マリアのマッサージは一時間続いた・・・・・
「あ〜・・・死ぬかと思った」
とマッサージ所から出てきた横島はつぶやいた。もっとも痛いと感じたのは最初だけで後はほとんど意識がなかったのだが・・・。マリアの「ご利用・ありがとう・ございました」と笑顔で言われると何もいえなかった。
「おお、小僧。マッサージはどうじゃった?」
とカオスは聞いてきた。どうやらなんも知らないらしい。
「あんなに叫んでてたのにか!?」
「ん?何があったんじゃ?ここは全室完全防音だから何も聞こえないのでのう」
「マリアの馬鹿力でおもいっきりマッサージされたんだよ!!!」
「うむ?マリアはそんなに力をこめたのか?」
「ああ、おかげでこのとうり・・・」
逆に体がぼろぼろになったわ!!!といいそうになって横島は言葉をとめた。
「(・・・・・爽快?え?マジかよ!!!?)」
横島はびっくりしていた。体がとても軽いのだ。
「どうした小僧?このとうりなんじゃ?」
「・・・イヤ、何でもねえや。(こりゃマリアに後で礼いっとかなきゃな・・・)」
横島は心の中でマリアに感謝した。もちろん痛いのはもうこりごりだったが・・・
「???まあ、それはいいがの」
と答えたカオスも不思議がった。いままでマリアが客にそんなに力をこめたマッサージをすることはなかったからだ。
「(まあ、後で尋ねてみるか・・・)それより小僧、マッサージもすんだなら温泉にでも入ってみんか?」
「温泉?」
「うむ、わしもここに来てから毎日はいっとるがあの『血の池』はなかなか気持ちよいぞ」
「へえ〜〜〜、そういえば時間も夕飯まえだしひとっぷろ浴びるのもいいかもな」
と勧められた横島は勧められるがままに脱衣所に向かった。そこで修羅場が起こることを知らずに・・・
「うおっ、すげえな・・・」
横島は多少驚いた。脱衣所を抜けた先には真っ赤な血の色をしている広々とした温泉が待ち構えていた。もちろん本物の血ではない。そばに立てかけてある看板を読むと酸化鉄が成分として混じっているらしい。ちなみにそこに書いてある効能は『疲労・腰痛・肩こりに、アリナ○ンEXいらず』と書いてあった。
その血の池の湯の隣には泥沼こと茶色く濁った湯があり近くにはサウナ室まであった。
「しかし・・・」
横島はがっくりした。自分以外誰一人いなかったのだ。
「綺麗なねーちゃんはおらんな・・・」
ザザザザザ・・・・・・
近くの小滝から真っ赤な湯があふれてくる。
「ああ〜〜〜極楽や・・・・・」
湯につかりながらつぶやいた。確かにこの温泉は体がぽかぽか温まり本当に疲れに効くようだ。やっぱり名前は地獄でも本当に極楽である。
「・・・これで綺麗なねーちゃんがおったらな〜〜〜」
そうつぶやいた横島の顔にはうっすらと涙が流れていた。
そうして浸かってしばらく、そろそろ体でも洗おうかなと思ったところで事件は起こった。
「カラカラカラ・・・・・」
「(ん?)」
どうやら他のお客が入ってきたようだ。しかし横島は入り口から背を向けていたので誰が入ってきたのかわからなかった。
「(もしや綺麗なねーちゃん!!!?)」
と期待し横島はくるりと振り返った。そして後ろにいたのは・・・
「・・・・・・・あれ?なんでここに?」
「えっと・・・来ちゃいました」
脱衣所の入り口にいたのは地獄亭ご到着二号のおキヌちゃんだった。確かに横島の期待したとうりの綺麗なねーちゃんである。体に巻きつけたタオルから覗く白い肌、綺麗な黒い髪。温泉美人といっても過言ではなかった。
「あ、そうなんだ・・・・・って、弓さんや魔理ちゃんと旅行に行くって言ってたやん!!!!?」
横島はそう聞いていた。美神さんが珍しく一人で仕事に出かけるからおキヌちゃんが二人と一緒に旅行に行くとおキヌちゃんがわざわざ二人を連れて美神さんに話しているのを確かに聞いた。
「えっと・・・嘘です」
おキヌちゃんは顔を真っ赤にしていた。
「二人に頼んで旅行に行くことにしてもらったんです。じゃないと留守番しないといけないから・・・」
カポーーーン・・・・・
どこからともなくそんな音が聞こえてきた。
「とっとりあえず私も入りますね」
そういっておキヌちゃんは温泉に入って来た。ざぶざぶと横島に近づいてきて横島の横に座り込む。
カポーーーーーーーン・・・・・・・
二人はしばらく何も話さずに温泉に浸かっていた。
横島の脳内では緊急会議が開かれていた。
「おい、これはチャンスだぞ!カオスたちの他に誰も知り合いはいない!心置きなくおキヌちゃんに迫れ!!!」
脳内横島の一人が会議の机をたたいた。
「ちょっとまてよ!もしここでおキヌちゃんに迫ったら美神さんを諦めることになるんだぞ?」
これまた脳内横島の一人が反論する。
「いいか?おキヌちゃんは周りに嘘ついてまで会いに来てくれたんだぞ。男としてここまでされて黙っていられるのんか?」
「確かにそうだが俺は心の髄まで美神さんに奴隷なんじゃなかったのか?あんな安い時給でも今まで従ってきたのにここで諦めるって言うのか?」
「でもプロポーションで負けててもおキヌちゃんは美神さんより性格いいぞ!お前は身近な優しいハムスターより飼うのが大変な猛獣を手に入れたいのか!?」
ギャースギャースと横島脳内では論議が繰り返された。
「あの〜横島さん?」
「えっ?何?」
横島は突然話しかけられてびっくりした。
「・・・・・声に出てますよ」
「え、マジ!!!?」
また例の如く横島は自分の脳内の声が表に出ていた(笑
「私・・・そんなに魅力ないですか?」
おキヌちゃんはうつむいて落ち込み始めた。心なしか顔が暗く感じられるのはなぜだろうか?
「えっ!?いや、そんなことないって!!むしろよすぎるくらい!!!」
横島はあわてておキヌちゃんをフォローした。
「だったら・・・私横島さんと・・・・・」
そうおキヌちゃんが口を開いたそのとき、修羅場に向けての狂想曲がワンテンポアップした。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・
そんな猪が突進してくるような音が響き始めた。
「え?なんだこの音は!!?」
そう横島が立ち上がったときだった。
ドゴッ!!!!!
「ギャーーーーーーーーッ!!!!?」
ザッパーーーーーーーン!!!!!
横島は突然擬音どうり猪のようなものに突っ込まれて温泉の中に押し倒された。
「がぼぼぼぼぼぼぼぼ!???」
横島は真っ赤な血の池の中で気泡をとめどなくあふれ出させた。横島は温泉から出ようとするが突進してきたものに押されて温泉の中から出られなくなっていた。
「キャーーーーー横島さ〜〜〜〜〜ん!!!?」
どこからともなくそんなおキヌちゃんの声が聞こえる。
その声を聞いて横島を押さえていた主が飛び上がった。それを見計らって横島は一気に温泉から飛び出した。
「ゲホッゴホッゴホッ一体何事!!?」
横島は一気に咳き込んだあと自分を押し倒した主を確認しようとして前を向いた。そしてそれぞれ同時に口を開いた。
「シロちゃんなんでここに!!!?」
「なっ何でおキヌ殿がいるのでござるか!!!?」
「シロ!!?お前なんて格好で温泉にはいってきとるんだ!!!?」
そう、次に温泉に乱入して来たのは地獄亭ご到着3号いきなり塀の外から服のまま突っ込んで来たシロであった。
「おキヌ殿は友人たちと旅行に行くのではなかったのでござるか!!!?」
「シロちゃんこそ事務所でお留守番するんじゃなかったの!!!?」
「イヤ、その前にシロ!!!お前なんで服のまま温泉に入って来とるんだ!!!?」
横島一人のみ突っ込みどころが違う。しかしそんなことはお構いなしに修羅場の舞台は着々と準備されていく・・・・・
「あ、ちょっと待ってくだされ。誰かこっちに向かってるでござるよ」
「なに!?とにかくシロお前は服脱いで来い!!!」
横島は話し合いを中断させてともかくシロを温泉にいてもおかしくない格好にさせようとする。そしてシロがあわてて扉を開けて脱衣所に入っていった。
そして数十秒後・・・・・
「あーーー!!!なんであんたがここにいるのよ!!!?」
「お、お主こそなんでここにーーーーー!!?」
突如脱衣所から響き渡る絶叫。それは地獄亭到着以下略の来訪を告げるものであった。
「・・・・・つまり、全員俺と一緒に温泉に入りたかったってことか?」
真っ赤な血の池に浸かって座り込む四人の内三人がコクコクとうなずいた。
「でも、まさか私以外に横島についていこうとするなんて思ってもいなかったわ」
そういって温泉に顔を半分浸からせてブクブク泡を出しているのはタマモである。誰もが自分ひとりだけが・・・と思っていたのだから当然の反応といえばそうなのだが。
「でも・・・シロちゃんもタマモちゃんもこっちに来ちゃったってことは事務所空っぽですよね・・・美神さん怒らないかなあ?」
おキヌちゃんはオロオロとしている。
「まあ、別に大丈夫じゃないか?人工幽霊一号がいるからセキュリティーの面では大丈夫だと思うけど」
「いや、そういう問題じゃない気が・・・」
「まあまあ、とにかく来てしまったのはしょうがないでござる。とりあえず今後どうするか話し合いたいでござる」
珍しく冷静なツッコミを入れるシロ。
「まあ、確かに・・・そういえばシロとタマモ金なんて持ってんのか?確かここの部屋代って食事代コミで結構高いはずだぞ?」
シロとタマモはそれを聞いてそわそわし始めた。
「まさか・・・・・お前ら金もないのにここに来たのか?」
横島は一気に顔が青ざめた。いくらなんでも自分にはこの旅館に二部屋取らせる余裕は持っていない。むしろもともとそんなお金がないから福引でこの旅館に来たのである。
「あ、拙者は大丈夫でござるよ。部屋は横島先生の部屋で泊まればいいし食事も缶詰を持ってきたので心配要らないでござる」
「ちょっと待って、横島のとこにはあたしが泊まるんだからあんたはおキヌちゃんのとこに泊まりなさいよ!!!」
「そんなのイヤでござる!!!お主こそおキヌ殿のところに泊めてもらえばよかろう!!!?」
と横島の部屋に泊まる権利を賭けてシロとタマモは二人で言い争いを始めた。
「ちょ、ちょっと待って二人とも!!!」
おキヌちゃんが先に二人を止める。
「そうだ!!!俺はいいとしておキヌちゃんに迷惑をかけるな!!!」
と横島が続けようとしたときだった。
「私の部屋を二人に明け渡すから私が横島さんの部屋に行きます!!!!!」
ずるっと横島は滑った。
「あの・・・おキヌちゃん?」
「横島さん、お願いですから私を泊めてください!!!」
「あっずるいでござる!!!先生!!!拙者を泊めてくだされ!!!!」
「何言ってん二人とも!!!あたしが泊まるに決まってるじゃない!!!!!」
ギャースギャースと横島を完全に無視して三人がそれぞれ勝手に横島の部屋で泊まる権を争い始めた。
「お、俺の存在って・・・?」
完全に蚊帳の外に出された横島はひとり涙を流していた。もちろん女性に自分を奪い合われてるのは嬉しい。しかし自分の意見が全くいえないのでさすがに悲しくなってしまっているのである。
例えば「とりあえず、体でも洗おう・・・」と横島が温泉から出ようとすると一斉に三人から「「「横島(さん)(先生)はここにいて(ください)(くだされ)!!!」」」と止められるのだ。
「もうこうなったらしかたないわ、横島に決めてもらいましょう!!!」
「そうでござる!!!先生が決めるのが一番でござる!!!」
「横島さん、誰と寝るのかはっきりしてください!!!!!」
と、三人は横島に迫った。
「いや・・・その・・・」
横島は真剣に困っていた。誰を選んでも絶対に不満が勃発するのである。横島は女性に奪い合われる嬉しさとどっちを選んでも起こる出来事による嫌さで心の中ではとめどなく血の涙を流していた。しかしそんなことがいつまでも続くはずもなかった。しかしピカーンと名案が浮かんだ横島は口を開いた。
「じゃあ・・・・・」
三人とも俺の部屋に来い!!!!!と言おうとしたときだった。修羅場の舞台準備はここで完了される。
「カラカラカラ・・・・・」
またもや温泉に入りに来た人が来たようだ。
「三人とも・・・・・」
横島が続けたがなぜか三人の顔が青ざめている。横島も入り口に向かって振り向いた。
一瞬の静寂後・・・・・
「・・・・・あんたたち何やってんのーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!?」
と温泉中に罵声が響いた。脱衣所の入り口には最後にご到着の美神がいた。
「よ〜こ〜し〜ま〜〜〜〜〜」
「え!いやこれは違うんですよ美神さん!!これには深い事情が・・・ていうかなんで美神さんがここに!!?」
「問答無用!!!」
どこから取り出したのか美神は神通鞭をとりだした。
「ギャーーーーーーーーなんでこんなことに〜〜〜〜〜!!?」
横島はしばかれながら心の底からそう思った。
後に血の池には本物の血が混じっていたそうな・・・・・
さて、今話でとうとう揃ってしまった横島狙いの四人。彼女たちは横島をめぐってどんな争いをしていくのか・・・次回もお楽しみに♪
ツッコミ・感想お待ちしております。 (キンピカ)
おキヌちゃんを襲わないのはまだしもシロに服を脱げって
そして美神さん!脱衣所から出てきたってことはタオルはまいていても一応裸ってことですね!
そんだけアプローチできるならもっと素直になりましょうよ! (九尾)
うわ、すごい・・・・・自分はかないません(笑)
確かに雪積もらせるほど待つ美神は素直だったのかな?
この温泉ではどのような美神が見れるのか楽しみにしてくれている人が多いみたいで書いている自分も嬉しいです。
>九尾さん
流石にここで襲わせたら横島犯罪者ですしね(笑)いや、自分的には襲わせそうにしてから美神登場も考えたんですがね・・・流石に横島が哀れで・・・(涙)
追伸
ようやく古本屋に37〜39が入ったので読めました、つまり全館読破です。やったと思いつつ感想を言うと唐巣さんの昔かっこよすぎでした(笑) (キンピカ)