椎名作品二次創作小説投稿広場


速き者達

狂乱劇


投稿者名:鷹巳
投稿日時:06/ 1/29

「弁当・・・・・忘れた・・・(涙)」


ザザザザザザザザザザザザザッッッッッッッ!!!!!(周りのクラスメイトが横島から離れてゆく音)


横島の一言が合図だったかのように、クラスメイトが一斉に横島から遠ざかる。それぞれ弁当をしっかりと握り締めているところを見ると、全員自分の弁当を飢えた獣(横島)に取られる事を恐れたのだと分かる。
ちなみに、今の横島の近くにいる事は危険と判断したのか、ピート、タイガー、愛子の三人組までちゃっかりと避難していたりする。


「おまえらなー!!俺のたった一言でそこまで厳重に避難するなよッ!!俺ってそんなに信用ないのか!?」


見事なまでの周りの迅速な行動に、大声を張り上げながら一人一人に訴えかけるように質問を投げかける横島。皆が自分をどう思っているのかは大体見当がついているようだ。しかし、そんな彼に対する答えは、言葉などなくとも目を見れば一発で分かった。クラスの八割方の視線はまるで、横島を捨てられた子犬を見るような眼差しで見つめているのだから。
横島の予想は最悪の形では、見事に的中していた。
暗い空気が彼の体を包んでいくのがよく分かる。そして横島は、除霊委員の三人を見つめた。


「え?い、いや、あの・・・僕は別に横島さんがそんな事しないって信じていますよ!ただ・・・ちょっと・・・」
「横島さん!!わっしは今日はいつものドカ弁の量が半分しかないんジャ!!だから・・・スマンですノー・・・・・」
「よ・・・横島クン元気出して。ほら、こういうのも一種の青春なんだから!別に私は、今の横島クンが危ないだなんて思ってないから」


目が合ってしまい、なんとかオブラートに包んで理由を説明しようとしているピート。
下手な小細工なしで、自分の現在の食料問題について正直に話すタイガー。
『青春』フレーズを用いて、誤魔化そうとするが、逆に墓穴を掘ってしまっている愛子。
・・・・・横島を包み込む空気は暗さを増した。・・・・・


《・・・・・ハァー・・・・・》


八兵衛からもため息がこぼれた。
八兵衛は屋上で横島と話してから、何が横島に吹っ切る事を妨害する足枷になっているのかをずっと考えていた。九兵衛事件で憑依した時のことも踏まえて、今までの横島の行動や周囲の反応、それら全てを理解して得られた結論は・・・・・


《このふざけ半分環境のせいかもしれない・・・(汗)》


八兵衛よ・・・そんな事言ったらこの二次創作小説どころか、原作おも否定事になるぞ・・・(作者のつぶやき)


「う〜・・・チクショ〜〜〜〜!(涙)」
「横島さん・・・そんなに泣かなくても・・・・・」


そんなこんな言っている間に、悔し涙を流し始めた横島を、ピートがどうしていいのか分からないまま時間が過ぎてゆく。しかし、已然としてまだ若干の距離をキープしている状態のままであるが・・・。だが、次の瞬間、教室の扉がガラガラッと音を出して開いて一人の少女が入ってきた。


「・・・・・・あのー、横島さんいますか?小鳩の作ったお弁当を渡しに来たんですけど・・・・・・」


小鳩であった。クラス中の視線が一斉に小鳩へと注がれる。が、そこには誰が注目するよりも速く、小鳩へと向かっていった横島の姿があった。


「ありがとう小鳩ちゃん・・・君が来てくれて本っ〜〜〜〜〜〜〜当によかったよ(嬉し涙)」
「・・・・・・喜んでもらえて、小鳩も嬉しいです・・・・・・」


小鳩の手を握りながら、心底感謝の言葉を送る横島。
立ち直ったのはいいが、涙ながらに感謝する横島に周りの面々は少し引き気味で苦笑い。なにわともあれ、これで一件落着と落ち着いている面々だったが・・・・・小さな疑問を抱いている者が一人・・・いや、二人いた。


(何だか小鳩ちゃん、おかしいな・・・横島さんに手を握られているのに、全然動揺してない・・・?)


一人は、さっきまで横島を慰めようとしていたピート。
確かにいつもの小鳩ならば、あそこまで横島に感謝されれば多少なりとも顔を赤らめるなどの動揺があるははずなのだが、そんな様子はまったく感じられず、不自然なほど冷静である。


《・・・この少女・・・・・瞳に光が入っていない!?》


もう一人が横島の体の中にいて、一番小鳩を間近で見る事のできる八兵衛。
彼が注目したのは、その異常なほどに死んだ瞳だった。小鳩の瞳からは、光が・・・つまりは生気が感じられないのだ。


「・・・・・・はい、どうぞ・・・・・・」
「ほんじゃ♪お言葉に甘えて」


二人が発見した小鳩の不審点は、空腹状態の横島が気づけるはずもなく、小鳩が目の前に差し出した弁当を満面の笑みで受け取った。と、その時に小鳩の右手がポケットへと伸びた。


《危ない!!横島クン!!》
「危ない!!横島さん!!」


ピートと八兵衛が叫んだのはほぼ同時だった。
横島は「え?」と、一瞬驚いた表情を見せたが、その後すぐに動いたピートが横島を押し倒した事によって、横島は今の状況を把握した。
受け取った弁当はどこかに吹っ飛んでしまったが、横島はそんな事には気にせずに右頬に触れてみる。わずかな痛みを感じ、指についている赤い液体は間違いなく血だった。
小鳩の手にはカッターナイフが握られていた。


「・・・・・・どうしたんですか横島さん?・・・・・・」


何もなかったかのように平然と話しかける小鳩。一方横島は、心臓が早鐘を打っているのを感じていた。あの時、ピートと八兵衛が叫んで、ピートが押し倒してくれなかったらと思うとゾッとする。


「大丈夫ですか、横島さん?」
「あ、ああ。大丈夫だ」


心配するピートに返事を返す横島。だが、続いて愛子の叫び声が聞こえてきた。


「み、皆!!どうしたの!?」


咄嗟に周りを見渡してみる。すると、次々と男子生徒が倒れていく。残ったのは、横島達除霊委員と女子生徒だけだった。
女子生徒は、顔を下に向けて微動だにしない。


「横島さん・・・・・どう思います・・・?」
「・・・あんまりいい予感はしないな・・・・・(汗)」


横島がそういい終わったすぐあとに、全女子が顔を上げ、小鳩のようにカッターやらなにやら取り出し始めた。すると、次々と襲い掛かってきた。


「ハアァァァァァァァァァァ!!」
「うおぉ!!あ、危ねえ!!」
「横島さん!!」
「横島さん!!」
「横島クン!!」


襲われる横島を助けようと、三人が横島の元へと近づいてゆく。が、すぐに自分達の所にも女子が凶器をもって襲ってくる。だが、いくらなんでもクラスメイトを攻撃するわけにも行かず、ただただ避けるしかなかった。


「クッ・・・いったい誰がこんな事を・・・!?」


ピートの怒りに満ちた疑問に横島は心の中で『韋駄天だ・・・』と答えた。
いくらなんでもここまでやるとは横島も思ってはいなかった。狙うのならば自分一人だけだと勝手に決め付けていたのだ。横島の中に、少しずつ後悔が募ってゆく。


「皆、一旦廊下に出ましょう!ここにいても何にもできないわ」


自身である机を背負いながら、女子からの攻撃をかわしている愛子が多少息を弾ませながら言った。
その意見に賛成し、四人はほぼ同時に教室の扉を開けた。だが・・・


シュンッ!!


空気を切る音と、同時に起こる微風を感じた。ゆっくりと前を確認すると、そこには他クラスの女子生徒が凶器をもって教室を取り囲んいる光景だった。

















「フフフハハハハハハッ!!!」


学校の屋上から、澄んだ声で笑い声が聞こえてくる。韋駄天特九隊bV、七也の笑い声だった。風が舞い、そのホスト風の服と髪がかすかにゆれている。


「さぁ・・・・・最高の劇の始まりだっ!!ハハハハハハハッ!!」


風の音色にかき消される笑い声。
七也の紫色の瞳がより一層輝いた。







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