椎名作品二次創作小説投稿広場


速き者達

乱入者


投稿者名:鷹巳
投稿日時:05/11/23

コンクリートで出来た道が一直線にえぐれ、そこからは白煙が立ち上る。異常なほどの力で殴り飛ばされた横島の姿は煙に隠れてしまい、見ることは出来ない。だが・・・


《横島クン、無事か!?》
「し、死ぬかと思った・・・・・(涙)」


生きていた。
横島は六麻呂の攻撃を受ける寸前にサイキック・ソーサーを構え、ほんの少しだが威力を押さえ込んだのだ。しかも横島の中には八兵衛がいるので、身体能力が向上し、これほどの大惨事のも関わらず横島はかすり傷ほどのダメージしか受けてはいなかった。


コツ、コツ、コツ、コツ、コツ!


「ハァ・・・ハァ・・・やっぱり・・・この程度じゃ・・・死なねえか・・・」


徐々に煙もはれ、六麻呂の足音を最初に声や姿もはっきりと目の前に現れてきた。


「ん?あいつ疲れてないか?」
《おそらく超加速を使ったのだろう。先ほどの私たちの速力についてこれる手段はそれ以外にないからな。私が感じた不安もこれだ。》
「じゃあ、今のあいつが相手なら勝てるかもな」


超加速は一度使うだけでも大量の霊力を消費することを知っている横島は、先ほどとは打って変わって立ち上がり、疲れきっている六麻呂をにらみつける。
六麻呂は肩で息をしながらただ突っ立ている。だが、それと同時に笑ってもいた。


「ッフ・・・・・フフフフハハハハハハハ!!」


とうとうその笑いが声となり馬鹿でかい声で笑った。
横島はそんな六麻呂に少し驚いたが、(こいつ、ついに狂ったか?)などと失礼な事を考えていたりする。
八兵衛は横島と違い、六麻呂をじっと観察していた。なぜなら今耳に聞こえる笑いには余裕があった。このままでは終わらないと言う確信があったのだ。そしてそれが確かだった事を知る。


「ハハハ・・・使うか・・・」


そう言うと六麻呂は自分のズボンのポケットに手を突っ込んだ。動きからして何かを取り出そうとしている事が見て取れる。出てきたのは光る球体の入ったビンだった。


「なんだあれ!?」
《あれは!魂だ!!》
「え、あれがっスか!?でもなんでそんな物今出す必要が・・・?」


八兵衛もそれが知りたいところだった。
こんな状況でなぜ他人の魂が必要になるのかまったく分からない。そもそもあれは誰の魂なのか、そう思った二人に聞き覚えのある声が聞こえた。


『助けてくれーーーーーーーー!!』
「あれ?この声って・・・どっかで聞いたような・・・」
《・・・・・・・!!まさか・・・》


声は六麻呂の持つビンから聞こえてくる。横島も八兵衛も最初は誰なのか分からなかったが、記憶の中から一人の男が浮かび上がった。その予想は六麻呂が魂に話し掛けたことによって当たっていたことを教えられた。

















「じゃあな・・・九兵衛」


そう言うと、六麻呂はビンふたをこじ開けてその中に入っている九兵衛の魂を・・・・・食った。


グショ・・・ギュチャ・・・ジュギャ・・・クチャ・・・ギョジュ・・・ゲチョ・・・グチョ・・・


気味の悪い音が耳の奥まで侵入してきた。
耳をふさぐ横島。
呆然とする八兵衛。
しばらく響いたこの不協和音は、九兵衛の魂が完全に六麻呂に食われたと同時に終曲した。


「フッ、能力を使わずに闘おうなんて考えてた俺はバカだったぜ。今見せたのが俺の能力だ。どうだった?“ソウルイーター”のナマの食事の音は?」


ブチッ!


六麻呂の言葉に八兵衛の中で何かがキレた。


《六麻呂ー貴様ーーー!!』
「な、八兵衛さま)
「へえ、怒りの力で札の力を振り払ったのか!!」


六麻呂の言う通り、背中に張られていた札はいつの間にか破れてなくなっていた。
関心する六麻呂をよそに、八兵衛の怒りは最高潮に達した。仲間を殺すことは八兵衛にとってはとんでもない反逆行為。昔からそういう奴が一番許す事が出来なかったからだ。
怒りに身を任せて突進している八兵衛とは真逆に珍しく横島が冷静になっていた。そして、横島には今の六麻呂の霊圧が根から強大になっている事を理解する事が出来た。考えてみれば、六麻呂の能力は“ソウルイーター”言っていた。横島は霊能の知識にはうといが、相手の様子から魂を食べるたびにパワーアップする能力である事がわかった。つまり・・・


(今のあいつにはいくら八兵衛さまでも勝てない!しかもこんな状態じゃ犬死だ!なんとかして止めなくちゃやばい!!)


あせる横島だがいくら呼びかけても八兵衛には届いてはおらず、熱くなってもうどうする事も出来ない。


『食らえ!!!!!』
「・・・・・ちっ、てめえじゃ・・・物足りねぇんだよ!!」


拳を握り締め、六麻呂の顔面目掛けて突き出したが、接近戦では八兵衛の方が断然不利。余裕でかわされ挙句に、九兵衛の魂を食ってパワーアップした六麻呂の拳がカウンターとなって帰ってきた。


『がぁぁぁぁぁぁぁ!?》
(あぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ヘヘヘヘッ、ラッキー。選手交代だな」
《お、おのれ〜!!》


強烈な打撃をくらい、そのショックでまたもや横島と八兵衛の精神が入れ替わった。横島にして見ればナイスアクシデントだが、自分にも強烈なダメージが襲いまったく動けない。
自分の足元で横たわる横島を見下ろし、六麻呂は楽しそうにまた笑った。その笑顔には横島をこれから食おうとする気持ちとこんな形で勝負がつくのを名残惜しく思う気持ちとが入り混じっていたが、これも勝負と『食う』選択を取ったようだ。


(俺・・・・・ここで死ぬのか・・・・・)


横島は覚悟を決め、ゆっくりと目を瞑った。

















(・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?)


いつまでたっても何も起きない。自分の体に触れられてさえいない。その代わりに聞こえてくるのは何かが吹っ飛ばされたような大きな音と・・・・・聞き覚えのある声。


「大丈夫か?横島」


再びゆっくりと目を開ける。そこには黒い帽子と同じく黒のコート、身長は低く目つきはあまりいいほうではない男がいた。が、何処となく懐かしい気もする。
目をこすり、もう一度しっかりと男を見上げる。
横島はそのまま男の名前を叫んだ。

















「雪之丞!!!!????」


伊達雪之丞・・・・・ここに登場。


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