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山の上と下

21 山の麓、再び 前編


投稿者名:よりみち
投稿日時:06/11/25

主な登場人物 1

横島忠相 主に『忠さん』 『横島(れいこのみ)』
 霊力を持つ除霊師志望の青年(十代後半)。並はずれた煩悩の持ち主で(美しい)女性が係わると優れた判断と人間離れした耐久性/運動能力を発揮、霊力も上昇する。

”美神”れいこ 主に『れいこちゃん』 『”美神”さん(横島のみ)』
智恵(後述)の娘(十歳前後)。除霊に関しては母親に匹敵する天才児。

キヌ(おキヌ) 主に『おキヌちゃん』
 数十年前からオロチ岳の峠に現れるようになった巫女姿の幽霊。

”美神”智恵 主に『智恵(の姐)さん』
年齢不詳(二十代後半?)、美貌の除霊師。その腕前は超一流。

ご隠居
白髪の老人だが白髪は脱色によるもので見かけよりは若い。頭の働きは鋭く博識。好奇心が旺盛で”神隠し”に興味を持ったことで話が始まる。

涼 主に『格さん』(偽名、渥美格之進より)
二十代後半の剣士(はやらない剣術道場主)でご隠居の護衛を請け負う。凄腕で霊力に相当する”気”も操ることができる。

加江 主に『助さん』(偽名、佐々木助三郎より)
二十歳前後の男装の剣士(旗本の娘)で涼に同じ。涼に比べれば見劣りがするが剣の腕前は一流。

ここまでのあらすじ
江戸時代が後半に入った頃、甲州街道を西に進む一行[ご隠居・涼・加江]がいた。
オロチ岳周辺で頻発する行方不明事件−”神隠し”に興味を示したご隠居は行き倒れになりかけていた横島を加えオロチ岳の方に道を変える(1〜2話)。

途上、一行と別れた横島だがご隠居を追ってきた一団[野須、田丸]との接触や蜘蛛の女怪−ヤツメ、人狼の少女−犬塚志狼:シロの出会いなど幾つかの出来事を経て(3〜7話)、オロチ岳の麓でご隠居たちと合流を果たす(9〜11話)。

その後、ご隠居一行は知り合った(8話)除霊師の親娘[智恵、れいこ]と寅吉一家[寅吉、摩利]に身を寄せ”神隠し”の解決に本格的に携わることになる(12〜14話)。

”神隠し”の情報をオロチ岳に出る幽霊に求めるため峠に向かう一同。
 そこで”神隠し”に深く係わると思われる人狼と遭遇。智恵とれいこの連携で捕らえかえるが逃がしてしまう(15〜18話)
一方、峠の幽霊−おキヌと出会った横島は妖怪の住処を教えるとの話に山の奥へ。涼とれいこが追いついたところで”神隠し”の元凶である死津喪比女を名乗る妖怪が出現。涼はそれを撃破する。(19・20話)



21 山の麓、再び 前編

「ここまでくれば大丈夫か」街道に出た所で涼は立ち止まった。

「そうみたいね」涼の横で少しの間目を閉じていたれいこが応える。
 念のためにと見鬼を取り出し確認するが反応はない。

「やたら急いでいるようなんですけど、いったいどうしたんスか?」
 二人の背後から横島が不審そうに尋ねる。
「”神隠し”の妖怪は倒したんだしあわてることなんかないと思うんですけど」

涼が答える前にれいこが、
「バカね! あれで妖怪が滅んだと思っているの?!」

「えっ! ってことは、まだ‥‥ ええっと、死津喪比女でしたっけ! アレが生きているんですか?」
 驚く横島。横に浮かんでいるおキヌも同じ表情だ。
 二人ともその体が燃え落ちるところを見ている。

「まあ、深手を負ったとは思うけど妖気は無くならなかったわ。つまりどっかで生きているってことよ」

「だったらあの場から追い打ちとかをかけた方が良かったんじゃないですか?」

「ケダモノは傷を負った時が一番怖いんだから。ヘタな深追いは自殺行為よ!」

「でも、格さんのアレ‥‥『抜刀!!』って奴があれば心配ないんじゃないですか?」

横島の問いにれいこは皮肉っぽい視線を涼に向け、
「セイリュートーだっけ? たしかにアレがあれば恐い物ナシなんだけど‥‥ 真っ先に引き返したのは格さんよねぇ アレ、私とお母さんの技と同じで続けては使えないと踏んだんだけど、どうかしら?」

  涼は懐から勾玉、あらためて見ると牙にも見えるモノを取り出す。
「解禁、セイリュートー!」の声に応じ勾玉はさっきと同じ光る剣に形状を変える。

「あれぇ 使えるの?」

「剣としちゃあな」意外そうなれいこに涼は軽く微笑む。
「しかし『抜刀!』はあれで終わりだ。二度目はねぇよ」

「やっぱりそう‥‥ って、『終わり』って、もう使えないってこと?!」

「ああ。あれは俺のっていうより知り合いの人外の”力”でね。人助けの礼に一回だけってことで使えることになっていたものなのさ」

「あれを一度でも使えるようにしてくれたことを太っ腹って思うべきなのか、たった一回しか使わせないのをケチって思うべきなのか? どっちなの」

「『太っ腹』の方かな」涼は今も意識部を小姓姿で具象化している人外を思い浮かべる。
「もともとあの”力”はその人外が約定を交わしたダチだけが使える”力”でね。一度でも違う者に使うのを認めたのは前例のないことらしい」

「でも『前例』ができたわけなんだから、もう一回ぐらいは何とかできない?」

「”でたんと”に反するってことでそいつは難しいな」

「『”で‥‥ でたんと”』??」耳慣れない言葉に横島が口を挟む。

『説明がいるな』とうなずく涼。
「”でたんと”っていうのは神様や魔物の偉いさんの間で交わしたこの世を守るための決めごとで、その中に大きな”力”を持つ神様なり魔物、人外が人の世に手を出すことをできるだけ少なくしようってことになっているらしい。俺が”力”を使うことを認めたことでその人外はすでにそれに反した、言わば、前科持ちになっちまってね。だから、『できる』『できない』は別に、『もう一度』とは頼みたくねぇんだ」

「じゃあ、その『契約を交わしたダチ』に来てもらうわけにはいかないんですか? その人なら使えるんでしょ」

「それもなぁ」涼は残念そうに首を振る。
「当人は至って気の良い奴なんだが、身分と責任がずいぶんと重くてね。そいつをここに引っ張ってくるのはなかなか難しいだろうよ。よしんば出てこれたとしても二月や三月はかかっちまう。いくら死津喪比女に傷を負わせたと言っても、その間、大人しくしているはずはないからな」

「だったら‥‥」

「無理だって言ってるものをいつまでもアテすんじゃない!」
れいこが言葉を継ごうとする横島を遮る。
「『ない』なら『ない』で次にどうするかを考えれば良いことじゃない。心配しなくてもここには”美神”が二人もいるのよ。どんな化け物・妖怪だって目じゃないんだから!」

自信たっぷりな言い様を聞いた涼の顔に微妙な陰ができる。
 それだけの実力があるのは間違いないが、やたら背伸びをしたがる少女に以前も感じた危なっかしさを感じる。そろそろ忠告の一つもしておく時期かもしれない。



話に区切りがついたということで麓に足を向ける一行。

れいこはちらりと横島の脇に浮かぶおキヌに目を向ける。二人がごく自然に言葉を交わす様子にほとんど読みとれないほどだが顔をしかめる。

‘やっぱり、成仏させるのが一番かなぁ’そんな考えが心に浮かぶ。

 なじんではいるが幽霊は幽霊。いつまでもこの調子というわけにもいかない。”神隠し”の一件にケリがつけば決断しようと心に決める。




涼たちが峠を下り始めた頃、先に山を下りた智恵たちは落ち合う場所とした麓の御堂に到着した。

重傷のシロがいることでもう少し手間取るかと思ったが、さすがに満月に近い時期の人狼の体力は半端ではないのか、加江の肩を借りながらも自分で歩いたおかげで予想よりは早い到着になった。

 涼たちが来るまで御堂の中で休むことにする。



きしみながらも戸は簡単に開く。ご隠居は燭台を見つけると持ってきた蝋燭に火をつけ明かりを確保する。

 照らし出された中は、最近まで人の手は入っていたらしくやや埃っぽいが気にするほどでもない。

「”神隠し”で見捨てられたか世話をしていた人が”神隠し”にやられたか、どちらにせよ、この辺りから人がいなくなるのも遠い先じゃないな」

ご隠居の予想を内心でうなずきつつ加江はシロの側に。

人狼の少女は壁に身を持たせかけ床に腰を下ろしている。休めるとなって緊張の糸が切れたという感じだ。

 包帯代わりに傷を覆っていたさらしを手持ち最後の分と交換する加江。その際に傷口を見るとすでに塞がりかけている。
 『さすが!』と見るのか『まだ!』と見るのかは判らないが、その疲れ切った様子を見る限りすぐに完治とはいきそうにない。

交換が済むとシロは体を横にする。
 座っているのも辛くなってきたようで、良くここまで保ったというべきなのだろう。

休む邪魔をしないよう加江は智恵とご隠居の座っている所に場を移す。

「ホント、健気なお嬢ちゃんだ」少女に目をやってご隠居は誰となしに声を出す。

「ええ、そうですねぇ」と加江。難しそうな顔でちらちらシロを見る智恵に気づく。
「何か犬塚様のことで気になることでもあるのですか?」

「いえねぇ 犬塚様とあの人狼がどういう関係なんだろうなって? たしかにあの人狼の”腕”は凄いものですが犬塚様とてかなりの遣い手。なのにあれだけの傷を負ったということは、あの人狼に心が乱れる何かがあるということです」

「だろうな。降りてくる道すがらだって、そいつが引っかかるのかこう鬼気迫るって感じで足を進めていたからな。あれじゃ傷に障るってもんだぜ」
 ご隠居も心配げに応じる。同じ口振りで、
「そいつがいったい何なのか? どのみちあの人狼とやり合うことになるんだ。どこかではっきりとさせなきゃなんないだろうよ」

「父でござる」 ‘‘‘?’’’声の方を見る三人。

眠っているものと思っていたシロが上半身を起こす。痛みがあるのかしばらく耐えるように口をつぐむと、
「お三方相手に隠し通すのは難しいと思い恥を忍んでうち明けるでござるが、かの犬神−犬塚万作は拙者の父でござる」
そう切り出し、さらにこれまでのいきさつを話す。

「知り合いとは踏んじゃいたが親父だったとはねぇ その消息を訪ねての旅に出るなんざ泣ける話じゃねぇか」
聞き終え感心するご隠居。その後少し眉をひそめ、
「それにしたって、親父さんが智恵さんや格さんと戦っている時にどうして黙っていたんだい?! 次第に依っちゃ目の前で親父さんが討たれるところだったんだぜ」

「仲間を何より大切に想う犬神にあって同族を手に掛けるのは一死を持って購うしかない恥ずべき罪でござる。それに手を染めた以上、父はもはや父、いや犬神ではござらぬ。ゆえに‥‥」
いったんは言葉に詰まるシロだが決然とした表情を作ると、
「いっそ討たれしまえばこれ以上の恥を晒すこともなくなると考え黙っていたのでござる」

「おいおい、それって本気で言っているのかい?!」

「‥‥もちろん本気でござる!」一瞬間はできたがきっぱりと答えるシロ。
「あの場、不覚さえとっておらねば自らの手で父を討ち、その恥を雪がねばならぬとさえ思っていたでござる」

「やれやれ」ご隠居は露骨にしらけた表情を見せる。
「『恥』に『そそぐ』ねぇ 恥が命より重いっていうわけか。いやはや、シロのお嬢ちゃんも立派な侍なこった!」

!! 怒りのため顔に血の気が戻るシロ。
 睨む視線は体がまともなら今頃は三枚に卸しているところだと語っている。

 加江はそれ宥めるように一つうなずいて見せるとご隠居に向かい、
「それは少し酷というものです。犬塚様とて親子の情は断ちがたいに違いありません。しかし武士には武士の守るべきモノがあることも解ってあげて下さい」

「んなこと百も承知さ。おいらだってずっと前はその武士の端くれだったんだからよ」
ぽろっと漏らした過去が嫌なのかご隠居は首を二・三度横に振る。
「それだけに武士って立場がどれだけ人としての行いの妨げになるのかもよく知っているのさ。まっ、百歩譲って似た台詞を格さんやお前さんが言ったのなら何も言わねぇ。だがよ、まだ親の恋しい年頃のお嬢ちゃんがそんな偉そうに言ってしまうのはどうにもねぇ 姐さんや格さんに、何とか親父を助けてくれ頼み込む方が”らしく”ていいや」

 ご隠居の言葉に思うことがあるのか顔を僅かに背けるシロ。
「もちろん拙者も助けられるものであれば助けたいのはやまやまでござる。しかし、どうすればあのようになった父を助けられるのかまったく拙者には見当もつかぬ話。まして、”瘤”に取り憑かれれば助けようはないとのこと。ご隠居様がおっしゃったように死なせてやるのが親孝行と覚悟を決めて‥‥」

「そんなあきらめがガキらしくないってんだよ!」
ご隠居は日頃の気楽な様子と打って代わった厳しさで怒鳴る。
「自分に力がないと思や周りに助けを求めりゃ良いだけだろうが! 簡単にあきらめ割り切るなんて腑抜けた大人のマネなんぞしなくたっていい!」
ここで語調を諭すように改め、
「取り憑かれたことにしたっておいらは『今んとこ』ってつけだはずだぜ。ホントに無理かどうか確かめたわけじゃねぇ。だいたい、犬神の生命力は半端じゃないんだろ。人では無理でも助かるかもしれねぇじゃないか」

「そうですよシロちゃん」と加江。悩む妹を励ますかのように、
「この場にはご隠居をはじめ智恵様、格さんと頼りになる人が揃っています。あきらめずにいればきっとお父上を救う道も見つかるはずです」

皮肉に言ってしまえば裏付けのない話だが、二人の心遣いは伝わったようで、シロの顔にさっきの怒りとは違う意味での血の気が戻る。

 少し動くのも辛そうだがシロは姿勢を正す。平伏した後、
「父の身は『もはや』とあきらめたところが、ご隠居様、佐々木殿の暖かき励ましに一筋の光明を見た思い。その心遣いに甘えるようで心苦しいでござるが、父を助けることへの助太刀をお願いするでござる!」

「もちろんよ!」「もちろんです!」間を置かず似た返事をするご隠居と加江。

 さらにご隠居はこれまで難しい顔で聞くだけの智恵に水を向ける。
「智恵さんもそれで良いだろう。シロちゃんの父上が”神隠し”に手を貸していたとしても、それはあの”瘤”を取り憑かせたヤツが悪いんだしさ」

「もちろん『いや』はありません。救えるものなら救うのが一番ですからね。この”美神”智恵も及ばずながら手を貸させていただきます」
落ち着いた様子で智恵は請け合う。

その言葉にご隠居は晴れ晴れとした顔で、
「さあ、お嬢ちゃん。話はまとまったんだから安心して休みな。親父さんを取り返すとなりゃあみんなの力が要ってくる。しっかり休養を取って一刻も早く力を取り戻しておくんだぜ」

「判ったでござる」そう応えたシロは体を横たえる。
心に淀んでいたものが軽くなったためかすぐに子供っぽい寝息を立て始めた。


しばらくは微笑ましそうに見るご隠居だが、寝入ったことを見届けると智恵に向かい、
「お嬢ちゃんを力づけようと煽っちまった後で言うのも何だが、親父さんを助けるなんて安請け合いをして良かったのかい?」

「かまわないんじゃないですか。あれでシロちゃんが元気になって手伝ってくれるのなら安いものです」

どこか他人事の返事にご隠居は眉をひそめる。念を押すように、
「それにしたって倒すのだって一苦労しそうな人狼を助けるとなると手間は倍じゃ済まないだろ。あんたの”切り札”だってバレてるんだしさ。それに”神隠し”を解決することと助けることが両立しないってこともあるかもしれねぇぜ。そん時はどうするつもりなんだい?」

「まっ、何とかなるでしょう。だいたい私は『手を貸す』とは言いましたが『助ける』とは言ってません。手を貸しても助からないのならそれまで。あと、助けようとすることと”神隠し”の解決が両立しないなら躊躇なく解決を選ぶつもりです」

‥‥ さらりと言い放った台詞に顔を見合わせるご隠居と加江。

目の前の女性がきれい事だけで除霊をしてきたのではないことを改めて実感する。




‥‥?? 犬塚は自分の意志に力が戻ってきたことに気づいた。

長い間、悪夢の世界でもがいていたのがようやく目覚めの時が来た感じだ。

 己を取り戻すにつれそれまで何も感じなかった死臭や腐臭が鼻につき弱々しいうめきや呪詛の声が耳に障る。無意識にこの場逃れようとするが体が思うように動かない。

悪夢から覚めきっていないこともあるが、それ以上に体が弱っているせいだ。体が普段通りなら悪夢をはねのけ逃れられると思うがどうにもならない。

せめて立ち上がろうとした時、弱まっていた悪夢の勢いが増すのを感じる。抵抗を試みるが及ばない。意志は再び悪夢により覆い尽された。



「危うくタガが外れるところであったわ」
 目の前で硬直した状態の人狼−犬塚を見つつ死津喪比女は緊張を緩める。

浪人者の放った一撃を”花”を切り離し致命傷となることは避けたものの受けたダメージ決して小さくなく”僕”たちの封印にも綻びが生じた。

 それを予備としておいた妖力を廻して繕ったのだが、人狼のうちでも純血種ともいえる犬神にはさすがに手こずった。それでも押さえ込めたのは浪人者と行動を共にする女除霊師のおかげで弱っていたからというのは皮肉なことである。

しばらくして犬塚がのろのろと跪く。その目は濁り表情は不気味なほど平静を保っている。

 これでさしあたりの処置は終わったと自分の回復に取りかかる。
 ”根”を周囲に横たわる”肥やし”に這わせると生命力/霊力を吸い上げ、いや搾り取る。ややあってうめき声のすべてが途絶えた。
 それにより多少の回復は感じられるがダメージを補うには全く足りない。

自分の周囲に控える”僕”たちも‥‥ と考えるが、それは止める。それでも足りないし、それなりに選んだ”僕”は手薄になった手駒を考えると貴重だ。

 どう回復を急ぐかを含め現状について智恵をめぐらせる考える。そのうちに、
‘それにしても我が”母”も運がないものよ’との感慨が過ぎる。

”母”とは氷室神社を中心に構築された霊力堰によって地脈との接触を遮られ休眠中の本体のこと。

 ”母”は己が封じ込められた場合を想定、その封印を破らせるために若芽−自分を別な場所に植え付けておいた。そして百年。思惑の通り、芽吹き花を咲かせるところまで成長したもののそこからの展開が思わしくない。

封印を破壊するのに必要な”力”を短期間に得るため人を攫い養分としたが、考えていた以上に注意を惹いたようだ。

 半年前にはおせっかいな人狼が現れ、今またそれに匹敵する女除霊師や浪人者が現れ手酷い打撃を受けることになった。

‘‥‥ しかし’と視点を切り替えれば望ましい状況ではないかとも思う。

 現れた浪人者に女除霊師、その娘と犬塚の娘、あと一緒にうろうろといる男、いずれも相当大きな霊力の持ち主−大きな生命の持ち主であり、”肥やし”が進んで目の前に来てくれたようなものだ。かの者たちを全て”肥やし”とすれば失ったものを補って余りある。

 では、『どうやって?』に考えを進めようとした時、場に気配の揺れが。
感覚を向けると物見に出しておいた”僕”の一人が戻ってきたことが判る。

入ってきた”僕”は跪くとうやうやしく山を下りた連中の行動を報告。

「ホホホ‥‥ 妾のことをそこまで侮るか! その高慢、いかほどにつくか知るがいいわ」
 聞くうちに楽しくなってきた死津喪比女は満足げに心の内を言葉にした。


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