椎名作品二次創作小説投稿広場


俺の生きる意味

第五話


投稿者名:時計うさぎ
投稿日時:05/ 7/26


大木の中心に彼らはいた。
ひっそりとその中の一人が口火をきる。


『ウルド、いったいどうゆうつもりですか。我々に黙って彼に“あの力”を与えるなど』


『そや、どうゆーつもりなん?バランスがくずれるやないか』


抗議の声にウルドは澄ました顔をして知らぬ顔をする。


『貴女は世界の崩壊を導く危険因子を生み出したのですよ、自分が何をしたのか本当にわかっているのですかっ』


『…何をあんさんは企んでるのや』

『聞いているのですかっウルドっ!』




『くす…あなた達は何を恐れているの?私は我が主の願いを叶えただけ』

ウルドは妖艶な笑みを浮かべて言い放つ。



しばし沈黙が訪れる。






『はぁ…ちょっとは我々の苦労も考えてくださいよ…調整はとても難しいのですよ?』

『そや、わいらの苦労も考えてほしいわ』

淡々と言うウルドに二人は呆れたよう半ば脱力気味に文句を言う。


『ふふ、それがあなた達の存在理由でしょ?私は我が主の楽しみのために……申し訳ないけど彼には踊ってもらうわ』

まったく申し訳なさそうには見えず、むしろ楽しげに笑いながら言うウルドに二人は見合わせてひっそりと呟く。


『この女は悪魔や』
『この女は悪魔ですね』









一方そのころ彼は、一人の突然の来客による話に見事固まっていた。


前回の汚い部屋を掃除し、リフレッシュ空間をつくった横島だが、ただたんに物が減っただけである。
しかも自分で掃除せずに隷属にさせている。
初仕事が汚い部屋の掃除であることに彼らは凹みながらも、任務を成功させた。
原型がなんなのか分からない物体Xを処理したり、害虫駆除などをして勇敢に戦った。
横島など、見たくもないとさっさと近くの公園に避難した。
そんなな避けない主を見ても、忠誠する思いは変わらない健気な彼ら。

何はともあれ、順調に関係と絆を深めているようだ。



「…………」

「…ちょっと横島君、聞いてる?」

美知恵が焦れたようにたずねる。

「えっ…あのもう一度言ってもらえませんか?」
はっと思考の渦に呑まれていた横島は聞き返す。

「だから、講師をしないかって話よ、六道学校のね。あぁ…そうだった、免許は私がゴーストスイパー協会に申請しておいたから、はい、これが免許よ」

「あっすいません、お手数おかけして…で俺…が講師ですか?」

本気ですか、と訝しげに聞く横島。

何を言っているのだ、この女。

俺が講師だと?
ふざけるなよ、メンドクサイ。
誰がやるかっ。


と内心の思いに蓋をしめ、やんわりと断ろうとする。

「講師なんて無理ですよ」

「うーん…れがねぇ…私も是非ともGメンで横島君の力を借りたくって本当は話したくないんだけど、あの人には借りがあるからねぇ」

「はぁ…講師の件はともかく、Gメンに入らずに力を貸すぐらいならいいですよ、もちろん金はもらいますけど」

「あら、講師は?女子高よ?」

意外そうに眉を上げて、再度確認する美知恵に横島は半ばウンザリした思いで対応する。
ルシオラ以外の女など興味ない。


「えぇ、まぁ…メンドクサイことは嫌いですから」

「あら、やだ…絶対に引き受けると思ったのに…なんか変わったわね…つい最近あったときはそんなことなかったのに。どうしたの?」

「まぁ…人は変わる生き物ですから」

もう自分は人間じゃあないけど。

「俺は当たり前のような平凡な毎日と穏やかな日々、そしてほんの少しの幸せを望むだけです」

それも、ルシオラが復活すれば叶う。

もうすぐ彼女が蘇る。

もうすぐ愛しい彼女に会えるのだ。





「そう…幸せ、ね」

美知恵はふっと何かに耐えるような表情を見せ、そっと呟く。

「…ねぇ…私があなたの幸せを奪ってしまったわ…本当に申し訳ないと思ってるのよ、ごめんなさい」



そんな美知恵に横島は言う。

「見くびらないでほしいな、あれは俺と彼女の決断であんたの考えに従った覚えはない。彼女がそれを望み、俺が決定を下したんだ」

そう、それは何人にも犯されてはいけない絶対的な領域であり、俺たちの想いの結晶でもある。



「ふふっ本当に強くなったのね、横島君。令子とは大違いね」

「そうっすかね」

とぼけた返事を返す。


その後、美知恵から仕事の依頼を受け、打ち合わせは後日という形になった。












横島は夕日を見ながら、己の影を優しく撫でながら言う。


「早く生まれてこいよ、ルシオラ」






それに答えるかのように影が揺れた。







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