ちくしょう」

勘九朗は切り落とされた片腕を拾い、美神に捨て台詞を吐くとその場を離脱する。

「だぁぁぁっ!?カウントダウンし始めた!!」

爆破へのカウントダウンがスタートし「30秒でやれることを―――!!」「おのれは進歩とゆーものをせんのか!!」・・・いつものやり取りが起こる。

「全員で霊波をぶつけるんだ!!霊圧でカウントダウンを遅らせる!!」

そして唐巣神父の声で会場に居た人間全員が結界に向かって霊波を照射する。が、

「あんまり遅くならない〜〜〜っ!」

冥子の慌ててるんだかそうでないんだか分からない叫びが、その効果を物語っていた。
無情にも進むカウントダウン。だが神は彼らを見捨てなかった。
あわや爆死というその瞬間。文字どおり神の助けが現れたのだ。

「・・・私の霊波ならしばらくカウントダウンを止めていられるわ!」

「小竜姫さま!!」

メドーサを逃がす代わりに手を貸しに来た彼女は、美神たちに結界の解除法を伝える。

それは結界を構成するパーツの中の二本のコード。それのどちらかを切れと言うものだった。


「それはもしかして間違えると爆発するとゆーテレビや映画で良くある奴では・・・?」

「そうです!確かめる時間はありません、確立は二分の一よ!早く決めて!!」

結界の中のメンバーに戦慄が走る。
なにせ握っているのは自分の命だけでなく他人の命までの選択だ。とてつもないプレッシャーである。クイズミリオネアのみのもんたなんて目じゃないだろう。

「ど、どっちなの〜〜〜!」

「わ、分かるワケないでしょ!令子、おたく決めなさいよ!!」

「おたくこそ!」

「なによ、自信ないの!?

たちまち醜い選択権の擦り付け合いが勃発する。
しかしここでようやく我らが横島(ヨーコ)が行動を再開した。

「・・・タイガー。もういい、降ろしてくれ」

「シマタダサン、大丈夫なんですケン?(アレ、何か声が高くなったよーな・・・)」



「とっておき」の出番かな。ここは・・・。



タイガーの肩を借りつつ、懐をまさぐる横島(ヨーコ)。しかしその姿を目に入れた過去横島がまるで幽霊でも見たような声を上げる。



「・・・タ、タイガー。その美女は誰だっ!?」

「へ、美女・・・?お、おなごジャァァァァァァッ!!!」


言われて見てみて、気付きゃぁ女で、

女性恐怖症のタイガーは思わずその場を飛びのいた


「うおっ!?」


そしてそんな彼でバランスを取っていた横島(ヨーコ)は支えを無くしてつんのめり、思わずその場に肩膝をつく。

そのショックで豊かな胸がたゆんと揺れて、とある人物のハートにストライク。


















「ずっと前から愛してましたァァァァァァッ!!!」

びょいーーん!!

「うおおっ!?」


すらりと抜き放たれる伝家の宝刀ルパンダイブ。
みんな自分の事で精一杯だったので、それを撃墜するのが一瞬遅れる。
さらにターゲッティングされているぽい横島(ヨーコ)本人は、体制が崩れている上に片腕が懐の中。しかも相手が『自分』であるがゆえ、一瞬迎撃を戸惑った!
つまり・・・



さ、避けきれない!?








・・・がばちょ!

「いっ・・・!」



過去横島は、男の腕力で目標をがっちりちゃっかりホールドすることに成功する。しかも偶然か横島(ヨーコ)の両腕を抱えるようにして抱きついた。これではいくら横島(ヨーコ)でも一瞬では抜けられない。

そして更に過去横島による追加コマンド発動!

「あったかいなーやーらかいなー!!」スリスリスリスリ!!

「きっ・・・!」


横島(ヨーコ)の全身に嫌悪感が駆け巡る。そして気付いた時には、




















「キャアアァァァァァァァァァァァッッ!!!!!」


グオォォンッ!!!・・・ごぐゃっ!!!


「わが生涯に悔いなしぃぃぃぃぃっ〜〜〜〜〜〜!!!!――――ぶべっ!?」


未だかつて上げた事の無いような悲鳴を上げて、過去の自分を結界目掛けてブン投げていた。


「な、何アンタ・・・女だったの!?」

突然の事に混乱する美神。しかしパニックは、これだけでは終わらなかった。

「マズイ・・・見ろ!横島君直撃した所からヤバげな煙が出ている!!」

唐巣神父の指摘に全員が、本日二度目になる犬神家状態の過去横島に目を向け、最悪のパターンを思い浮かべた。

「小竜姫さま、これはどういう・・・」

先ほどまで一度も台詞が無かったおキヌが、声を出す。

「・・・もはや解除は不可能です。私がちょっとでも霊波を弱めたとたん爆発でしょう」

「なにぃぃぃっ!?」

「私〜〜〜まだ死にたくない〜〜〜〜!」

「横島ぁぁぁぁっ!!アンタって奴はァァァッ!!」

「エミさん――――!!ワッシはもー・・・・!!」

「おたくまで横島化するんじゃない!!」

「だいじょーぶです!死んでも生きられますから!!」

とたんに大混乱に陥る結界の中のメンバー達(若干一人前向きな奴もいるが・・・)。結界の外にいた連中も、逃げ切れないのは分かっていても、我先にと試験会場から避難を始めた。


「あっ・・・。も・・・・だめ・・・っ!!」


更に小竜姫がなんとなくエロっぽい限界の声を上げ、全員が死を覚悟した。が、










キュゥゥン・・・・プスン!









「止まった・・・?」


思いもかけない出来事に、皆は助かった事に対する喜びよりも、ただただ疑問が浮かび上がりあたりを見回す。そして、いけ好かない男、シマタダと同じ服装をした見慣れない女性が、なにやら文字の書かれた札のようなものを結界に貼り付けていた。

まだ乾ききっていない墨汁で書かれている文字は『停止』。
そして女性の手の平には墨の滴る筆が握られていた。



「まさか、それ・・・あんたが書いたの?」
情報処理が追いついていなくて皆がフリーズしている中、人一倍タフな美神が口を開く。それに対し横島(ヨーコ)は、先ほどに失態のせいで少々上気させた自己嫌悪顔で「ああ」と肯定した。

「き、君は符術使いなのかい?」

「・・・?なんすか、それ」

信じられないもの・・・ツチノコとビッグフットが仲良くティータイムしている様でも見たかのように、震える声で質問する唐巣に、横島(ヨーコ)は正直に答える。

「・・・知らずに使ってたのか。でもこれで君がはぐれ霊能者だった理由が分かったよ。とにかく、君みたいな能力者のことを、我々は符術使いと言うんだ」



神父は実力のわりに知識が乏しい30才に、分かりやすく教えた。

符術使いとは、お札に霊力を込め、更に文字を書き込むことによって霊力を高めたり、術式を組み立てたりする能力の持ち主である。ほとんどのGSが使用している破魔札も、全てそんな能力者達の作品だ。

横島(ヨーコ)としてはこの能力は、「いきなり文珠出しちゃったらやばいよな〜。あっそうだ。文珠作れんならお札ぐらい作れんじゃね?そうじゃね?・・・って出来るじゃん!俺すごくね!?」文珠の劣化版程度の話だった。だが意外とこの能力、意味深いものらしい。


「・・・符術使いは各国のオカルト組織や、GS協会に厳しく管理されているんだ。その理由はこの能力者が極めて少数である事、そして・・・」

唐巣神父はここで一瞬言葉を止め、血で血を洗う争いを始めた弟子とその友人に目をやる。



「シマタダ!おたく、ウチの事務所に就職するワケ!!」

「何言ってンのよ!!試合中の解説の話を聞いてなかったの!?コイツはもう既にウチの従業員よ!!!」

「なっ!?ついさっきは散々嫌がってたくせにこの女はァァァァ!!」



ギャァギャァギャァ!!



「・・・・その最大の理由がお金だよ。破魔札って言うのは材料費がかからない上に高価だからね」と続ける唐巣神父は、魂まで吐き出してしまいそうな特大のため息をついた。

「美神君・・・頼むからオカルトGメンにバレないようにしてくれよ?」←もはや説得を諦めている

「・・・何言ってるんですか神父。









私がそんなドジ踏む訳ないじゃない!
幸い私たち以外目撃者も避難しちゃっていないし、来たわ私の時代!!」


泣く子も黙るような高笑いを上げる美神の姿に、一同は沈黙する。
だがみんな、心のどこかではそれを許容する自分があった。



――――――そう悪くはならないだろう。だって美神さんだもの。



何だかんだ言って、結構信頼がある美神であった。














後日の事。


「え〜この度気付いたら美神除霊事務所に就職する事になっていましたシマタダ・ヨーコです。ヨーコとでも呼んでください。シマタダってのはまだ慣れてないんで。
男のフリしてましたけど実は女でした。以後よろしく。
あと、こう見えてももう三十路っす」

「うそっ!?私と同じかそれ以下だと思ってた!!!
・・・ホントだ。履歴書にも書いてあるわね。思いっきりタメ口きいてたわ」

「お、大人の色気・・・(自己紹介がツッコミ所満載なのは突っ込まんほーがえーのかな)」


シマタダ・ヨーコことこの俺は、本当に美神の所に就職していた。

GS試験に受かっても、プロの下で研修を受けなければGSにはなれねーわけで、結局の所、都合がよかったんだなこれが。



・・・にしても懐かしいな。この部屋、このメンバー、この感じ。
そうだよな、この時代が一番幸せだったんだよな・・・。



逆行してから妙に感慨深くなってしまった俺は、こみ上げてくるものを押し込むのに必死だった。


「私、おキヌって言います。よろしくお願いしますねヨーコさん」

「あ、ああ。よろしくな、おキヌちゃん」

ふわふわと漂いながら自己紹介するおキヌちゃんに、なんか不思議な感覚を覚える。



そーか。この時代のおキヌちゃん、まだ幽霊なんだ。
生きているおキヌちゃんも可愛かったけど、幽霊のおキヌちゃんもまた新鮮でいいなぁ。



宙に浮いている彼女の頭をなんとなく撫でてみる俺。撫でられた方は訳が分からずにきょとんと首をかしげる。

「カ、カワイイ!」

「えっ、ちょ・・・・・何でこの人私の事抱きしめられるんですかぁぁっ!?」

堪らず俺は目の前の幽霊を抱きしめ、抱かれた方はびっくりしてパタパタと暴れる。しかしその様がまた可愛くて、俺のテンションをあげている事に、おキヌちゃんは気付いていなかった。

「全身から微弱な霊力を絶えず照射して幽霊との接触を可能にしている・・・か。器用ですね。

・・・それよりヨーコさん、自己紹介の途中なんですけど?」

「あっ・・・すんません。つい我を忘れて・・・」
「ふえぇ〜〜・・・」

指摘されて正気に戻った俺は慌てておキヌちゃんを開放する。
開放された彼女は300年以上味わっていなかった人の温もりで、はにゃーん状態に陥り、床付近を漂った。

・・・正直スマンカッタ。

「それとそんな他人行事じゃなくていいっすよ。今更態度変えられても気持ち悪いじゃないですか」

「そう、じゃあ最初の態度にさせてもらうわ。・・・でも何かヨーコさんって横島クンに似てるわね」



・・・ぎくっ!



「まぁいいわ。

さて、どうせ知ってるだろうけど、形式って大事だから・・・

私が美神除霊事務所所長美神令子です。今後お互いの命を助け合う事にもなるでしょうから、その時はよろしくね」

「こちらこそ」

差し出された手をぎゅっと握り合う。なんだかそれだけで、なんだか少しだけお互いの距離が縮まったような気がした。



ってゆーか何気にこの人と対等の立場に立っちゃってるよ俺!
にわかに信じられんな・・・。



「で、最後はこのボク横島忠夫です。
いやぁヨーコさん。これから共に働く以上、スキンシップって言うは大切だと思いませんか?と言う訳で手っ取り早く信頼関係を結ぶ為にこのボクと裸の付き合いでも・・・」

「いきなり服を脱ぐなド阿呆がっ!!」

がすっ!「アウチ!」

自己紹介と共に突然服を脱ぎだしたかつての俺に、光の速さで肘鉄を叩き込む我らが美神さん。
床に突っ伏し、血の海を作るかつての自分を見て、思わず俺は目を覆った。



俺ってこんなにどーしよーもなかったんか・・・。ちょっとショ〜〜〜ック。

・・・そういえばコイツの事何て呼ぼうかな〜。横島?横島クン?・・・なんか違和感あんな。
いっそ下の名前で呼ぶかね。



「・・・生きてるか忠夫君」

「へっへっへ・・・これぐらいでくたばっちゃぁこの事務所じゃやっていけねぇよ」


俺は、ぷぴゅるる〜〜〜っと景気よく血を噴出しながらうわごとを吐く忠夫君を助け起こしてやる。

「・・・そうか。大丈夫か。まーとにかくこれからよろしくな」

「おいっす」

あんまし大丈夫じゃないっぽいが、忠夫君は肯定の敬礼を決めた。


「そうだ、君に渡すものがあったんだ」

自己紹介を終えたヨーコはポケットからなにやら布のようなものを引っ張り出す。

「あっ、お前・・・バンダナじゃないか!!無事だったのか!?」

「・・・久しぶりだな主よ」

思わぬ再開に、忠夫君は驚きの声を上げた。

「ヨーコさん、これ、どういう事?」

これは美神にも想像がつかなかったらしく、こちらは疑問の声を上げる。

「霊気構造っていう奴は、散らされてもすぐにかき集めれば再生できる事があるんですよ。いや〜今回は大半が吹き飛ばされてたんで成功するかどうかは五分五分で。うまくいってよかったっすよ」

それは、かつての辛い思い出から学んだ知識だった。
俺はバンダナが吹き飛ばされた試合の直後、リング上からバラバラになったその霊波片を集め、それを培養したのだ。
試合用結界の中、と言うのが幸いして、心眼の欠片は基準量ギリギリだったが上手く集まった。


「つー訳でこれからもそいつの事任せたぜバンダナ」

「ああ、任せろ。それとすまなんだ。私はお前の事を主に仇なす者と思い込んでいたようだ」

「はっはっは・・・気にするな」


自分を再生してくれたからか、妙にこちらを信頼してくれる心眼。
・・・言っちゃあ何だがお前、結構単純なのな。実は産まれて間もないからか?ルシオラと同じだったり?

んで、こっちもそろそろ来る頃かね・・・。

「試験中の事といい今回といい俺のためにここまでしてくれるなんて・・・これはもう愛の告白としかァァァァッ!!!」

・・・そら来た。


目にも止まらぬ速さで大地を蹴り、こちらの胸元目掛けて正確な狙いで飛び込んでくる忠夫君。
・・・なんでだろーね。このスピード、低級魔族並なんだよな。

「自惚れるなつーのっ!!」

がすっ!

かつて同一人物だった事もあって、そのタイミングを完全に把握していた俺は、美神さんよりも早く、空飛ぶアホを迎撃する。

が、


「・・・・まだまだぁっ!」

「うおぉ!?」


十分にチカラをこめて殴ったと言うのに奴は床からガバリと起き上がり、二度目の飛翔。
まさかこう来るとは思わなかった俺は一瞬対処が遅れ・・・


「いい加減にしなさい!!!」

ぐしゃっ!

「へぶらっ!」


美神さんの踵落としが炸裂した。
横島君はなすすべも無く床に叩きつけられ、辺り一面に真赤な血の花が咲く。

「・・・いい?ヨーコさん。コイツには手加減なんてしちゃ駄目よ」

・・・いや、結構強く殴ったつもりだったんだけど。
もしかして俺ってこの頃から人間離れしてたのかなぁ。



ビクンビクンとヤバげな痙攣を続けながらも、着実に再生を始めてるっぽいかつての自分を見て、俺は魔人ヨコシマのルーツを垣間見たような気がした。





「ぐっふっふ・・・美神さんを超えんばかりの美女、今まで見てきた中でも最上級の女。つーかモロ好み。そー簡単にはあきらめへんで〜」

「まだ言うか貴様は・・・」



やっぱり思った通りか。俺は完全に過去の俺にターゲッティングされたっぽい。

まぁ気持ちはわかる。確かにカガミ見るたびに俺も思うよ「ああ、この女が自分じゃなければ・・・!」って。でもよ、過去の自分に惚れられて嬉しい訳無ぇじゃん。しかもコイツ今思えば一番どーしよーもねー時の俺だし。



・・・さ〜てこれからどーすっかな〜。環境に関してはこれ以上も無いほど極上の環境にもぐりこめたさ(若干要注意人物がいるが・・・しかも過去の俺。何の因果じゃい!)。
でも俺の目的って確か世界を救う事だったよな―――気に食わ無ぇ事に。俺そんなキャラじゃないつーの。

その為にはアシュタロスの大馬鹿野郎をどうにかせにゃならん訳で・・・う〜ん勝てるかなぁ。何か無理っぽいなぁ。


・・・まぁいいや。難しい事はその時考えよ。この身体に残された時間は、よく分かんないけどあんまし無いと思う・・・だから俺はこの人生やりたい事をするって決めたんだ。









ていくいっといーずぃ〜。はくなまた〜た。


・・・そうだろ。みんな。


























――――――あの〜一応この家には私もいるんですけど。


「あっ、人工幽霊一号!?・・・ゴメン、忘れてたわ」

「美神さん、アータ・・・」

――――――酷いですよマスター・・・。

「それと誰か、主への折檻に私が巻き込まれているのに気付いてくれんか?
・・・さっきから血まみれなのだ。滴っておるのだ。・・・頼む、シミになる前に洗ってくれ(泣)」

「・・・スマン。責任もって俺が手洗いするよ」

「恩に着る。ヨーコ殿」


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