椎名作品二次創作小説投稿広場


俺の生きる意味

第四話


投稿者名:時計うさぎ
投稿日時:05/ 6/13


はぁはぁ
荒く息をする横島。
全身にびっしょりと汗をかいて、ヒクッヒクッと弛緩する身体を押さえるように自分の身体を抱きしめ、喘ぐように言葉を紡ぐ。

今のは何だったんだ?この渦巻く感情は何だ?俺の身体に何が起きた?



ぐるぐるっと靄のように俺のココロに渦巻く感情。…

コレハナンダ?

何故か殺気立つ。


「これは…」

呆然と目の前のウルドに問う。


「覚醒したみたいね…どう?気分は?」

「覚醒?ふん、気分が悪い…ぐるぐる渦巻いてるぞ?」


口調がいつもの横島と異なっている。
“力”の関与のため、人格のほうでも多大な影響を及ぼしたことが分かる。


ウルドは気にすることなく、マイペースに話を進める。

「必要だったのよ…ソレは貴方が元々持っていたモノよ。…人間には特に多いのよ、眠っているモノがね…貴方はそれが負の感情だったの…閉じていた扉を開くために必要な儀式だったのよ」


「負の感情…?」
どういう事だ?

「貴方は子供のように純粋な心を持った人よ、穢れを知らないキレイな心…羨ましいくらいにね…でも、今の貴方にはそれが仇となって貴方を内から崩壊する因子に…。」


「純粋ねぇ…で、どういうことだ?」

わけが分からないという顔をする横島。

「貴方はルシオラさんの魂を分けてもらったわよね…それで貴方の魂と魔族の魂が交じり合った…その結果、貴方は人の魂と魔族の魂を持つ人間になった。魔族としての本性に…今はまだ平気かもしれないけれども、いずれ限界がきて耐えられなくなる…だって貴方は穢れを知らない、負の感情をしらない人間だから…必ず耐えられず壊れるわ。暗黒の力を持つことで貴方はソレに耐えられるようになり、使いこなすことができる…それこそ貴方に必要な力…だから貴方はあの紙を引いた…」

あの紙とはあのおみくじのことだろうか。

「…………俺はどうなる?」

「貴方は人間じゃあなくなったわ……まったく人間でもなく、神族でもなく、魔族でもない…新しい存在に…」



人間じゃあなくなる?

子供をつくれるのか?

ルシオラはどうなる?

新しいこの力で生き返せないか?

ルシオラにもう一度会えるならば、俺は怪物にでも何でもなってやる。

彼女をもう一度、抱きしめられるならばどんなことだってする。



「…この力で…ルシオラを…生き返すこと可能か?」

低く震えそうになる声を抑えて聞く。

「“ルシオラ”だけなら可能よ」

「?」

「正しく言うなら貴方が愛した“ルシオラ”ではなくまったく新しい“ルシオラ”ではあるけどね」

「どういう事だ?」

「魂の欠片が少なすぎて記憶が伝承されないからよ。だから生き返った彼女は彼女であって、貴方の知っている彼女ではないのよ。彼女が貴方を昔のように愛するとは限らないし、昔の貴方が愛した彼女ではなく“ルシオラ”という女性の容姿をした別人といっても過言じゃないのよ?」

「………」

「それでも彼女を生き返したい?」

妖艶に微笑みながら聞くウルドは悪魔のように横島は思えた。

「……それでも俺は…アイツを生き返したい…愛しているんだ…誰よりも」

…行き場の無くなったこの“想い”



…人間とは愚かな生き物だ……本当に大切なものは失って初めて知る。



これは俺のエゴだ…俺のために彼女を生き返そうとしてる…。



だが彼女のいない現実に途方のない喪失感と絶望を覚えるより、己の欲望に素直になったほうがいい。


ふっと何かを吹っ切ったかのように清々しい笑みを浮かべる横島にウルドは聖母のように微笑んで言う。

「分かったわ、じゃあ生き返しましょう」

「どうすればいい?」

「意識を集中して“力”を使うの…あなたはもう使い方を知ってるはず」


ウルドに言われて、そっと意識を集中させる。

胸の奥にばら撒かれた感情、広がる思い。



『我は望む、我に応えよ“ダークソウル”』


横島の呼びかけに応えるように黒い靄が横島の胸から出てくる。

ぼぉ

その黒い靄をそっと両手に収め、徐々に黒い靄が成長し大きくなる。

黒い靄がやがて大人ほどの黒い繭のようなものになる。
横島はそっとそれを床に置き、己の胸に手をやり胸の奥に腕を潜り込ませ、己の魂の欠片を媒介にルシオラの魂を再生してゆく。
足りないものは“ダークソウル”の力で補い、魂の生成を行う。

そして満足のいく大きさに育った魂を黒い繭のようなものに押し入れる。

魂が入った瞬間、繭が動き横島の影の中に入っていく。

「ッ?」

「時期が来れば“彼女”は生まれるわ…それまではあなたの影の中で成長する…生まれたら名を与えてあげて」

「分かった…」

「で、話は変わるけど貴方の隷属はもう生まれているから名を与えてあげて」

「?…どこにいるんだ?」

「貴方の影の中よ?呼びだせば出てくるわ」

「呼びだせばって…まぁいい、でてこい」

影から13の隷属がでてきた。
その形はプチサイズの黒い竜でそれぞれ瞳の色が違った。。

「黒竜…?」

「貴方は竜と相性がよかったのね。彼らは人間の姿にもなれるから便利よ?」

「彼ら?」

「隷属といっても貴方の分身のようなものだから、みんな男なのよ」

「へぇ…まぁ人間の姿になってみろよ、名前をやる」

その声に従い、人間の姿に変わる。
皆、黒髪だったけど竜と同じ目の色と背丈と雰囲気は違った。
個性ってやつか?


「ブルーの目のヤツが徹」
のっそりとデカイ、無口そうな感じのヤツで、オレの言葉にコクンと頷く。

「緑の目のヤツが春樹」
にこにこっと笑っていて中性的な感じのヤツは、にこにこしてよろしくと言う。

「薄いピンク色のヤツが優」
一番背がちっこくて大人しそう、嬉しそうに自分の名前を呟いてる。

「薄い紫色のヤツが咲」
女みたいな顔してるヤツは咲かぁって満足げに笑ってる。

「赤目のヤツは陣」
一番でかくて、こえぇ顔して仏頂面。

「金色の目のヤツが明」
優等生って雰囲気のヤツは分かりましたって言ってる。

「茶色の目をしてるヤツが刹那」
明るくて悪戯小僧って感じ。

「ピンクの目のヤツが皐」
女装がよく似合いそうなやつ…可憐な顔でコクンってうなずく。

「オレンジの目のヤツが高志」
活発そなやつで元気に頷く。

「灰色の目のやつが彰人」
物静かでにこりともしない、根暗そうなやつはコクンと頷く。

「水色の目のやつが太一」
ぴょこぴょこと落ち着きがない、好奇心旺盛ってやつ?

「赤黒い目のやつ彩」
ぽけぇーっとしてる、眠そうな顔をしてるヤツ。

「黒目のやつが時雨」
大人って感じの雰囲気で、物静かで優しそうな顔をしてる。

『マスターこれからよろしくお願いします!』

声をそろえて挨拶される。

「よろしく…」

隣でウルドが楽しそうにくすくすと笑っていた。

何かムカつく。


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