椎名作品二次創作小説投稿広場


ツンデレラ


投稿者名:UG
投稿日時:05/ 7/21

 全く、我ながら自分の行動力に感心する。

 突然の告白から30分後、私は都心のホテルでシャワーを浴びていた。

 もちろん、アイツと最後まで行くために。

 アイツは今、ベッドで放心している。

 無理もない。

 何か言おうとするたびに、アイツの唇は私の唇でふさがれたのだから。

 ゴメンね横島。

 あなたを黙らせるのに、今はキスしか思いつかないの。

 ゴメンね横島。

 あなたの気持ちは、今はあまり重要じゃないの。

 ゴメンね横島。

 あなたと最後まで行きたいのは、私の我が儘。

 決して、彼女を裏切ったなんて考えちゃダメよ。

 そして・・・

 御免なさいルシオラ。

 でも許してね。

 必ずあなたを産んであげるから。

 余命が1年ならばギリギリ間に合うから。

 だから、お願いよルシオラ。

 私が死んだ後、横島を寂しがらせないでね。

 意を決し、私はシャワーを止めた。


 ・・・よし。

 バスタオルを巻いた姿を鏡で確認する。

 これならば、有無を言わさずセクシーだ。

 「・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・」

 しかし、バスルームから出た私を迎えたのは無人のベッド。

 ブチッ

 「ヨ・コ・シ・マァァァ・・・・女に恥をかかす気ぃぃぃ」

 久しぶりに殺意を覚えたけど、それもすぐに収まる。

 ベッドの上に置かれた封筒に気付いたからだ。


 ―――魔法・・・、解けちゃったかな・・・・・


 中身の検査結果は彼と共に姿を消していた。




 検査をした病院に向かうと、玄関から彼が出てくる所だった。

 「バレちゃったようね・・・」

 アイツは困ったような顔で、私を見つめる。

 医師の守秘義務も彼には無意味だ。

 その気になれば彼は人の記憶をコピーできるから。

 「でも、誤解しないでね。さっきのは私の本当の気持ちだから」

 「・・・・・・・」

 「ずっと前から、あなたのことが好きだったの」

 「・・・・・・・」

 「こんな事にならなきゃ、口に出せないなんて自分でも嫌になるけど・・・」

 「・・・・・・るな」

 「私にとって、余命1年はシンデレラの魔法なの。だから12時の鐘が鳴るまで、横島・・・」

 「あきらめるな!」

 突然の大声に私は言葉を失う。

 横島、私のために泣いてくれるの?

 「そんなの美神さんらしくないじゃないですか。そんなの俺の好きな美神さんじゃない」

 ありがとう横島。

 その言葉だけで十分・・・

 「俺の好きな美神さんは、我が儘で、冷血で、強欲で・・・」

 ・・・十分殴る理由にはなるわね。

 握り拳を固めた私に気付かず彼は続ける。

 「意地っ張りで、不器用で、でもそこが可愛いくって、たまに優しいし、美人でイイ体してるし・・・」

 一応、褒めてるのよね・・・多分。

 固めた拳が徐々にほどけていく。

 「だーっ、何を言っているんだ俺は。とにかくどんなピンチでも、いつも反則スレスレで何とかしてきたじゃないですか」

 彼は私の肩を抱くと、いきなりキスをしてくる。

 不器用だけど心のこもったキス。

 不思議なことに、これだけで私は一切の不安から解放されてしまった。

 「俺が何とかします。だから俺を信じてあきらめないで下さい」

 あぁ、ルシオラ。

 あなたもこの気持ちを味わったのね。

 今ならあなたの気持ちが理解できる。

 そして断言できる。

 あなたは不幸じゃなかった。

 「そんな風に言われたら期待しちゃうじゃない・・・」

 私は彼に抱きつき泣いた。

 死ぬのは誰だって怖い。

 特に、幸せを手に入れたばかりの私には・・・

 だから、彼を信じて最後まで足掻いていこう。

 それだけの勇気を彼の抱擁は与えてくれた。




 彼は黙って私の髪を優しくなでてくれる。

 その心地よさに、私は目をとじて・・・・・ん?!




 ・・・・・・・・・・・密着した下腹部に感じる強張り。




 ハァ・・・

 やっぱりアンタにロマンチックは似合わないか。

 私は小さくため息をもらすと、彼の耳にそっと囁く。

 「で、スルの?シナイの?」

 「お・・・お願いします」

 あーあ、最後で台無し。

 でも、仕方ないよね。

 そんな所も全部含めて、私はアンタが大好きなんだから。



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