椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

再会−アフター


投稿者名:核砂糖
投稿日時:06/ 3/18


西条が醜く削り取られた車のボディーを指でなぞり、「修理代・・・」と呟きながら、とりあえず世界的指名手配の悪魔を発見したと言う連絡をオカGに入れている頃。

老紳士の変装を解いた横島、老女の変装を解いたシロ、そして若い娘の変装を解いたタマモは、町の上をステルス飛行しながら、その場を離れていた。
オッサンと若い女性がすべるように空を横切ってゆく・・・。もちろんその姿は誰にも見えていないのではあるが、もし見えていたとしたら一発で都市伝説の出来上がりだ。


「・・・にしてもおキヌちゃん、何で解かったんだ?お前ら幻術手ぇ抜いたのか?」

「え・・・そんなつもりは無かったんでござるが・・・」

横島に言われて、ぽりぽりと頬を掻き、自らの術をどうかけたか思い出すシロ。しかし、その大事な作業をなおざりにしたような覚えは無い。ってゆーか文珠を使ったので、そんじょそこらの幻術よりずっと高度だ。

「私たちに非はないわよ。どんなに上手く化けたって、ばれるときにはばれちゃう物なの」

首を捻る彼女らに、タマモは「分かってないわねぇ」と、頭の足りないおバカさんを諭すように言う。

「親しい者とか親交のある相手だと、相手は何かを感じ取っちゃうみたい。
臭いセリフだけど、『心』ってそう簡単に誤魔化す事が出来る物じゃないのよ。しかもオキヌってばああ見えて勘が良いから・・・。女の勘って奴かしら?

・・・それとあんたの記憶操作が緩んでるのも『心』が関係してるんじゃない?オキヌはヨコシマに好意を持ってたのかも」

「そ、そうか・・・」
そんなことを言われて、少し照れる横島。
まだ平和だった黄金時代。その頃から何となく「おっ、こりゃまんざらじゃないなぁ」的なことは感じ取っていたが、こうはっきりと他人から言われればこっぱずかしい。

でへっと頬を緩める横島にシロは眉を釣り上げた。
「・・・しかし、急に誰かさんが『久しぶりにおキヌちゃんの顔がみたい』などと言い出すから、拙者達の居場所がばれてしまったでござる。
あ〜あ・・・。もう日本には居られんでござるな」
どうやら機嫌を損ねたらしい。

臍を曲げてしまったシロを、どうしたら良いのか分からないうぶな横島。
数少ないボキャブラリーを総動員して妻の機嫌をとろうとしながら、「あ〜次はヨーロッパでも行こうかなぁ」なんて事を考えていた。












・・・そして、気付いた。





「・・・あ〜。うん。タマモの言う通りだな。

確かに、分かるわ」

「どうしたのでござるか?」

突然訳のわからないことを口走った横島に、傍らのシロが声をかける。

「後方やや右方向。あんた犬神族でしょ?何で分かんないのよ・・・。(私も言われるまで気付かなかったけど・・・)
最近ノロケ過ぎて脳みそピンボケた?」

「な、何を・・・。っ!この気配は・・・」
メタクソ言われて怒りを覚えつつも、言われた方向へ意識を向けたシロは、その正体を知って思わず顔を険しくゆがめた。

動揺を隠し切れていない彼女を、横島は優しく諭す。

「おいおい、気付かれるなよ?
このまま気付いていないふりを続けよう。


・・・にしても随分と急なご登場だなぁ。

その上よりによって・・・」







あいつらとはなぁ・・・。









一方その頃。お留守番組のカオス達は・・・・



薄暗いどこぞやの地下施設。現在横島たちが潜伏しているその場所に、「一つのオブジェか何かですか?」と問いたくなるような巨大なコンピューターが、数え切れないような色とりどりの配線をめぐらして、でんと大きな存在感を放っていた。

それを操るはヨーロッパの魔王ドクターカオス。
助手のアンドロイドと共に、今日も何やらマッドでハッスルでウハウハしていた。


「今じゃマリア。術式ジャマーを発動しろ!!!」

「イエス・ドクターカオス」

ガシャコン・・・・・・バリバリバリバリバリ!!!


彼らの掛け声と共に発動した不思議な機械が紫電を放ち、薄暗い部屋が明るく光る。

そして先ほどから超人的な勢いでキーボード上を舞っていたカオスの指は更にギアを変え、速度を増した。
全ての指が生きているように見える・・・。


「ふははははは・・・。もう少しじゃ、もう少しじゃ!

失敗する事132回。じゃがついに成功するぞ・・・。神族過激派が十数年前からコソコソやっていた秘密ファイルへのハッキングが!!!」

うけけけけけけけけっ!!!

さも嬉しそうに高笑いを上げるドクターカオス。
今まで幾度のように挑戦を続けていた神界の極秘情報へのハッキングは、未だに失敗続きだったらしい。
足跡こそ残さなかったものの、カオスはどうしても最後の難関『呪い防壁』を破る事が出来ずに失敗を重ねてきたのだ。
しかし彼は諦めなかった。マッドサイエンティストたるもの、一度火がついたら最後、終りまで暴走するのが当然かつポリシーって奴である。
かつて、横島の為に行っていた情報収集は、今では彼の趣味と挑戦にもなっていたらしい・・・。

「さあ、これで仕上げじゃ!!」

最後に、また一層複雑な動きをするカオスの指。その指が全ての仕事を終え、トドメのエンターキーを叩き込んだ。

「どうじゃっ!?」

肩で息をしながら、じっとモニターを睨みつけるドクターカオス。

やれる事は全てやった。
これでダメならばもはやどうやっても無理だろう。

全てを費やした挑戦は、今まさに結果を出そうとしていた・・・!


















数秒後。

アジトから火達磨になったカオス達が飛び出し、その直後地下施設は大きなきのこ雲を上げ、爆炎の中へと消えていった・・・・。













「よー小僧。どうだった?久しぶりの再開は」

「・・・何があったカオス?そんなミディアムレアになっちまって・・・。しかも隠れ家が消滅してるし!?」

「色々・あったのです」

「マ、マリア殿まで真っ黒でござるな・・・」

「うわー。なんか敵側で出てきそうね。『ブラックマリア』とか『マリアマークU』・・・みたいな感じで」


爆発からしばらくして、黒焦げのカオスたちのもとに横島たち一行が到着した。
そして何気ない会話をつむいでいく。


「いやー神族過激派の秘密ファイルに性懲りも無くアクセスしようとしておってな。何とか防壁破りには成功したんじゃが、その直後にこちらの機器が耐え切れなくなって爆発してしまったんじゃよ。

じゃがホラこの通り。その一瞬でファイルの中身のバックアップに成功!!」

自慢げにキラキラと光るディスクを掲げ、ススまみれの顔でにかっと笑うデンジャラスなじーさん。

「そのディスク代償が俺達の隠れ家か・・・はた迷惑な事極まりないけどとりあえずごくろうさん。



ところで、お疲れの所申し訳ないが・・・






――――時は満ちた」





「!!」

それは横島たちの間で取り決められていた一つの合言葉。

そしてこれが意味する事は・・・

























「戦術的撤退――――!!!」

「マリア、オプションパーツ装着じゃ!!」


幾つかの文珠を使用し、超高速移動が可能になった横島はシロ、そしてタマモを抱え込むとギャンッ!と風を切る音を残して空に飛び立った。

そしてワンテンポ遅れ、最終兵器名彼女なウイングを生やしたマリアと、それにしがみつくカオスが横島たちを追った。




・・・見事なまでの逃走だった。







え、ちょっと待てよ。『時は満ちた』つったらフツーは最終決戦かなんかだろーが!!


ってなノリで、息を潜めていた刺客達は・・・本格的に動き出す。
















キーーーーーン!!


想像を絶するスピードで空を翔ける横島達。
行き先は分からない。つーか当てが無い。
その事を案じたカオスは隣を飛ぶ横島に声をかけた。

「小僧ー!これからどうするんじゃー!?」

「ハァーー?何だってー?」


・・・高速移動中ゆえ声が通らなかった。


しょうがないので、彼らは文珠を使いダイレクトに念話を楽しむ事にした。


『で、どうするんじゃ。これから』

『う〜む。実はどうしようもないんだなこれが』

『・・・本当ね。完全に付けられているわ』

『これだけの隠匿術と高速移動でも振り切れていないのでござるか?』

『ああ、何しろ敵は・・・・・・つっ!!??』







突然、横島は急激なスピードで進行方向を変えた。

むちゃくちゃなGが小脇に抱えたシロ達を襲い、思わず悲鳴が上がる。
「ぐっ!」
「きゃぁ!いきなり何すん・・・・・うおぉっ!?」


文句を言おうとするタマモ。しかし直後にその鼻先を巨大な霊波砲が掠め、思わず乙女らしからぬ言葉を漏らした。

そして皆が霊波砲の飛来してきた方向を振り返るとそこには・・・





「くくくく・・・・。今まで散々逃げ回ってくれたなぁ。

だがっ!今日こそ逃がさないぜっ!!


覚悟しやがれっ!魔人ヨコシマァァァァァッ!!!」

「ゆ、雪ノ丞さん一人で先走らないで下さいよ!」

「皆さん!互いにチカラを合わせないと魔人には勝てないとあれほど言ったでしょう!!」





雪ノ丞、ピート、小竜姫の三人・・・







「う〜。皆、置いていかないでつかーサイ!!」

・・・と遅れてやってきたタイガーが居たのだった。








できる筈の無い追跡。それができたという事はそれを可能にする唯一の手段を、彼等が持っているという事になる。

それは、

「くっそ、やべぇな。予測していた事態だが敵は・・・・






文珠使いだ」

横島は、忌々しげに歯噛みした。





文珠使いが現れた以上。もはや横島達は逃げ続ける事はできない。


それは、横島、シロ、タマモ、マリア、カオス達のささやかな生活の、終りを意味しているのであった・・・。


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