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小さな恋のメロディ

GS横島 極楽逝き?大作戦 #3


投稿者名:高森遊佐
投稿日時:06/ 5/29




 ちょっとした散歩のつもりでねぐらにしている小屋から出ていただけだったのだ。
この山は気に入っている。人間はまず見かけないし自然は嫌いではない。
それにこの山には自分と同じようにはぐれ者の人外のモノがいた。はぐれ者同士あまり交流はないが嫌いなヤツではなかった。
しかしここ最近GS達がどこで知ったのか、この滅多に人間の立ち入ってこない山に住み着いた自分を退治しにやってきていた。
本来の自分なら殺して食べていただろうが今の自分はちょっと痛い目を見て帰ってもらうだけだ。
何年か前に会った人間の男に一方的に交わした誓い―――もう人間は食べない。
そんな種族としての根幹に関わる誓いを彼女は守り続けていた。
この山に住み着いたのも人間との接触がほぼ無いであろうからである。

「ダーリン…元気かねぇ」

ぽつりと呟いた彼女の声には若干の疲れが滲んでいた。
襲ってくるGS達を撃退するのは主に自分と行動を共にする小さな子供達だったが、やはり人間を食べない事や話も聞かずに襲われる事の気疲れが溜まっていたのだ。
ぼんやりといつもの散歩コースを巡り小屋に帰る。ここ最近の彼女の日常だった。
今日も散歩が終わり小屋に着き、戸に手をかけようとした瞬間―――

「おおおぉぉおおおおぉぉおぉっ!!」

小屋の中から飛び出して来た一人の男に襲われた。






 完全に不意を付いた。
薄暗い外から外に出た事で瞳孔が開き気味だった為に、相手の顔を一瞬認識するのが遅れたが有利な事には変わりない。
栄光の手を出力を弱めにしつつ相手の首に狙いを付け、襲い掛かる。

「おおおぉぉおおおおぉぉおぉっ!!」

威嚇と自分を奮い立たせる為に声を上げ後は腕を振り下ろすだけ、というところで相手の顔がようやく判別できる。
相手のその顔は―――ぽかんとしていた。
しかし顔を確認したその瞬間、横島の動きも止まる。

「………………」

「………………」

固まったままお互い無言で口をパクパクさせた二人だったが先に声を上げたのは女の方だった。

「ダ、ダーリン! 逢いたかったーっ!」

そのまま未だ固まったままの横島にタックルまがいの抱きつきをかました。
ずっと固まっていたままだった横島だったが抱きつかれたことによって豊かな胸の感触が伝わり、そこで正気に戻る。

「あぁ、懐かしいおっぱ……じゃなくて、お、おまえ、グーラー! こんなところで何やってんだよ。
 ってか今回の除霊対象ってお前のことか?」

「あぁん、そんなのどうだっていいじゃないか。そういえばあの時一緒にいた女達はどうしたんだい?」

「ん、まぁ、色々あってな」

じゃれついたまま上目遣いに聴いてくるグーラーに曖昧な答えを返しつつも、しっかりと胸の感触を堪能している辺り横島らしい。

 「あのー……」

「てことは二人っきり?! …ダーリンもう離さないよ」

「ておい! なんでそうなる」

 「もしもーし」

「またまたぁ、嬉しいくせに。照れるんじゃないよダーリンっ」

「そら嬉しい…っていやいやそうじゃなくてだな、と、とりあえず話をしようか」

「鼻血出しながら言っても説得力無いぞ。…でも照れるダーリンも可愛いっ」

 「無視ね? 無視なのね?」

目の前で繰り広げられるいちゃつきに呆れを感じながらも声をかけるが、完璧に無視されている助手。
横島は決して無視しようとしているわけではないのだが、口と意識とは裏腹押し付けられるに胸の感触に全てが優先される。
だらしなく鼻の下を伸ばす横島を見ていられなくなった助手は強硬手段を取ることにした。

チャキッ

このところ愛用している霊体ボウガンの安全装置を外した音が横島の耳にも聞こえたようだ。
赤かった顔が見る見る青ざめていくが助手の方を向いた時にはもう遅かった。

ヒュォッ

自分とグーラーの顔と顔の隙間を矢が走り抜ける。
隙間20センチあるか無いかの隙間を正確に狙う腕は無かったはずなのだが…。
そんな事が頭をよぎる。

「あぶないじゃない! 何なんだいこの娘はっ」

ようやく自分の方に意識が来たのが嬉しいのか助手が笑顔のまま言ってくる。

「いやぁ、ごめんなさいね。この子フェザータッチなもので」

「どノーマルの筈だったんだが…」

非常に物騒な改造を施されたボウガンを構えたまま、横島の目をまっすぐ見つめる助手の顔はといえば、

『なんだか知らないけど、無視されるのは嫌いなの。真面目にやるって約束したわよね?』

と目が語っていた。
因みに本人も気付いていないだろうが助手の不機嫌の理由は無視されている事だけでなく、僅かな嫉妬も混じっていた。
本気で怖くなった横島は今日の助手には逆らわない方がいい事を悟ったのか、ようやくグーラーを引き離し咳払いを一つした後とりあえず紹介を始めた。

「え、とな。コイツはグーラーっつって、まぁその通り食人鬼なんだが昔ちょっと色々あってな。
 今は人を襲わない…と思う。だよな?」

引き離されてもいつの間にか横島の腕にしがみ付いているグーラーは無言で頷くが思い出したように言葉を継いだ。

「あぁ、私からは襲わないけど襲われたらそりゃ手は出すよ。
 ここ最近はそういう機会が多くて嫌になっちまうけどね。でも殺しはしないよ。この子達にもやりすぎないようにさせてるしね」

この子達、と放置されてその辺に適当に散っているガルーダの雛達を見ながら言った。
穏やかだった口調が嫌な事を思い出し言葉に険が混じる。
それを察してかそうでなくか、ともかく横島は今度は助手の紹介を始めた。

「んでコイツは今俺独立して事務所開いてるんだけどな、それで助手をやってもらってる」

「…よろしく」

握手をするのは躊躇われたのか助手は軽く会釈をする。
グーラーはそんな助手の姿をじっと観察するように見ている。

(なんか、居心地悪い…)

「まぁ立ち話も何だし、中で話さないか? 正直俺達ヘトヘトなんだ」

助手の心中を知ってか知らずか一度話を切って小屋の方を向いた。
別にグーラーの小屋という訳では無いのだが一応グーラーに入る許可を求める。
さっきは勝手に入り込んでいたのだがそれはそれ。
当座の危険は無くなった為に忘れていた疲れが戻ってきていたのでとりあえず休みたかったのだ。

「あぁ、入りなよ。何もないけどね。それでも布団くらいはあるよ」

「ふ、布団…」

意味ありげな視線を送られ、なにやら想像し鼻血を噴きそうになっている横島の背中を矢の先端でチクチクと突っつく助手を、誰が攻められようか。





「――――つーわけで俺達がこの山に来たんだ」

出された茶を啜りながら自分達がこの山に来た理由を一通り説明した横島。
話をしている横島と、脇にべったりと寄り添ったグーラーを睨む助手の目が怖い。
当のグーラーは話を聞いているのか定かでは無かったが、時折相槌を入れているので一応意識の片隅には入っているらしい。

「……で、俺の話聞いてた?」

話し終わった所で不安になったのか横島がグーラーに尋ねる。

「もっちろんじゃないか。
 この山に巣食った魔族だかなんだかそれらしきモノから私を守りにって言うか寧ろ私を攫いに来てくれたんだろ?」

「微妙に違うっていうか何その期待に満ちた目は?!」

キラキラとまるで少女漫画の様に目に星を浮かべ、上目遣いに言ってくるグーラーに後ずさりしながらも一応突っ込みを入れておく。
助手はと言えば、怒りを通り越して顔に影を浮かべ「うふふふ」と怪しげな笑みを浮かべている。

「んまぁ冗談はさて置いて、その悪魔だかなんだかそれらしきモノってのは私の事だろうねぇ。半分は」

「冗談に見えなかったが……。ところで半分ってどういう事だ?」

「確かにちょっと痛い目を見てもらったのは私ってか雛達の仕業だけど、私はそれ以上の事はしてないからねぇ」

「んじゃ何か満たされてってのは何があったんだ?」

グーラーは悪戯心かどこかぼかした表現をする。
しかし横島はグーラーの言葉の裏には気付かない。悲しいかなまだこういう駆け引きには弱いのだ。
そんな横島を見かねたのか、いつの間にか素に戻っていた助手が口を開く。

「……私はって言いましたね。
 あなた以外の何者かがこの山にいるって事ですか? そしてあなたはその何者かを知っている」

「へぇ、お嬢ちゃん見た目によらず以外と賢いね」

「ど・う・も!」

「あれま、怖い怖い。嫌われちゃったかねぇ」

助手の中で一つの答えが出た。この女は敵だ、と。

「いや、やっぱりお前頭いいんだな。俺頭悪ぃからさ、助かるよ」

横島の一言はプイ、とグーラーから視線を外し、黒いオーラが出ていた助手の機嫌を少しだけ良くする効果はあったようだ。
この男は意識せずこういう事をしてくれる。助手は浮かびかけた笑みを隠すのに少しだけ苦労した。
視線をグーラーに戻し ―睨み気味ではあったが― 、話を続ける。

「それで。詳しく話して貰えますか?
 私も所長も仕事で来てるんです。あなたをどうこうするつもりはありませんが、依頼は依頼ですので」

「そうさねぇ、確かにこのままだとそのうち私や雛達にも手に負えないGSが来るかもしれないしねぇ。
 ……でもこの山も気に入ってるんだけどねぇ」

はっきりとしないグーラーの態度にまたも苛つきを覚え、顔をしかめる。
しかし何か吹っ切れたのか、横島の方を向き笑顔で口を開いた。

「所長。この際ばっさりすっぱり後腐れなくヤっちゃいましょう」

「マテ。何をヤる気だ」

「え? 勿論依頼を完遂する為の実力行使をですね……」

どうやって入れていたのかポシェットから様々な霊的凶器を取り出し、今にも助手は『仕事』を済ませようとしている。
正直もう色々と限界なのだろう。堪忍袋の尾とか。
助手にしてみれば目の前の女妖怪(実際は精霊の類だが)はストレスを溜める要因にしかなっていない。
依頼が山に住み着いた何者かを退治する事である上、いくら雇い主の知り合いとは言え遠慮する必要はこれっぽっちも無いのだ。
グーラーにしてみれば久々に楽しい時間を得られた為の、只のおふざけだったが。

「え〜、こわ〜い。ダーリンたすけてぇ」

だからこうしてシナを作って横島にしな垂れかかるのも悪気は無いのだ。
しかしお前誰だ、キャラが違うぞ、と突っ込みを入れようとする横島は聞いてしまった。
聞こえてはいけない、しかし本日二度目の何かが切れる音。

ぷつん

一瞬にして膨れ上がる本気の殺意に横島は腰を抜かす。
これから起こるであろう惨事を想像し、血の気が引くが逃げようとした時にはもう手遅れだった。
持たせた記憶の無い手榴弾型のいかにも爆発を起こしそうな何かを、助手が投げるのを見てしまったから。

ドッゴオオォォォォォン!!

小屋が跡形も無くなるのは数秒後の事だったという。






<続く>


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