椎名作品二次創作小説投稿広場


横島異説冒険奇譚

ザ・ワールド・オブ・魔力


投稿者名:touka
投稿日時:06/ 2/17

 それから二週間、横島はタケミナカタによって作られた『魔力』の文珠を握り締めたまま、手探りで自らの中に潜む魔力を探していく。
 がしかし、そんなものは一向に見つからずただただ時間を浪費していくだけ。
また、文珠からあふれ出る魔力はやっぱり人体には有害らしく、境内の宮司、巫女、参拝客などたくさんの人々がその気に当てられバッタバッタと倒れていく。
 結局、怒髪天をついた宮司に散々文句を言われ、こうして注連縄を張った結界内で文珠片手にブツブツと試行錯誤をしているのであった。
「無理や〜、こんなん。
この二週間散々試したけど全然上手くいかないやないか〜。
大体ホントに魔力なんか存在してんのかい!?
あのエロオッサン適当こいたんとちゃうか!?」
 うが〜と癇癪を起こして文珠を投げる横島。
外にでて人にでも当たったら、たとえ宮司でも一発で魔気に当てられ死んでしまうようなものを軽々しく放り出してしまう。
あわや大惨事になるところで、ちょうど部屋に入ってきたメドーサがキャッチした。
「アンタ、これが外にでたらえらい事だって何回もいってるだろ。
癇癪起こしてないでさっさと握りな」
 ほれ、と横島に文珠を投げつける。
ムスっくれた顔で受け取った横島は渋々また文珠を左手に握り締め目をつぶる。
「・・・なぁ、ホントにこんな事して上手くいくのかな?」
 ぼそりと呟かれた言葉にメドーサはアタシが知るわけないだろ、と冷たく言い放つ。
視線は手元にあるファッション誌から離れない。
 最近のお気に入りはゆったりとしたクッションにもたれかかり、流行だというファッション誌を読みふける事だ。
諏訪大社にきて二週間、メドーサはちゃっかりこの生活を満喫していた。
 昔とは違う、命のやり取りとは無縁の世界。
朝起きて宮司に挨拶し、暇だから境内の掃除を手伝った後、こうしてノンベンダラリと過ごす。
先週は人手が足りないというので巫女の手伝いまでした。
が、巫女姿に興奮した横島とタケミナカタのWルパンダイヴを箒で叩き落とした結果、何故かカメラを持った男たちにおひねりを貰い、自分も叩いてくれと懇願される。
我も我もと血走った目でメドーサへと突進してくるその大群に、流石のメドーサもなんだか怖くなって逃げ出した。
以来巫女服は一切着ていない。
 後にその巫女姿を納めた写真をタケミナカタと横島が鼻息荒く男たちから買ってるのを目撃し、カメラに入ったネガごとすべてを焼き尽くした。
同時に大社の鳥居の端が少し焦げたが見なかった事にした。

 やはり、ここは落ち着くな。
メドーサは内心こっそりと含み笑いをした。
 タケミナカタは確かに変な奴だが、横島のソレと比べればまだ節度はある。
おまけに、遥か昔とはいえある程度の期間をここで過ごしただけあって相変わらずここの地脈は身体に馴染む。
さすがに全盛期の頃ほどの回復は見られないが、それでも地脈を吸い上げ魔力に還元してずいぶんと力が快復した。
「ふぁ〜あ、暇だねぇ」
 欠伸をかみ殺しながらようやく視線を雑誌から上げると、さきほどから全く変わらぬカッコでうんうん唸る横島が見えた。
 
 ふぅ、やれやれまだ全然できないのかい?
 メドーサは相変わらずの横島のだめっぷりに溜め息をつくと考えをめぐらした。
 大体手に持って魔力を感じるってそんな小器用なことあのガキにできると思ってるのかねタケミナカタは。
確かに魔力でも霊力でも掌のほうが感じやすいだろうが、それと同じものを自分の体内に探るなら、もっと体幹に近くて、重要な臓器のそばのほうがいいはずだろう。
例えば心の臓とか。
 結論に至ったメドーサはスタスタと横島に近寄ると、無理やり文珠を奪い取り、横島の前に座って彼の左胸の上に文珠を押し付けた。
「どうだい?掌よりもこっちのほうが探し安いだ・・・ってお前どうしたんだい?」
 突然ビクリと動かなくなり、硬直した横島を不思議に思い、横島の顔を覗き込むメドーサ。


 さて、突然はであるが今現在の状況を説明したいと思う。
胡坐をかいた横島の前にメドーサが四つん這いになり彼を見上げている。
今日のメドーサのカッコといえば、先日の巫女騒動以来巫女服は止めて、厚手のTシャツにジーパンといった出で立ちである。
Tシャツは大社に住み込んでいる巫女さんの持ち物らしい、メドーサよりも少し背の高い彼女のものだから、当然サイズも大きい。
 つまり、何が言いたいかというと、


「久々のブラチラキターーーーーーーーーーーーー!!!
しかも色は白!!いいよいいよ〜!!
思春期らしい清楚な色だよ〜!!」
 ここ二週間ほど余りセクシュアルなハラスメントを行っていなかった横島にとって、今彼が直面している、メドーサの『Tシャツの襟から覗くブラチラ+美少女の上目遣い』というシチュはガッチンポークリティカルだったらしく煩悩エンジンに火がともる。
 と、同時にあふれ出る霊力。

そして、その霊力に混じって僅かながら魔力の文珠と似た力が漏れ出した。
「それだよ横島!!アンタの胸のところにある文珠と同じ感触がするだろ!?
それを増幅させるんだ」
 ようやく湧き出た魔力にメドーサは嬉しそうに叫ぶ。
その調子で、襟から覗くブラもかわいく揺れた。
(ああ・・・なんて素晴らしい眺めなんや・・・
まぁ、少し小振りやけど、ルシオラもこんなもんやったしな・・・
ルシオラ・・・)
 その時、煩悩とルシオラの思い出の両方が横島の頭を占めた瞬間、彼の内側から凄い勢いで魔力が溢れ出した。

「魔力フォーーーーーーーーーーーーーー!!」
 訳のわからない事を叫びながら立ち上がる横島。
勢い良く霊力と魔力を燃え上がらせる彼の顔は、いつもと違い何か禍々しさを感じさせる。
「フフフフフフ・・・こ、これがルシオラが俺に残してくれた魔力・・・
なじむ、実になじむぞぉ!
まだまだ、霊力魔力共に感じる・・・まだまだ出せそうだ!!
実に!!スガスガしい気分だ!!
 最高にハイってやつだぁ!!!」
 WRYYYYYYYYY!!!と、叫んで高笑う横島。
少しキャラが変わっちゃった感じがする彼の変態をメドーサは冷めた目で見上げていた。
 そして五分後、


「頭痛がする・・・は、吐き気もだ・・く、ぐぅ・・・
おまけに、アソコがフニャって勃たないだとぉ!?
この俺の息子が・・・ディックがいきなり木偶の棒に・・・」

 下ネタ厳禁、とかかれた札で横島を軽く殴打しつつメドーサは溜め息をつく。
彼女はこうなる事をあらかじめ知っていたのだ。
「あのな、初めてなのにそんな勢いで出したら、あっというまにスッカラカンになるのはあたりまえだろう?
 大体ね、ルシオラの魔力って言っても搾り出す器官はアンタの人間の状態なんだからそんなにあるわけないんだよ。
まったく、世話の焼ける・・・」
 だからタケミナカタは一ヶ月間大変だって言ったんだよ、とブツブツ文句を言いながらもしっかりと肩を貸し寝床へと運んでやるメドーサ。
見掛け、風評によらず面倒見は良い。
 ちなみに、結構な量の魔力を無軌道に放出した結果、宮司のこしらえた注連縄は千切れ、魔力は当たりに広がった。
またか、と頭の片隅で思いながら宮司たちが倒れていく。
「絶対おきたらシバく」
 奇しくも同じ事を考えながら諏訪大社の働き手たちはまだ日も高いうちから枕を並べて失神した。
横島が来て二週間、今だ諏訪大社は三日しか営業をしていない。
 ちなみに、遠く離れた地で修行中の蝶の化身が、横島の魔力を察知し、ルシオラと勘違いした挙句、会いに行こうとして小龍姫に食い止められ、鬼門全壊、道場半壊の被害を出したのはまったくの余談であり、横島の感知するところではなかったが、後日この事の原因を知った西条にボコボコにされる事となる。
何故西条なのかといえば、妙神山の植林も含め美神美智恵の仕事がスプラッシュマウンテンのように彼の元にスライドしてきたらしい。
 ちなみに、今回の解決期間中リアップを二本も消費したのは誰にも知られちゃいけない秘密らしい。




 さてさて、ようやく魔力を搾り出す事ができた横島。
しかし、問題は山積みである。
 まず、相も変わらず魔力のコントロールができない。
魔力を出すと同時に最高にハイってやつだ状態になるが五分で切れる。
今度の課題は魔力をチャクラに沿って流してやり、上手くその回路を魔力用、霊力用に分けなければならない。
 が、まずそのチャクラを回す事ができない。
魔力を出した瞬間、体中の点穴という点穴から放出し、あたりの人間をバタバタと気絶させていく。。
これがタケミナカタの守る諏訪大社だから気絶で済んだものの、普通の街中でこんな事をしたらいきなり街中大塵殺である。
 そんな八つなんとか墓村もびっくりの所業をしたら彼の所長が黙ってはいまい。
良くて半殺し、最悪警察からの要求を多額で承諾し追い掛け回しかねない。

 ブルル

「いやにリアル過ぎて怖いな・・・
はよコントロールできるようにならんとなぁ・・・
でもこれがヒジョーーにムツカシーーー!!」
 攻略本とかねーのかなー、と凄い不真面目な事をのたまいながらもとりあえず意識は掌へと集中する。
 タケミナカタの文殊はこうして二ヶ月が経過した今もまだ脈々と魔力を放出し続けている。
最高でも五日間、今では持続効果は一日も持たない横島の文珠と比べればその差は歴然としている。。
 やっぱ、エロくても神さまなんやな、と罰当たりな事を考える。
 文珠を呼び水に魔力を搾り出す事にはだんだんと慣れてきた。
一応左が魔力、右が霊力と分けて出せるようにはなったのだ。
 しかし、そこからチャクラに乗せる事が上手くいかない。
大体、彼は今までチャクラを回すという事をしたことがない。
霊能力も文珠もすべて、煩悩から生まれる、つまり脳で生まれた瞬間首、肩、腕と経由して掌から放出している。
 簡単簡潔、シンプルといえばそれまでだが、メドーサに言わせると何故それで今まで生きてこれたのかが不思議、との事。
 また、アタシはそんな小僧に負けたのか、とかなりブルーが入ったらしく宛がわれた部屋に閉じこもった挙句もう二週間も出てこない。
「う〜ん・・・なんか悪い事したなぁ・・・」
「よ〜う、元気してる?」
 そう言いながら現れたのはタケミナカタ。
手にはこれまた酒の入った徳利を持っている。
 今日は最初の頃のような古代の服ではなく、生成りのワイシャツにジーパンといったおよそ神さまらしかぬ格好である。
というか最近の彼の服装はいつもそんな感じであった。
「っつーか珠イジってるか?覚えたてだからってあんまいじってっとバカになるぞ?」
「おいオッサン誤解招くような事言いながら登場すんなや!!
っつーかいじれっつったのはオッサンやぞ!」
 セガレをか?と聞き返すタケミナカタにちゃうわ!とツッコむ横島。
 こういうときこそメドーサの出番なのに・・・と、改めて彼女の重要性を認識する、ツッコミの。
「ところでオッサン。なんで最近そんなラフな服装なんだよ?」
 疑問に思ったらすぐ聞く。
ある意味素直だが、これで何度も痛い目にあっているというのに一行に治る気配がない。
タケミナカタもどうも神としての意識の敷居というのはあまりないらしく、初対面以来横島とまるで兄弟のようなフランクな付き合いをしている。
 スケベという点で何かお互いにシンパシーを感じたのだろう。
「ああこれ?いつもはさ、やっぱ参拝客とかいるし、社の格を保つために気を入れて、あんなカッコしてるんだけどさ。
最近そんな事する必要ないから」
「なんでよ?」
「オメー、それ本気で言ってんの?
最近おまえの出す魔気で職員全部失神してんじゃない。
宮司なんか一週間前から『しばらく閉社します』って札立ててるぞ?」
「ご、ごめん」
 良く考えれば大変な事をしている横島。
魔力をだしてから、人間に対して、している事がメドーサよりも魔族的である。
小龍姫が知ったら卒倒するか、神剣で三枚におろすか、逆鱗にふれて竜化するか・・・どちらにしろあまり彼女たちには知られたくない。
「しっかし、おまえ魔力のコントロール下手だな。つーか霊力のほうも下手だな」
 板の間に寝転がりグビリと酒を飲みながら横島をからかう。
 うっさいわい、と言いながらも内心あせる横島。
たしかに初めてそろそろ二ヶ月になる、がまったく進歩がない。
「なんつーか、あれな。
霊力にしろ魔力にしろ、なにか容器の中に貯めるものなのよ。
でさ、お前はバケツ一杯に水張って、頭の上で逆さにしてる感じ?
なんていうか無駄使い?
 もっとさ、イメージしてみろよ。
イマジン?みたいな。
 バケツに入れた水はただ単に上で逆さにしたら零れるけどさ、グルグル回せば上で逆さになっても水は零れないだろ?
そんな感じでやってみろよ」
 適切なのやら適当なのやら。
あいまいな説明だな、とタケミナカタを睨みながらも一応やってみる横島忠夫十七歳。素直だけが取柄です。
「他にも取柄はいっぱいあるわい!!
え〜と、バケツに水張って、それ持ってぶん回すイメージっと・・・」
 目を瞑り、心を落ち着ける。
魔力がでると必要以上に気持ちが昂ぶる為に、まずは落ち着く事が大事である。
 溢れる。
力が溢れてくる。
 彼女から貰ったその泉からこんこんと湧き出るその力を、己がバケツの中へと注ぎ込む。
 も〜い〜かい?も〜い〜よ、と小さく呟きながら今度はそのバケツをグルグル回すところを想像する。

 元々、彼女いない暦ほぼ人生、という道のりを歩んできた彼。
夜な夜なセルフバーニングをするにしても、そうそう視覚に頼ってもいられない。
不経済だし。
 そこで活躍するのが青き若さゆえの妄想力。
彼の脳内ではいつでも彼はハーレムキング。ドン・ファンである!!
その妄想力が今、ようやく別の道へと使われようとしていた。
「グルグルグルグルグーグルグルグル・・・」
 なんか怪しい呪文のような事を呟きつつ、集中する。
すると、今ではあんなに垂れ流し状態だった魔力が、整えられ彼の左半身の中で螺旋を描いていく。。
同時に、それにつられるように霊力も右半身の中で轟々と回り始める。
 恐る恐るといった感じで横島が目を開けてみると、うっすらと自分の体を包む靄のようなものが見えた。
「おお・・・やっぱ俺って時々凄いな」
「いや、これ霊能力者なら基礎中の基礎だから」
 鋭くツッコむタケミナカタ。
「ちなみにこれが四大行の一つ『纏』ね」
「・・・・・・・・・嘘だろ?」
「嘘だよ」
 べ〜っ、と舌を出してそのまま部屋を出るタケミナカタ。
てめ〜っ!と起こった横島が注連縄の結界からでようとして、
「でっ!」
 見えない壁にぶつかった。
あまりにも魔力漏れが酷いというのでタケミナカタが魔力を出している間は出られない結界を作ったのだ。
これにより、うっかり文珠や横島が結界外にでることによって生じる、突発的な集団失神を回避する事ができるのである。
それでも、ときたま漏れる魔力に社職員は気分を悪くするものが続出していたが。
 しかし、魔力を纏えるようになった事で少なくともこの魔力漏れは幾分改善したようだ。
とりえあえず満足した横島は一応結果を報告しようと魔力を収め部屋を出る。
向かう先はメドーサが引きこもる天の岩戸、ではなく諏訪大社の巫女棟である。


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