「それじゃあ冥子〜〜、横島君〜〜、これがあなた達の初仕事よ〜〜がんばってね〜〜」
高校に入学して数週間がたったある日。俺は六道家現当主、六道冥香さんに呼び出された。
いつもの応接間に行くとそこには、冥子さんも座っていた。
「あなた達もだいぶ仕事になれてきたから〜〜今回からは二人だけでやってもらうわ〜〜。いわば卒業試験ね〜〜」
プロのGSになるには、免許をとっても師匠が一人で除霊できますという許可を出さないかぎりなれない。今までは、月光や、日光がついてきたりしていたが今回からはそれもなくなるらしい。
手渡されたファイルには、『依頼者、MHK。ターゲット、グレムリン』と書かれていた。
「!? ちょと待ってくださいっ! これ! もしかして宇宙まで行くんですか!?」
「そうよ〜〜、これから一週間後には横島クンに〜〜宇宙に行ってもらうわ〜〜〜」
「へっ・・・・・・おっ、俺がすっか!?」
「何も驚くことじゃあないわ〜〜、宇宙に行くのは幽体離脱で肉体から離れた霊体だけだから〜〜」
「そっ、そんなことして大丈夫なんですかっ?」
ニッコリと笑いながら何気に凄いことをいってくれる冥香さん。
「すごいわ〜〜横島クン〜〜」
(冥子さん〜〜そんなに無邪気によろこばないでください・・・・・・)
「冥子もそんなに笑ってられないわよ〜〜、横島クンが宇宙に行っている間、あなたが横島クンの体を確保しておくのよ〜〜、下手すると死んじゃうかも知れないからしっかりするよのよ〜〜」
「なっ!?」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」
「霊体が肉体から長い時間はなれすぎると肉体はだんだんと弱っていくから〜〜しっかりねぇ〜〜」
「そんなッ!? ムチャクチャ危ないじゃないですかッ!?」
「そうよ〜〜っ! 冥子そんなことできないわ〜〜〜!」
「大丈夫よ〜〜、グレムリンはそんなに凶暴な霊じゃないし〜〜横島クンなら文珠で一発でしょ〜〜」
「そっ、それはそうかもしれないですけど・・・・・・」
「それにもう依頼受けちゃったし〜〜、成功したら横島クン英雄よ〜〜(ニヤ)」
バタンッ!?
「こんにちは―――っ、私達リポーターのMHKシスターズでーす」
「新に設立された六道除霊事務のメンバーにインタビューにやってきましたっ!」
「人類初の幽体離脱による宇宙遊泳を行うって、横島さん本当ですかっ!?」
「怖いと感じたことはありますかッ!?」
「冥香さん・・・・・・これは一体ッ!?」
「デビューは華々しく飾らなきゃねぇ〜〜、ということで〜〜、あなた達の初仕事、宣伝もかねてMHKの特番になるからがんばってねぇ〜〜〜」
(俺がテレビ出演ッ?! 成功したらモテモテのウハウハ!!)
「横島さんは、人類史上初の文珠でもあるということですがっ!?」
(はっ!? いかん妄想に浸っているところではない。ココはやはりビシッと決めなければッ)
黒く長い髪のリポーターの姉ちゃんが、マイクを持って質問してくる。
「その通りです。僕の文珠にかかれば、悪霊の一匹や二匹朝飯前ですよっ!?」
(決まった。これで俺は――――――)
横島と同じように冥子も六道事務所の所長として、いくつかインタビューされていた。
「わぁ〜、本当に頼もしいですね、それまでは皆さん。これより一週間後六道除霊事務所の皆さんによる世紀の大除霊が、始まります」
「はいカットっ! それじゃあ来週は、お願いします〜〜」
帽子をかぶったADらしき人物がそう閉めた後、MHKスタッフは全員帰路に着いた。
(横島君がメインなら〜〜万が一のときでも式神が暴走することも無いでしょうし〜〜、成功すればかなりのイメージアップに繋がるわ〜〜。ついでに文珠使いの能力を見せ付けることも出来るし〜〜)
「それじゃあ冥子〜〜、これから一週間特訓ね〜〜」
「え〜っ! 冥子これからなにかするの〜〜っ?」
「もちろん横島君を離脱するための術の特訓よ〜〜。もしものときはこれだけど勘弁してねぇ〜〜」
微笑みながら言う冥香さんの手には、なぜか金属バットが握れていた。
「めっ、冥香さん、これはもしかして・・・・・・」
「大丈夫よ〜〜、冥子が一週間で玄夢駆使法を覚えてくれれば使うことは無いから〜〜、あと余裕があれば〜〜、童子法や〜、鏡感法なんかも覚えてくれるといいんだけど〜〜」
「そんな〜〜っ、あれを一週間でやるなんて無理よ〜〜〜っ!?」
今まで、ニコニコ笑っていた冥子が慌てていうが、
「出来ないときは〜〜、横島君これなんだけどいい〜〜?」
真顔で金属バット差し出されて、
「冥子さんッ! なんとしても一週間で覚えてください! 俺も協力しますからッ!?」
冥子の両肩をつかんで必死に訴えかける。
「う〜〜っ!」
「どうするの〜〜、横島君の運命は、あなたが握っているのよ〜〜」
ここぞとばかりに普段修業をさぼってばかりの冥子に修業させようとする冥香。
「お願いします! 冥子さんっ!!」
そして、冥子は半ば二人に押し切られる勢いで、
「分かったわ〜〜。がんばってみるの〜〜〜」
玄夢駆使法を覚えることを了承した冥子であった。
(横島君に幽体離脱の方法を教えるって方法もあるんだけど〜〜、そうしたら冥子があんまり目立たなくなるし〜〜。修業嫌いの冥子も〜〜こうすればがんばってくれるだろうし〜〜)
そして一週間後。
「それではこれより幽体離脱による宇宙遊泳と、グレムリンの除霊が始まります。六道除霊事務所の所長冥子さんはすでに魔方陣の中に入って、横島君の幽体離脱させるための精神集中に入っています」
五亡星を中心にその回りを象形文字のようなものが輪のように並んで描かれている。そんな魔方陣の中心で数分前から冥子は、ブツブツ何かを唱え続けていた。
(うまくいきますように〜〜。成功したらちゃんとニンジンも食べるの〜〜)
呪文を唱えてるのかと思ったらずっと神頼みしていた・・・・・・。
そして全てのカメラは冥子を中心に撮影を開始する。
「それじゃあ〜〜、横島クン〜、結界の中に入ってココに頭を乗せて〜〜」
結界の中で自分の膝を叩きながら横島にそういう。
「冥子さんっ! それってもしかして膝枕ですかッ!!!」
「そうよ〜〜、ゆっくりと寝そべったら〜〜ゆっくりとリラックスする感じでねぇ〜〜」
(冥子さんの膝枕! 冥子さんの膝枕! 冥子さんの―――――――――ッ!!)
「冥子さ〜〜〜〜〜んッ!! 俺は、もう〜〜〜ッ!!」
バチコ―――――――――ッン!!!
思わず冥子に飛び掛りになりそうだった横島の頭に鈍い何かがぶつかる音が響いた。
「横島くん〜〜っ! (ピキッ) これはテレビで放送するんだから〜〜そこの所理解しててね〜〜〜ッ!!」
振り返るとそこには、鬼のオーラを纏ったダークフェイスの冥夜さんが、ハンドカメラを構えて漂っていた。気のせいかいつもより周りの人魂の炎が激しい気がする。
「はっ、はい。気をつけさせてもらいます」
冥夜の態度に冷や汗を流しながらその言葉だけなんとかひねり出した横島であった。
ちなみに冥夜がハンドカメラを持っているのは、宇宙では普通の人間では撮影をすることができないとのことで、彼女が今回番組の撮影を行うからだ。
「それじゃあ、ぼちぼちがんばりますか」
横島は、冥子が準備した結界の中に足を踏み入れる。
(!? 何か体から力がぬけていくような)
「それじゃあ体の力を抜いてリラックスしてね〜〜」
(あ〜〜〜〜。今俺の頭が冥子さんの膝の上に〜〜〜。幸せだ〜〜)
冥子に膝枕されて幸せそうに胸の上で手を組む横島。その上で、すでに冥子は横島を幽体離脱させるための呪文を唱え始めていた。
「汝〜、横島忠夫のたましいよ〜〜、肉体の呪縛より解き放たれて〜〜(え〜〜と、次の呪文は〜〜)その姿をあらわして〜〜、幽体離脱〜〜ッ!」
瞬間、冥子の瞳が多くく開かれ青くひかり、周囲の魔方陣からまばゆい光が放たれる。
(あ〜〜、なんかとってもええ気分や〜〜、なんか眠気が・・・・・・)
「横島くん〜〜、横島くん〜〜」
夢心地の中誰かが自分を呼ぶ声が聞こえて眼を開いてみる。
「ん? なんだ〜〜、一体誰がッ!? 俺が下にもう一人ッ!」
「魂のヒモがつながってる間は安全だからそれまでに帰ってきてほしいの〜〜〜」
横島の魂から伸びた白いヒモをたどると、冥子に膝枕された横島の身体が幸せそうに眠っていた。
「なっ!? 俺の身体め・・・!! 自分だけいい思いしやがって・・・!! 誰のおかげでそこまで育ったと思っている・・・!!」
「さあ〜〜、横島くん〜〜もたもたしないでいくわよ〜〜」
自分自身に対して本当に悔しそうにしな横島の襟首をつかむと、冥夜は宇宙へ向かって浮いていった。
MHKの建物を通過して、雲を抜け、成層圏を抜けるとそこには、テレビで見た本当の宇宙が存在していた。
「ひえ〜〜、ほんとに俺たち宇宙まで来たんだなぁ〜」
地球を見下ろしながらつぶやく横島。
「わぁ〜〜、地球って〜〜本当は丸かったのね〜〜〜」
その横で眼をきらきらさせながら地球をビデオにおさめる冥夜が居た。
『横島クン聞こえる〜〜?』
「聞こえますよ〜、どうぞ」
『もうすぐ〜〜、太陽からのエネルギーの風が吹いてくるから〜〜、幽体は軽いから飛ばされないように気をつけてほしいの〜〜』
冥子がそう言ったとき、強い風が二人に吹き付ける。
「きゃあ〜〜っ!」
それまで地球に気を取られていた冥夜の姿が、太陽風に揺らめき、
「ちょっ、冥夜さんっ!?」
「あれ〜〜〜〜っ!!」
横島は必死に手を伸ばすが、その手はむなしくも冥夜をつかむことなく虚空を掴んだだけであった。そして、冥夜の姿はそのまま宇宙の彼方に消えていった。
「冥子さんっ! 冥夜さんが太陽風に飛ばされましたっ、どうしたら」
『え〜〜っ! 冥夜ちゃんが〜〜〜っ! 』
あわてる冥子を前にして、横島は突然何かを感じたかのように真剣な表情で、宇宙の一点を見つめた。
「・・・・・・何か来る」
それは、宇宙の片隅から猛スピードで一直線にこちらへ迫ってくる人工衛星であった。
「いッ! いくらなんでも早すぎ、ぐばっ!!」
人工衛星は横島に見事直撃。横島はつぶれたカエルのようになりながらも何とかその壁にしがみついている。
「くっそ〜〜〜。これしきのことで俺の薔薇色の未来を」
宇宙には上下など存在しないが、とりあえず上っぽいほうに這い上がると、黒い毛むくじゃらの体に、二本の角を生やし、背中にはコウモリのような翼を持ったグレムリンと真正面からご対面することとなった。
「ぎゃぁ――――――――――――――――――――――――ッ!!!」
いきなりの遭遇に悲鳴を上げる横島とは対照的にグレムリンは、「シャァ―――――」という鳴き声とともに、威嚇を示して一気に襲い掛かってくる。
「でッ! 出た――――――――――――ッ!?」
「落ち着いて横島クン〜〜、早く文珠を使うの〜〜〜」
「はっ、はっ、はっ、そうだった。やいグレムリン、この俺が本気を出したからには容赦しないぜッ、これを・・・・・・(スカっ)」
横島はポケットの中から文珠を取り出そうとするが、
スカッ スカッ
「・・・・・・冥子さん・・・俺のポケットのなか・・・・・・」
『どうしたの横島クン〜〜?』
「俺のポケットの中を早くッ!?」
なにやら切羽詰まった状況の横島にせかされて急いで、横島のズボンのポケットをあさると、
『え〜っ! え〜っ! あっ! これもしかして〜〜〜っ!?』
横島の体のポケットの中からは、昨日忘れないようにと入れた文珠が三つ・・・・・・。
『横島クン〜〜ッ!? 幽体離脱したあとちゃんと持っていかなかったの〜〜〜っ!!』
文珠は確かに横島の霊力だが、物体として存在する以上は、霊体と共に行動することなくしっかりと身体のポケットにしまわれていた。
「めっ、冥子さん・・・他にどうしろとッ!?」
『横島クン〜〜、今すぐ文珠作れる〜〜?』
「無理っすよ!!」
昨晩文珠を作り出したため直に新たな文珠を今すぐに作り出すことは不可能に等しい。
『こうなったら他の方法で〜〜、何とかするしかないの〜〜〜』
「そうだなっ、よしッ! 出て来いヤタっ!」
横島の呼び声に応じて、影の中からヤタが出てくる。
ぎゅぅ!?
『あ〜〜っ! ヤタちゃんがこんなとろのに〜〜〜っ!?」
(ヤタ・・・お前もそこかよ・・・・・・)
ヤタは、横島の身体の影から出てきていた。
『文珠も式神もダメだとすると〜〜〜、どうしたらいいの〜〜〜ねえ、横島クン〜〜!?』
「知りませんよっ! 俺に聞かんで下さいっ! 冥子さん他に方法は無いんですかっ!?」
狭い衛星の上を必死に逃げ回るが、
「こらお前っ! 俺の魂のヒモをかじるな〜ッ!!」
逃げ惑う横島に面倒になったのかグレムリンは横島の魂のヒモにかぶりつく。
「冥子さ〜んっ!? なんとかしてくださいっ!」
『え〜〜と〜〜〜、え〜〜と〜〜〜』
この一週間で母親に叩き込まれたグレムリンに対する知識を普段あまり使わない頭を使って必死に思い出す。
『そうだわ〜〜横島クン〜〜、グレムリンは〜〜歌に弱いの〜〜。だから何か歌って〜〜〜』
半ば、泣きそうな表情でやけくそ気味に言った。
「くそっ! やけじゃあっ! ヨコシマヨイコ タテシマタシテ チェック〜♪ 夢をチェック〜♪ 君が好きだから カボチャを食べよう〜♪ 君が欲しいからトマトジュースを飲み干そう〜♪ 僕を 見てくれ 指輪の隙間から〜♪ 僕を 呼んでくれ キャッスカードを投げ捨てて〜♪」
『あら〜横島君けっこう上手いじゃないの〜〜』
どこからか取り出したマイク片手に歌いだす横島。ちなみに歌っている曲名は“少年ヨコシマ探検隊”だ。
「でも冥子さんほんとに効くんですか!?」
先ほどまで魂のヒモにかじりついてたグレムリンは、不思議そうな顔をしながら横島の方を見ている。
『う〜〜ん〜〜・・・・・・好みじゃないのかしら〜〜?』
「んな、あほな―――っ! じゃあどうすれば―――っ!」
『冥夜ちゃんもお願い〜〜、横島クンに協力して〜〜〜っ!』
「えっ!?」
冥子に言われあたりを見回してみると、太陽パネルの影からカメラを回している冥夜の姿があった。
「冥夜さんっ、無事だったんですか。でも、なんでそんなところにいるんですか」
グレムリンとヒモの取り合いをしながら必死に叫ぶが、
「だって〜〜、その子顔がとってもこわいんですもの〜〜〜っ!?」
そう言ってそのままパネルの奥に引っ込んでしまう。彼女は戦闘員ではないので、当然といえばとうぜんなのだが、仮にも初代当主ならもう少しそれなりの態度があるのではないかと考えてしまう。
冥夜の助けは期待できないと思い、どうすればよいかと思考するが、いい案は浮かばない。
「くそ〜〜っ、えっ!!」
それでも何とかグレムリンとやりあおうとする横島だが、、冥夜がパネルの影に移動することを確認するとグレムリンは、なぜだか横島のことを放りだし一目散にパネルの影へと走り出した。
「冥夜さんっ!! 逃げてくださいッ!!」
冥夜の身を案じて横島の声が響くのと同じくして悲鳴が上がる、
「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
そのまま太陽パネルを一周して横島の元へ逃げ出してくる。その間もカメラを回し続けているのはさすがといったところだろうか。
「横島君〜〜っ! たすけて〜〜〜〜〜っ!!」
駆け寄ってくる冥夜の後ろには確かめるまでも無く、怒りに満ちたグレムリンの姿が、心なしかさっきよりも凶暴性が増している気がする。その鋭いつめを冥夜めがけて躍らせる。
「くそ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
逃げなかったのはさすがだが、冥夜をかばった横島はグレムリンの攻撃をまともに食らって吹き飛ばされる。
「『横島クン』君〜〜っ!!」
「くそぉ・・・・・・」
横島が反対側のパネルにたたきつけられるのを見た二人の叫びが重なる。
「も〜〜〜う、私だって怒ったんだから〜〜ッ!」
今まで逃げていた冥夜だが、ココに来て覚悟を決める。さっきまで横島が持っていたマイクを拾い上げて、
「ひとりじゃ〜 何にもできない〜〜♪ 弱い子なの〜 守って〜♪ 可愛いでしょ〜 いい子なの〜〜♪ なぜ〜〜 友達いないの〜〜♪」
自分の十八番"仲良し式神たち"を歌う。
さっきの横島の歌では、あまり聞いていなかったグレムリンだが、冥夜の歌声になにやら苦しみだすような仕草を見せる。
「いつも〜 誰かが苛めるから〜〜♪ 泣いちゃうの〜 しかたないのよ〜〜♪ 何にも見えなくなっちゃうの〜 しかたないのよ〜〜♪ 何にも見えなくなっちゃうの〜〜♪ 覚えがないわ〜 知らないわ〜〜♪」
「冥子さん、効いてるみたいですっ!」
何とか復活した横島は、グレムリンのほうを見ながら喜々して叫ぶ。
『「仲良し式神たちと〜〜♪ ピクニックしましょう〜〜♪ 自縛霊の空き地は〜〜 Ghostのおやつ〜〜♪ たくさん食べて〜 育ってね〜〜〜〜♪♪」』
冥夜の声につられながら冥子も途中から一緒になって歌っていた。
「やったぜ〜〜っ、グレムリンが逃げていくっ!」
二人の目の前では、グレムリンが耳を押さえながら宇宙のかなたへと走り去っていった。
『横島君も〜〜、冥夜ちゃんもやったのね〜〜っ』
「ええ、これで多分大丈夫だと思います」
「でも〜〜、どうしていきなり〜〜、私に襲い掛かってきたのかしら〜〜」
不思議そう冥夜が再びパネルの裏側に回ると、
「あ〜〜〜っ! 横島君これみて〜〜っ!」
冥夜はパネルの陰にしゃがみこむと、ダチョウと同じくらいの卵を抱きかかえてこちらに持ってきた。大きさはダチョウの卵と同じくらいだが、紫の丸い輪が模様として張付いている。
「そうか、あいつこれを守っていたのか。なんだか、わるいことしちゃったかな」
「きゅい〜〜〜っ!」
横島がそういったとき卵にヒビがはいり中からぬいぐるみのような黒く、目玉がくりくりした毛玉が顔を出した。
「『かわいいの〜〜〜〜っ!!』」
モニター越しに見ていた冥子さんと、それを映していた冥夜さんの声が重なる。二人ともグレムリンの赤ん坊にメロメロのようだ。
生まれたばかりのグレムリンの赤ん坊はなぜだか、俺の体にしがみついてくる。
「きゅい〜〜」
(けっこうかわいいかもな)
こうしてグレムリンの赤ん坊を抱きかかえたまま俺たちは、地球へと帰還していった。
「かわいい〜〜〜〜の〜〜〜〜〜〜ッ!!」
「ぐべっ!!」
帰ってくると同時に冥子が、グレムリンの赤ん坊に近づくために立ち上がったために、いままで冥子のひざの上に乗っていた横島の頭が地面に落ちる。
「うっ、うう、もうすこしあの感触を楽しんでいたかった・・・・・・(ガクッ)」
「いや〜〜今回はなかなかいい映像を取らしてもらいましたよ。なんなら次回もお願いしたいくらいですよ〜」
プロデューサは、満悦そうな笑みでそう言った。
「そうだ〜〜、みんなもこの子に挨拶してね〜〜〜」
冥子がそういうと、影の中からすべての式神が飛び出してきた。
「きゅっ!?」
いきなり飛び出してきた式神たちに驚いたのかグレムリンは、ビックと震えて横島の服にしがみつく。
「あれ〜〜、そんなレムちゃん〜〜、この子達はそんな怖くないのよ〜〜」
額にあせを浮かべながらそういうが、グレムリンは横島の腕の中で縮こまったまま動かない。
「こりゃあ徐々に馴らしていくしかないんじゃないですか?」
「どうしてなの〜〜〜〜〜っ!!!」
涙を流しながら悲痛な冥子の叫び声がMHKにこだました。
「じゃあ〜。しばらく私のところにおいで〜〜」
冥夜さんは、そんなグレムリンの赤ん坊を横島から受け取りながら嬉しそうにほお擦りしていた。
結局グレムリンの赤ん坊は、式神になれるまでは冥夜さんの試練場で暮らすこととなった。
今回の映像は、春の特番二時間スペシャルで放送されることとなった。しかし、横島の人気はあんまり放送前と変わらなかったみたいだった。この放送を見た六道冥香は、今回二人が歌った歌を六道所霊事務所のテーマソングとして、そのうちCDを出すといっていた。横島たちがCDデビューするのも近いかもしれない。
余談だがこの事件の後、横島はカラオケに通いつめて尾崎豊『15の夜』をマスターしたらしい。
そして、意外なことに今回放送された映像の一部は、海外メディアでも一部放送された。
暗い密室の中で妖しげな機械たちの歯車音が響き渡っている。
『それでは今週の世界GS特集、日本のGS偏を終了します。また、来週』
ピッ! テレビの電源が消されると共に一人の老人が立ち上がる。
「実験の場所がきまったぞッ、マリアっ!!」
to be continue
次回は、『式神を探して』もしくは、夏らしいものを書くかもしれません。それでは。 (案山子師)
ところでいつも思うんですが、このグレムリンの親子は結局その後どうなってるんでしょうね?ていうかメドーサでも燃え尽きた大気圏突入をどうやって戻ってきたのか
親は知りませんが子供は実体があるのにきっちり地表まで来てますし
いろいろほったらかしなままの話です (九尾)
原作でもグレムリンはもう少し出てもよさそうなのにあの一度きりです。もしかしたらひそかにオカルトGMが保護したのかも知れませんが。グレムリンにはもう少し活躍の場を持たしたいと思います。楽しみにしていてください。 (案山子師)
横島君が効かなかったとはいえ、ちゃんとした歌をうたったし・・・
さらに子グレムリンを連れ帰っても、放送機材にも被害がなかったし、また出番がありそうですし♪(横島君の使い魔になったりして)
面白かったですよ♪
九尾さんへ、おそらく、子グレムリンをつれているので、普通にそのまま降りたのではなく、重力をある程度、無視できるので、ゆっくり降りてきたのではないでしょうか?
そうすれば、摩擦がほとんどなく、理論上、安全に降りれるので・・・
(空気の薄いというか、ないところでも平気であれば・・・って、生まれたのが衛星軌道上だし、そこから降りていくのだから、大丈夫ですね・・・多分) (とろもろ)
なるべく原作とは違った道を探しているので、そういってもらえてうれしいです。
いやはやそれにしても毎回鋭いところをつっこんできますね、子グレムリンが横島の使い魔に・・・・・・なるかどうかはまだまだ、隠したい所ですがそれに近い道筋を辿るかも知れません。それでは、また次回もよろしくお願いします。 (案山子師)
ただ記憶封印された所為なのか二度目の人生なのに内面成長が見られない横島は悲しいです。
後、横島って何処かわからない場所に文殊をストック出来る能力が有った気がしますがそれは無しなんでしょうか。 (白川正)