椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

これからどうなる?


投稿者名:核砂糖
投稿日時:05/ 5/29




・・・何が起こった?




・・・どうなったんだ?




どうして・・・・


「おい、シロ。ふざけないでくれよ」


なんでコイツが・・・倒れている?


「冗談はよしてくれよ!!起きてくれ!目を開けてくれよ、おい!!」

横島は突如倒れこんだシロを抱きかかえ、呼びかけるが彼女はぐったりと四肢を投げ出し、その美しいまぶたを閉じたまま、ぴくりともしない。
その様子はまるで・・・まるで、今まで嫌なほど目にしてきた・・・

死体のようだ。

「なんでだよ!さっきまで元気に・・・」
彼はがくがくと彼女を揺さぶり、必死になって彼女に目覚めてもらおうと努力していたが、それは全くもって意味をなさず、ただ、彼を追い詰めるだけだった。

「ちょっと・・・アンタ!落ち着きなさいって!」
突然の事に一時あっけにとられていたタマモは、突然シロを抱えて外に飛び出そうとする横島を腰にすがりつくようにして押しとどめた。

「何すんだよ!早く、早くどこか医者に連れて行かないと・・・シロが!」
「そんなに力垂れ流して外に出るつもり!?そんなんじゃ5秒後には神族や魔族にシロ共々八つ裂きにされるだけよ!」
「な、ぐっ・・・くそ!・・・・。何で、何で皆俺の前で・・・畜生、畜生・・・シロ、パピリオ、美神さん、ルシオラァ!!」
「きゃぁ!」

爆発するが如くの霊力の増加に、タマモは堪らず弾き飛ばされた。しかし、その程度で怯む彼女ではなく・・・「いいかげん落ち着き・・・なさい!!!」




ごぅん










「・・・」
「・・・」

突然倒れたシロ。その事に横島は普段の彼からは想像もできないような驚き具合で大慌てした。

最終的にシロを抱えたまま表に飛び出しそうになるのを、何とかタマモが巨大な狐火で押し留め、その後彼女がドクターカオスを呼び出した。
そしてむっつりとしたタマモと焦げ臭い横島はシロをカオスとマリアが検査している隣の部屋にて、見つめているうちにだんだんベルリンの壁のように思えてくるちゃぶ台をはさみ、何とも言えない沈黙を保っていた。

ちゃぶ台に座布団が設置されている、何時もは明るいはずの茶の間が、やけに肌寒い空間に感じられた。




「アンタ・・・想像以上に頼りないのね」

「ぐ・・・」
やがて沈黙を突き破り、横島とちゃぶ台を挟んで座っているタマモが冷徹な言葉を吐いた。
横島ははっきり言って先ほどの醜態は自分でも恥ずかしいというか、何もできていなかった自分に憤りさえ覚えていたのでぐうの音も出ない。

しかし、再び訪れる沈黙に、何か言わなくてはならないような気がしてきたので少しながら胸の内を語った。
「・・・昔、いろいろ有ったんだよ。
そのせいで、シロが倒れた時頭ん中が真っ白になっちまってな。

・・・・わりぃ」
しかしタマモは吐き捨てるように言う。
「馬鹿じゃないの。
大事なときに判断を誤ればその時の二の舞になるのよ?

アンタってチカラばっかり強くなっても中身はてんで変わってないみたいね」

「・・・!」
何も言い返せず、横島は唇をかんだ。
「・・・はぁ。どうやらシロに甘やかされていたみたいね。私はシロと違う。だから言うわ」

タマモはちゃぶ台に身を乗り出し、少し間を置いてから人差し指をびしりと横島に突きつけて言う。
「何時までもウジウジしてないで前を見なさい前を!確かに過去の事を忘れるのはムリだしむしろ悪い事よ。
でもね、自分の時間を過去に固定している場合じゃないのよ!!人生ってのは長いようでも実は一瞬で脆くて儚いの。見たところあなただってそれを知ってるでしょう?

だったら自分に出来る事を今できる限界までやりなさい!!



・・・そうじゃないと、また後悔する事になるわよ?


勿論そのために誰かの助けを借りてもいいわ。むしろ他人を利用する勢いじゃないと上手くはやれない事もあるしね」


・・・正論だった。
「・・・・そうだな。自分が情けなくなってくるよ」
横島は俯いてこぶしを握り固めた。ただ、落ち込んで何も出来ない自分が酷く情けなかった。

「なら、今出来る何かしなさいよ」
彼女はそんな彼の自虐的な思考を読み取り、追い詰めているとも励ましているとも取れる微妙な言葉を叩きつける。
彼の事を容赦ない目線が貫きつづけた。

横島はしばらく何かを考えていたが、小さく口を開く。
「それなら・・・」
「シロを頼む?」
言うと思った・・・そんな目だった。そして明らかにその申し出を快く思っていない目であった。
タマモの目が更に鋭くなる。しかし、今までとは打って変わり、横島は怯まなかった。
「わかってるなら話は早いな。あいつも眠ってるしこの際いい機会だ。単刀直入に言おう。
急にタマモがやって来たもんだからうやむやになっちまってたが、丁度俺は、ここを去る準備をしていたんだ。
それとタマモがここに来るようになってからシロのことを頼もうとずっと考えていた。

それに、今回の事は俺の取り巻き関係じゃなかったけど・・・はっきりとシロに危険があるって事を思い出させられたよ。俺、何平和そうに暮らしてんだよって。

この隠れ家も永遠にバレないはずが無い・・・。それでもし誰かが俺を始末しに来たとき、シロを危険な目にあわす事は出来ないんだよ。

・・・シロのためなんだ。頼む」
真剣なふうで頭を垂れる横島を見て、タマモは心底あきれたような声を出した。
「シロのため?なにそれ。
それによってシロがどう思うか、解からないの?」
親友が、この男に会うためだけに血の滲むような努力を積み重ねるのを間近で見てきた彼女に、どうして今の横島の申し出を受け入れることが出来ようか?

怒りのあまりタマモの周りにパリパリと霊気の渦が巻き始める。
しかし、横島は譲らなかった。スパークする霊気に皮膚の一部を削られながらも。
「頼む・・・・・この通りだ。


アイツを・・・・死なせないでくれ」
切り札とばかりに出されてしまった『親友の命の危険』と言うカード。
更にタマモの前での、床に額を擦らんばかりの土下座。
そこまでされては、流石のタマモも彼の必死さが解かってしまい・・・

「・・・・ちっ。解かったわよ。最低男」
ちゃぶ台の上に上半身を伏せながら言った。
「わりぃ、恩に着る」

「後、どれ位いるつもりなの?」
彼女はしばらくちゃぶ台に伏せたまま黙っていたが、おもむろに口を開いた。
「決めていない・・・。でも近いうち、かな」
彼はそう返し、彼女は「そう」と短く言った。




(・・・あ〜くそ。また自分を甘やかしてるよ俺)
横島の方はそう思いながら内心舌打ちをしていた・・・。

でもまぁ・・・シロのことが好きなのだからこう思ってしまうのも当たり前か。ってそれがいけないんだよ・・・













あれ、確か拙者は先生とタマモと食事を取っていたはずでござる。
それなのになぜ、拙者は布団で寝ているのでござろうか?

?、?、

「う、ん・・・」
「お。目覚めたか」
彼女が目を覚ますと、目の前に
「わぁ、ミイラ!!」
「誰がミイラじゃ!!」

「・・・全く失礼な奴じゃな。ま、それだけ元気なら心配は無いな」
ミイラもとい、カオスはそういってため息をつくと、共にいたマリアと一緒に実際は殆ど使わなかった医療道具を片付け始めた。
それを見て、シロはやっと自分に何が起こったのかを思い出す。
「拙者は・・・倒れたのでござるか?」
「思い出したか。そうじゃ。お前さん突然ぶっ倒れたらしくてのう。あの横島の小僧の慌てっぷり、見せてやりたいくらいじゃ」
「イエス・ミスタマモ・なだめなかったら・ここ・飛び出していた」
「そうそう。あのまま放って置いたら大変な事になってたわよ。全く・・」
騒ぎを聞きつけたタマモが隣の部屋から入ってくる。
「か、かたじけない」
シロは頬を赤くした。
そして、ただいまの話題の本人がいないという事に気付いた。


「あれ、先生は・・・。

あ、そうか・・・。照れているんでござるな・・・・」
何故か、下腹部に手を当て頬を染めるシロ。

その行動に、その場にいた全員が固まった。

「あの・・・シロ?何やってんの?」
やがてタマモがおずおずと口を開くと
「え?いや・・・だから・・・倒れたって言う事はお決まりのあのパターンって事でござって、拙者のお腹には先生とのあ、愛の結晶が・・・って何言わせるでござるかタマモッ!」

やたら『って』と言う言葉を連発しつつ、きゃぁ、とでも言う風に掌で顔を覆うシロ。
しかし、周りの反応は微妙だった。
「あ、あのさシロ。残念だけどあんたが倒れたのはただの・・・・」















「・・・・えいようしっちょう?」
「そうじゃ。って、自覚無かったのか・・・。推測するにお主、ここで暮らすようになってから人間にとって普通の食事・・・つまり前のお前さんからしたら明らかに肉類を欠いた食生活を送っておったじゃろ?
それがいかんかった。人狼と言うのは大量の肉類、特に生肉を摂取してないとこういう栄養失調を引き起こすんじゃ。ま、安心せい。今愛しのだ〜りんが天狗の所からいい薬を盗って来るところじゃ・・・・・ってどうした?」

「あぅぅぅ・・・・」











「うぅぅ〜。拙者はぁ〜〜」
ただの体調不良をつわりと勘違いと言う衝撃(笑撃)の事実発覚以来、シロはずっとがっかりと恥ずかしさで布団に突っ伏したままだった。
そのあまりの落ち込みようにタマモがずっと付いているのだが、いかせん。中々効果が無い。

ごろごろと布団に中を転がる転がる、掛け布団を抱きしめてみたり、その下に潜ったりと、相当の駄目っぷり。
昔と違い、スレンダーな大人の体を持つシロがそんな事をしているのを見ると、タマモにはやるせなさのあまりため息がこぼれた。それはシロに対する情けなさと・・・

(こんな娘を、アンタは置いてくって言うの?)



しばらくして、未だに布団の中であうあう言ってるシロがいいかげんもどかしくなったタマモは
「ねぇシロ。何時までも落ち込んでないでさ元気だしなさいよ」
「・・・」しかし返事もせず布団にもぐりこんでいるシロ。
「くよくよ悩むなんてアンタらしくないわよ」
「うるさいでござる」
ようやく、答えらしい答えを返し、シロは布団の端から顔を出した。
「でもまぁ、タマモの言う事にも一理有るでござるな・・・」
そのままムクリと起き上がる。
「くす・・・それでこそ・・・「タマモ、そこに置いてある薬箱と裁縫箱を取ってくだされ」・・・え?いいけど・・・」

『・・・シロね』と続けようとしたタマモは突然セリフを遮られ、きょとんとした顔をするが、言われた通り、薬箱と裁縫箱を手渡した。
「有り難うでござる」
受け取ったシロは薬箱からはとある箱を、裁縫箱からは待ち針を取り出すと
「この間はきっと穴が小さすぎたからいけなかったのでござるな。
それならば今度はこちらの太めの針にするでござる。失敗は成功の元、日々これ精進♪」

ぷすぷすぷす・・・

「・・・・・・・。」
先ほどから開いた口が塞がらないタマモは・・・・生まれて初めてこの親友の事を、恐ろしいと思った。


ぷすぷすぷす・・・。
「くすくすくす・・・」





やっている事は恐ろしい・・・しかし、無邪気(か?)な笑顔で、只好きな人ともっと強く結ばれたいと(やや暴走気味に)一心に思う所は昔からぜんぜん変わっていなくて・・・


――――横島には悪いけど・・・やっぱり私はシロにつくわ。上手くいけば・・・面白くなりそうね。あいつはすぐ出て行く気らしいけど・・・あの腐抜けた様子じゃしばらくはだらだらと居座りそう・・・チャンスね。

タマモはシロと一緒に無邪気(か?)な笑顔を浮かべた。
「ねぇシロ、それじゃぁさぁ」
「ん?何でござるかタマモ?




二人のつり上がった口の端からは、鋭くとがった犬歯が覗きキラリと妖しく輝く。
そう彼女らはハンターなのだ。

ただただ、一途にな思いで相手の事を何処までも地の果てまでも追いつづけるハンターと
あの手この手で人を欺き、気付かれないうちに首に縄をかけるぐらいぐらい朝飯前の知恵を持ったハンター。

こんな連中に目をつけられてしまえばああ、もはや諦めるしかない。いかに魔神といえども逃げ場も無いであろう。




そして、結局・・・・・・


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