椎名作品二次創作小説投稿広場


速き者達

類は友を呼ぶ


投稿者名:鷹巳
投稿日時:05/11/12

六麻呂は今、果てしなく興奮していた。
バトルマニアの彼にとっては、闘う事は生きていくうえで一番の生きがいだからだ。
頭の中に、スカウトされた時に一角が口にした言葉がまだ耳に残っている。


「世界を・・・壊してみたいと思わない?」


迷う事はなかった。神族のくせにそんなだいそれたことを考えている一角を、六麻呂は気に入ったのだ。なぜなら、自分の『バトルマニア』という性格も一角と同じように神族とはとても思えないものだから。
あの時も興奮したが、今の自分はあの時よりも遥かに興奮している。それはやはり、バトルマニアとしての性がそうさせるのだろう。
八兵衛をあの時殺さなかったことをラッキーに思う。そうでなくては、こうして横島という男に会い交えることはなかったからだ。
コンクリで出来た道路に大穴をあけた一撃をギリギリとはいえ避けた横島を見た瞬間、六麻呂は横島をかなりの達人と認識した。だからこんなに嬉しいのだ。久々い強い相手と闘えると思うと胸が高鳴る。
そう言った思いで横島を見てみると・・・


「うぉぉぉぉぉ文殊ーーーーーー!!出ろぉぉぉーーー!!」
《・・・私は助けを求める相手を間違えたかもしれんな・・・》
「・・・・・・・・・・・・・(汗)」


あきれるほど無防備に文殊の生成をするも、まったく収穫なしの横島の姿がそこにあった。
ほんの少し自分の持つ戦闘における勘が鈍ったのでは、と疑ってしまった六麻呂。自然と額からギャグマンガでおなじみの大きな汗が流れ落ちた。


グラッ・・・!


「!?」


だが次の瞬間に、六麻呂の片耳にだけつけている真っ黒いイヤリングが落ちそうになり、慌てて耳を抑えた。


(ちっ!もう落ちそうになってやがる・・・あの女・・・もう少し丈夫なもん作りやがれ!!)


“あの女”というのがいったい誰なのかは現段階では分からないが、少なくともこのイヤリングが六麻呂にとってとても重要な物であると言うことは、彼の心の中の口調からも察することができる。
戦いに水を差された気分だったが、こんな事で横島とのバトルを台無しにするのも納得がいかず、このまま続けることにした。


「うおぉぉぉぉぉ!!」


そうと決まれば話は早い。すぐに頭を戦闘モードに切り換え、声を上げながら横島へと向かってくる。


《横島クン来るぞ!!》
「な、いきなりかよ!こなくそー!!」


いきなりの奇襲にあせる二人だったが、横島は素早く文殊の代わりにサイキック・ソーサーを生成すると向かってきた六麻呂目掛けて思いっきり力をこめて投げつけた。が、もともと力の差がはっきりしているのは明らか、サイキック・ソーサーは当たりはしたものの、六麻呂のバカ力によって叩き割られたあげくに爆発によるダメージを殺されてしまったのである。


「へっ、こんなもんかよ!」
「マ・・・・・マジ?」


余裕の笑みを浮かべてはいるが、落ちかけているイヤリングのせいで普段よりも思いっきり動く事が出来ない。
横島は横島で六麻呂の力に本気でビビっているし、手元にあるわずか一つの文殊をどう使うかで頭はいっぱいだった。


(どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする!?)


錯乱状態で悩みに悩んだ結果にこめた文字は・・・・・


『速』


「戦略的撤退ーーーーーーーー!!」


ずしゃぁぁぁぁー!!


思わぬ行動に六麻呂はハデにずっこけた。

















《君という男はもう少し真面目に敵と闘おうとは思わんのかー!?》
「やかましー!文殊は出ない、攻撃は効かないんだったらもう他に逃げるしかないでしょう!?」


どこか納得できないところがあるものの、今の状況が前回に引き続きいまだに最悪だと言う事だけは八兵衛も同意できる。
文殊はおろか、普通の攻撃さえ六麻呂にはまったく通用しないのだから、自然と逃げ腰になってしまうのは、仕方のないことなのかもしれない。
さらに八兵衛には、一つの不安があった。


《しかし、この程度で六麻呂を出し抜けるとは思えんのだが・・・》
「大丈夫っスよ。いくらあいつでも、こんだけ速ければ余裕で逃げられ・・・」
「逃げられねーよ!!」


横から突然聞こえてきた声に瞬時に反応するが、時すでに遅く、六麻呂の拳が再び顔面めがけて近づいてくる。まるでビデオのスローモーションのようにゆっくりと迫ってくるように見えた拳は、ついに横島を完璧に捕らえた。

















「こりゃー・・・神力で創った結界じゃねーか!?」


とてつもない気を感じ取り、向かってみた先には、めったにお目にかかることの出来ないほど神々しい結界が堂々と街中に張られていた。おまけに、中ではなにやら騒々しい音が聞こえてくる。
ためしに男は結界に触れた見ることにした。すると・・・


バチバチバチバチバチバチバチッ!!


途端に火花を散らし、侵入を拒む。しかもこの様子だと結界を張ったのはよっぽど強い力を持つ神族だということがすぐに分かる。
別に魔族ならばともかく、神族のすることにいちいち首を突っ込むほど、この男はおせっかいではない。だが、彼がこの結界・・・いや、正確に言えばこの結界の『中』に興味を示す理由は確かにあった。それは・・・


「この霊気は・・・間違いねー、あいつがいる」


確かに自分の良く知る人物の霊気を感じるのだ。


「くっくっくっ・・・燃えてきたぜ!!この結界絶対ブッ壊す!!」


そう言うと、彼の手のひらから強力な霊波砲が放たれる。放った霊波砲が結界に当たり、先ほど触れたときよりも激しく火花を散らす。
衝撃で巻き起こる風が、男の羽織っているコートをなびかせる。
男の名は伊達雪之丞。横島忠夫の親友であり・・・ライバルである男。


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