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横島異説冒険奇譚

 ベイ!ベイ!ベーゴマ!


投稿者名:touka
投稿日時:06/ 3/ 3

注:この物語はフィクションであり、実際の人物、団体、建築物にはなんら関係ありません。あしからず。



「だははははははっ!
で、キレた宮司たちにボコボコにされたのか?お前サイコー!!
境内で爆発させるかフツー?特撮じゃねーんだから。
 まぁ、すぐに俺が文珠で『復元』しといたから平気だろ」
 腹を抱えて笑い転げるのはタケミナカタ。
片腕しかないくせに器用な男である。
当の横島といえば全身グルグル包帯巻きで布団に横たわっている。
枕元には『癒』のベーゴマがくるくると回っているが、その効果は薄いようだ。
 あの後、タケミナカタの言ったとおり、悪鬼羅刹のような形相で走ってくる宮司たちの集団に横島は囲まれボコにされた。
そりゃあもう凄まじい怒気を発しながら。
「仕方なかったんや〜。
なんか知らんがやたらハイになってたんや〜」
「そりゃお前魔力に酔ってたんだよ。
慣れないうちはそういうのがしばらく続くかもな。
 で、その文珠のベーゴマってのは他にもだせるか?」
 興味津々な表情でタケミナカタは横島に尋ねる。
遥かな時を過ごしてきた彼だったが文珠を使う能力を持つ者はそれこそ両手の数ほどしか会ったことがない。
GSという職業ができ始めてからは横島が初めてだった。
「うん、ホイっと」
 ぎゅっと握られた右の拳を開くとそこにはあの乳白色のベーゴマがコロリと鎮座している。
タケミナカタはそれを摘むと室内灯の光にかざし、しげしげとソレを眺めた。
「おお〜、結構圧高いなコレ。
ただコレ外殻が少し薄いからな〜。もうちょっと厚くしないと地面に叩きつけただけで割れるぞコレ?」
 その後もアレコレ文珠についてアドバイスをするタケミナカタ。
流石に紀元前より文珠を使っているだけあって微に入り細に入り的確な助言をしていく。
 結果、なんとベーゴマ型にした初日にして五つも文珠を生成する事に成功した。
コレはアシュタロスとの戦いの時とほぼ同数であり、今回の諏訪大社訪問の一番の成果といえた。
「ところで、これに詰まってるのは100%霊力だけど、お前魔力100%も作れるか?」
 気軽に尋ねるタケミナカタであったが、その質問は横島にとっては青天の霹靂、想像の埒外にあった。
 確かに、霊力を回すのと同時に魔力も回しているのだから理屈の上では可能なはず。
 やってみる価値はある。
そう判断した横島は左手に神経を集中させていく。
相変わらず体の中で渦巻く魔力は横島を昂ぶらせるが、今はそれをすべてベーゴマの事へ収束させていく。
 横島の脳内に、ヒンヤリとしたベーゴマの手触りと程よい質量感ができあがる。
と、突然左半身に痛みを感じ集中が途切れる。
中で高まっていた魔力がフッと行き場を失い霧散する。
「いてて・・・まだ無理だぁ。
体中痛くて集中なんかできないっつーの」
 イテーイテーと喚く横島に溜め息をつくタケミナカタ。
「おまえ、そんな怪我文珠で直せばいいだろ?
なんでしないのよ?」
「してるっつーの!!
ホラ、『癒』の文珠。
でも、効果が弱いのか知らないけどあんま良くならないんだよ」
「まぁ、一文字じゃああんま利かないか。
ホレ、コレやるから使っとき」
 そう言って投げられる『治癒』の文珠。
それを体に打ち込むと、横島自身で作ったのとは比較にならないほどの速さで傷が治っていく。
 改めて、全快した体で集中する。
今度こそ、横島の左手には黒々としたベーゴマが握られていた。
鈍く光るこちらのほうがより本物に近い。
「おおお・・・ホントにできた。
ん?なんかコレひび入ってない?
ってオイオイオイオイどんどんヒビ増えてるよ。
ちょ、なんかヤバイ感じがする」
 具現化できた黒ベーゴマ文珠だったが、掌の上でピシリと独りでにひびが入ると段々とソレが広がっていく。
「あ〜あ、まだ外殻の形成のコツが掴めてないんだな。
魔力は霊力よりも動きが激しいからもっと厚くしないと駄目なんだよ、外殻を」
「オッサン冷静に分析してるバヤイとちゃうぞ!!
どうすりゃいいんだコレ!!」
 ブシッ、ブシッとヤバげな音と共に魔力が漏れ始める。
部屋にドンドンと魔力が充満していく中でもタケミナカタはのんびりと顎に手をやり状況を眺めていた。
「ん?ああ、魔力がこんなに漏れるのはまずいな。
おい横島。お前それをとりあえず外に投げろ。
 そしたら俺がすぐに結界で囲むから。
ホーレ、1、2、3」
 タケミナカタの合図に横島は慌てて黒ベーゴマを外へと放る。
しかし、その瞬間部屋の前、黒ベーゴマの軌道上にメドーサが突如現れる。
「おい横島、この部屋にタケミッ!?」
 なんというタイミング。最悪である。
喋ろうと開けたメドーサの中に吸い込まれていく黒ベーゴマ、そしてメドーサは突然咥内に侵入してきた異物に驚き飲み込んでしまう。
「め、メドーサが・・・文珠を食べちゃった!!」


 唖然とする横島の横でタケミナカタは、
「ほう・・・こういう手もあったな」
 などと呟きながら一人納得している。
横でメダパニってる横島とはえらい違いであった。
「どどどどどどないしよ〜〜〜!!
め、メドーサ、は、早く吐け!吐き出せーーー!」
 急いでメドーサの背後に回るとおなかに手を回し引く要領で異物を吐かせようとする。
 確か異物を飲み込んだ時はこうするんだよな、と乏しい救急救命の知識を総動員する横島。
メドーサはメドーサで黒ベーゴマの所為なのか先ほどからがっくりと項垂れたままである。
「ヤバイヤバイヤバイ〜〜〜!!
文珠喉に詰まらせて窒息死はシャレにならんだろ〜〜!」
 必死でメドーサの腹部を圧迫しなんとか文珠を吐き出させようとする横島。
 すると、突然メドーサの体が淡く発光し始める。
ぼんやりと、まるで蛍のような優しい光はメドーサの全身を包み込んだまま穏やかに、メドーサの呼吸に合わせるかのようにその明度を強弱する。
 そう、いつのまにか気管に文珠を詰まらせたはずのメドーサは呼吸をしていた。
その喉からは異物が詰まっているような異音は全く聞こえず、まるでただ眠っているかのように穏やかである。
 タケミナカタは相変わらずのスタイルで静観している。
横島はようやくメドーサの様子に気付き呆然としている。
するりと腕の力が抜け、抱えていたメドーサの体から腕が離れた。
 しかし、支えがなくなったのも関わらずメドーサの体は尚も重力に逆らい宙に浮いているのだ。
「ど、どうなってんのコレ?・・・」
 事態を全く飲み込めていない横島が思わず後ずさると、ふいにメドーサの体に変化が起きた。
ゴキゴキと異音を発しながら四肢が伸び、髪の毛も艶を増す。
ダブダブだったTシャツを内から双丘が押し上げる。
穿いていたホットパンツの生地は密度を増した肉体にその余地をほとんど無くしている。
 今の今まで、どうみても花の十代後半の少女としか言えない姿だったメドーサは、その容姿をドンドンと年増し、光が収まる頃には齢二十三、四の頃の女性へと変貌をとげていた。
「純魔力による体内での組織構成。
度重なる横島の魔力の慣らしと還元された純魔力の供給源、その他諸々エトセトラ。
よくもまぁ、こんだけ都合の良い条件がそろったもんだ。」
 ご都合主義ってやつだねこれは、とタケミナカタは頷きながら盃に酒を注ぐ。
山場は越えたという事なのか、ダラリと弛緩させた体には緊張のきの字も見受けられない。
隣で呆然とたつ横島といえばただただメドーサに見惚れるだけ。
 確かにあの少女然とした若さあふれたメドーサの姿も良かったが、ややもすればマザコンの気があるこの少年はこのどこか仇っぽい、艶のあるメドーサのほうが何倍も脳天を直撃される。
 甚だ横島にとって年上の女性のほうが魅力的なのである。
その横島の前で宙に浮かんだまま瞑目するメドーサ。
燐光を放つかのようなその光は白い肌をさらに青白く見せ、冬空の満月のようなうそ寒い美しさを漂わせる。
触れば壊れてしまいそうな、そんな儚さを垣間見せるメドーサだったが、ようやくその双眸を瞬かせ始めた。
「・・・・・・・ごはぁっ!!
はぁっ・・・はぁっ・・・か、体中がイタイっ!!
なんだい!?こりゃ一体どういうことなんだよっ!!」
 今までの儚さはどこへいったのか、やはりメドーサはメドーサだった。
年が口調に追いついた所為か、その仇やかな喋りっぷりが彼女の艶やかさを強調する。
「ボウズの文珠の所為だよ。
魔力で作った文珠が暴走して中に詰まってた意味を込められる前の還元された魔力をお前の体が吸収したんだ。
 まぁ、体の成長はその副作用だろ。
たぶん、成長に合わせていくらか力が増してるはずだ」
「た、確かに・・・全盛期とは言わないが中々戻っているじゃないか・・・」
「ついでに体つきもな」
「え?
なっ!?なんだいこりゃ!!」
 どっこい育ってるシャツの中、ものすごい自己主張をしているメドーサの双丘に改めて横島の息子も未青年の主張。
「いままでのピチピチコギャルも良かったけど、なんか極道の妻っぽいその艶やかさもグーーーーーーーーっ!!」
 と、叫んでメドーサに飛びつきグーで殴られる。
お約束をしたところで、ようやく冷静になったメドーサは自らの格好の余りの恥ずかしさに真っ赤になるととりあえず自室へと慌てて引き返した。
「ああ・・・年下もええけどやっぱ年上にシバかれるってのはええなぁ・・・」
「おい、おまえそんなドMな事言ってる場合じゃないぞ。
 あのな、魔力で文珠作る練習しないと、作るたんびに破裂しするぞ?
毎回毎回メドーサに飲んでもらうって訳にもいかないしな」
「毎回毎回飲んでもらうってなんか卑猥な響きだなおい!!」
 若さゆえの青春回路で意訳された文章が横島の脳内を駆け回る。
「黙って聞けっつーの。
まぁ、その文章については俺も少しそう思った。
 でな、文珠の強度を上げる練習を俺は今閃いたんだ。
どうだ、聞きたくないか?
聞きたいよな?
 よ〜し、じゃ教えてやろう。
いいかよく聞けよ・・・」
 その後、諏訪大社の境内では仲良くベーゴマ遊びに興じる高校生といい年した片腕の男がよく見受けられるようになった。

 厳粛な空気、徐々に強さを増してはいるが、まだ柔らかな陽光の暖かさを頬に感じる。
幼い頃は遊び場であったこの境内は今も自分の大好きな場所の一つだ。
元々大学で古文を専攻していたから古語、古文書の類は大好きであった、付き合っていた彼女の実家を継ぐためへの回り道もそれほど苦ではなかった。
この職について数十年、この職業ほど自分にあっているものはあるまい。
最近は些細なアクシデントで幾度か意識を手放したが今はそういうことも無い。
 諏訪大社宮司岸辺丈太郎六十歳は境内をゆっくりと歩きながらその相好を崩した。
結婚し嫁いだ娘に子供もでき来年にはおじいちゃんになる予定である。
つい最近起こった事件のお陰で世間での心霊ブームの再来に伴い、来社する参拝客の数も伸び足である。まさにいいこと尽くしであった。
 と、彼の目に入ってきた一つの光景が彼の顔を別の意味で崩す。
ヒクヒクという引き攣りを頬に感じつつ宮司はその瞳に凶悪な光を宿しながら、足音荒く歩き出した。
「くらえっ!!必殺燕返しっ!」
「くっそーーーっ!オッサン卑怯やぞ!
それならこっちも秘技、ツルツルの術!!」
「あっ!!ずりーっ!!ベーゴマに意味込めるの禁止!!」
「じゃあ、ベーゴマに意味込めるの禁止するの禁止!!」
「なにをーーーっ!!」
「いい加減にしなさいっ!!
境内でベーゴマ遊びをするなと何回言ったら気が済むんですかっ!!」
 怒髪天をつく勢いでいきなり登場した宮司にびっくりする横島とタケミナカタ。
最近の岸辺さんの悩みの種である。
 別に境内でベーゴマ遊びをするのが全く駄目なわけではない。
岸辺自身子供の時分よく仲間とこの社の裏でかくれんぼ、高鬼、ベーゴマ、メンコと様々な遊びをしたものだ。
 しかし、今回は事情が事情である。
なにせ、今目の前でこの高校生とベーゴマ遊びで非常にガキっぽいいい争いをしているのは彼が畏み仕える御祭神の一柱なのだから。
「彼は兎も角タケミナカタノミコトは止めていただきたい!!
この大社の御祭神であらせられるお方が高校生と一緒にベーゴマ三昧などと・・・」
「オッサンやっぱまずかったんじゃたっ!!痛いっ!!」
「こーの罰当たりがーーっ!!
恐れ多くもタケミナカタノミコトをオッサン呼ばわりなどと・・・
この阿呆がーーーっ!!」
 興奮した岸辺が思わず頭に載せていた烏帽子で横島を殴る。殴る。また殴る。
見た目やわらかそうな烏帽子だが、実は木製で結構硬い。
ガチガチと痛そうな音とともに横島を殴る宮司を見て、流石にかわいそうに思ったのかタケミナカタが仲裁に入る。
「まぁまぁ、俺は別に気にしてないよ。
こいつが失礼なのは今に始まった事じゃないし。
 大体さぁ、今日はこの前言われたからちゃんと私服だよ俺?
ホラ」
 そう言って宮司の前で片腕を広げてみせるタケミナカタ。
今日の格好はチェックのポロシャツに白い七分丈にビーサン。
確かにこれなら誰も神さまだとは思うまい。
 が、それはそれで問題である。
「そういう問題ではありません!!
大体、本来は宮殿内に鎮座ましましていただかなければならないお方が外で!!しかも私服で!闊歩するなどと言語道断!!」
 か〜〜〜っ!!と叫んでそのままクドクドとお説教に入る岸辺。
先ほどまで畏み仕えるとか言っていたくせにタケミナカタを正座させている。
とばっちりを食らった横島まで一緒に正座させられる始末。
「う〜っ・・・なんで俺まで・・・」
 延々と続くお説教に横島はうんざり。
何故か話は境内でベーゴマをするなという話から岸辺の幼少の話、そして宮司になるまでの苦節の体験談へと移行していた。
 何故こんな事を聞かされなけりゃならんのだ、と横島が辟易していると彼の脇をタケミナカタが肘でつつく。
「おい、静かに聴けよ。
今文珠で身代わり作るから逃げるぞ」
「え?え?」
 事態を把握し切れていない横島を尻目にタケミナカタは『贋』の文珠を二個使用すると横島の襟を掴んで走り去った。
その間僅か数秒。
恐るべき速さである。
 横島を抱えて境内の裏手へと走ってきたタケミナカタは十分宮司と距離を取れたことを確認すると、突然横島を地面に投げ下ろす。
「あたっ!なにするんやオッサン!!」
「うるさいっ、俺はいつまでも男を抱いとくほど酔狂じゃないんだよ」
「俺かて男にいつまでも抱っこされとる趣味はないっ!!」
 ベーゴマ騒動の続きで相変わらずタケミナカタとギャーギャー騒いでいる横島の後ろ頭をスパーンという子気味いい音と共に竹箒が痛打する。
 涙目で振り向いたその先には巫女服を仇っぽく着こなしたメドーサ。
ベーゴマ文珠の暴走事故以来、身体年齢が上がった彼女のプロポーションは諏訪大社に属する巫女の私服には収まりきらず、倉庫に眠っていた大き目の巫女服を借りているのである。
 ちなみに、コレは全くの余談だがメドーサが大きくなり、巫女服を着るようになってから横島の霊力と大社に訪れる大きいお友達の数がピョ○吉もびっくりの勢いで跳ね上がった。
「まったく、アンタたち毎回毎回そんな事してて飽きないのかい?
それよりもほら、横島今日も一発やるよ」
「は〜〜い!!はっ!違う駄目だ!!嫌だよーーーっ!!
いつもいつもそうやって色っぽい誘い方するくせにヤる事といったら色気の無いシゴキやないかぁ!!」
 メドーサの匂いたつような色香と共に発せられた誘いに横島は条件反射でついていくが、それは罠。
まるで食虫植物のように、それは獲物を艶やかに誘き寄せる。
 メドーサの魔力が少し増してからというもの、横島はあれやこれやの手で騙されてはメドーサに修行という名のシバキを受けていた。
それはもうギャグバージョンでも快復に時間がかかるほどに。
 今日も今日とて結局色香に釣られた横島が顔は嫌がりながらも足がヒョコヒョコと付いていく。
とことん、頭と本能が別れている男である。
 すでに岸辺は立ち去った境内の庭にやってくる二人。
その時、辺りを神々しいまでの清浄な気が包んだ。
「っ!!これは!!」
 気配に気付いたメドーサは顔を顰めると集中して辺りを探る。
突然雰囲気の変わったメドーサにわけも分からず横島がオロオロとしていると、天上からまるで光と共に降ってくるかのように一人の男が降り立った。
「久しぶりだねタケミカヅチノアラミノタマ。
いや、今はメドーサ、と読んだほうがいいかな?」
「アンタは・・・タケミカヅチ!!」
 ええ!?と驚く横島が改めて相手を見やる。
つややかな黒髪を綺麗に左右で結わえた間には整えられたパーツが寸分違わぬ神の計画により配置された顔があった。
腰には業物であると一目で分かる太刀が一振りぶら下がっている。
通りがかった巫女は男を見た途端金縛りにあったように放心し、持っていた段ボール箱を床に落とした。
「ちくしょーーーっ!!なんだかとってもちくしょーーーっ!!」
 ガンガンと怨み辛みを込めて五寸釘を打ち込む横島、そしてタケミナカタ。
「テメータケミカヅチ!!いまさらなにしにきやがった!!」
 金槌を握り締めたままタケミカヅチノミコトを指差すタケミナカタ。
「ご挨拶だなぁ、自分の分身に会いにくるのに君の許可が必要なのかい?」
 その薄い唇からはまるで清水のような清らかな声色が心地よく聞くものの耳にせせらぐ。
「うっ・・・」
 言われてみれば至極真っ当な事を言われタケミナカタは押し黙った。
その間にタケミカヅチノミコトはすぅとメドーサの前へと滑るように移動する。
大人の体型となったメドーサよりもさらに頭二つ分は高いタケミカヅチノミコトを忌々しげに見上げるメドーサ。
「ふんっ、一体全体タケミカズチノミコトがどうされたのかい?
まさか、いまさら寂しくなったとか言うんじゃないだろうねぇ?」
「ふふ、面白い事を言うねアラミタマ。
聞けば、君は零落して魔族になったとか、アラミタマとしても宥めなければならないのに、魔族にまでなるなんて・・・」
「あぶなねぇメドーサ!!」
「殺さなければならないじゃないか・・・」


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