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GS冥子?

残思


投稿者名:案山子師
投稿日時:06/ 5/22

「それじゃ〜〜横島君準備はいいわね〜〜〜」
 来月から親父は転勤でナルニアに飛ばされるらしい。だが、俺はそんなマイナー国に行くのなんて絶対いやだ! せっかく可愛い子と出会えたっていうのにこの幸運をやすやすと手放してなるものか――――――ッ!! 
もしかしたらこんな機会もう二度とあるかどうか分からないのだっ!!!


 六道家の敷地は広くひとつのテーマパークくらいあるのではないかと思えてくる。
 そんな中、六道婦人の後をついていくと古墳のような、祠のような場所にたどり着く。
 ドーム状の祠の前には鳥居が立っておりその先には石造りの扉。扉には巨大な目玉とその周囲を幾つもの文字が並んで描かれている。

 「いにしえより六道の者に伝わりし禁忌の地よ・・・! 試練のときは来た!! 扉を開きわが一族の者を試したまえ!!」

 印と言霊によって、それまで封印されていた修行場の重い石門が開いていく。

ガコォン!!

 「忠夫、本当にやるのね?」
 「やってやるさ!」
 覚悟は決まっている。どのみち日本に残るには、これくらいしないとうちの両親は説得できそうにない。
 「それじゃあ〜〜、横島君〜〜がんばってねぇ〜〜〜」
 「えっ! あああああああああああ「きゃあああああああああああああああああああっ!!」」
 六道婦人がどこからぶら下がっているのかわからない紐を引くと、それまで自分が立っていた床が崩れてまっさかさまに下へと落ちていった。
 「さあ〜〜、私たちは、外で待ちましょうか〜〜〜・・・・・・横島さん? どうかしましたか〜〜?」
 落ちていった深遠を見つめてぽっかりと口をあけたまま動こうとしない百合子。
「・・・六道さん? あなたの娘も一緒に落ちてきましたけどいいんですか?」
!?
「冥子〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」


 そのころ。
 「お母様の馬鹿〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
 横島の後方を落下していた。



ドッシ――――ン!!


 「イッテェ〜〜〜ぎゃふん!!」
 「キャァッ!!」
落下した横島の上に、降ってきた冥子は無傷だったようだが、横島は結構重症そうだった。
 「・・・なんで、冥子さんがここに?」
 「ううっ〜〜・・・・お母様が、間違って私も落としちゃったみたいなの〜〜〜」
 「だっ、大丈夫ですよ!(汗) 今回は俺の修行なんで冥子さんは、特に心配しなくても!?」
 今にも泣き出しそうな冥子を何とかなだめようとする。
 「本当に〜〜〜?」
 「はい(たぶん)!」
 「よかったの〜〜〜。それで〜〜ここでなにをするの〜〜〜?」
 「えっ!? 冥子さんこの試練のことしらないんですかっ!?」
 てっきり冥子さんもこの試練を受けたものと思っていたのに! まさかまだ受けていなかったとは!?
 「お母様は〜〜受けたことあるらしいんだけど〜〜どんなことしたのかぜんぜん話してくれないの〜〜〜」
 なにやら不安だが、とりあえず俺はこの試練を超えることだけを考えればいいんだ。
 ピクッ! 暗闇の中から微かに霊力を感じる。
「あら〜〜、ひさしぶりね〜〜〜。私は六道家初代で〜〜す」
暗闇からなんとも六道家らしい声が響いてきたかと思うと底には冥子さんにそっくりな女性が立っていた。
「でも〜〜やっぱり間抜けな顔してるわね〜〜〜」
着物姿で、黒い長髪の女性の霊。その人は冥子さんを指差してなにやら笑っていた。
ピキッ!
「とっ、とにかく修行を始めてくれ!」
ジーーーーッ
「え〜〜〜っ!? この子じゃなくて〜〜? あなたが受けるの〜〜〜」
「そっ、そう、そう。だから早く始めてくれ」
しばらく俺たちを交互に見比べてから彼女は、
「と〜〜くっに〜〜、もう修行は始まってるのよ〜〜あなたたち二人〜〜〜」
「え〜〜〜っ!! 冥子もやるの〜〜〜〜〜ッ!?」
「だって〜〜〜ここに空間に式神を持ち込んだ時点で勝手に修行は始まるの〜〜。下を見てみなさい〜〜〜」
そういって床の裏側を見てみるとそこには、冥子さんの12神将と、真ん中には俺の式神ヤタが床を持ち上げていた。
「ここの試練は〜〜、式神をコントロールしながら私の精神攻撃に耐えて上まで上がることなの〜〜」
「ちょっと待ってくれよ! 冥子さんは間違って入ってきたんだ! だから別に修行は」
「こればかりは私の力でもどうにもならないの〜〜がんばってね〜〜〜落ちたら二度と戻れないから〜〜〜」
 


「バアッ!!」
「ひぃいいい〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「!?」
 初代の声に驚いて冥子さんが動揺すると床が大きく振動する。

 「そ〜〜れ! そ〜〜れ!」
 「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 なにやら冷たい感触が皮膚に触れるが・・・・(こんにゃく!?)
 さらにこんにゃくに驚いた冥子さんに反応してさっきよりも激しく床が振動し始める。
 「冥子さん落ち着いてください! ただのこんにゃくですよ! ほら」
 そういって初代様が持っていた釣竿を取り上げて冥子さんの目の前でぶら下げてみせる。
 「ふぇ・・・・」
 ジーー とそれをにらみつけていたが、
 「な〜〜んだ〜〜〜〜 あ〜〜〜こわかった〜〜〜〜」
 「くっ!? 君、なかなかやりますわね〜〜っ! でも、これはどうかしら〜〜〜?」
 その後も紙風船や蛇の人形など分けのわからないものが出てきては、冥子さんが悲鳴をあげて、俺がそれをなだめるということが続いた。


 「あなた方やりますわね〜〜〜」
 さきほどから俺がまったく動揺しないのでそろそろネタが尽きてきたようだ。
 「このままですと〜〜、あなた達の修業も直に終わってしまいますね〜〜〜・・・・・・だから〜〜、あなた達にはいまから私の本気を受けてもらいます〜〜〜」
 ココは仮にも死の試練と呼ばれる場所なのだ。まさか本当にこんな子供だまし程度で修業が終わるとは思っていなかったが、

 「心に潜みし闇よ・・・! 姿を得てこのものたちの心を示せ!!」


 初代様の呪文と共に体から力が抜けていく・・・体の中で何かがうごめいてるようだ。
 ドサッ!! ×2
 「ふふ〜〜〜、あなた達の心のトラウマを引き出しました〜〜〜あなた達は自分の過去を乗り越えられますか〜〜〜」
 倒れた二人の前で怪しく笑う初代様が居た。


 冥子の心。


「ゆうちゃ〜ん〜〜〜♪ ななちゃ〜〜ん〜〜♪ 一緒にあそびましょ〜〜〜」
 幼稚園くらいの冥子が楽しいそうに同世代の女の子に駆け寄っていく。
「げッ! めっ! めいこちゃん!!」
 その姿を見て即座と冥子と正反対の方向へと逃げ出す女の子達。
 「どうしてにげるの〜〜〜」
 インダラに乗りながら追いかけてくる冥子に女の子たちは拒絶の言葉を投げかける。
 「こないでっ!!」
 「めいこちゃんといるとケガするのっ!!」
 「・・・どうして〜」

 「お嬢さん一緒にお茶でもどうですか」
 道端を歩いている冥子に茶髪の男性が話し掛けてくる。
 「お友達も一緒にいいですか〜〜〜?」
 「君みたいな綺麗な人のお友達なら大歓迎さ〜〜」
 おそらく男は、冥子を軽い気持ちでナンパしたのだろうが、
 「みんな〜〜出ておいで〜〜〜〜」
 冥子の呼び声に反応して影の中から式神たちが姿をあらわす。
 「さあ〜〜行きましょ〜〜〜」
 冥子の式神に腰を抜かした男は、言葉にならぬ声をあげる。
 「あっ・・え〜と、ごっ、ゴメンちょっと用事思い出したんだ!!!」
 そう言って地面をはいずりながら冥子の前から逃げ出していく。
 「・・・・」


 冥子の中で今まで出会った何人もの声が反芻する。
 『貴方と居ると怪我するの!』

 『少しは常識を見につけたら!』

 『その化け物たちを近づけるなッ!』

 『来ないでッ!!』

 (分からない・・・)

 『式神を封印します〜〜』

 (この子達が居なかったら)

 『貴方は一人〜〜 貴方を慕ってくれる人なんて誰もいないのよ〜〜』

 (ウソ)

 『今まで貴方に親しくしてくれた人が居た〜〜?』

 (・・・・・・)

 『貴方なんて居ないほうがみんなのためなのよ』
 
 (イヤ・・・わたしは〜、私はいい子にしているのにどうして〜〜)

 『貴方を必要としてくれる人なんていないのよ〜〜』

 (・・・いる―――――)
 『えっ!』

「横島クンは〜〜〜私のこと友達だっていってくれたもん〜〜〜!!!」

 『なっ! この子がッ』

 !? 
 「今のは〜〜〜?」
 「まさか〜〜貴方があの技を破るなんて〜〜」
 声の方を向くと初代六道が立っていた。
 「あなたの心にある最も触れられたくない部分を私の術で〜〜、貴方にみせたの〜〜」
 「そうだ〜〜! 横島クンは〜〜〜!?」
 冥子が振り返ったそこには、床に倒れ意識を失った横島が居た。
 「横島くん〜〜っ!?」
 「いくら叫んでもむだよ〜〜、この術は貴方と同じように自分の過去に打ち勝たないと永遠に目覚めないわ〜〜」
 「そんな〜〜ッ!? 横島クン〜〜起きて〜〜〜〜!?」
 「彼が居なくなったらあなたは〜〜また一人かな〜〜〜?」
 六道初代の言葉に冥子は体中から血の気が引いていくのを感じた・・・・・



 横島の心。


 「マ・・・ヨコシマ・・・」

 甦ってくる愛しい女性の姿、

 「ルシオラ・・・ルシオラなのかっ!?」
 
 「ごめんね。あなたにつらい思いさせて・・・・・」

 「なにいってるんだよ、俺は別に――――」

 「私はずっと貴方の中に居たからしっているよ――――ずっと一人で悩んでたよね」

 その言葉に何もいえなくなってしまう自分が居た。ルシオラのことは、乗り越えたはずなのに心の中ではずっと未練を残してしまっている。
 
 「もしかしたら、このまま忘れていたままのほうがよかったのかな・・・」

 六道初代の精神攻撃を受けたとき横島は全てを思い出した。
 美神のところで助手を始めたこと。心眼のおかげでGS資格を獲得したこと。永い氷の中に眠っていた巫女の少女をその呪縛から解き放ったこと。そして・・・・・、世界を救うために恋人を生き返らせる方法を自ら破壊したこと・・・最後に自らの存在を消すために時空生滅内服液をのんだこと―――――――――――――――。

 「私も考えてみたんだ。美神さんが、ヨコシマの前世を愛してたこと。でも、今の美神さんはかつての美神さんじゃなくて、ヨコシマも高島じゃなくて・・・美神さんは、メフィストとしてではなく美神令子として生きることを選んだ。私が、貴方の子供として生きたとしても前世の記憶が蘇ることは絶対にないし、ルシオラとして貴方と歩むことは出来ない」

 ルシオラが話したことは、かつて自分でも考えたことであった。
 魂の生滅を逃れたとしても新しい命には前世の記憶が宿ることは無い。深く魂に刻まれた記憶であっても生きていたときのように元通りにはならない。

 「あのとき私は、やっぱり死んだんだよ」
 「俺はッ! 俺はお前が死んだなんて思ったことはないッ!!」

 ヨコシマの言葉はうれしかった。どれだけ自分が彼に愛されていたのかを生きていたときよりも感じることが出来る。

 「ごめんね・・・」
 ルシオラは泣いていた。頬を涙でぬらしながらまっすぐにこちらに向けて手をかざして、

 「私のことは忘れて――――」
 「待てッ!! 俺はお前のことを忘れたくないっ!!」

 「あなたが何でこんなことになったのか分からない―――でも、この記憶を持っていればあなたはきっといつか出会う私に私を重ねてもう一度後悔にとらわれることになる」

 「俺は大丈夫だから! 二度とお前のことでッ!?」
 「ヨコシマはやさしすぎるよ―――これ以上私のことであなたにつらい思いはさせたくないの・・・・・」
 
 「ルシオラ――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!」


 ヨコシマの心の中に私は自ら鍵をかける。
 二度とヨコシマが悩まぬように、二度とヨコシマが苦しまぬように・・・・・あの人に幸せになってほしいから。

 (サヨナラ――――出来れば今度は、あなたに幸せを・・・・・・)

ルシオラは、自らの手で愛しい人の中から自分の記憶を消し去った。すでに変わりはじめた世界がヨコシマにとって救いの未来になってくれるよう願いながら・・・・。

(ヨコシマ・・・・・・)




「横島クン〜〜ッ!? 横島クン〜〜〜ッ!?」

「め・いこ・・さん・・?」

「良かったの〜〜〜〜!」
そう言って涙にぬれた顔で抱きついてくる冥子さん。
いつもなら、ものすごくうれしいシチュエーションなのだが、今の俺にはまったくその気は起らなかった。
 ふと自分の頬を触ってみると自分は泣いていたらしい。それに気づいた俺は、自分にすがり付いてなく女性を抱きしめた。
 !?
 「横島・・・クン〜・・・!?」
 いままで自分が何を考えていたのか思い出すことは出来ない。それでもいま自分をこんなにも慕ってくれるこのヒトを泣かしたくなかった。
 もう二度と悲しませることも、悲しむこともイヤだったから・・・・・・・・



「冥子〜〜〜っ!! 無事でよかったわ〜〜〜」
出口を出ると待ち構えていたかのように六道婦人が冥子さんに抱きついてきた。
「お母様〜〜〜っ」
冥子さんも幸せそうにそのまま六道夫人の腕の中に居た。そして、俺は・・・

「無事だったみたいね」
約束通り死の試練を超えることは出来た、おふくろもこれで俺が日本に残ることを許してくれるだろうが、
「おふくろっ! もう一度ここで頼む。俺が日本に残ることを許してくれ! 俺はどうしてもココにのこらなきゃならないんだッ!?」
なぜかといわれれば答えることは出来ない。それでも俺の心はどうしてもここに残らなければならないと叫んでいた。
 土下座して頼み込む―――。

「・・・・・ふっ、なかなか男前の顔になったじゃないか」
!?
「何があったか知らないけど、あんたがココに残りたい理由が中途半端な理由じゃないことは顔を見ればわかるよ」
 「じゃっ!? じゃあ俺日本に残ってもいいのか」
 驚きの声を上げる俺に、おふくろは優しく笑いながら言ってくれた。
 「やるからには本気でやりなっ! もしちょっとでも適当なことしたら直にひっぱってくからねッ!?」
 「ありがと〜〜〜ッ!!!」

 「横島クン〜〜〜、良かったの〜〜〜〜♪」
 自分のことのように無邪気に喜んでくれる冥子さん。
 「六道さん。これからもウチの息子のことを頼みます」
 そう言って俺の頭を下げながら自分も頭を下げる。
 「こちらこそ〜〜。横島クンは私が責任をもって預かります〜〜〜」
 
 「冥子ちゃんもこの馬鹿息子のことよろしくね」
 「こちらこそ〜〜」
 「じゃあ〜〜私もお義母様にご挨拶しないとねぇ〜〜〜」

 「「「初代六道様」〜〜〜」〜〜」

 その声は、死の試練場の中に居た初代六道様だった。
 「初代様〜〜っ! どうして外に〜〜っ!?」
 六道婦人の問いに初代様は無邪気に答えた。
 「だって〜〜私もあんな場所にずっと居るのあきたんですもの〜〜〜、それに〜彼に興味あるし〜〜たまには外に出てくるのもわるくないかな〜〜って〜〜〜」
 そういって俺に近づいてくる初代様。

「私は六道冥夜っていうの〜〜、というわけでよろしくね〜〜」


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