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極楽人生

初めてのアルバイト


投稿者名:BJL
投稿日時:05/ 7/13

 ここはそこら辺に良くある会社の通路。
 今回はここで仕事をすることになった。
 しかも、新しいパートナーおキヌを連れてのだ。
 彼女にとっては初めての仕事である。
 そして、彼女はやる気満々。
 これに不都合など有り得ないだろう。
 なにせ、彼女には目標が有るのだから。
 お金を貯めてある事をしようとする意気込みはすばらしいと思う。
 なんせ、自分を成仏させる為に働くのだから。


 もうお気づきかもしれない。そう、この話はおキヌがまだ幽霊だった頃の話である。




「今日の仕事場はここよ」
『大きい・・・』
 おキヌがはしゃぐ勢いで建物を見る。
 それを見ながら少なからず苦笑をする美神。
「ここですか・・・」
 目の前に有る三十階はあるだろう。
 横島はそんなビルを見上げる。
 一見しては何処も異常は見られない。
「除霊の方ですね?お待ちしていました!!」
 ビルの自動ドアがゆっくりと開き、四十代の男性が出迎えた。
「どーも」
「早速ですが、除霊の方をよろしくお願いします」
「わかりました。で、悪霊はどちらに?」
「このビルの何処かです」
 男ははっきりと言いきった。
「はぁ?」
「いえ、悪気が有って言っているのではありません。
 悪霊の出る場所がこのビル以外には決まっていないんですよ」
 美神は眉をしかめた。
(これは時間がかかるわね)
 なんせ、三十階もある建物である。
 それに比例するように部屋の数も多いいときた。
 見ただけで誰でも溜め息は吐くだろう。
「今まででの目撃場所とかは分かりますか?」
「ええ」
「何処ですか?」
「一番最初の目撃場所は2階の喫煙席です。二回目が5階のフロアで、三回目が18階と19階の階段辺りと、四回目が――」
「って、ちょっと待って。全部バラバラじゃない。
 しかも、統一性が無いし」
 美神は愕然とした。
(これは1から捜すしかないわね)
「では、除霊の方よろしくお願いします」
 男は深々と頭を下げた。


 今居る場所は13階のロビーである。
 先頭が美神で見鬼くんを持っている。
 次におキヌ。横島という順番だ。
 もうかれこれ二時間は経つ。
『何も起きませんね』
 おキヌが何気なく言う。
「そうね」
 もはややる気が0に近い美神。
「はぁはぁ」
 重い荷物を持っている為、階段の上り下りがとても辛い。
 今にも倒れそうな横島。
 三人はロビーで一旦休憩をすることにした。


 三人はここに有る自動販売機でジュースを買って飲んでいる。
 もちろん横島は自動販売機の横に有る水道水で我慢。
 おキヌちゃんは幽霊だから飲む必要は無い。
 必然的に美神しかジュースを飲んでない。
「すいません美神さん。
 トイレに行ってきていいっすか?」
 大量の水を飲んだ為、少し尿が近くなったようだ。
「・・・・良いわよ。ただし、速く帰って来なさい。
 いつどこで出るかわからないんだから」
「はーい」
 そして、横島が去った後、おキヌが美神に聞いた。
『あのー、美神さん』
「なに?」
『トイレって何ですか?』
「・・・・あ、そうか!昔はトイレなんて言わなかったわね。
トイレって言うのはね。昔で言うかわ――」
 急に美神の目つきが鋭くなった。
 ぴこぴこぴこぴこ
 見鬼くんに反応が現れた。
「どうやら来た様ね」
『ドこ?ワタシのオ人形はドコ?』
 女性の幽霊だ。
 見た目は二十代後半くらいだろう。裸体ではなく、会社の征服を着ている。
『み、美神さん!?』
「慌てないでおキヌちゃん。
 横島クン神通棍を!!」
・・・・・・
「って、あのガキャー!!」
 横島はトイレに行ってる。
 当たり前荷物を持っているのは横島だ。
『オオー。ワタしノオ人形はドコなノー!!』
「やば、おキヌちゃん至急横島クンを連れて来て!!」
『はい!!』
 おキヌは飛びだった。



「どこだートイレは?」
 一刻も速くトイレに駆け込みたいのだが、なかなか見つからない。
「うー、速くせんと漏れてしまう」
 うろうろとまるで放浪者のように動き回っている。
「頼む有ってくれ」
 悲痛の思いで、角を曲がった。
 そこには天国の領域が待っていてくれた。
――ああ、神様ありがとう。
 横島はすかさず駆け出した。
 グキュルグキュルグキュル
 急に走り出した為、お腹が悲鳴を上げる。
「う、うぐぅぅぅ」
 慌ててお腹を抱え込もうとして、足がもつれてしまった。
「あああぁぁぁ」
 悲鳴とも聞き取れる声を出しながら転倒した。
ドカシャ
「は、はぅぅぅぅぅ!!」
 こけた=腹に手を置いていた=お腹を押え込む=中身を押し込む。
 そんな悲劇が今ここで起こってしまった。
 血涙を出しながらなんとかふらつく足を立たせようと頑張る横島。
「ん?」
 っと、そこで横島はある物に気が付いた。
 植木鉢の後ろに何かが置いてあった。
「何だ?」
 立った時には植木鉢が邪魔で死角になっていた。
「ウサギのキンホルダー?」
 横島は指でその人形を摘み、一瞬ポカーンとしたが、今の状態を思い出した。
「うぐ、だ、誰か落としたんだろう。後であのおっさんにでも渡しとくか」
 そう言って、横島はウサギの人形を丁度ウサギの顔が出るように胸ポケットに入れた。
 そして、横島は天国の扉を抜けた。


「はあぁぁぁぁぁ」
ジョボジョボジョボ
 横島はこの時至福の時間を十分に堪能していた。
ジョボジョボジョボ
『あ、横島さんやっと見つけ・・・』
「え!?」
ジョボジョボジョボ
 おキヌは横島の顔の少し上から突然現れた。
 もう、絶好のポイントだ。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
 二人は無言でお互いの顔を見た。
ジョボジョボ
(は、速く終わってくれ)
(ど、どうしよう。えーと、えーと・・・)
 おキヌが引っ込めば良いのだが、あまりの出来事におキヌは混乱していた。
ジョボジョボジョボ
『え、えーと』
 ふと、おキヌは横島の胸ポケットに有るウサギの人形を見た。
『か、かわいいですね』
ジョボジョボジョ
 横島から見ればおキヌの見ている角度は・・・・
ガ――ン
 横島の顔が見る見る内におもしろい色に変わっていく。
『よ、横島さん。美神さんが危ないので速く来てくださいね』
 少し心が落ち着いたのか、おキヌは用件を言って逃げだした。
ジョボ・・・
 ブルッと横島の身体が震えた。
 そのままチャックを締め、洗面台に行き手を洗う。
 パッパッと手を震い手に付いた水を振り払う。
 そして、廊下に出て窓を開けて息を吸い込む。
「・・・・男は大きさやないんやー!!!!」


――END――

 おまけ


『ワタしのオ人形はドコー!?』
「そんなの知るかー!!」
 美神令子は追い掛け回され中だった。


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