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GS〜Next Generation Story〜

終わりの始まり


投稿者名:ja
投稿日時:05/11/22

「さて、残るは私だけになりましたね」
 朱雀が四人の方向を見る。そして、空間から一人の魔族が現れた。
「カイン?」
 カインは英夫を見る。
「十分だな。あの時の横島にも匹敵する、かな?」
 そして、英夫に近付き、二人は姿を消した。
「な、何?」
「どうやら、別室に向かったようですね。さて、私達はどうしますか?戦う理由はないようですが?」
と、三人を見渡す。
「どうやら、そうは行きませんか?いいでしょう。私に勝てたら、全てをお話しましょう」
と、両手を広げる。

 それから、いく時が流れただろうか。勝敗は決した。
「どうやら、私は本当に失敗作のようですね」
 倒れながら朱雀が呟く。
「お見事です」
 その顔は笑っていた。
「失敗作って?!」
「私も英夫さんと同じですよ。私は『神』と『魔』のハーフです。それの唯一の生存例」
「何?」
「彼が私以上の力を持つのは、『神』と『魔』以外に『人』の心を持っているからですかね。そのおかげで安定してしる」
 そして、ゆっくりと立ち上がる。
「しかし、気を付けてください。彼のその力。使い方を一つ間違えれば、世界が滅ぶのですからね。」
 その姿が霞んでいく。
「では、お約束です。私の知りうる全てをお話しましょう。
 タナトスは、星井家が代々守っている『封印の祠』に祭られていた、石に封じられていました。蘇った過程は先ほどお話した通りです」
 再び口を開きかけた時、
『おしゃべりね』
 女性の声が響く。そして、朱雀の姿が薄れていく。
「なるほど。どうやら、タナトスが来ていたようですね。残念ですが、お別れですね」
と、三人を見る。
「最後にもう一つだけ。タナトスは悪霊じゃありません。人間です」
 そして、消えていった。
「ねえ、美希さん」
 瑞穂が口を開く。
「伊達 望って知っていますか?『封印の祠』にあった石碑に書いてあったんだけど、先祖にいません?」
 その問いに、美希は考え込む。
「ええ。知っていますよ。でも先祖ではありません。と、いうより、この世には存在しないはずです。彼は」

「ようこそ。英夫クン」
 カインは自分のイスに向かい、そこに置いてある剣をとる。
「さて、始めるかね?」
 問答無用といった感じだ。
「カイン。お前は何が望みだ?」
「そうだな。私は見てみたいのだよ。私自身がどれだけの強さを持っているのか。どれほどの強い者と渡りあえるのかをね」
「それだけのために?」
「君からしたら、つまらない理由かもしれないがね。私にとっては重大な事なのだよ。
 さあ、お喋りはこれまでだね。後は、力で語り合おう!!」
 しかし、その動きが止まる。二人の間に、何者かが現れたからだ。
「タナトス」
 タナトスと呼ばれた女性は英夫に近付く。
 英夫は顔を隠したこの女性に不思議と、物凄い親近感が沸いた。そして、その手が英夫に触れる。
「駄目よ、カイン。この子の力、封印がかけられてある。どうせなら、100%の彼と戦いたいでしょう?」
「ああ。そうだが。ならば、封印を解ける者を連れてくるか」
「いえ、その必要はないわ」
 英夫の額に軽く触れた。それだけで、封印の解ける音が辺りに響いた。
「え?」
 英夫も自身の変化に気付いた。
「あれ?」
 霊力が一気に上昇した。

「また、ここか?」
 これまでに幾度となく訪れた世界だ。目の前に【魂の欠片】が佇んでいる。
「戦うしかないなら、使い切ってみせる」
 二つの【魂の欠片】が英夫に吸い込まれていく。

「さあ、力を出しなさい。今の貴方なら、使いこなせるわ。まあ、数分が限度でしょうが、それだけあれば、十分でしょう?」
 タナトスは姿を消した。
「なるほど。その、数分間が勝負というわけか。面白い、では、どちらが数分後に立っていられるかな?」
 カインは斬激を繰り出す。英夫はあっさりとかわしていく。
「いいね。いいぞ!もっとだ!!もっとだ!!」
 攻撃のスピードを上げていく。英夫は剣で受け流していく。
 カインが後方に飛ぶ。
「私も、本気を出そう!」
 左手が光る。そこには文珠が握られている。
「さあ、これならどうだ!!」
 数個の文珠を同時に投げる。そこには、『爆』の字が刻まれている。
 英夫が左手で、空を切った。真空の刃が文珠を砕いていき、大爆発が起こる。
「そこだ!!」
 カインが爆発の中から伸び上がってくる。しかし、そこに英夫の姿はない。
「何処だ?ん?」
 英夫が真上から剣を叩きつけるように舞い降りてきた。カインはそれを何とか受け止める。
「なるほど。神や魔の長が使いたがるわけだ。その力、まさに最強だ」
 剣が砕けた。そして、英夫の剣がカインを貫いた、
「完全にその力をコントロールできた今、君はすべての王になる」
 英夫の剣を抱えたまま後ずさる。
「悲しい宿命だな」
 その目は、同情の念に満ちていた。
「それとも、永遠ともいえる戦いの日々を生きるのかな」
「これで、戦いは終わりだ」
「神魔戦争は終わらんよ。それこそ永遠にな。君が、魔族の全てを滅ぼすまでな」
 その姿が霞んでいく。
「しばらくのお別れだ」
 そして、カインは消えていった。
「さて、帰るとするか」
 英夫は人間界へと続くゲートに進んだ。

「ヒデ」
 ゲートの先はどこかの森だった。そこには三人の女性が待っていた。
 その時、異変を感じた。
「な、何だ」
 頭の中が錯乱する。
「あ、あああああ!!」
 英夫が頭を抱える。
「まずい!」
 ノアが霊力を放出して押さえ込もうとする。
「急いで封印を!!」
「はい」
 精霊石が宙を舞う。
「駄目だ、間に合わない」
 英夫の叫びと共に、蹲る。その姿が豹変していく。
「暴走?!」
 その時、意外な声がした。
「やはり、こうなったのね」
 何の気配もなく、一人の女性、タナトスが現れた。いや、目を閉じていたら、存在さえ確認できないかもしれない
「誰?」
「それよりも、今は英夫ね」
「ヒデの知り合いですか?」
「まあ。ただの知り合いではないわね」
と、手をかざす。すると、英夫の動きが止まる。
「なるほどね。私でもこれが精一杯か。今のこの体じゃ」
と、三人を見る。
「このまま、彼が力に飲まれてしまえば世界を滅ぼす狂戦士の誕生ね」
「そんな」
 その間にも、英夫の姿が変わっていく。
「一つだけ、手があるわ。しかし、あまりにも危険な」
「え?」
「彼の3つの心を、切り離すの。そうすれば、一時的に封印ができる」
「それで、どうすればいいの?」
 ノアが真剣な表情で問う。
「彼の分裂させる心も3つ、あなた方も三人。お解りね?」
「つまりは、それぞれが彼の心を封印する」
「そういうこと。やりますか?失敗すれば、彼はもとよりあなた達、強いてはこの世界も終わりよ」
「やります」
 美希が即決する。
「ヒデには、まだ色々とやってもらわないといけませんからね」
 その目は、温かかった。
「まあ、私の存在理由が消えたら意味はないからね」
 ノアが近寄る。
「一応、彼の母親には力を貰っているし」
 瑞穂が近寄る。
「それでは、行きます。お気をつけて」
 眩しい光が襲った。

「まったく、世話をかけんじゃないわよ」
 瑞穂は道を歩いていた。
「ん?あれは?」
 一人の少年が蹲っている。
「英夫、さん?」
 顔を上げた少年は英夫だった。
「誰だ?」
 その語気は強かった。
「誰って、私、瑞穂よ」
 英夫は目をそらす。
「俺は、この力を使って全てが欲しい」
「はあ?」
「こいつの力は最高だ。まさか、これほどの力とはな。俺がこいつを支配して、全てを手にする」
 その姿が豹変した。獣化した英夫へと。
『我は、『神』だ。全知全能の神として全てを欲する』
 頭の中に直接声が響く。
「面白いじゃないの。生憎と、私はあなたの神様ごっこに付き合っている暇はないの。要は、あなたを倒せば、一つ終了ね」
 両手に文殊を握る。
『我、全てを欲す』
 衝撃波が襲う。
「くう、英夫さんも厄介なモノを飼っていたものね」
 文殊で辛うじてガードする。
「でもね」
 徐々に間を詰めていく。
「私も、負けられないのよね」
 文殊を炸裂させた。
「一つ、おしまい」
『お見事です』
 頭の中に声が響く。
『今のは、欲望を象った『神』の心です。
 もともとはただのチャクラだったのですが、その力があまりにも強大だったため意思を持ってしまったのでしょう。全知全能の神として、全てを欲する。
 では、あと二つです』

「へえ、もう一つ片付いたの?」
 そう言うノアの前には一人の少年が立っていた。
「こっちも、もうすぐ終わるわ」
 ただ、冷たい空気を漂わせた、英夫だった。
「あたなには、以前会ったわね。完敗だったけど」
 剣を抜く。
「でも、今はどうかしら?霊力はかなり落ちているようだけど?」
 心が3分の1であれば、霊力は10分の1にも満たない。
「死ね」
 その声はあまりにも冷たく、鋭い。
「死ねないのよ、残念だけど」
 ノアの声はあまりにも哀しみに満ちている。
「貴方が存在している限りね」
 一瞬で真っ二つに切り裂いた。
「さよなら」
『お見事です。
 彼は『憎悪』を源として作られた『魔』の心です』
 声が頭に響く。
『さあ、あと一つです』

「ヒデ、何処ですか?」
 美希は暗い道を歩いていた。
「あれは?」
 そこに一人の少年が座っていた。
「ヒデ?」
 彼は木にもたれて座っていた。
「何をしているのですか?」
 彼は答えず空を見ていた。いつの間にか周りの風景が変わっていた。
「ヒデ」
 美希が近付くと、英夫は顔を美希の方向に向ける。
「なあ、俺って何なんだ?」
「え?」
「本当に俺は、ただこの力で敵を滅ぼすしかできないのか?」
「ヒデ」
 それは哀しい告白だった。彼は、その力によって幾度となく敵に狙われ、それを滅ぼし、また新たな敵に狙われる。
「カインが言っていた。お前は永遠の戦いを生きる運命だって」
 その手で滅ぼした敵を思い浮かべる。
「俺は、独り戦い続けるのか。巨大な力を持つばかりに」
 自分自身の手を見つめる。
「ヒデ」
 美希が英夫の横に座る。
「貴方がどう生きようがそれは貴方が決める事です」
 そっと手を握る。
「でもね」
 英夫の顔を見上げる。
「昔は私の方が背が高かったけど、今では逆転しているわね」
「は?」
 素っ頓狂な声を上げる。
「人は成長している。私も、そしてヒデもね。
 それが一番よ。昨日と違う明日を生きている。今はそれだけで十分でしょう」
と、英夫を立ち上がらせる。
「もし、あなたが戦い続ける運命にあるなら」
 英夫の正面に回りこむ。
「私も一緒に戦ってあげるわ」
「え?」
「貴方は誰よりも優しい。心の底は誰よりも優しすぎる。本来であれば、戦いには向かない。でも、あなたが戦いの運命にあるならば、私も一緒に戦ってあげるわ」

「ふー、何とかなるものね」
 ノアはゆっくりと立ち上がる。他の三人はまだ眠っている。
「じゃあ、またね」
 ノアは姿を消した。それと同時に英夫は目を覚ます。
「あ、お目覚め」
 顔を上げるとタナトスが立っていた。
 英夫を含め三人がそちらを見る。
「え?一体、君は?」
 英夫が立ち上がる。
「私は、タナトス。と、言えば解るかしら?」
 瑞穂を見る。
「タナトス?!」
「そうよ」
 そして、全員の顔を見る。
「なるほど。こっちではこういう人が生まれているのね」
と、美希に視線を注ぐ。
「へー、貴方は伊達さん?でいいのかしら?」
「そうですが」
「ふーん、こっちでは女性か」
 顔を確認する。
「似てなくもないか」
 その時、大爆発が起こる。タナトスの間近で。
「!!」
 タナトスは余裕でかわすが、そのエネルギーは凄まじく、英夫達は爆風で飛ばされた。
「あらあら、いい所だったのに」
 タナトスがそちらを見る。
「タナトス!!」
 横島忠夫が立っていた。同時に三人を強力な結界が保護する。
「そこからは、絶対に出るなよ」
 言い放ち、タナトスを睨みつける。
「お久しぶりね、ヨコシマ?」
「今、消してやるよ」
 両手から霊波刀を出す。
「最後に、一つだけ答えろ。何故、あの時おキヌちゃんを?」
「最後の質問がそれでいいのかしら?」
「さっさと、答えろ!!」
「まあ、いいけど。
 簡単な事よ。貴方と彼女が結ばれたら困るからよ」
「なら何故、俺じゃなくて、彼女を?」
「カインと取引していたのよ。貴方の甘さを取り除くことを条件に、私を石から出してくれってね」
 邪悪な笑みを浮かべる。いや、顔は見えないが、そういう雰囲気だ。
「さて、質問にも答えたことだし、さあ、どうぞ」
と、両手を広げる。
「言われなくても!!」
 横島は一気に間合いを詰め、両手の刀で切りかかる。
「へー、強くなったじゃない」
 しかし、余裕でかわされている。
「良かったわ。これだけの強さならカインも満足してくれたでしょう」
 両者には歴然とした力の差がある。
「でも、残念ね」
 軽く横島を蹴り飛ばす。それだけで、吹き飛ばされた。
「その程度?私を倒すために、頑張ってきたんでしょう?」
 両手を広げ余裕を見せる。
「く、言われなくても!」
 再び切りかかるが同様に吹き飛ばされる。
「まさか、本当にこの程度?この力で私に勝てるとでも」
「へ!言っていろ」
 両手に文珠を握る。
「おお!!」
 一気に霊力が上昇する。
「へー、やるじゃない!それが貴方の奥の手ね?」
 タナトスは相変わらず余裕だが、それを見ていた英夫達は驚きを隠せない。
「何だ?この霊力?」
「こんなに強かったの?」
 さらに、横島の霊力は上昇していく。
「ふーん。なるほどね。もう絶頂期は過ぎていたけど思っていたけど、火事場のクソ力とかいうやつ?」
「終わりだ」
 巨大な霊波刀を振りかざす。
「あばよ!!」
 そして、そのままタナトスに振り下ろす。タナトスは避けようともせず、まともに喰らい、大爆発が起こった。
「へ、やったぜ。おキヌちゃん」
 もう、霊力の欠片も残っていない。
「これで、俺は」
 しかし、その顔が徐々に固まっていく。そう、タナトスが爆風と共に姿を現した。
「さすがね」
 爆発の力で顔を覆っていた布が外れていた。
「精神体じゃあ、つらかったけど。やはり、本当の肉体があると便利よね」
 先程よりも、タナトスの存在が感じられる。
「もう少し、肉体を使わずにいたかったけど、仕方がないわね。
誉めてあげるわ、ヨコシマ。私にこの体を使わせたんだから」
 ゆっくりと、横島に近付く。その顔は、英夫達からは見えないが、笑っている事だけは確認できる。
「貴方は、この顔が好きだったのかしら?それとも」
右手をゆっくりとした動きで前にかざす。
「でも」
 横島の体に手を当てる。
「貴方に倒されるなら、それもまた、と思ったけど。どうやら無理なようね」
 霊力で吹き飛ばした。
「殺しはしないわ。貴方はね」
 そして、ゆっくりと英夫達に近付く。
「邪魔よ」
 手を払うと、結界が消し飛んだ。
「ああ?」
 その顔を見た三人が驚愕する。
「ルシオラ、さん?」
 そう、その顔はルシオラに似ていた。いや、それ以上に誰かに似ている。
「違うわ。まあ、似ていても仕方がないか」
と、言って英夫に顔を寄せる。
「ねえ、一つゲームをしない?」
「ゲーム」
「そう。簡単なゲームよ」
と、虚空から剣を取り出す。
「ルールは簡単。一対一で無制限の一本勝負。降参するか死んだら負け。簡単でしょう?」
「え?」
 タナトスは英夫に剣を突き出す。
「何で?」
「さあ、何ででしょう?」
 もちろん、解るはずがない。
「あ、でも、貴方にも景品が必要ね。何がいいかしら?何か欲しいものある?何でもいいわよ」
 しかし、英夫は固まっている。
「あ、こういうのは、どうかしら」
 突然、英夫の首に腕を回し、口づける。
「え?」
 英夫は慌てて飛び下がる。
「あら?こういうのは駄目?」
 その時、突然背後で物凄い殺気が放たれた。
「み、美希………」
 英夫は直立で固まる。
「あら、ごめんなさい」
 悪びれた様子で手を振る。
「じゃあ、そうね。私の正体を教えてあげるわ。私が単なる『悪霊』とかじゃないことくらいは聞いているんでしょう?」
お買い得商品を勧めるかのごとく尋ねる。しかし、
「いや、別に興味ないし」
英夫はあっさり拒否した。
「な、なるほど。そう来たか。うーん」
 しばらく考える。そして、
「そうね。やはり、興味を持ってもらわないとね。仕方がない。前払いで昔話をしてあげるわ。
そちらの方は、多少はご存知のようだけど」
 瑞穂を見る。
「横島忠夫。氷室おキヌ。そして、私。
 この三人に昔、何があったかを」


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