全く、我ながら自分の行動力に感心する。
突然の告白から30分後、私は都心のホテルでシャワーを浴びていた。
もちろん、アイツと最後まで行くために。
アイツは今、ベッドで放心している。
無理もない。
何か言おうとするたびに、アイツの唇は私の唇でふさがれたのだから。
ゴメンね横島。
あなたを黙らせるのに、今はキスしか思いつかないの。
ゴメンね横島。
あなたの気持ちは、今はあまり重要じゃないの。
ゴメンね横島。
あなたと最後まで行きたいのは、私の我が儘。
決して、彼女を裏切ったなんて考えちゃダメよ。
そして・・・
御免なさいルシオラ。
でも許してね。
必ずあなたを産んであげるから。
余命が1年ならばギリギリ間に合うから。
だから、お願いよルシオラ。
私が死んだ後、横島を寂しがらせないでね。
意を決し、私はシャワーを止めた。
・・・よし。
バスタオルを巻いた姿を鏡で確認する。
これならば、有無を言わさずセクシーだ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
しかし、バスルームから出た私を迎えたのは無人のベッド。
ブチッ
「ヨ・コ・シ・マァァァ・・・・女に恥をかかす気ぃぃぃ」
久しぶりに殺意を覚えたけど、それもすぐに収まる。
ベッドの上に置かれた封筒に気付いたからだ。
―――魔法・・・、解けちゃったかな・・・・・
中身の検査結果は彼と共に姿を消していた。
検査をした病院に向かうと、玄関から彼が出てくる所だった。
「バレちゃったようね・・・」
アイツは困ったような顔で、私を見つめる。
医師の守秘義務も彼には無意味だ。
その気になれば彼は人の記憶をコピーできるから。
「でも、誤解しないでね。さっきのは私の本当の気持ちだから」
「・・・・・・・」
「ずっと前から、あなたのことが好きだったの」
「・・・・・・・」
「こんな事にならなきゃ、口に出せないなんて自分でも嫌になるけど・・・」
「・・・・・・るな」
「私にとって、余命1年はシンデレラの魔法なの。だから12時の鐘が鳴るまで、横島・・・」
「あきらめるな!」
突然の大声に私は言葉を失う。
横島、私のために泣いてくれるの?
「そんなの美神さんらしくないじゃないですか。そんなの俺の好きな美神さんじゃない」
ありがとう横島。
その言葉だけで十分・・・
「俺の好きな美神さんは、我が儘で、冷血で、強欲で・・・」
・・・十分殴る理由にはなるわね。
握り拳を固めた私に気付かず彼は続ける。
「意地っ張りで、不器用で、でもそこが可愛いくって、たまに優しいし、美人でイイ体してるし・・・」
一応、褒めてるのよね・・・多分。
固めた拳が徐々にほどけていく。
「だーっ、何を言っているんだ俺は。とにかくどんなピンチでも、いつも反則スレスレで何とかしてきたじゃないですか」
彼は私の肩を抱くと、いきなりキスをしてくる。
不器用だけど心のこもったキス。
不思議なことに、これだけで私は一切の不安から解放されてしまった。
「俺が何とかします。だから俺を信じてあきらめないで下さい」
あぁ、ルシオラ。
あなたもこの気持ちを味わったのね。
今ならあなたの気持ちが理解できる。
そして断言できる。
あなたは不幸じゃなかった。
「そんな風に言われたら期待しちゃうじゃない・・・」
私は彼に抱きつき泣いた。
死ぬのは誰だって怖い。
特に、幸せを手に入れたばかりの私には・・・
だから、彼を信じて最後まで足掻いていこう。
それだけの勇気を彼の抱擁は与えてくれた。
彼は黙って私の髪を優しくなでてくれる。
その心地よさに、私は目をとじて・・・・・ん?!
・・・・・・・・・・・密着した下腹部に感じる強張り。
ハァ・・・
やっぱりアンタにロマンチックは似合わないか。
私は小さくため息をもらすと、彼の耳にそっと囁く。
「で、スルの?シナイの?」
「お・・・お願いします」
あーあ、最後で台無し。
でも、仕方ないよね。
そんな所も全部含めて、私はアンタが大好きなんだから。
終
稚拙な投稿に最後までお付き合い戴きありがとうございました。
この後、横島は美神さんの病気をなんとかしちゃいますが、
機会があれば別な文体で書いてみたいと思います。
勇気を振り絞っての投稿でしたので、コメントをくれた方には
非常に感謝しています。ありがとうございました。
それでは、お目汚し失礼しました。 (UG)
ただ、文書の書き方や表現等、また各章の話の掘り下げが少し足りないかな?
と言う気もします(簡単に言うと消化不良?)
でも、全話を読み返すとこれはこれで良くまとまってるかも?・・・と言う微妙な線です。
そして、最後がまた微妙・・・
これはこれで良いと思うんです、思うんですけど折角美神が素直になって幸せをつかめる!
と言う状況で、実際にその幸せの部分がかかれていない!
これは、作者様から読者へ「あとは各自の脳内保管でみんなの好きに想像してね。」
と言うメッセージなのでしょうが・・・
それも良いのですが、やっぱり書いてほしいと言う一面もありまして(^^;
わたしとしては、そこがちょっと寂しいかなぁ?とおもいました。
上記の理由もろもろも含めて、今後に十分期待と言う事で
あえてB評価とさせていただきました。(本来ならAでも良いと思います)
そのうち、このお話の続きが掲載される事を祈っています。
(もちろん、全然別の新作でもOKです)
でも、全編を読んでほんわかと幸せ、そしてちょぴり切ない気持ちにさせていただきました。
すごい良かったと思います。
UG様の次回作に期待します。 (tomo)
素直になった美神、最後に美神を励ます横島。なんかすごく「らしい」です。
また新作のほうを書かれましたら、そちらのほうも楽しんで読ませていただきます。
やっぱ下ネタがなきゃ横島じゃないよね(笑) (堂旬)
朝方にコメントを読ませていただき、その温かい言葉に一日中にやけていました。
自分の書いた創作に感想をいただけるということがなんとも新鮮で、そして
今後の励みとなりました。心から感謝します。ありがとうございました。
tomo様
コメントを読ませていただき、参考になるのと同時に大変ほんわかとした
幸せな気持ちになりました。
ヒロインが王子と結ばれ、めでたしめでたしで終わるのがお伽噺の良いところだと
思いますので、後日談はまた別の物語で紹介できればと考えています。
ただ、この王子様は何足ものガラスの靴を持っているんですよね(笑)。
この話の続きを書くには、まだ文章力が妄想に追いついていないので
のんびり取り組んでいきたいと思います。
練習のつもりで全然違う題材に取り組むかも知れませんが、今後もよろしく
お願いします。
堂旬様
最後のオチを気に入っていただけて嬉しく思います。
原作で一番笑ったシーンは、ルシオラ達と別れ男前になった横島が
偽物あつかいされ拷問を受ける所でして・・・。
あのような面白さを文章で表現したいと思っているのですが、
現状の文章力では難しいですね。
しばらくは短編で投稿に慣れたいと思いますので、今後もよろしくお願いします。
(UG)
美神さんの一人称で通してあるのが特徴的ですが、無理に表現をひねらずに、揺れ動く恋心を素直に彼女自身の言葉で語らせるのも良いものだと思いました。
短い文章の中で、恋心の自覚、ルシオラの思い出による逡巡、死病の宣告による行動開始、幸福な結末の予感と、きちんと構成されていると思います。
人情話のラストをちょっぴりお下品に落とすのも、UGさんらしい個性の表れですね。 (夏みかん)
もどかしさというのは書くのが難しいのではないかと思われます。
他の作品の方も拝見させていただきます。
ごっつあんでした。 (相棒?豊)