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GS横島 剣客浪漫譚

状況開始はたった今!!


投稿者名:いぷしろん
投稿日時:06/ 5/21

 GS横島 剣客浪漫譚(1) 〜状況開始はたった今!!〜





 唐突だが、今俺はヒジョーにピンチで檄ヤバだったりする。どのぐらいヤバいかと言うと、簀巻きにされて転がされてる事務所の床が冷たいです、ってくらい。っつうか身動きとれねー!
 しかもだ。美神さんがひっじょーにヤバ気なオーラを身に纏って微笑んでいたり(でも目は笑っていない)、おキヌちゃんがついぞ見た事のないよーな黒い微笑と共に包丁を研いでいたり(幽霊時代以来だ)、シロは近付けば噛む! とばかりに尻尾を立てて唸っているし(でもちょっと可愛いかも)、タマモはタマモで子狐バージョンで知らん顔を決め込んでいるし。ってお前は無関係じゃねーだろーがっ!
 まぁ、あれだ。俗に言う修羅場って奴ですか。ええ、この場にいるだけで寿命が物凄い勢いで減っていくぜコンチクショー!
 でもそんな内心はおくびにも出さずに冷や汗をリットル単位で流しながら死刑判決を待っている俺。あぁ、今俺はモーレツにかっこ悪い。いやまぁ、命と引き換えにかっこ良くもなりとうは無いが。というかその前に簀巻きをどうにかしてほしい。

「さて、何か申し開きはあるかしら? 横島クン?」
「いやー、はっはっは。ナンノコトデセウカ?」
「とぼけるのは良くないでござるよ、先生。なんでタマモの身体に先生の匂いが染み付いているのか、ちゃんと説明してくだされ」
「人狼族の嗅覚ってとっても敏感なんですってね。前から知ってたけど、今回の事でよ〜く身に染みて分かったわ」

 あうあうあうあう……。しまった、迂闊だったー!
 タマモはシロと一緒に住んでんだから何かイタしたら一発でバレるよなそりゃあ。タマモもそっぽ向いてないで何とか言えー!

「うふふ……。何かこう、刃物を研いでいると心まで研ぎ澄まされていくよーですね」

 あ、あれは……! 妖包丁シメサバ丸改!? な、ななななんちゅーもんを持ち出しておらるるかおキヌちゃんー!

「タマモはねぇ、いちおーは私の保護観察下にあるのよ。そこんところ分かってるわよね?」
「は、はい! それはもう十分に承知しているであります、サー!」
「そのタマモに何かあったら、責任はこの私がとなきゃいけないの。わ・た・し・が。まして、妊娠するの子供が出来たのってなると、ママに何言われるか分かったもんじゃないでしょーがっ! あぁっ、またこれを口実にタダ同然の仕事を手伝わされるハメに……!」
「ちょ、ちょっと待ったーっ! に、妊娠ってどういうこっちゃねん?!」
「う……、それはその……。あたしって、一応今発情期真っ最中なのよね……。あんまり意識的には出ない――というか出さないように努力してるんだけど、その分体の方に反応が出ちゃうから……」

 そ、そーいや酒に酔った勢いでイタしちゃったもんだから避妊なんて考えてなかったか。……っていうかそこら辺の事もあんまり覚えてないんだよなぁ。もったいない。

「……もったいない、じゃないでしょーがっ!!」

 ああっ! ちょっと待って! そのヤバ気に発光してる神通棍でしばくのはやめ――

「いっぺん極楽まで行ってこいーっ!!」

 うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……





   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※





「――ぁぁぁぁ!!」

 ガバァッ! と跳ね起き、まず確認するのは自分の体がちゃんとあるかどうかだ。
 右腕おっけー、左腕おっけー、両足もちゃんと付いてるし、両目とも見えてるし首も曲がるし関節が増えたり外れたりも無い。
 あぁ、五体満足って最高っっ!!

「あー、死ぬかと思った……」

 ほっと一息をつきながら布団から起き上がって――

「……ん? 布団? もしかして夢オチ?」

 周囲を確認してみると、実に雑然とした散らかり放題の部屋と寝起きにふっ飛ばしたらしい掛け布団が見える。ぶっ壊れるまでは使い続けちゃる、と意地になって使い続けている時代遅れのラジカセ(マヂでラジオとカセットテープしか使えない。えらい不便)と、これまた時代遅れのテレビもあって、その横にはハンガーに掛かった学ランとカレンダーが……。
 ん? 学ラン? 高校なんぞとっくの昔に卒業しただろ、俺。

「っていうか、そもそもこの散らかり具合はハンパじゃないぞ。最近は結構マメに片付けてたはずなんだけどな」

 首を捻りながら立ち上がり、とりあえず床に散らばってるゴミをゴミ箱に放り込む。ついでにカレンダーの日付にチェックを入れようと近付いたところで、思わず身体が硬直する。
 手に持ったペンを落としてアゴも落として、俺はその1992年のカレンダーをぼーぜんと眺めるのだった。

「の、の、の、のっぴょっぴょーん!?」
「やっかまし!! 静かにせ!!」

 こ、この独特のなまりは一時期隣に住んでた三浪生か!? カレンダーの日付け的にはそりゃあ居てもおかしくないけど、それじゃあ隣の小鳩ちゃんちはどーなってんだ? あーもう何がどうなってるんだか訳わかんねぇぞこのやろー!!

「はっ! そうだ、これは夢だ! 夢に違いない! そうと分かれば文珠で目覚めるまでよっ!」

 うわっはっは! 俺ってば頭いー!
 そうと決まればさくっと文珠出してさくっと「覚」めちゃいますか。

「はぁぁぁぁー! 出でよ文珠!」


                   しーん……


「……いや、しーん、やないって。もう一回、出でよ文珠!」


                 ステポテチーン……


「うおぉぉ……。出ん。っつうか一時期の出そうで出なくて暴発するパターンの気配すらねぇ……」

 マズイマズイマズイマズイ! そりゃあパピリオに会いに行くついでにハヌマンとか小竜姫様に鍛えてもらったり――ていうか強制修行させられたりもしてるけど、俺の除霊って基本は文珠使用前提だぞおい。除霊ができない→仕事の時に役に立たない→美神さんにボコられるの音速コンボがどーしても脳裏に浮かんでくる。
 ……まさかサイキックソーサーとかハンズオブグローリーも使えなくなってんじゃねぇだろーな?!

「お、ソーサーも霊波刀も何とか……。出力はかなり落ちてるっぽいけど、まー使えない事は無いか」

 まぁ、文珠が出そうに無い感触的には、今の俺の霊力って霊能力の「れ」の字も無かった頃と同じくらいってとこだろうからなぁ。この二つが使えるだけでも御の字か。でもなんで使えるんだ?

「そうか! これは夢なんだな?! そこら辺はご都合主義万歳って事なんだな!?」

 そうそう、これは夢だからそういうのは気にしなくていいって事さ。HAHAHA!

「……で、どうすっかな。今の俺の状態からすると、これってテレビとかで良くやってた『明晰夢』ってやつだよな。そう、そうに違いない!」

 えーっと、確か自分が夢を見ていると認識できれば、夢の内容を自由自在に変えられるとなんとか。

「おぉ、すると今この世界は全て俺の意のままに?! 美女がいっぱいのプールにタキシード着て飛び込んでもみくちゃにされたり全裸美女で満員の日本武道館でもみくちゃにされながら『ジョニー・B・グッド』を歌う事だって可能なのでわ?!」

 すげぇ! すげぇぞ俺! これで漢の夢が叶う!

「そう、こうして目を閉じて妄想するだけでいい。目を開ければ、そこにはパラダイスが! さぁ、レッツダイブ!」

 行くぜ、まだ見ぬ俺の美女達よっっ!


                    ゴン!!



                  ズリズリズリ……



「あううう……」

 あぁ……、俺の美女達が……、プールが……。





   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※





 で、部屋の柱に思いっきりドタマぶつけてから約一時間。とりあえず、俺の状況は変わっちゃいなかった。ああ、一つだけ訂正。夢に生きるという現実逃避プランだけは却下されますた。

「おっかしいよな……。どーやら夢じゃないっぽいのは理解したとして、何がどーなってんのかさっぱり分かんないんだよなぁ」

 美神さんの時間移動に巻き込まれたかとも思ったけど、それだと意識を取り戻した時に美神さんが居なかった理由が分からない。第一、この時期のこの時間帯なら俺は部屋にいるはずで、美神さんがこの時代の俺を外に連れ出したとか、そういう理由が無ければ俺は過去の俺とごたいめ〜んな状況なはずで。
 そしてそれ以上に、自分の体の感じがどーも高校生の時と同じなんだよなぁ。俺の体って、もうちょい鍛えてあった――いや違う、鍛えさせられていたはずなんだけど。
 ……となると、意識というか魂というか、そういった部分だけ時間移動したと考えるのが妥当かな。そう考えると、美神さんか隊長が関わっている可能性がかなり低くなるんだけど。
 なにせ美神さんも隊長も、能力を使う時は身体ごと移動してるもんな。自分が居る未来や過去に移動した場合は、その「未来や過去の自分」と会う可能性もある。れーこちゃんと美神さんなんてその最たる例だし、隊長だって「未来の自分」と会わないように苦心してたみたいだし。あ、逆だっけ? 未来の隊長が過去の隊長に会わないように注意してたんだっけ?
 あー、まぁ、とりあえず、そういう事だ。
 でも、やっぱりおかしい。何がおかしいって、俺の記憶が結構イイい感じでごっそり抜け落ちてる所なんか物凄くヤバい気がする。それも、一日二日どころじゃなくて、向こう一週間分くらい。……思い出せる限り最後の記憶がクリスマス辺りって事は、どーせ酔い潰れたか何かで記憶飛んでるだけだろーし、年末年始は完全オフだったから特に変な事もしてないとは思うんだけどなぁ。
 まぁ、思い出せんもんは仕方が無い。経過はともかく、過去に飛ばされたっぽいっていう結果は分かった。もしかしたらSFばりに平行宇宙でした、なんてオチかもしれないけどな。

「だいぶ前に唐巣のおっさんも言ってたけど、この世界って結構何でもありだからなー……。ま、とりあえず文珠が無い事には俺じゃどうしようもないか。美神さんの能力で戻るのは宝くじで一等前後賞を十回連続取るより難しそうだし……」

 その点、隊長なら何とかなりそうなもんだけど、隊長出てくるの相当先だしな。
 ……それに、この状況はある意味チャンスだ。

「ルシオラ……。お前を、助けられるかもしれないんだよな」

 時間移動してるなんて、記憶がちょっとぶっ飛んでるなんて、そんな事はこの際どーでもいい。何度夢見ても不可能だった状況が、たなぼたで手に入ったんだ。
 なら、俺のやる事なんて決まってる。事ある毎に俺にちょっかいをかけてきた修行馬鹿二人(某ダテ・ザ・キラーと某ゲーム猿だ)にだって感謝感激雨あられだ。アシュタロスはどーにもならんかもしれんが、メドーサやべスパくらいなら何とか相手にできる、……はず。いや、してみせる!

「うっしゃあっ!」

 よし、そうと決めれば気合入れていくかっ!

 ……いやまぁ、行くって言ってもとりあえず事務所行くなり何なりして現状把握しなきゃ話にならないんだけど、さ。





   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※





――シャングリラビル5F 美神令子除霊事務所


 という訳でやってまいりました旧事務所。メドーサに火角結界で吹っ飛ばされて以来だからえらい久しぶりに見るな。うーん、何と言うかこう、懐かしいような新鮮なような。ま、とりあえず挨拶っと。

「ちわーっす」

 あれ? 返事が無いなぁ。鍵は開いてたから誰か居るはずなんだけど。っていうか、絶対におキヌちゃんは居るはず。だって幽霊だし、まだ。

「おーい、おキヌちゃんどこ行ったん、だ……」


                しゃーこしゃーこしゃーこ……


「うふふふふふ……」

 こ、怖っ! 滅茶苦茶怖っ! 包丁研ぎながら笑うのはやめれ、おキヌちゃん。さっきの夢とか思い出して心臓止まりそうになるからさ。

「おはよー、おキヌちゃん……」
「あ、横島さん。おはよーございます」
「なぁおキヌちゃん、包丁研ぐななんて言わないけどさ、研ぎながら笑うのだけはちょっと勘弁してくれないかな」
「……? 私って笑ってました?」

 無自覚やったんかい……。

「いや、別にいいや……。そう言えば美神さんは?」
「美神さんなら散歩に行きましたよ。今回の除霊はちょっとやっかいだから、精神統一が必要だって言ってました」
「ふーん。なら美神さんが帰って来るのを待つとしますか」

 とりあえず、応接室に行くか。


                しゃーこしゃーこしゃーこ……


「うふふふふふ……」

 ……しっかし、前も思ったけどやっぱり常人とは感覚違うよな、あれ。生き返ってからは見た事が無いし、あれって幽霊特有の癖みたいなもんか? ……だとすれば嫌過ぎる癖だけど。

『近う寄れ……!』
「ん?」

 お、この箱とこの声はまさか……!?

『少年よ……! 拙者を手に取るのだ!』

 よ、妖刀シメサバ丸……!? さっき夢で見たばっかだってのに、今度は刀バージョンの奴とご対面かよ。

「あぁっ! 分かっちゃいるけど身体が止まらん……!」
『くくく……!』

 このままだとまた神通棍で思いっきりシバかれる。それは勘弁してほしいぞ。
 そ、そうだ! 説得、説得すればいいやないか! 

「止めといた方がいいぞー。このまま封印解いても祓われるだけだぞー」
『何故そう言いきれる? 拙者の力をもってすれば並みの霊能力者では相手にもならぬのだぞ』

 は、箱開けてしもうた。中には袱紗に包まれた刀が……。説得間に合うか?!

「美神さんは並みを遥かに越えてるからなぁ。しかも執念深いし遠慮なく反則技使うし。分が悪いぞ?」
『…………。だとしても、拙者に選択の余地はござらぬよ。座して祓われるのを待つよりは、せいぜい抵抗して斬って斬って斬り倒すのみ。むしろ、斬る。今宵の拙者は血に飢えておるぞ』
「今は昼だっつーの! って、そんな事はどーでもいい!」

 まーずーいー。袱紗から刀出しちゃったって。後は鞘からシメサバ丸抜いたら終わりやないか。

「ちょ、タイム! 待て待て待て待て! 取引といこうや。あんたは別に人が斬りたい訳や無いんやろ? な、な!」
『何を言うておる。巻き藁や死体なんぞ斬っても面白くともなんともないではないか。やはり歯応えのある者を斬らんとな』

 くっくっく、と笑うその声に俺は手応えを感じた。いける、これならいける。

「ならあれだ。俺と組まないか? 人間は斬らせてやれないかもしれないけど、悪霊なら基本的に斬り放題だぞ」
『人は斬れんのか?』
「そこら辺は除霊されない安全性と引き換えって事でどうだ。悪い話じゃないだろ?」

 お、考えてる考えてる。これなら何とかなりそう。

『……お主の話を信ずる根拠は?』
「いい腕の剣士はいい刀を求める。いつの時代だって同じ事だろう?」

 ……ふっ、決まったぜ。いい腕の剣士はいい刀を求める――俺ってカッコイイっ!

『剣士、のぅ……。とてもそうは見えんが』
「事情があって最近鍛錬を積めなかったから身体が鈍ってるんだよ。こう見えても、一応野太刀自顕流の使い手だぞ」

 ちなみに、これは本当の話だ。霊波刀を扱う以上剣術を覚えた方が良かろうとか何とか言われてハヌマンに叩き込まれたからな。
 ……あの地獄のような鍛錬は今でも思い出すと怖気がする。例えば、当時行っていた鍛錬の一つが地面に立てた棒を千本連続でぶった斬るってやつだったりとか。しかも、一発一発全身全霊の力を込めて斬らなきゃいけない。いくら向こうが動かない的だからって、延々とぐるぐる円周を回りながら斬撃の動作を繰り返すのはさすがにしんどい。それやった後で組み手なんぞやらされた日には、もう一歩も動けなくなってたからなぁ。

『ほう、顔に似合わず豪気な剣を振るうな。だが、幕末の頃に一番相手にして恐ろしかったのはああいう剣の使い手だった……。拙者も、幾人の倒幕派を斬ったものか。くくく、今にして思えばいい時代じゃったな』

 って、気付いたらシメサバ丸取り出して構えてるしーっ?! い、いつの間に……。
 でも何かこう、しっくりと手に馴染むというか、意外にコイツって名刀だったのか?

『なんだ、意外そうな顔をしおって。今でこそ祓われるの祓われないのと言われておるが、昔は本物の人斬り刀として引く手数多だったのだぞ』
「名前はシメサバ丸なんてふざけた名前だけどな」
『うるさい。拙者に名前を選ぶ権利なんぞ無いからな、仕方なかろう』

 あ、こいつも実は気にしてたんだ。ふーん、そういうの気にしなさそうな奴なんだけどなぁ。まぁ、前はそんな事を気にする間もなかったんだけどさ。

「シメサバ丸……! 封印しておいたはずなのに!?」
「あ、おはよーございます、美神さん」
「……って、何であんたは平気そうにしてるのよ? 依頼人の話じゃ、シメサバ丸をもった人間は例外なく身体の制御を乗っ取られて人斬りと化すって聞いてたのに」
『拙者はこやつを使い手と認めた故にな。聞けば、人は斬れずとも悪霊や悪魔の類は斬れると言うではないか。それならば、拙者にとって祓われる危険を承知で人を斬るよりも得るものが大きいと判断したまでよ』
「その話、信用できないわ」

 さすがは美神さん、用心深いな。……金が絡まなければだけど。

『信用できぬというならばそれも結構。拙者はこの場でお主を斬り飛ばすまでよ。野太刀自顕流の一太刀、そなたは果たして躱せるかな?』

 まー、美神さんには無理だろうな。美神さんはGSで剣客じゃないからなぁ。それこそ、人狼の里に居るような奴らでも連れて来ないとマトモに斬り結べないはずだ。

「ん? ちょっと待て、その話を聞いてると俺がお前を使って美神さんを斬るように聞こえるんだけど?」
『違うのか? お主と拙者は運命共同体だと思っておったのだが』
「横島クン、ちょっっと聞いてもいいかしら?」

 あ、ヤバ……。あれはかなり頭にきてる顔だ。

「い、イエッサー!」
「丁稚の分際で私に反旗を翻そうだなんて、随分といい度胸をしてるじゃない。返答次第じゃタダじゃおかないわよ?」
「めめめめ、滅相もございませんお代官様」
「誰がお代官様よ!」
「あうちっ!」

 神通棍で思いっきりドタマをシバかれた……。うぅ、どっちにしろこういう展開なのね。

「はぁ……。とりあえず横島クンがマトモなのは分かったけど、どーするのよ、コレ」
「自分で使おうかなー、と。これ持ってたら美神さんの手伝いが出来るかどうかはともかく、自衛できますし。ザコい悪霊くらいならぶった斬れますよ」
『拙者を嘗めるでないぞ。使い手の技量さえ優れておれば、鬼神といえども叩き斬って見せよう』

 えらい自信やなー。前は強化セラミックボディアーマーの前に敗れ去ったくせに。まぁ、ハーピーだって貫けなかった一品だから仕方ないっちゃ仕方ないけど。
 ……いや待てよ、あの時って確か俺の身体を操ってたはずだから、もしかするとその分の霊力を攻撃に回せばもっとデカイ攻撃力が引き出せるんじゃ……。
 ……おぉ、意外と凄いな、シメサバ丸。

「はぁ……。まぁでも考えようによっては経費削減に繋がる訳だし、何かあったら横島クンごとシバキ倒せば済む話よね……」

 それはつまり、時給255円で俺を扱き使う事で除霊に使うお札の値段を浮かそうと考えてる訳だよな。
 ……前の経験から理解してたけど、文珠が使える事が分かったらやっぱりまた扱き使われるんだろうなぁ。あぁ、分かっていても逆らえない自分の体質が恨めしい。

「オーケー、こっちにとっても利益のある話だし、あなた達の提案を受け入れましょう。ただし、何か悪さでもしようものなら即刻除霊するからそのつもりでいる事。いいわね? 特に横島クン」
『よかろう』
「分かってますよ」

 何はともあれ、これから頑張りますか! 先行きはそーぜつに不透明だけど。



〜続く〜


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