椎名作品二次創作小説投稿広場


GS六道親子 天国大作戦!

GSのお仕事! 後編


投稿者名:Tりりぃ
投稿日時:06/ 3/13




横島は只今非常に恥ずかしかった。
彼だって一般常識は心得ている。GSのお仕事をしていて今まで後ろ指をさされたことはナイ。(セクハラ時は除く)
なのに……今また新たに現実を口にする者がいた。

「母ちゃん、あの人たち、なんであんなテレビのクイズ番組みたいなコトしてるの〜?」
「ミキオ、指差しちゃいけません。放ってあげなさい。お兄ちゃんも恥ずかしがってるでしょ?」
「うん、そうだね」

そそくさと去る親子連れに横島は滝の様に涙を流す。世に稀なる恥ずかし涙だ。

今横島と鬼道は、頭に紙製ハット、右胸にはお互い1と2とナンバーの入ったプレートがとめられ、
机にはなぜかマイクと左の方にはボタンがあり、厚紙が何枚かと油性ペンが置かれていた。
まさに、クイズ番組の解答席の仕様だ。
そして、これをやっている場所が問題だ。件の調査物件の前のちょっと広い公道でやっているのだ。

「じゃぁ〜、質問で〜す。このビルにはどこに何体の〜 悪霊が〜 いるでしょうか〜 お書きくださ〜い」

正面にはこれまたなぜか、マイクをもった冥子が頭にクビラを乗せて司会を務めていた。

「…鬼道、ナゼこんな仕様になる?」
「考えたらアカン。冥子さんの趣味や」





 GS 六道親子 天国大作戦! 7 〜 GSのお仕事! 後編 〜





人々が興味深そうに見ている中、横島は腕を組んで霊視していた。

「いや、この広さじゃせいぜい1階につき3・4体くらいか? 上はぎょうさんおるだろうし…」

訂正、霊視もせずに理性と経験で冥子の質問の答えを考えていたようだ。

「アホか、ちゃんと霊視せなあかんで?」
「レイシ? そんなのできるワケ…いや、できるか」

顔をしかめた横島だったが思いついたように握った手のひらを開くとビー玉を転がした。手品の様な
仕草に野次馬達から拍手があがる。

「文珠で〜 視るのは〜 ダメよ〜 今日は〜 陰陽術で〜 視なきゃ〜〜」
「俺、陰陽術って知らないっスけど…」

いきなり冥子にダメ出しを出されてがっくりする横島に冥子が手本をしめした。
人差し指と中指にお札をはさんで呪文を唱えるとお札が一瞬で燃え上がる。冥子が目を開くとそこには
いつもより深い闇を思わせる瞳が存在していた。

「これで〜 霊視をしていけば〜 いいのよ〜」

ほがらかに言う冥子に、やはりわかっていない野次馬達が一瞬で消えたお札に拍手喝采だ。
お札を渡された横島は、冥子がやった仕草で同じ呪文を唱えるが形は合っていても霊力の集中を誤った
らしく、ミニ起爆札よろしく爆発させてしまう。

「ある意味〜 すごい才能だわ〜〜」
「ほんま、美神はん所で修行すると攻撃に特化しはるんか?」
「ほっとけ!!」

アフロに髪を焦がせた横島が怒鳴るが、やはり野次馬達は驚きの声を発している。

鬼道はお札一枚で霊視をしてからさらさらと解答を厚紙に書いていき、冥子はクビラを使って霊視を
して答えを書いている。しかし、横島はなかなかお札をそれらしく起動できなかった。お札から火を
噴いたり、煙が出るだけだったり様々な失敗を繰り返している。野次馬は拍手喝采だが。

「あ、あのぉ〜 お札がすごく無駄になってますから、俺にかまわず進めちゃってください」
「じゃぁ〜、普通に〜 霊視する方法で〜 霊視しましょうか〜」

冥子は申し訳なさそうな横島に、悪意のない笑顔を返す。
横島にとって、冥子の笑顔に天使の姿を見る思いだった。こちらの失敗で至ったお札、優に50枚。
令子だったらあまりの散財ぶりに怒りの鉄拳を揮われていただろう。

「眉間に〜 霊力を集めるのが〜 ポイントよ〜〜」

丁寧かつアバウトな教えに横島は眉間にしわを寄せてそこに集中する…が、上手にいかない。

「眉間に〜 お米粒があるように〜 想像するのよ〜〜」

今度はちょっとマシになった冥子の教えに横島は横島なりに努力しようとした。

「……なにか自分の好きなモノを集中の種にするんや」

苦悩する横島に、隣の鬼道が助言をする。それがどういう意味を成すのか鬼道は理解していないようだが。

<集中…そうだ、なにも米粒じゃなくても! そうだ! 今眉間に美神さんのキスがぁ!!
小竜姫さまのキスがぁ〜〜!! パピリオのキスがぁ〜〜〜〜!!!」
「……最後のは犯罪やと思うんやけど」
「煩悩集中〜〜〜!! ワハハハハ〜〜〜!!!」

見事、霊視ができた横島だったが得られたモノは鬼道の半眼と野次馬達のブーイングだった。



「では〜 答えが出た所で〜 正解を〜 ドン〜〜!」

冥子の合図で2人とも厚紙を前にめくる。

「1階・2階は3体ずつでで3階が5体で全て合わせて11体! 
破魔札10万が1枚で5万が4枚、3万が5枚です!!」
「1階3体 2階3体 3階が6体で計12体でっしゃろ? 破魔札は僕は使わんけど必要数としては
破魔札10万が1枚で5万が5枚、3万が6枚ってとこやろか?」

なぜか異様に破魔札に熱血する横島と破魔札に関しては曖昧な口調で話す鬼道。
彼らは自分の答えには自信があった。いや、答えが正しくなかったらマズイ予感がしていた。
いつの間にか自分達の上にはクスダマが吊り上げられていたのだ。何が飛び出すやら冥子の感覚が
わからないだけに恐ろしい。

緊張に固まった2人の見つめる先で冥子はにっこり笑う。

「では〜 正解は〜 コレで〜〜す」

ピラリと厚紙をめくった先に答えが書いてあった。

『1階3体 2階4体 3階6体 計13体』

「では〜 クスダマさん〜 ご開帳〜〜〜」

真っ青になって上空を振り仰いだ2人だったがそこには間違いなく地獄が待っていた。
鬼道の上にははハイラが。横島の上にははバサラが舞い降りて来ていた。

「アダダダダ! イダダダダ! 勘弁してや〜!!」
「重い〜〜 重すぎる〜〜 冥子ちゃ〜〜ん どかせて〜〜〜」

痛すぎる罰ゲームに、野次馬達もちょっと後ろに下がってしまった。










冥子が資料を作成するというのでまた六道女学院に帰ってきた3人だったが視聴覚室に入ってドギモを
抜いた(横島限定)。なんと、ナゼか六道幽子がお茶を片手にニュースを見ながら待っていたのである。

「お帰りなさい〜。 今日は大変だったわね〜」
「お母さま〜 別に今日は〜〜 何も壊してないけど〜〜〜」

怯える冥子に幽子はにっこり笑う。

「今日は別に〜 冥子を脅しにきたんじゃないから〜 資料をさっさと〜 作っちゃいなさい〜」
「は、はい〜〜」

明らかにほっとした様子で教室の端で資料作りを始める冥子を尻目に、幽子はお茶と和菓子を鬼道と
横島にすすめる。

「今日は〜 横島君を〜 応援に来ちゃったの〜 がんばってるみたいね〜」
「は、はぁ」

お茶を片手に横島が曖昧に応対するが幽子はのんびりと続ける。

「これからも〜〜 よろしくね〜〜」
「はぁ、こちらこそ…って、え? 何がですか?!」

曖昧にうなずきながらも我に返って問い返すが幽子はにっこり笑ってニュースを指差す。
どうやらニュースは今日のささいな出来事を報じている模様だ。

『…さて、次は都内で珍しくGSの助手さん達が修行に励んでいる模様が見られました』
『陰陽術を学んでいるとのことですが…失敗しても、がんばってますね?』
『こうやって日本の霊障と戦うGSの卵たちが一人前になっていくんですね〜』

アナウンサー達がコメントするのをバッグに、先ほどの冥子達3人が(主に横島が)失敗しながら
霊視を続けている映像が映っている。

「な・な・な・な?!」
「おばさんも〜 失敗しながらも〜 がんばる横島君が〜 まぶしく見えるわ〜〜」

慌てて画面を指差す横島だったがそんな事で映像が止まる訳はない。全国ネットで今の醜態をさらして
しまっていた。

青くなった横島に更に幽子が追撃をする。

「勉強はいいんだけど〜 横島君、このままじゃ〜 刑務所行きになっちゃうわよ〜〜」
「なんですと?!」
「だって〜 お札、使ったでしょ〜 あれは〜 一人前のGSの免許を〜 持っている人か〜 指導の 
下でしか〜 扱っちゃいけないのよ〜〜」
「鬼道!!」
「鬼道先生は〜 GS免許〜 持っていないのよ〜」
「そ、そうなんか?!」
「つ、次の試験でとろうとは思ってたんやで?」

ちなみに鬼道は授業でお札は持つが使いはしない。必要がないのもあるが。

「大丈夫よ〜 今ちゃちゃっと〜 冥子の〜 事務所メンバーにしておいてあげたたから〜 警察の
お世話には〜 ならないわよ〜 よかったわね〜。ハイ、契約書〜」
「うううう…すんません。六道さん」
「いいのよ〜 困った時は〜 お互いさま〜〜〜」

横島のサインが入ればあとオッケ〜な契約書を2枚かざした幽子に横島は感謝を込めてお礼を言った。
この歳で警察のお世話になるのは勘弁だった。

感謝はしながらも、小笠原エミとの呪詛合戦の件で多少は懲りているのか、契約内容をきちんと確認する
横島に幽子は窓の方向に向けてにっこりと笑うのだった。







一方、オカGでは1人の営業マンが売り込みに訪れていた。

「これは50マイトまで霊力が探れる検査機械です。この様にボタン一つで…」

オカG田部美香の前でボタンを押す。

ボン!

いきなりショートして壊れる霊力検査機械。

「ナ、ナゼ?!」
「え〜……せめて、100マイトは測れる機械を持ってきていただけないかしら?」
「ハ、ハァ………」

肩を落とす営業マンに美香は苦笑いを浮かべて、今瘴気にも近い霊力を発している源の方へと視線を向ける。

その霊力の源の近くにいる西条は冷や汗をたらして腰を半分浮かせていた。

「あ、あの、彼は六道さんの事務所の助手とは決まっているわけではないと思います…けど」

西条になだめられている美神美智恵は笑顔でテレビを見ている。勿論、先ほど幽子と横島が見ていた番組である。

美智恵はにっこり笑いながら画面の隅を指差す。
西条はゆっくりとその先を見ると、そこには確かに「六道冥子除霊事務所メンバーの修行」とテロップが
出ていた。

「よ、横島君は神父のところで修行をして…」

西条の最後のなだめに入るが、そこにビシッという音が割り込んだ。
左右を見てから、恐る恐る美智恵の手元を見る。すると、そこにはヒビの入った湯のみが美智恵の手に
握られていた。

「お、落ち着いてください先生」
「西条くん………今、私はパイナップルもつぶす気満々よ?」

にっこり笑う美智恵に西条の口元がひきつる。もうこの状態になったら逃げるが勝ちだ。

<すまん、俺はこんなことで殉職したくはないんだ。横島君、一応弁解はしたから安らかに眠ってくれ!>

心の中で悲鳴をあげながらコソコソと逃げようとした西条の動きが止められた。
右手のすそをつかんでいる手を辿って見るとそこには美智恵の顔がある。

「そこまで言うなら西条君、あなたも一緒に行くわよね? 事の顛末を聞きに」
「いえ、ワタシは仕事…」
「行くわよね?」
「ハイ! 是非一緒に行かせていただきます!!」

ビシッと敬礼する西条ににっこり笑って美智恵は手にした湯のみをゴミ箱へと捨てに席を立った。
しばらくしてから、田部美香がそこへ休憩に訪れるとそこには

「なぜ俺はあの人の弟子に…いや、なんで横島君の為にこんな…なんだか前世でも同じ事を……」

黄昏ている西条の姿があった。


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