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混沌と少年

0.もしも育ちが紛争地域なら


投稿者名:なまこ
投稿日時:06/ 8/17

12年前――――

「忠夫、父さん今度海外に仕事に行くことになったんだ」
幼い頃、それがどうしたのかと聞いていた。
親父の顔に悔しそうな表情が浮かんでいるのにも気づかずに。
「それでね。どうせなら家族みんなで行こうと思うんだけど、忠夫はそれでいい?」
お袋の心配そうな顔。その理由が今なら分かる。
「うん、えーよ。親父とお袋に付いてくわ」
軽く決断を返した幼い俺。


――――それが地獄の日々の始まりだった。


 ナルニア――――緑豊かなその国は、毎日武装ゲリラと政府軍の戦いが繰り広げられていた素敵な国だった。


 そこで俺は生き延びることの大切さを学んだ、気がする。だが。
「もー、いやだ! 親父、お袋。せめて高校くらいは日本の安全な教育を受けさせてくれ!」
三日に一度のペースで戦闘に巻き込まれていた俺は、ついに我慢の限界を迎えた。
 この12年間、全てが戦争と交渉、サバイバルだった。
 おかげでナイフやら銃やらの扱いといった、おおよそ日本の高校生が使わないであろう知識は実践の経験と共に心に深く刻まれたが。
「あら、忠夫。母さんたちを置いて一人で帰るっていうのね?」
「ぐ……いや、その…………」
一番つつかれたくない方面から攻撃され、言葉に詰まる。
 そりゃお袋たちを残していくのはいい気分じゃないが、この国は。
 この国は女ッ気が無さ過ぎるんじゃぁぁぁぁ!
 俺だって、女子高生と平凡な日常が送りたいんや!
 いやもちろんそれだけが理由じゃないんだが、母さんの雰囲気じゃやっぱり無理か……
「いいんじゃないか、母さん。忠夫ももう一人前の男だ。日本で一人暮らしくらいやっていけるだろう」
「あなたっ!?」
「親父……」
援軍は意外なところからやってきた。
 親父、今までアンタのことはただのスケコマシだと思ってたけど、ちゃんと俺の事も考えて……
「なぁ、忠夫。お前も一人前の男、いや戦士だ。なぁ?」
「あ、あぁ、もちろんだ親父!」
「なら日本での生活も全て自分でやっていけるよな?」
「あぁ、もちろんだ親父!」
「じゃ、こっちからの資金援助は一切しないから頑張れよ」
「あぁ、もちろんだ親…………ちょっと待てぇぇぇぇ!」
「あら、そういうことなら母さんもOKよ」
あっさりとお袋からもOKがでた。だが何故だろう、目が、滲んで、前が、見えない。


 それから俺は、なんとか最低限の家賃と学費は仕送りして貰えるという条件で日本へ旅立った。
 

 待ってろよ、女子高生!


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