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ザ・デウス・オブ・ハーツ !!

拙者の扱いは所詮こんなもんでござる……


投稿者名:由李
投稿日時:05/11/12

 手足を霊的な処理が施されているオカルトGメンの特殊拘束具で縛られた横島は、ぶすっとした顔で机を挟んだ目の前の男、西条をこの世の全ての憎しみを携えたかのような目で睨んでいた。















ザ・デウス・オブ・ハーツ
第四話:拙者の扱いは所詮こんなもんでござる……















 ルシオラの身を案じた横島は別荘を離れた後、わざと二日の間をおいてGメンに連絡をとった。もしも対処が早ければ逆天号の回復の前にGメンが別荘に踏み込んでしまうからである。そのことが西条が横島を疑う一つの動機となった。もう一つの動機は横島の変わりようだ。


「……では再三尋問されたことでしつこいかと思うが、この二日間何をしていた?」
「だーかーらー俺は無一文で電話もかけれんしメシも食えんで……」
「では質問を変えよう。君は本当に横島クンか?」
「当たり前だ!」
「ほお。ならばその霊圧の高さを説明してもらおうか」
「だーかーらーそれは俺も知りたいっつーの!」


 尋問は質問の仕方を変えど、この繰り返しに近かった。いい加減耐え切れなくなった横島は美神と連絡をとらせろと言って聞かないが西条がそれをさせない。いっそのこと文珠を使ってやろうと思ったが拘束具のせいか、うまく霊力が練れなかった。
 絶え間なく続いた尋問であったが、横島たちをつんだ護送車はそろそろGS本部に着こうとしていた。





 護送車が停止し、ドアが勢いよく開いた。開かれたドアからは随分久しぶりだった美神令子の姿があった。


「横島クン!?」
「み“か”み“さ”−ん“!会いたかったー!」
「……」
「み、美神さん……?」


 通信で聞いた例の特訓のせいか、美神の顔は傷だらけだった。バンソーコーだらけの顔は横島に会えた喜びではなく、血の気が下がった引きつった顔をしていた。


「本当に横島クンなの?」
「そーっす!早くこの拘束具ほどいてくださいよ!動きづらくてかなわないんだから」
「令子ちゃん。見ての通りだ」
「偽者にしては精巧ね」


 何か話がとてつもない方向に向かっている気がする。そんな気がすごくする!


「さあ連れてって頂戴」
「えっ、ちょっ……どわっ!」

 突如現れた武装Gメンが拘束具で動けない横島をがっちりと固め、その後横島は本部へ連行された。ヒャクメによる五時間の取調べの後、横島はやっと解放された。


(うぅ……ルシオラ、俺は頑張ってるぞ……)


 度重なる尋問にやつれた横島は美神たちから平謝りされたが、しばらく呆然としていた。















 ドアの前でゆっくり深呼吸をした後、自動ドアをくぐる。逆天号の中でも一番広く作られたその部屋の真ん中に、台座に座る男がいた。ルシオラはその男の前まで行くと、深く敬礼をした後、その男の言葉を待った。


「何故呼ばれたか、わかるな」


 高い天井に男の声が低く響く。コールドスリープから目覚めたアシュタロスはベスパの報告に酷く機嫌が悪かった。


「メフィストといい土偶羅といい、お前といい。何故こうも手下に恵まれないのかね」


 ふと台座の傍を見るとバラバラになった土偶羅の姿があった。何故土偶羅が罰を受けたのか知らないが、自分もこうなるのだろうと思った。


「覚悟はできています。アシュタロス様」


 静かに台座に座り、それでも相当な威圧感を放つアシュタロスに臆することなく言い放った。後悔はあったが、今更嘆く気は無かった。横島との短い思い出が短い人生の走馬灯となって頭を巡った。










 司令室に座っている二人は弾まない会話に飽きたのか、先ほどから二人とも口を開いてはいなかった。今度はその沈黙に耐えかねたのか、今までの話とは違い、ルシオラの話をベスパがしだした。


「馬鹿だねえ、あいつも。そこまで強く想っていたなんて……」


 机に両肘をついて手の上にあごを乗せたままベスパは愚痴をはくように呟いた。


「もういいっこ無しでちゅ。ルシオラちゃんは自分が正しいと思うことをしたんでちゅから……」


 パピリオがそういい返すとベスパは椅子から立ち上がり、壊れて手動になっているドアを足で蹴り開ける。そのままパピリオに返事を返すことなく自室へと戻っていった。
 誰もいなくなった司令室で、思わず声を出して笑ってしまいそうだった。誰かに聞かれるとまずいのでなんとかその衝動を抑える。


「ベスパちゃんも似たようなもんなのに、なんでわからないんでちゅかねー」
「ぽー?」


 誰もいなくなった司令室でハニワ兵に語りかけるパピリオは、口元が妖しく歪んでいた。















 アシュタロス対策本部にこっそりと潜入した横島は昼間の美智恵の言葉を思い出して拳を握り締める。
 昼間美智恵に今回の作戦は自分がキーポイントだと聞かされた。その作戦とは霊力がアップした横島と美神との合体により飛躍的なパワーアップをさせるというものだ。そして合体をする際文珠を使い、人間同士の合体の欠点を補うというもの。
 初めて自分が頼りにされている。しかも二人の可愛い女の子に。
 いてもたってもいられないのは仕方ないだろう。修行の為にこうやって美神の例の特訓にこっそり自分も参加したくなるのも仕方ない。


「すまん。許せおっさん」


 こうやって警備員を文珠で眠らせるのも仕方ない。全く持って仕方ない。





 昼間の内に確認した経路を通ってプログラムのある場所を目指す。

 ガスッ ドォン! ドガガガガガ

 どうも令子が特訓しているようだった。ということは美智恵もいると考えた横島は少しだけ戸惑ったが覚悟を決め、プログラムのある部屋のドアを開けた。


「あれ?いない。美神さん一人なのか?」


 いつも美智恵が座っている場所には誰もいなかった。しかし激しい交戦の音は聞こえる。きっと美神さんもじっとしてられないんだろうなあ、と思いきや。


――ひーっ!止め方がわからないでござるー!


 随分懐かしい声が聞こえた。
 頭を抱えながらもスイッチをオフにしてプログラムを止めると、フェンリル事件依頼自分によく懐いている犬塚シロがヨロヨロと出てきた。










「で、なんでお前がいるんだ?」


 椅子に座って幾分呆れた表情を浮かべて横島は質問した。シロは元気よく「遊びにきたでござる!」と言い返したので横島は更に呆れた。横島の様子にシロは慌てて訂正する。


「というのは嘘で、本当は先生のお力になりたいからここまできたんでござる!」
「で、なんでお前がプログラムで死にそうになってたんだ?」
「い、いや、ごーすとすぃーぱーの本部に忍び込んだまではよかったんでござるが、思わずこの修行場が目に入ってしまって……」
「思わずスイッチをオンにして?」
「思わず戦ったの?」
「美神さん!隊長!」


 後ろから声から二人の女性の声が聞こえ、振り返ると令子と美智恵が呆れた表情で立っていた。その後シロはこっぴどく叱られ外につまみ出された。


(くっ……拙者はこんなことで諦めんでござる!)


 シロはまだ出てくるつもりだったが、ストーリーに関係ないのであまり優遇はされないだろう。


「そ、そんな殺生な!」















 数日後、アシュタロスがとんでもないことをしでかした。使い魔のハニワAとビデオテープが本部に届いた。そのテープで核兵器搭載原子力潜水艦を奪取し、令子をある場所にこいと脅したのだ。ご丁寧に衛星の電波をジャックして世界中にこのことを伝えた。もはや令子はアシュタロスの誘いにのるしかなかった。


「私だけ宇宙に逃げるっていう手もあるけどね」
「ちょっ、美神さーん!」
「令子ちゃん!僕たちはどうなるんだい!」
「薄情なのねー!」
「よくそんなことが言えるでござるな!」
「だーわかったわかった!冗談よ冗談!」


 こうして令子たちはアシュタロスのアジトがあるという南極の到達不能極に行かざるをえなかった。ちなみにこの後シロは再びつまみ出された。














 到達不能極。それは人間が最も到達困難な場所としてその名がついた。地球上の地脈が集まるその場所は霊的にも特殊な場所で、魔族のアジトにはもってこいの場所だ。


「ポクについてくるぽー」


 南極に降り立った十三人はハニワAの先導でアジトへと向かった。


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