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ザ・デウス・オブ・ハーツ !!

胸が無いのがいいんじゃない 胸が無いのを気にしているのがいいんだ!


投稿者名:由李
投稿日時:05/11/ 1

「横島クン。今やっと貴方の魅力に気付いたの。今までの貴方への酷い扱い……許してはくれないわね……」
「何を言うんだ令子。君は気付いてくれたんだからそんなの僕は気にしないさっ」
「横島クン!」
「令子ぉぉぉ!」
















 目を開けると古い電球が部屋を薄暗く照らしていた。テレビは砂嵐を映している。枕もとの目覚ましは三時半を指していた。

「……決して期待などしてなかった!俺はそこまでバカじゃないぞっ……寝よ」

 二度目の眠りにつこうと再び目を閉じた横島は、激しく扉をノックする音に完全に目がさめてしまった。

「誰だよ、ったく」

 ぶつくさ言いながら扉を開けると、そこに立っていたのは横島忠夫、自分自身だった。
















 ザ・デウス・オブ・ハーツ    

第一話:胸がないのがいいんじゃない 胸がないのを気にしているのがいいんだ!
















「こんばんは」
「お、お、俺?」
「上がらせてもらうぞ」


 ずかずかと家に入り込んでくる横島。しかし横島の家に横島が入るのは至極当然であってそれを横島に止める権利はない。のか?


「今日は何年何月何日だ?」
「へっ?あ、今日は平成×年×月×日だけど……あ!さてはお前!」


 勝手に冷蔵庫から茶を出し完璧にくつろいでいる横島と、何かに気付いて慌て出した横島。二人は実に対照的な反応をしていて、それを面白がっているような、懐かしんでいるような反応をしているのは部屋主ではない方の横島だった。


「お前未来から来た俺だろ!さてはまた厄介ごと持ち込みやがったなー!」
「気付くの遅えよ。それと俺は厄介ごとを未然に防ぐためにやってきたんだ。勘違いするなどアホ」
「俺はお前じゃどアホー!……んで、厄介ごとってなんだ?」


 お茶を一口飲み、少しだけ間を置いて未来の横島は語り出した。


「いいか?これからお前は大事件に巻き込まれる。……そう心配した顔をするな。その事件でお前は自分の命よりも大切なものを失うんだ。いやそれじゃない。そのエロ本じゃない。俺はお前には違った未来を歩んで欲しいんだ。いや違うな。お前だけの為じゃない。あいつの為にも、だな。そして俺はこれから……死ぬ」


 今まで寝起きの顔だった過去の横島はそこで一気に顔が強張った。未来の横島が言うことは自分にはあまり理解できないことであったが、死ぬ、というのは本気らしい。


「手っ取り早く説明するぞ。俺の魂とお前の魂は全く同一だ。これから俺達は魂レベルでの融合を行う」
「融合!?ちょ、ちょっと待ってくれよ!死ぬだとか融合だとか……俺にはさっぱり……」
「全部理解する必要は無い。いいか?この魂の融合は本当は絶対のタブーなんだ。創造の理を無視した行為だからな。だが俺は神に背いても守りたいものがあるんだ。そしてそれはお前にもじきにできることになるだろう」


 「ここまではいいか?」と未来の横島は言ったが、正直過去の横島は何を言っているのか半分程しか理解できていなかった。一体守りたいものとは何なのか。自分の命よりも重いそれはこれから本当にできるのか。横島の興味はそっちに向いていた。
 過去の横島が返事を返さないとわかると、未来の横島は話の続きを話し始めた。


「これから俺とお前は融合する。そのことによりお前の霊力は相乗効果で今の倍の倍の倍、とにかく強くなる。そして……」
「ちょっと待った!融合したりしたら俺の人格はどうなるんだ?」
「完璧にお前のものだ。俺はわざと出力を抑えてお前の魂に吸収されるようにする。ピッコロと神さまの融合みたいなものだ。記憶もお前のままだ。俺の記憶は抹消される」
「企業の吸収合併みたいなもんか」


 そこまで話すと未来の横島は文珠を取り出した。それは過去の横島が見たことの無い、双文珠だった。


「へ、変な文珠だな」
「俺と融合すればお前も使えるさ。いや、これ以上の力も使えるようになるだろう。お前次第だがな」
「なあ、一体何が起こるんだよ?俺がそれを知ってたら対処できるんじゃないのか?」
「……」


 未来の横島は何か考え込むように俯いたが、吹っ切れたように顔を上げた。その顔はどこか寂しく、過去の横島は無性に切なくなった。


「お前の物語だ。俺はもう、終わってしまった。俺は口出ししないよ。さあ、始めようか」


 双文珠に「融合」という字をこめ、いよいよ融合が始まるという時に、未来の横島は突然笑い出した。その笑い方も、どこか切なく響くのが物悲しかった。


「案ずるな俺!いいか?お前がうまーく事を運べたら憧れの×××が出来るんだぞ!しかも超美少女と!」
「な、なにぃぃぃぃ!!!!それは本当か!!!!!」
「自分に嘘をつくか!あんまり胸はないんだが、しかし胸がないのを気にしていることがポイント高い!」
「おー流石俺!よくわかってるじゃないか!」
「泣くかもしれんぞ?死ぬかもしれんぞ?それでも、いいか?」
「俺の煩悩をなめるな!そんな美味しい話を聞き流せる程人間出来とらんわあぁぁ!」
「そうか。そうだな。じゃあ、あばよ」
「……おう」


 閃光が狭いアパートの一室を埋めた。眩い光に目をくらませた横島は、自分の体に熱い何かが流れ込んでくるような感覚を感じた。身悶えするような刺激に頭を抱えて苦しむ横島は、半ば気絶のような感じで眠りについた。夢と現実の狭間、未来の横島が「頼んだぞ」と言ったような気がしたが、それは定かではない。


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