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GS冥子?

式神を探して


投稿者名:案山子師
投稿日時:06/ 9/ 5

 「でもなかなかいい買い物だったワケ」
 日本空港に到着したエミは、満面の笑みでそう言った。
 「確かに今回も良質の精霊石が手に入ったわ」
 この場にいるのは美神令子、小笠原エミ、六道冥子の三人である。彼女ら三人は最近行われた海外オークションに出席し、大量の精霊石を競り落としてきた帰りであった。

 「じゃから〜〜ッ! マリアはロボットじゃというとるじゃろうがッ!!」

 空港に到着した三人が談笑していると、検問で一人の老人が警備員に捕まっていた。
 その老人とは、ヨーロッパの魔王、不死身の錬金術師と呼ばれたドクター・カオスであった。実は荷物の中に人間の形をしたもの(マリア)があったので荷物検査で捕まっていたのだ。しかもその人形がいきなり自分からかばんの蓋を開けて動き出したので、さらに話はややこしくなっていた。

 「お前らいい加減にせんかっ! わしはヨーロッパの魔王ドクター・カオスじゃぞッ!」

 カオスの声が空港内に響き渡る。その声は当然三人の耳にも届いていた。

 「令子ちゃ〜ん。ドクター・カオスってもしかしてあの錬金術の〜〜〜」
 「どうやらそうみたいね。ここ数百年姿を隠していたみたいだけど何してたのかしら」
 「それじゃあヤッパリ有名人なのね〜〜〜っ!」
 令子の言葉に冥子は目を輝かせながらカオスの元へ走っていった。
 「冥子も物好きよね〜〜」
 「いくら不死身の錬金術師っていわれてもあんなしょぼくれた爺のどこがいいワケ?」
 カオスに話しかける冥子を遠目で見ながらなにやら好き勝手なことを言っている二人。

 「まったく、どいつもこいつもわしをなんじゃと思っておる」
 ちょうど検査官から解放されたカオスに声をかける。
 「あの〜、もしかして〜〜、錬金術で有名なドクター・カオスさんですか〜〜〜?」
 「いかにも。ワシは、ヨーロッパの魔王、不死身の錬金術師といわれたドクター・カオスじゃが」
 「やっぱり〜〜っ、あのサインもらえますか〜〜?」
 どこに持っていたのか目を輝かせながら、色紙とサインペンを取り出す冥子。
 「おお、よかろう。貸してみたまえ」
 さっきとは打って変わって嬉々した表情でサインするカオス。
(わしもまだまだ捨てたモンじゃないの〜〜。やはり日本に来たのは正解だったかの)
 「ありがとうございます〜〜。でも〜、日本になぜいらしたんですか〜〜?」
 冥子はサインしてもらった色紙を抱きかかえながら言った。
 「ふっふっふっ。それは秘密なのじゃが・・・・・・ある秘法を完成させてな。それを使う場所に日本を選んだ・・・とだけ言わせてもらおうか!!」
 「どんな秘法なんですか〜〜〜?」
 「ふっふっふっ。それは秘密なのじゃが、魂を交換して他人の肉体と能力を奪う術・・・とだけ言わせてもらおうか!!」
 秘密だとか言いながら聞かれると、ベラベラと得意げにすべてを話していくドクター・カオス。
 「誰の身体をもらうんですか〜〜〜?」
 「ふっふっふっ。それは秘密なのじゃが、私が求めているのは強力な霊能力を持つ人間・・・・・・横島忠夫の身体をいただくのじゃぁ〜!! 人類史上初の文珠使い、その希少な能力に加えて奴の霊力は今成長時期にある。あの体を手に入れれば再び我が栄光を取り戻す日もそう遠くはないはずじゃッ!!」
 「え〜〜〜っ!? 横島クンの〜〜っ!!」
その発言にあわてふためる冥子の顔を見ながらカオスは、
 「そういえばおぬしの顔どこかで見たような―――」
 「ドクター・カオス。彼女は、六道冥子。先週テレビで見た六道所霊事務所のオーナーです」
 「そういわれればそんな気も・・・じゃがこれはチャンスじゃ、今ココでこの娘の体をうばえば横島に近づくのも楽なる物じゃ―――いけっ、マリア!! 六道冥子を捕らえるのじゃぁ〜〜〜〜〜っ!?」
 「YES ドクター・カオス」
 「えっ〜!? ちょっと〜〜〜っ!!?」
カオスの命令によりマリアのロケットアームが、冥子に襲い掛かる。
 「ひい〜〜〜〜〜っ!」
コゴォ〜〜〜〜〜ン!!
ロケットロケットアームを避けようとして、服の裾に足を引っ掛けて盛大にこける冥子、その頭上をマリアの両手が通過する。
恐る恐る振り向いてみるとコンクリートの壁にぽっかりと穴があいているのが見えた。そしてそれを見ていた令子とエミは叫ぶッ!!
 「ちょっとあんた一体なにしているワケッ!!」
 「そうよッ!! とにかくその子を攻撃するのは今すぐやめなさいッ!!」
懸命に叫ぶ二人だが、調子に乗っているカオスは聞く耳を持たない。
 「はっ、はっ、はあ〜〜〜ッ!! その調子じゃぁ〜、マリアッ! そのまま一気に捕縛するんじゃ!!」
 「YES ドクター・カオス」
再びロケットアームが発射されるが、
 パシッ!!
 「なっ! なんじゃあいつは!?」
 「ミス六道の式神、ビカラです。強力なパワーです――――」
影から飛び出してきたビカラによってマリアのロケットアームが受け止められる。
 「おのれ、六道冥子なかなかやるな!」
カオスの立ち位置からはビカラに隠れて冥子の姿がよく見えない。
 「マリアっ! そんな化け物ごときに負けるおぬしではない、いくの―――――!?」
 「ひっ・・・・・・」
どこからともなく、女性のすすり泣くような声が聞こえてくる。
 「ちょっ! 令子これってもしかして・・・・・・」
 「ええ・・・・・・ヤバイわね」
カオスをしばき倒してでも止めようと駆け出していた二人だが、身の危険を感じて空港出口へと逃走へと切り替える。
 「ふっ、ふっ、ふぇえええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!!!!!」
だが、無常にも泣き出した冥子の影からは、暴走した式神たちが姿を現わした。
 「こっ、これは―――ぐはっ!!」
 「ドクター・カオスっ!? 」
 「ふぇえええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!」
まず、一番近くにいたカオスとマリアが、暴走したインダラに跳ね飛ばされ、
 「冥子落ち着きなさいッ! 私たちまで攻撃してどうするのッ!!」
美神は必死に叫ぶが、プッツン中の冥子に悲しくもその言葉は届かない。
 「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!」
その後空港は一瞬のうちに瓦礫の山と化した・・・・・・。


 そのころ東京では、
 「ちくしょ――――――ッ! 母さんが余計なことを言わなければ冥子さんの家で一緒に暮らせたのにッ!」
 横島がいるのは、本日より開業された六道所霊事務所である。実は当初、横島は六道家であずかる予定だったのだが、

『年頃の娘さんがいる家に、こんなけだもの一緒に住ませるわけにはいきませんわ』

と、百合子の一声のせいで、横島はこの新しく出来た六道事務所の空き部屋に住むこととなったのだ。空き部屋と言ってもテレビやベットは、備えつきで普通のサラリーマンが一ヶ月フルに働いても払えないような高価なつくりになっているのだが、
 「部屋の大きさじゃねぇんだよ。年の近い女の子との同居、それによるどきどき、むふふな俺の高校ライフが―――ッ!!」
 さすが横島。これなら再び貧乏神が現れても大丈夫そうだ。


 「はぁ・・・・・・しゃあねぇ〜、テレビでも見るか」


 『本日未明、凶悪なテロ集団によって空港の一部が爆破されました。幸い重傷者、死人は出ておりません。警察は、テロ組織の首謀者と見られるドクター・カオス氏を逮捕した模様です』
 「あの空港って確か。冥子さん大丈夫だったのかなぁ?」
テレビをつけた横島は、見るも無残になった空港を見ながらそういった。
 (でも、あの崩壊の仕方、前にもどこかで見たような・・・・・・)
 『無実じゃ〜〜ッ!! ワシではなく、あの、小娘がやったんじゃぁ〜〜〜ッ!?』
 『ふざけるなぁ〜〜っ! その赤毛の穣ちゃんが空港の壁を爆破するところを見たっていう者がいっぱいいるんだぞッ!!』
周囲をがっちり固められ護送されていくドクター・カオス。後ろでは、証拠品と書かれたダンボールの中に入れられて運ばれていくマリアの姿があった。

 その放送からしばらくして、六道家の冥香さんから今日のバイトは休みの連絡が入った。なぜか電話の後ろで冥子さんの悲鳴が聞こえた気がしたが、聞くと恐ろしいことになりそうだったのでやめておいた。

 
 「横島ク〜〜ンッ!!」
その翌日、朝早くに事務所に下りてくると、なにやら切羽詰まった状況の冥子が飛び込んできた。
 「めっ、冥子さん、どうしたんですか!?」
今にも暴走しそうな冥子を何とかなだめながら横島が言う。
 「式神が一匹いないの〜〜〜〜ッ!? 昨日空港から帰ったときからいなくなっちゃったの〜〜っ。私もう心配で〜〜、心配で〜〜ッ」
 「おっ、落ち着いてくださいっ! 俺も今から一緒に探しますから。ねッ、そうしましょう」
 「・・・・・・わかったの〜〜〜(コクリ)」
 (ふ〜〜う。ぷっつんだけはこれで何とか・・・・・・)
 「それで、だれがいなくなったんです?」
 「ショウトラなの〜〜〜」
 (ショウトラがいないッ!? と、言うことは今暴走されたら俺は・・・・・! 何と早いうちに見つけ出さねばッ!?)
 「冥子さん行きましょうッ! 早くショウトラを見つけ出すんですッ!」
 「横島クン〜〜〜(ジ―――ン)」
ショウトラのことをこんなにも心配してくれる横島に、感動を覚える冥子だったが、
 (ショウトラがいないと、暴走に巻き込まれた俺を助ける者がいなくなってしまうではないかッ!)
まあ、横島の内心はこんなものだった。



 ショウトラがいなくなったのは、昨日の空港爆破事件からしばらくたった頃であった。

 「クゥ〜〜〜ン」
 あたりを見渡す白い犬。
 「クゥ〜〜〜〜ン クゥ〜〜〜ン」
 「あ〜〜〜っ!? かわいい〜〜〜ッ!」
 ツインテイルで、着せ替え人形を抱えた少女が、ショウトラに向かって駆け寄ってくる。
 「クッ!?」
 いきなり抱きつかれて、無理やり振りほどこうかどうしようか迷っているショウトラに、
 「どこの犬かな〜〜〜っ!? ワンちゃんどこから来たの?」
 少女が尋ねて、それにショウトラはフルフルと首を振って答える。
 「じゃあウチにおいでよ〜〜〜、もうお外は暗いからね〜〜〜」
 期待に胸を膨らませながら見つめる少女に、戸惑いがちなショウトラだったが、
 「おいで〜〜、おいで〜〜」
 「・・・・・・・(コク)」
 この子を無視して帰るのはかわいそうだったので、一晩だけ付き合ってあげることにしたショウトラであった。

 そして、ショウトラをつれて家に帰ってきた少女は、早速家主の許可をもらう。
 「今日一日だけだからね。明日になったらちゃんと飼い主を探すのよ。アヤちゃん分かった?」
 「は〜〜い」
 母親の許可も下りたことなのでめでたくショウトラの一日外泊が決まった。

 夕飯の残り物を食べさしてもらった後、お風呂できれいに洗われたショウトラは、アヤの部屋のベッドで寝ることとなった。

 深夜も遅く、ショウトラはなぜか寝付けないままアヤの横で人形のように、おとなしく転がっていた。アヤが眠りに入ってから数時間たったとき、ショウトラの耳がぴくぴく動き出し抱きしめるアヤの腕をすり抜けてベッドから降りる。

 「ワンちゃんどうしたの?」
 ショウトラ動きに目を覚ましたアヤは、不思議そうにショウトラを見つめる。だが、アヤを無視してショウトラはベッドとは反対側にある壁をにらんで低いうなり声を上げる。      
そして次の瞬間、ショウトラは大きな叫び声をあげて壁に向かって吠え立てる。
 「あらあら、勇ましいこと。でも、あんた一匹だけじゃあ私には勝てないわよ」
 ショウトラが吠え立てた壁から巨大な女の顔が浮かび上がる。その顔はよく見ると人間とは違うように見えた、そうどこか人形のような。
 その姿におびえるアヤを後ろにショウトラは巨大な顔に威嚇するが、
 「ふふっ、無駄だって言うのに」
 余裕を見せる顔に向かってショウトラが飛びかかる。だが、ショウトラの体が女の顔に触れるかと思われたとき、その顔はすぅーと姿を消して、ショウトラは後ろの壁に向かって激突する。
 「ワンちゃんっ!?」
 激突したショウトラの上半身が音もなく壁にめり込んでいる。
 「あらあら珍しいものが手に入ったわね。あなたたちかわいがってあげなさい」
  そう言うと、ショウトラの体はズボズボ壁の中へと引き込まれていく。懸命に吠え立てる声が聞こえてくるが、だんだんとその声は小さくなっていく。
 「さあ、ココからが本当の仕事よ。あなたも一緒にいらっしゃい」
 「私のモガちゃん人形っ!」
 白い煙が人形に取り巻くと、アヤの人形はガクガクと壊れた機械のような動きをして、そのまま女の幽霊に向かっていく。
 「ふふ、あなたもこれで私の仲間よ」
 消えていくモガちゃん人形に手を伸ばそうとするアヤだが、その周囲を深い霧のようなものが阻み・・・・・・アヤは、深い眠りへと落ちていった。


その翌日。目が覚めたアヤは、普段いる場所にあるはずのモガちゃん人形が存在しないことに気づくと。
 「モガちゃんと、ワンちゃんを助けなくちゃ」
そして急いで普段着に着替えると先日テレビの特集でやっていたGS事務所に向かって駆け出していった。



 「ショウトラちゃ〜んどこにいるの〜〜〜?」
 「ショウトラ〜ッ、聞こえたら出て来〜〜い!?」
 なにやらものすごい大集団で町の中を徘徊する集団がひとつ。もちろん横島と、冥子そして、残った式神達である。
 「ショウトラちゃ〜〜ん〜〜」
 「あの、冥子さん」
 一つ目のカラスを頭の上に乗せた横島は、恐る恐る冥子に言う。
 「ショウトラちゃ〜〜―――どうかしたの〜〜?」
 インダラにまたがりながら冥子がたずねる。
 「ショウトラを探すのはいいんですが、別にこいつら全員出さなくてもいいんじゃ」
 げんなりとした表情で横島は、自分たちの周りでうごめいている式神たちをさす。さっきからこの式神たちのおかげで、近くを通りかかった人たちは、自分達を見ただけで逃げるように去っていく。これでは、まともに人に尋ねることも出来ない。
 「そんな〜〜〜、この子達もショウトラがいなくなってとっても心配しているのよ〜〜。それを影の中でずっと待っているなんてひどすぎるわ〜〜〜」
 そう言って今も泣き出しそうな顔になり、
 「わっ! 泣かないでください! そうですよね! 俺が悪かったです! 俺が間違ってました! だから泣くのだけはやめてくださいッ!」
 こんなところで式神に暴走されるとたまったものではないので横島も必死である。
 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ! この前テレビに出てたお兄ちゃんと、お姉ちゃん」
 命がけの夫婦漫才をやっているところに現れたのは、小さい体で息を切らせたアヤであった。
 「わたしアヤって言います。お願い、お兄ちゃんたち、モガちゃんとワンちゃんを助けて」
 「モガちゃん? モガちゃんって誰?」
 横島が聞き返すと、
 「ひょっとして〜〜、着せ替え人形の『モガちゃん』のこと〜〜?」
 「うん。わたしのモガちゃんが、昨日大きな顔の幽霊に連れて行かれちゃったの、それを助けようとしたワンちゃんもどこかに消えちゃって」
 「でも、俺たち今ショウトラを探してる途中ですしどうします」
 「ねぇアヤちゃん〜〜、そのワンちゃんってどんな子なの〜〜〜」
 何か感じるものがあったのか真剣な表情で冥子がたずねる。
 「しめ縄みたいな首輪に大きな珠をつけた真っ白の犬。昨日道に迷ってたみたいだったから一晩止めてあげようとしたの。そしたら・・・・・・」
 「冥子さん。それってもしかして」
 「あなたのモガちゃんも心配だけど〜〜、私も今この子を探しているの〜〜、アヤちゃんはこの子見なかった〜〜?」
 アヤが覗き込んだ写真には、白くて、首には大きな珠の首輪をつけた犬が写っていた。
 「ワンちゃんっ!? お姉ちゃんがこの子の飼い主なの?」
 「じゃあ、連れて行かれた犬って・・・・・・」
 「ショウトラちゃん〜・・・・・・」
 そして三人は、ショウトラとモガちゃん人形を救うべくアヤの家に向かうことになった。

 「横島クン〜」
 「はい?」
 「実は私のモガちゃんも一週間前から行方不明なの〜〜、もしかして私のモガちゃんもその幽霊に〜・・・・・・・」
 「私のって、冥子さんあなた一体いくつなんですか?」

 そうこう話しているうちにアヤの家の前へとやってきた。
 
 「ただいま〜〜」
 「アヤちゃんどこに行っていたの? 出かけるときはママに・・・・・・どなたですかっ!?」
 アヤを先頭に、冥子と横島がズカズカと上がりこんでいく。
 「ココにショウトラちゃんが〜〜、クビラちゃんお願い〜〜〜」
冥子の肩に乗っていたおたまじゃくしの頭を目玉に変えたような式神が、壁に向かって光を放つと。
 「こっ! これはなんですの!?」
突然現れた不気味な穴に、アヤのお母さんも驚きを隠せない。
クビラの怪光線は、壁に存在した異次元の穴を浮き出さす。
 「何かの妖怪の巣か、もしくは異次元の抜け穴・・・・・・こんな所にショウトラの奴連れ込まれたのか!?」
 恐怖に後ずさりする横島。
 「じゃあアヤの言ったことは本当だったんですかっ!?」
 「そうなんです。でも大丈夫、僕が着たからにはもう・・・・・・めっ、冥子さんなにしてるんですか?」
 アヤの母親の両手を握って口説いていた横島の背後から、ビカラの両手が伸びる。
 「最初に入るの怖いから〜〜、横島クン一番に入って〜〜〜」
 「ちょっと待ってくださいっ!? 俺だってこんな正体不明の穴に最初に飛び込むのはちょっとっ!!」
 「横島クンお願い〜〜〜」
 一瞬上目遣いの潤んだ瞳に横島の動きは止まり、その瞬間を狙ってビカラに無理やり押し込まれる。
 「ちょっと待ってくださいっ! まだ心の準備がぁああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」
 異次元の穴に横島の叫びがこだました。
 「アヤちゃんは〜〜、危ないからここで待っていてね〜〜〜」
 横島が穴の中に消えていくのを確認すると、自分も穴に向かってその身を投げ込んだ。

 「・・・・・・ココは、一体「キャぁ〜〜〜〜ッ!?」」
 ぐぼっ! 起き上がった横島の上に、冥子が降ってきた。
 「横島クン大丈夫〜〜〜?」
 「なんほか・・はいひょうふへふ・・・・・・」
 すでに、やばそうな状態ではあるが横島ならまあ大丈夫であろう。
 あたりを見回すと何もないだだっ広い空間がどこまでも続いている。
 「なんかやばそうなところに来たな・・・・・・・ヤタ出て来いっ!」
 影の中から横島の式神が姿を現して、横島の頭の上に鎮座する。その横では肩にクビラを乗せた冥子もビカラを出現させていた。

 「めっ、冥子さん。ショウトラも人形もいないようですしそろそろ帰りませんか?」
 「ダメよ〜〜。もっとちゃんと探してみないと分からないの〜〜〜」
 しかし、そう言ったものの冥子も早い所この場所を離れたくて仕方がなかった。ただ、ショウトラがもしこんなところに一人でいるなら早く助けてあげないといけない。そんな思いだけでこの場に立っていたのだ。
 「くそ〜〜。ショウトラの奴どこにいったんだよ。ヤタ空からこの周辺を探してこい」
 ショウトラ捜索のためにヤタを放とうとしたとき、
 「あら〜〜。この場所がこんなに早くにばれるなんて」
 二人の目の前から声が響き渡り何百体もの人形たちが姿を現した。
 「にっ、人形がこんなにいっぱいっ!?」
 「そうか〜〜、ココは人形さんの国なのね〜〜〜」
 「冥子さんそんなメルヘンチックなものでもないと思いますが・・・・・・」
 しゃべる人形たちを見て今までの恐怖がなくなったのか素顔に戻った冥子が言う。
 「そう。あなたがこの子の飼い主ね」
 人形の親玉がそういうと、人形の群れの中から白い塊が放り出された。
 「「ショウトラッ!?」ちゃん〜〜っ!?」」
 横島の近くに転がったショウトラはぐったりと動こうとしない。
 「お前らショウトラになにをしたッ!?」
 「ちょっと騒がしかったから、おとなしくなるまで霊力を吸い取り続けただけよ。私の持ち主も結構な霊力を持ってたけどあなたもなかなかねぇ、霊力すべてを吸い取ってあげようと思ったけど結局吸いきれなかったわ」
 「冥子さん、式神は力がなくなると自分から影の中に戻ってくるんじゃっ?」
 「この空間に居たせいで戻りたくても戻れなかったのね〜〜」
 いくらショウトラが戦闘用の式神ではないとはいえ、ココまでやられるとは。横島は少なからず怒りを感じて人形の集団をにらみつける。
 「でも、その子のおかげで、私の力は今最高潮に達してるわ。このまま逃がすと面倒だから貴方たちから私たちの人形にしてあげるわ」
 「人形って一体俺たちになにをするつもりだッ!?」
 「ちょっと魂を抜いて抜け殻になってもらうだけよ。あなたたちの体で私たちが人形遊びをするのよ。」
 不敵に笑う人形たち。
 「誰がお前らの人形になんかなるかっ!!」
 「そうよ〜〜。そんなことやめてみんなで仲良く遊びましょう〜〜〜」
 二人の言葉など聞いていないようで、人形たちはアリの大群のように打ち寄せてこちらへ向かってくる。
 「式神たち〜〜、お願い〜〜」
 横島は文珠を出して構え、冥子は式神たちを出そうとしたとき、
 「あら〜〜冥子ちゃんじゃないの〜〜〜」
どこか間延びした声が響き渡って大量の人形の中から新たな一体の人形が出てくる。
 「こらっ! アンタなに勝手に出てきているのっ!?」
 「え〜〜、でも〜〜せっかく冥子ちゃんとお話できるのに〜〜〜」
 「この間延びした声ってもしかして・・・・・・」
恐る恐る指差しながら冥子の方を振り向くと。
 「私のモガちゃん人形〜〜〜〜〜っ!!」
目を輝かせながら無邪気に笑う冥子さんがいた。
 「一週間前から急にいなくなったから私心配してたのよ〜〜」
 「レイちゃんが一緒に人形の国をつくりましょうっていうから一緒に来たの〜〜」
 レイとはどうやらこの人形たちを操っている親玉の名前らしい。
 (レイ? なんかこの性格どっかで見たような?)
 「それよりなんであんた人格が表に出ているのっ!? 私の力で操られているはずじゃ」
 「どうしてって〜〜、わたしは元から操られてなんかないわ〜〜、レイちゃんが一緒にあそびましょうって言うからついてきただけ〜〜。でも〜、レイちゃん全然私と遊んでくれないんだもの〜〜、あんまり私のことほっとくと泣いちゃうんだから〜〜」
 「なんか、このやり取りいつもどこかで見ているような」
 そう呟く横島をよそに二つの人形たちの言い争いはさらにヒートアップする。

 「うるさいわね〜〜ッ!! あんたなんかにかまってる暇私にはないの、遊んでほしかったら元の人形に戻ってなさい。私の言うこと効かない人形なんて要らないわッ!!」
 「そんな〜〜ッ・・・・・・もう、本当に泣いちゃうんだからッ!」
 すでに目に涙をいっぱいためている冥子の人形。
 「冥子さん・・・・・・これって大丈夫なんでしょうか?」
 危険な雰囲気を察知した横島だが、
 「二人共とっても仲良しさんね〜〜」
 まったく気づいていなかった。

 「泣けッ! 泣けッ! 泣きたかったら勝手に一人で泣いてなさいッ!! 隅で一人いじけてなさいッ!」
 「うっ、うっ、うっ、レイちゃんの馬鹿〜〜〜〜ッ!!」
 泣き出した冥子人形からすさまじいまでの霊波が放たれる。
 「なっ!? なんなのっ! この子のこの力ッ!?」
 そして、その霊力は今までレイの指揮下にあった人形たちにも及ぼされる。
 「ふっ、ふぇえええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!?」
 「なんでっ! 人形たちが、全然私の制御を受け付けないっ!!」
 今まで、レイの言うことを聞いていた人形たちだが、その制御を外れて勝手気ままに暴れまわっている。
 「きゃぁっ!!」
 「この光景どこかでいつかみたような・・・」
 「横島クン〜〜〜こっちに来た〜〜〜ッ!?」
 「やばいっ!? 文珠っ!」
 発動するのは『護』と書かれた文珠。文珠の結界が二人を包み込む。


 暴走が収まるまでしばらくお待ちください・・・・・・。


 「あたしが・・・こんな人形に・・(ガクッ)」
 そこには、蓄積されていた全ての霊力を使いきって元の人形に戻ったモガちゃんたちが大量に横たわっていた。
 「やっぱり、人形も持ち主に似るんだなぁ〜」
 「私のモガちゃん―――もっとお話したかったなぁ〜〜〜」
 そして冥子は、自分の人形と、レイと呼ばれた人形、そしてアヤの人形をもって再びもとの世界へと戻っていった。


 「それじゃあねぇショウトラ〜〜〜」
 アヤちゃんがショウトラに手を振っている。手には昨日奪還したモガちゃん人形がしっかりと握られていた。
 
 「しかし、この人形はどうするんです?」
 冥子の手には二つの人形が、握れていた。
 「この子も一人だと寂しいとおもうから〜〜〜、一緒に飾ろうと思うの〜〜〜」
 「そっ、それって大丈夫なんですか」
 「大丈夫よ〜〜〜きっとこの子もわかってくれるわ〜〜〜」
  その後、冥子さんは、またモガちゃん人形と話せる日を願って、事務所に人形を飾ることにした。
 その夜から事務所では、人形たちの遊び声が聞こえるとか聞こえないとか。
 ただ、その声が人によっては、もう一人の人形から逃げる悲鳴に聞こえたりするそうである。
 『レイちゃ〜〜ん。いっしょにあそびましょ〜〜〜』
 『いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!』


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