椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

誰が為に鐘は鳴る4


投稿者名:核砂糖
投稿日時:06/12/15

「エイメン!」の掛け声と共にピートの放つ霊波砲が大地を抉る。だがそう簡単に攻撃を喰らう雪ノ丞ではない。「はっ!見え見えだぜ!」と一声叫ぶと、この一撃をすり抜け肉薄する。
ピートはそれを察知しガード体制に入るが、例え防御しようとも至近距離の雪ノ丞の霊波砲の威力は計り知れなかった。

迸る霊波がピートを包み込むようにして肉汁を漏らさず焼き上げ、そして吹き飛ばす。








「うわぁぁぁぁぁっ!!」


ぷぅんと美味しそうな香りが辺りに漂った。










・・・・とまぁこんな感じで試合はユッキー有利に進んでおり、リングサイドから様子をうかがっている横島(ヨーコ)はそっと胸をなでおろしていた。(隣ではエミ、美神による激しい応援が行われている)




でも確かこの後、美神さんのアドバイスで形勢が逆転するんだよなぁ。たしか。




横島(ヨーコ)は頭を捻る。



ならば美神さんの邪魔をするか?・・・イヤイヤ、そんな事したら確実にコロサレル。
つーかむしろ、死なねぇ内臓を切り売られ、何処の国の闇市でカンニバル(食人主義者)あたりにでも売り飛ばされてしまう。


―――だったらいっその事白龍会の代わりに自らピートの野郎を邪魔したろうか?





危険思想が涌いて出てきた頭をふり、ヤバげな思考を吹き飛ばす。
と、そうしている間に時は進み、いよいよ美神のアドバイスによりピートの逆進撃が始まってしまった。

聖と魔、両方のチカラを駆使するピートに、さすがの雪ノ丞も苦戦し、魔装術を展開。戦況は五分と言ったところか。
だがしかし、魔装術を使う人間の雪ノ丞に対し、ピートはバンパイアハーフ。先にスタミナ切れになるのは雪ノ丞だ。






「バンパイアミストッ!」

「・・・!チッキショーちょこまかと!!どう考えてもずりーだろその技!!」

「あなたに言われたくありません!」

「あ?俺が何をしたっ!!」

「自分の胸に聞いたらどうですか!」

「へっ!生憎俺の胸は知らないって言ってるぜ!」


攻撃を跳ね返す装甲を纏う雪ノ丞に、ピートの攻撃は全て弾かれる。
しかし雪ノ丞の攻撃もバンパイアミストで防がれる。










うう、ヤバイ・・・。どうしよう。
仕方ない。後でド突かれるかもしれんがここから雪ノ丞に何かアドバイスを送るか・・・。

・・・しかし何て言えばいいんだ?魔装術でバンパイアミストに対抗する手段て何やねん。ハンドオブグローリーで包み込んで押さえちまえば何とかなるんだが・・・


・・・まぁその辺はアイツに考えてもらうしかないな。

とにかく雪ノ丞を応援しよう。アイツ馬鹿だし、もしかしたらそれだけで活路を見出すかも知れん。

それに・・・応援は得意だしな。








横島(ヨーコ)は決意を固めた。







「ちっくしょぉぉぉっ!くらえっ!」

ぼふっ!!

またもや雪ノ丞の攻撃は霧と化す吸血鬼には通用しなかった。








ま、負けるのかこの俺が・・・たった今新しい道を歩みだそうとしたその矢先にっ!









焦りと、疲労がピークに達し、流石の雪ノ丞も弱気になる。
しかしそんな彼に、救いの手を差し伸べる者が居た。









「ユッキー!どうしたーっ!お前はその程度の男なのかーーっ!!」

「誰がユッキーやねんっ!・・・ってアンタは!!」








この声は・・・とリングサイドに目をやれば、そこにおわすは強くやさしく美しい我が心の師。(残念ながら男バージョンだが)
しかもこちらに応援をしてくださるようではないか。

雪ノ丞はテンションが上がった。「今の俺には目指すものがある」その事を再確認できたのだ。
疲れきった身体に活力がみなぎり、ナイーブな気分は吹き飛ぶ。



「よく考えろっ!霧を攻撃する手段は決してゼロじゃな・・・ぐぼっ!!」



アドバイスを送っていた横島(ヨーコ)は突然くぐもった声を上げると姿を消してしまった。
だが雪ノ丞にはコレで十分だった。



「そうだった・・・。俺は、負けられねぇんだよぉぉぉっ!!!!」

「先生の仇が何を言いますかっ!!!」←こいつの頭の中では唐巣は雪ノ丞に殺されているらしい。

再開する霊波砲のラッシュ。ピートは慌ててバンパイアミストを使用し、攻撃をかわす。

「まだまだっ!!」

そんな彼を更に追撃する雪ノ丞。空中へ逃げようとするピートに追いつき、その顔面目掛けて拳をお見舞いする。だが、

「甘いディヒュッ!」

拳が届く寸前、その顔面までもが霧と化し雪ノ丞の攻撃は相手の台詞を邪魔しただけに終わるかに見えた。しかし、攻撃を外したはずの雪ノ丞は、ニヤリと笑う。






「・・・なに、これが狙いだったんだよっ!」









――――ゴヒュゥッ!









ひゅーーー・・・すたっ×2

一瞬の交差を終えた雪ノ丞とピートが地面に着地する。
だがしかし、ピートをよく見ると胸から上が存在しなかった。

雪ノ丞たちの試合を見ていた者たちの間に、気まずい沈黙が訪れた。



『な、なにぃーーーっ!?何と雪ノ丞選手、霧と化したピート選手の上半身をを食べてしまいましたぁぁぁぁっ!!!!』
今までサボっていた(忘れられていた)解説の声が、みんなの心を代弁する。







あほかっ!!吸い込んで閉じ込めただけだよ!本当に食うヤツがあるか!・・・・と雪ノ丞は言いたかったが、生憎口を開けられる状態じゃなかったので仕方なく黙っていた。






一方頭部を失ったピートは、かと言ってダメージを受けている訳でもないのですぐさま攻撃に転じようとする。


が、頭部が無い・・・すなわち目も鼻も無い訳で相手の位置を捉えることが出来ない訳で、更に腕も無い訳で、メタクソに足を振り回すだけに終わる。

しかもそれも長くは続かず、ピート(の足)は突然ばったりと倒れ、ピクピクと痙攣を始める。






―――何が起こったんだ?

と頭を捻る観戦者達。

















「あ、呼吸できないのか・・・」

リングサイドの唐巣神父(女装)がポツリと呟いた時、もはや戦闘の続行は不可能と判断した審判により、雪ノ丞の勝利が決定した。

雪ノ丞は激しく咳き込みながら退場していく。


やはりバンパイアミストは人体に無害と言う訳ではなかったらしい・・・。


「ごほっごほっ!!・・・な、なんか自分でやっときながら・・・もの凄い納得がいかん勝ち方をしてしまった・・・ごほっ!!うぉお・・・何だよこの霧、スルメみたいな味がしやがる・・・・」











また、次の試合の為敗者である負傷者のピートを運び出そうとした試験会場スタッフ達はは、試合場に転がる、「下半身と辺りを漂っている霧」というバンパイアハーフのなれの果てを見て、どうしたものかと頭を捻る羽目になったという。






また、応援の途中で姿を消した横島(ヨーコ)は、

「敵に塩を送るたぁ、何事だぁぁぁぁっ!!」
「アタシのピートに何かあったらどーしてくれんのよぉぉっっ!!」
「堪忍やぁぁぁぁっ!!!」


世界最高峰のGS2人により暗がりに引きずり込まれ、リンチに遭っていた。
・・・まぁこの世界、男性キャラ・・・特にレギュラー女キャラと関わった奴はひどい目に遭うのは、もはや法則である。

横島(ヨーコ)がモテモテ計画を捨てず、男装している限りその扱いは変わらないのだろう・・・。合掌。








一方観客席では、小竜姫、そしてメドーサのパシリをやらされている途中であった事を思い出した唐巣神父が、何とか注文の物を持ってきたものの、神と悪魔双方から「遅い!」と駄目出しをくらい、
更にあんまりな負け方をしてしまった弟子のこともあいまって、頭を抱えていた。


思わずその原因を作ってしまった小竜姫だったので、声をかけるのをはばかられていたのだが、どうしても聞きたい事があったので、おずおずと彼に声をかける。(もちろんメドーサに聞こえないようにだ)

「・・・これであのシマタダとか言う者に頼らざるを得なくなりましたね。

あの、少々お聞きしてもよろしいですか?」

「あ、はい。何でしょう?」

面を上げる神父。
その頭を抱えていた両手に、何本かの頭髪が絡みついていたのだが、小竜姫は気にしないことにした。

「あなたは、何故あの男を信用する事にしたのですか?」

「シマタダくんの事ですか。・・・いや、お恥ずかしい事に大した理由は無いんです。ただ・・・私の霊感にピンと来た・・・。とでも言っておきましょうか」

「そうですか・・・それならばきっと大丈夫でしょうね」

「そう言っていただけると助かります」

唐巣神父は、薄く笑った。









「ってゆーか他に方法が無いじゃないですか。ハハハ・・・」

そう言って頭を掻き毟る唐巣神父。その頭からぱらぱらと落ちる頭髪を・・・小竜姫は見ないふりをする事にした。


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