椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

誰がために鐘はなる2


投稿者名:核砂糖
投稿日時:06/10/11

さてそんな訳で(どういう訳じゃい)我らが横島(ヨーコ)は、文珠による副作用で全身を強張らせながら、元気に試験会場へやって来て、とりあえず馴染みの顔を探し始めた。
「・・・ユッキーは生きているかなーっと?」
口調はおちゃらけているが、裏腹に目つきはマジだった。



何故なら前回雪ノ丞がメドーサを裏切った際、彼はそれがメドーサに伝わったか伝わらないかと言う頃には既に逃亡していたのだが、ヨーコを仕留めそこなったという事もある。

しかし心配とは裏腹に、人ごみの中に彼の姿を発見する。

向こうもこちらに気付いたらしく、ヤクザの下っ端がアニキに向けるような笑顔を浮かべつつ、手を振ってきた。
そんな彼の近くに居た陰念、勘九郎の二人がヨーコが生きている事と、そして雪ノ丞の態度に驚きつつ、「どういう事だ」と詰め寄っている。
それに対し雪ノ丞は、

―――――俺は白龍会をやめるぞーーーっ!ジョジョーーーっ!

などとのたまいながら、勢い良く己の胴衣から『白龍』の文字を破り捨てる。

・・・ノリノリだった。




「何事もねーか。・・・ヨカッタヨカッタ」
何かイロイロと吹っ切れちまっているらしい雪ノ丞を見なかった事にして目を逸らす。

まあ無事とは思っていたが・・・。






ちょっと安心した横島(ヨーコ)は、意気揚揚と選手控え室に向かっていった。





「あ、アンタは昨日のいけ好かない美形野郎!」

「・・・お前、それがせっかくアドバイスをくれてやった人間に対して吐く台詞かコラ?」

選手控え室には先客が居た。
それは野郎に対して威嚇する事ぐらいは出来ても、何やら異常に腰が引けているこの時代の横島君であった。

「けっけっけ。どうしたんだ?えらく腰が引けてるみてーだが」
ドカリとこの時代の横島の近くのベンチに腰を下ろし、他人の試合の音にまでビクビクしている過去の自分を、内心複雑になりつつもからかってみる。

「じゃぁかしい!!わい素人やねん!実戦経験皆無やねん!!

なのに、何故にタフが取り得のタイガーがボロ負けした相手と戦わなあかんのじゃーーー!!」

「そりゃ災難だな。でも大丈夫。試合中に死亡してもそれは事故。心配すんなって!」

「もうそのネタは聞き飽きましたから!!」

バシバシと過去の自分の背中をぶっ叩きながらケラケラと笑う。

―――俺もこんな時代があったんだよなぁ。

毎日を生死の狭間に身を置いて過ごし、命と逃走経路を天秤にかけるような生活を送ってきた横島(ヨーコ)は、懐かしそうに目を細めていた。


「・・・そこの男。それ以上我が主を恐がらせるのは止めてほしいのだが」

二人の間に突然、第三の人物の声が響く。
声の発信源は、何と横島のバンダナだった。
バンダナのちょうど真ん中の辺りにギョロリとした目ン玉が出現し、不機嫌そうにこちらを睨み付けている。

「おっとこりゃ失礼。何か昔の自分を見てるみたいでつい調子に乗っちまってさ」

・・・また懐かしいヤツが出てきやがったか。・・・やべぇ、まともに見れねぇ。

恐らくは、初めて自分に霊能力の何たるかを教えてくれたモノであり、このGS試験を通過するに当たっては、まさに命を投げ打ってまでこんな自分を助けてくれた恩師だ。思わず目頭が熱くなる。
この時代に来てからと言うもの、随分と涙もろくなってしまったかもしれない。

「・・・突然話し相手の額に不気味なナゾの目ン玉が浮かび上がる事に関しては何もねーのか?」

「だから言ったろう。こいつは只者ではないと・・・。って誰が不気味な目ン玉かっ!!」

不気味呼ばわりしているモノの本当の素晴らしさもまだ知らない過去の自分と、最高の相棒がケンカを始めたのを切っ掛けに、選手控え室を後にする。


(過去の俺についてはアイツが憑いてる限りまぁ大丈夫だろう。それとバンダナ自身についても、もし今回も前と同じ結果になろうとも今の俺なら何とかできる。
問題は俺が参戦した事によってトーナメント表がどう変わってくるか・・・だな)

できる事なら最後まで勘九郎とは当たりたくない。
実力的には余裕で勝つ事も出来ようが、そうなってしまってはメドーサがどう動くか全く予想がつかないし、そもそも既に雪ノ丞に関して随分と介入してしまった。
これ以上こじれさせるのは得策ではないに決まってる。


(ま、なるよーになるでしょ)


深く考えるのはよそう。きっと何とかなるだろう。
まだ先は長いんだし。










・・・確かに、この世界に来てから俺は結構好き勝手をやってしまった。

でもよう。だからってこれは無いんじゃね?(滝汗






俺は見定めるような目線でこちらを睨みつけてくる対戦相手ミカ・レイ・・・つーか美神令子様を見つめ、心の中で訴えた。


本来ならこの人との対峙はもっとお穏やかな雰囲気でさ、それで俺の知っている美神さんの最後なんかが脳裏に現われたりしちゃったりして、とってもシリアスな雰囲気になると思っていたんだが・・・


現状ではそんな事していたら・・・・下手すりゃタマ取られる雰囲気であった。



「試合開始!」
「ちょっまっ・・・心の準備が!!!」


審判の無慈悲な一声が発せられ、恐怖のデスマッチがスタート。
戸惑う俺。



そしてそんな彼に気を使うどころかその隙を狙って攻撃を叩き込もうとする美神さん。


・・・鬼や。解かってたけど。


「残念だけど、相手が悪かったわね!!」

ぶおん!!

「わひぃ!?」

唸り声を上げる神通扇(GS試験でミカ・レイが使っていた扇状の武器。名前は知らんが多分こんなもんだろう)を辛うじてかわす。・・・そして余波で髪の毛が焦げる。

まー昔取った杵柄と言うか前の世界の経験で、美神さんの攻撃は完全に見切れていたんだが・・・それでも体は反射条件というか何と言うか、この人の攻撃の前に立つと何故だか体が萎縮してしまい、いつも通りの力が出せない。それどころか文珠の副作用で体中が痛む。

結果、今のように実際の実力差は大いに有るのに、さも拮抗した実力を持っているような戦いになってしまう訳で・・・

「むっ?ヒヨッコの癖に中々やるじゃない!」

ニヤリと見下した笑みを浮かべる美神さん・・・この人の中に遠慮とか配慮とかいう概念はないのだろうか?
どうやら目の前の奴は中々の実力の持ち主と判断した美神さんはあんまりな台詞と共にギアを上げてくる。


「ギア、セカンド!!」

「別の漫画っ?!」

「おらおらおら!避けてんじゃないわよ!!!」

「イヤ、当たったら痛いですから!!むしろ死ねますからッ!!」


この後も「こらっ!避けるんじゃない!!」とか「あんたレギュラーキャラに勝てるとでも思ってんの?そろそろくたばれ!!」とかこちらの存在を否定するような罵詈雑言を並べ立てつつ、だんだん容赦の無い攻撃を加えてきやがるでありました。


(あかん、どないせーっちゅーんや!?

いっそ勝つか?・・・いやいやいや。そんな事したらこの先ずっと因縁つけられちまいそうだし、恐れ多くてそんなん出来ねぇって!!

ここはさっさと負けちまった方が得策か・・・)


達人レベルで無いと気付けないような隙を、自然な形で作ってみる。
すると狙いどおり、美神さんはその隙目掛けて攻撃を叩き込んできた。


「・・・っ!?」


途中までその一撃を受ける気でいた彼だが、その一撃に秘められている霊力が尋常でない事をギリギリで察知し、身体を捻り攻撃をかわす。

バビュン、と明らかに必殺の一撃と思われる攻撃がこめかみを掠めていった。


「ちぃっ!かわしたか・・・。ヤったと思ったのに!」


(おいおいおいおいおいおいおいおいーーーーっ!!
シャレにならんYO!美神さん俺の事殺す気だYO!!


やるしかないんか?やらねばやられるんか?デットオアアライブってヤツなんかーーー!?)


頭の中では数えるのも億劫になるほどの回数の、美人上司による暴力行為がリフレインする。(大抵は自業自得)

しかし全ては過去のモノ。それ所か今の自分は新しい人間として生きることを決心し、そして成し遂げようとしている目標もある。


・・・これは試練なのかも知れない。全てをやり直し、あの悲劇を繰り返さないように歴史を変えると言うのなら、これぐらい乗り越えてみろと。そう言うことなのかもしれない。


(・・・ってもし本当にそうだとしたら、俺はこの時点でうまくいくようにする自信は全く無いぞオイ・・・)

だがそんな事も言ってはられない。

だってさっきからだんだんと美神さんの攻撃が捌ききれなくなっているんですもの。
さしあたって一度直撃を受けた右腕が、ムチャクチャ痛い上に全く動かなかったりする。





・・・うし、いっちょやってやるか!!!





思考回路をビビリモードからシリアスモードへ。
そして文珠の副作用(と美神さんの攻撃)によるビキビキとした痛みを訴える体を黙殺し、まだ動く左腕に霊力を集中。ややいびつなハンドオブグローリーを展開する。

「そろそろ反撃させてもらいますよ美神さん!!」

「はっ!ちょっと私の攻撃をしのいだからって、アマチュア風情が気安く呼ぶんじゃないわよ!!」

こちらの雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、攻撃パターンが『なぶり』から『やや本気』へと移行する美神さん。

だけどまだまだこっちの事を舐めてかかってるのに変わりはないし、・・・俺が10年前、最後にシバかれた時の美神さんは―――もっと強かった。




「足元がヤムチャですよ!!!」

「げっ!?」

一瞬の隙を突き、こちらの足払いが美神さんにクリティカルヒット。ついに彼女の体が揺らぐ。・・・・すっげー、初めてかもしれん。この人をすっ転ばしたのなんか。

「もらった!」

ここでトドメをさせなかったら後で、・・・マジでどんな目に会わされるか解からない。

(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい(泣))

すかさず顔・・・は殴るわけにゃいかねぇよなぁ・・・。っと一瞬迷った後に、恐れ多くてビクビクしながら霊力入りボディーブローを叩き込む。(いや、腹だってホントは殴っちゃだめだよ)


ばすっ!!!


「うぐっ・・・嘘、でしょ・・・」

美神さんは、一瞬うめいた後その場に崩れ落ちた。






「しょ、勝者、島徒(シマタダ)選手!!」

審判の声が鳴り響き、美神さんが救護班に運び出されてゆく。

とたんに会場は割れんばかりの拍手喝采に沸いた。
どうやらこの試合はそのレベルの高さから会場中の注目を浴びていたらしい。隣のリングの対戦選手達まで一時休戦して観戦していたようだ。

ま、そりゃそうだろう。世界最高のGS、美神令子とその弟子の試合だ。ハイレベルにならない訳が無い。



「・・・・うわ〜。勝っちゃったよ・・・」

未だに信じられない。ぢっと手を見る。
だが事実は事実。ワ〜オシンジラレネ〜〜


(にしても流石は美神さんだよな。
あの姿勢で反撃してくるなんて・・・・・・・・。それも最も効果的な場所を的確に)




もともと動かせないほどダメージを受けていた右腕。それが完全に明後日の方向を向いていた。



やがて思い出したように襲ってきた恐るべき痛みに、俺は絶叫する。


「いっっってぇぇぇぇぇぇぇぇえええっっ!!!」


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