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上を向いて歩こう 顔が赤いのがばれないように

指令その一:美神令子、及び横島忠夫を拉致せよ !!3


投稿者名:由李
投稿日時:06/ 2/25

結界を突破しようと、令子は何度か神通棍を振り上げた。
その度に結界はとてつもない強度をもって神通棍をはじき返す。
シロの霊波刀をもってしても令子と同じ結果であった。
落胆する令子たち三人の頭上から、妙にテンションの高いアナウンスが降り注ぐ。


「さぁ〜て盛り上がってまいりしました、続いての挑戦者!
真っ赤な斧は鮮血の色。やつがプレゼントするものは“苦痛を伴う死”!
そして遂に、このステージにやつがやってきた! 世界最高峰の結界士!
ついでに国際指名手配もくらってたあの男! 地獄の底から蘇った、悪魔の結界士!
果たしてこの二人に勝つ術はあるのかー! GSたちの運命やいかに!」

「……っるさいわね」


令子の苛立ちは最高潮に達していた。しかしそれも仕方の無いことだ。
久しぶりの仕事、おまけに報酬が既に振り込まれているという周到さ。
警戒しなかった令子も少しは反省すべきところがあるのだろうが、騙される方が悪いという言葉は嘘である。

ゴゴゴゴゴゴ

競りあがるステージ。スポットライトからの光がステージに集中する。
出てきた二人の挑戦者の内一人に、令子は口をあんぐりと開け、シロは石化した。


「美……美神殿………」

「ちょ、ちょっと待ってよ……アイツ、あのときの……」


眩しいライトに照らされる赤い洋服、赤い斧。
本来ならば背中に袋を背負っているのだが、その者は大きな斧以外持っていなかった。
トナカイの姿も無く、白装束の老人一人を連れているだけである。


「プププププ、プレゼント フォー ユー!」


突進してくるサンタさんと、微動だにしない老人と、サンタを過剰に怖がり逃げ惑うシロと。
令子とおキヌは、混乱する状況の把握に精一杯で、シロと一緒に結界の中を右往左往するのがやっとであった。





**





「こっちか」


六道女学院指定の青いスカートを翻して、トロは見鬼くんの反応を頼りに路地を進んでいた。
先ほどから大きな反応がある。
キッドに反応している可能性は薄いが、何もしないよりはましだ。
そんなことを考えつつ、トロはほぼ一直線にある場所に近づいていった。
その場所とは……





**





「力ノ セーブガ 出来ナイカ… マア、想定内ダ」


シンと静まり返る荒れ果てた教室。
教室の床は大きくえぐられ、そこから白い煙がところどころ立ち昇っていた。
先ほど横島とピートがいた場所である。しかしもう、二人の姿はない。

シュウウウゥゥゥ

トゲと赤い鎖に装飾された魔装術を解くと、雪之丞は肩にかついでいる横島に目をやった。
雪之丞は攻撃と拘束を同時に行っていたのだ。


「……死んだのか……」


ぴくりとも動かない横島。首筋に手を当て、雪之丞は脈が無いことを確認した。
次に雪之丞は横島の髪を掴み、顔を見るためにぐっと上に上げた。


「……ッ、偽者か!」


肩にかついでいた横島、いや横島の偽者を地面に投げつけた。
文殊を使い、横島は「横島」をイメージし、自らを具現化しそれを身代わりにしたのだ。
なぜか文殊に込められた文字は「邪」だったが、あながち間違いでもない。
しかし邪……横島は上手く自分をイメージすることができなかった。

ドサッ

地面になげつけられた偽横島、端正な顔立ちと、美しい瞳、鼻筋の通ったその顔は、もはや横島ではなかった。
横島よ、気持ちはわからんでもないが……。





**





「た、助かったぜピート……」


身代わりを作るタイミング、ピートが横島を霧にするタイミング、二人は何も言わずにそれを合わすことができた。
冷静な判断力が、一般人とGSをカテゴライズする一つの要素なのだ。
たぶん。


「一体何なんですか、アレは!」


とりあえずの避難場所として選んだ屋上のタンクの陰で、ピートは思わず声を荒げてしまった。
慌てて横島が口に指を当てて「シーッ」とする。


「よくわからんが、こういうときは大抵美神さんを狙った魔族が裏にいるんだよ」

「セ、セオリーですか」


登場人物が言ってはならないことを言った気がするのだが、横島の推理は生憎外れていた。


「……なんだか外れたらしいですよ」

「うるせえっ、とにかく警察が来るのを待って」

ドゴォン!


屋上のタンクを吹き飛ばし、生身の雪之丞が下から現れた。
魔装術なしで激しいスタントをやったせいか、雪之丞は痛いのを必死になって隠そうとぷるぷるしていた。


「さあ、お楽しみはここからだぜ!」

「お前言うことがいちいち古いんだよ!」


横島の指摘に「へっ」と口を尖らせる雪之丞。この辺りはいつもの二人なのだが。
その頃ちょうど学校の校門のところに、一人の女子高生が到着した。
さて、どうなるのだろうか。





つづく


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