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そして続く物語

光あれ


投稿者名:ゼロ
投稿日時:05/ 5/ 5

 あの子を憎みたくなんてなかった。
 けれど私の信仰が、私の受けた神の教えがそれを許さなかった。
 あの子を怖がりたくなんてなかった。
 けれどあの子の顔を見るたびに私を犯したあの男の姿がフラッシュ・バックしてくるのだ。
 いっそ、この目を抉ってしまえる勇気があれば良かったのかもしれない。
 それでも、あの子が他の人間に傷つけられるのを見たくなかった。
 生まれてきた理由がどうあれ、あの子にとっての母が私だという事は永遠なのだから。







 竜の襲来から3時間は経っただろうか。既にオカルトGメンは北上してマンハイムに向かった部隊を除いて全員戦闘不能になっていた。
 第一中隊とGS達とジークフリードが連携して竜をこの場に釘付けにするものの、次第に疲労が溜まっていくのはどうしようもない。
 それでも、竜の咆哮による威圧と毒のブレスによる麻痺で動けない住人たちの収拾と避難の為に彼らは戦い続けていた。
 前線で戦う者達は緊張と恐怖と霊力の酷使によって力を使い果たして1人、また1人と倒れていく。
 その度に手の空いている兵士が彼らを1kmほど離れた場所に待機している避難用の輸送トラックに運んでいく。
 人類側の戦力は確実に先細りしていく一方で、竜から感じ取れる魔力と威圧感に衰えは見られない。
 唐巣とリンツが焦りを感じ始めていた瞬間に、彼らが待ち望んでいた報告が飛び込んでいた。

「隊長。負傷者並びに担当区の生存者の救助、無事終了いたしました!」

「よくやった。これより救護班は民間人を護衛しつつ結界まで全力で後退、攻撃班は支援攻撃せよ。
 彼らの避難が終了次第、空軍に要請を出す。あと一息だぞ、お前ら、何が何でも踏ん張って見せろ」

「「「了解」」」

 何度も傷を負わせてもその度に回復していく竜を前に、疲れと恐怖を感じ始めていた兵士達の顔に生気が戻る。
 その瞬間、絹を裂くような叫びが響いた。

「西条さん!」

 その声に唐巣が振り返ると、いつのまにか移動していた竜の目の前で西条が地に伏して血を流している姿があった。

「西条くん!?」

 それを見止めた瞬間、唐巣の口は叫びをあげ、その足は彼のほうへと走り出していた。
 もしもここで竜が彼に止めを刺そうとしていたのならば、間違いなく西条の命は消えていただろう。
 だが結界が消えた事で目的を果たした魔竜はその注意を横島達へと戻し、
 西条の生死を確かめずにそのままジークフリードと横島の許へ飛び立っていく。

 その隙を縫って唐巣は西条の許まで辿り着いた。ざっと見たところ流血はあまりない。
 幸いにも爆発に巻き込まれたにも関わらず、殆ど破片が突き刺さらなかったようである。

 しかし、彼の脈を取った瞬間、唐巣の顔が凍りついた。
 心臓が停止している。
 すぐさま心臓マッサージを開始しようとした瞬間、爆風が吹き荒れて唐巣の体勢が崩れる。
 それほど離れていない場所にいる竜の姿。
 急いで彼を抱きかかえると、唐巣はリンツの後方の衛生兵の居る場所まで駆け抜けた。

「これから霊力を使って心臓マッサージを行います。人工呼吸をお願いします」

 西条の体を地に横たえながら衛生兵に呼びかけると、彼は霊力を掌に限界まで高めて心臓マッサージを始めた。
 圧迫によって心臓に衝撃を与えると共に、掌から放出された霊波が彼の体を駆け巡って体液を循環させていく。
 これによって霊力が尽きるまで、脳死の可能性は低くなった。
 しかし、異なる波長の霊波を流し続けると彼の体に重大な損傷を与える事となる。
 唐巣はマッサージを続けながら、大きな声で西条に呼びかけた。

「西条くん、息を吹き返すんだ。君がこんなところで死んでいいはずがない!」

 しかし、掌から伝わる心臓は微動だにしない。

「頑張れ。アシュタロスにだって負けなかった私達だ。今回だってきっと無事に切り抜けられるよ」

 神よ、この勇敢で気高き魂に、貴方の御手を差し伸べください。
 唐巣は内心で祈りながら息遣いも鼓動もない肉体に呼びかけ続ける。
 ………けれども、応答はない。
 次第に迫りくる絶望的な想像を振り払いながら手を動かし続ける。 
 衛生兵が困惑した顔を向ける。常識ではもはや蘇生不可になる時間が過ぎたのだろう。
 霊力で循環を促しているとはいえ、この状況ではもはや………
 次の瞬間、唐巣は吠えた。己の不甲斐なさと、この世界の過酷な運命に抗うように。

「神よ!!」
  
 最大級の霊波を放出しながら、唐巣はその掌を肋骨を砕かんばかりに力を入れながら叩きつける。
 その時、今までとは異なる感触を感じた。
 心臓が動き出したのだ。
 それを理解した瞬間、あまりに強い感情が唐巣から思考を奪い去り、彼は抑えきれない激しい衝動に任せて絶叫した。

「あっ、ああ、あああぁぁぁぁっぁ!!」

 頬に伝わっている熱い雫。ほんの少しだけぼやけている視界。
 それを拭おうともせずに唐巣は西条を衛生兵に託すと立ち上がった。

「彼をお願いします」

「任せてください。この人は決して死なせたりはしません。たとえ私の命に代えましても」

「それは困ります。貴方の命もまた尊いのですから」

 微笑みながらそう告げて竜を見る。
 既に状況は相当悪化していた。
 横島は文珠を使い果たし、もう同期合体用の2つがあるのみである。
 現在はジークフリードが奮戦しているものの疲れは隠せない。
 その一方で、竜の魔力に衰えは感じられない。
 だというのに、状況はどんどん絶望的になっていくというのに、
 この身に際限なく力が宿っていくのは何故なのだろうか。

「神よ、感謝します。今、私は貴方の御言葉を、貴方の御力を、そして貴方の愛をすぐ傍に感じております」
  
 そう呟きながら歩き出そうとしたところで、軍の通信機が世界GS本部からの通信が入った事を知らせた。
 唐巣がそれを聞き終わると、住民の救助が終了してあと数分トラックを発射させられるとの叫びが聞こえた。
 避難者を治療しているおキヌ達の許へ真っ直ぐ向かうと、唐巣は彼女達に声をかけた。

「おキヌちゃん、八代さん、このトラックに乗って先に結界まで避難しているんだ。
 あちらにもまだ大勢の負傷者がいる。君たちは彼らの治療に当たって欲しい」

「唐巣先生と横島さんたちはどうなさるのですか?」

「君たちが逃げている間は足止めだよ。すぐに私達も逃げるけどね」

 押し込むように2人をトラックに乗せると、唐巣は笑顔でそう告げた。
 先ほど世界GS本部から下された指令の事などおくびにも出さずに。

 ドアが閉じられ、2人の視界から唐巣の姿が遮られる。
 その直後、最後に残っていた避難者全員と負傷者達を満載にした輸送トラック達が整然とした車列で出発した。
 全員が一息ついて緊張を解いた瞬間、竜の咆哮が彼らの耳に飛び込んできた。
 竜の姿が見えなかったせいで、不意打ち気味にその咆哮を受けた彼らの心は瞬時に縮み上がった。
 再び襲い掛かる心臓を鷲掴みにされるような恐怖。
 そのあまりにも大きな圧迫感のせいで却って避難者達は気絶する事も出来ずに、震え上がるばかりだった。

 ついに耐え切れなくなったものが絶叫を上げて泡を噴く。
 それが口火となって、トラックの中の閉塞感も手伝い、幼い者達の緊張の糸は容易く断ち切られた。

「わあああああぁぁん」

 泣き声が輸送トラックから響き、次々と伝染していく。
 極度の緊張と、恐怖で抑圧されていた精神が弛んだ瞬間に、襲い掛かってきた竜の咆哮が追い討ちになってパニックが発生したのだ。
 それはまず未熟な子供たちを襲い、次いで大人を、軍人すらも侵食しようとする。
 動揺は運転手にも伝わり、整然としていたはずのトラックの車列が蛇行を始めた。

「危ない!」

 おキヌの叫びに咄嗟にドライバーはハンドルを切り返してあやうく隣接車と接触しそうになっていた状況を立て直した。
 あちらこちらで似たような光景が繰り広げられている。
 このままでは事故が起こるのは時間の問題であった。
 破滅が目前に迫ったその時、あるトラックの中にいた人々の頭に歌が聞こえてきた。


──────その手には闇を払う黄金の剣
         悲しみと決意の空より来たりて 激情と一途な想いを糧に
         友の流した灼熱の血より生れ落ちた ただ一振りだけの剣
         それは 今 彼の者の手の中にある


「!?」

 それはアシュタロスの事件の直後に、世界中で大流行したアニメの主題歌だった。
 人類が団結し、少年少女や精霊や人型の妖怪達が武器を手に取り、
 世界を滅ぼそうとする悪魔達と戦う姿を描いたそのアニメは瞬く間に世界中で大ヒットしていった。
 あの事件で、人類を滅ぼしうる存在とその恐怖を知ってしまった人々は、
 それでも、その圧倒的な脅威を撃退できた事を思い起こさせてくれるそのアニメに夢中になったのものだ

 そのあまりにも有名な歌は子供たちの注意を引いて、彼らの泣き声を止める。
 その勇壮な調べは、次第に恐怖に苛まされていた人々の心に染み渡り、ほんの少しずつ勇気を呼び起こしてゆく。

「歌ってください!」

 誰かが叫んだ。直後に、そう叫んだ誰かも歌に加わる。


──────剣を振るう彼の者は涙に濡れた紅い目で 
         血の池を生み出す闇を睨む
         其は闇を払う黄金の剣を持つ紅い目の戦士
         それは誰もが聞いた御伽噺 誰もが笑う夢物語
         けれどそれはもう目の前にある 


 子供たちは泣くのを止めて、その歌を紡ぎだした。
 トラックの立てる騒音に負けず、可憐なソプラノが奏でるメロディーが唱和していく。


──────今なら私は信じられる あの剣が指し示す未来が見える
         仲間達の差し出す手を取って 私も一緒に走り出そう
         私と貴方で勇気を差し出し 戦士にこの想いを届けよう


 子供の体を抱きしめていた大人たちもそれに合わせだした。
 いまや歌声は全てのトラックから聞こえてくる。


──────彼の者へと続く果て無き道
         その道を辿って勇気を彼の許へ運んだ時
         我らの目には光に満ちた大地が映る


「退却中にアニメ・ソングか。隊長が知ったらなんと言うやら」

「きっと誉めてくれるさ。『お前達は、勇壮に退却して護るべき者を守った』ってな」

 そう言いながら傷ついた兵士やGSやまだ意識がある者達も、無線を開きながらその歌声に聞き入った。
 歌詞を知っている者は拡声器を手に窓から身を乗り出して歌いだす。


──────指を上げて指し示す木々の間に光る海
         同じ夢、同じ血をわかちあう仲間たち
         たとえこの道がやがて暗闇に続くとしても
         私はもうひとりじゃない


「『ひとりじゃない』か………当たり前だろ、畜生め。
 誰一人として死なせるもんかよ。絶対向こうまで無事に連れていってやる!」

 ドライバー達はその調べを聞きながら、プレッシャーと動揺を抑えこむ。
 いつの間にかトラックの車列は整然となり、一路結界を目指して走っていく。


──────そうさ 未来はいつだって
         私と貴方と共にある
         この大地がどこに続いていても 
         この道の果てがどこに至ろうとも
         共に歩む仲間がいる 共に歌う仲間がいる


「八代さん、お疲れ様」

 おキヌは、能力をフルに使い続けて疲労のあまり倒れこんだ秋美に膝枕をした。
 送信を介せば言語の壁を越えて意思を届けられる秋美の能力だからこそ、子供達は頭の中に響いた歌声にすぐに反応したのだ。
 彼女の機転にはいくら感謝しても感謝しきれない。

 突如、歌が途切れて歓声が聞こえてきた。
 窓から外を見ると、先頭のトラックが結界を越えたのが見てとれた。
 次々にトラックが安全圏に避難していく。
 その光景に涙を浮かべながらおキヌはこの場にいない者達を想った。

「横島さん、皆さん。どうかご無事で」






「隊長、吉報です。救護班の撤退が無事完了したそうです」

 その途端にいっせいに歓声が巻き起こる。リンツも僅かに顔を緩めるが、指示を飛ばすのを休めない。

「よし、直ちに空軍に出動要請を出せ。
 全部隊集結しつつ集中攻撃をかけるぞ。いまからオールウエポンフリーだ。
 遠慮はいらん、ありったけ叩き込んでやれ。あと五分稼げればそれでいい!」

「了解!」

 その指示のもと、第一中隊温存していた破壊力と対象範囲の広い兵器が次々と火を噴いていく。
 竜が気を取られた隙を狙って、ジークフリードが霊波砲を放って竜の攻撃を封じ込めていく。
 唐巣達が結界を張って竜のブレスを防御する。

 しかし、その連携攻撃ですら竜はものともしなかった。
 オカルトGメンの結界装置の妨害が消えて空に飛び上がれるようになった竜は、地上へ向けて急降下する。
 破裂音に似た音が響き、大量の土砂が撒き散らされる。
 土煙が消えると、数メートルの深さのクレーターが出現していた。

「被害状況は!?」

「人員に被害なし、自走式対空砲並びに迫撃砲の60パーセントが大破」

「拠点防御中止!
 各自、散開して塹壕に身を潜め、移動しつつ間断なく攻撃を仕掛けろ」

 その声に兵士とGS達が散っていく。
 火力は弱いが多方面から浴びせられる銃弾と霊波の嵐に竜は苛立ったようにブレスを撒き散らす。
 それをGS達が残り僅かの使い捨て簡易結界を張って防いでいく。
 

「空軍だ!」

 誰かの叫びと共に、皆が一斉に空を向く。
 遥か彼方の空に、彼らの希望の象徴である戦闘機F16が6機編隊で向かってくるのが見えた。
 戦闘機群が編隊を変化させて左右に展開し、U字型を描いていく。

「全員伏せろ、衝撃波がやってくるぞ!」

 ミサイル発射を悟ったリンツの声に、ジークフリードも含めてその場に居るもの全員が伏せた。
 直後に轟音と熱と衝撃が奔る。

「やったぜ、くそったれ」

 誰かが歓喜の声を出し、それに同調する声が次々と聞こえてくる。
 そして、衝撃波が通り過ぎたのを感じて唐巣達が顔を上げると、
 その視界には魔竜が健在のまま大地を踏みしめ空を睨んでいる姿が映し出されていた。

「な、んで?」

 唖然としたある兵士が呟く声が聞こえてくる。
 その時、横島の脳裏には過去にミサイルを無傷で防いだ敵の記憶が蘇ってきた。

「F16の編隊が旋回している。すぐにミサイルによる再攻撃がくるぞ。全員、再度防御姿勢を取れ」

 リンツの号令が飛び、呆然と竜を見ていた者達は慌てて頭をさげる。
 その中でリンツや横島らの数人は、伏せた姿勢のまま目は竜を睨み続けた。
 やがてミサイルが再び竜に発射された時、彼らは見た。
 6機の戦闘機から放たれた12発のミサイルを竜が凌ぎきった光景を。

 竜は前方と左右から向かってくるミサイルをひきつけてから地を蹴ると、
 その巨体からは信じがたいスピードで飛び退きながら炎を吐いた。
 高速で飛来したミサイルは、或いは大地に命中し、或いは炎の中で誘爆し、或いは竜の体を掠めるような位置で爆発する。
 しかし威力を抑えた通常弾頭のミサイルでは、強靭な魔竜の鱗に守られた竜の核を破壊するには至らない。
 全身に傷を負いながらも、魔竜の体は既に回復を始めている。

「何故、静止状態からの初動であんなに速く動けるのだ………」

「魔力の大量放出の気配が感じられました。
 地面を蹴る際に大量の魔力を消費する事でありえないはずのレベルの加速を得たのでしょう。
 竜族の中には、超加速とでもいうべき技を使う存在がいると伝えられています」

 唐巣が苦い顔で説明しながら竜を見つめる。

「しかし、それでもミサイルを防ぎきったなど、目の前で起きていなければとても信じられん」

 呆然と呟くリンツに横島も顔を青褪めさせながらもある事を告げた。

「………こいつよりもパワーの少ないハエの魔族は、
 宇宙空間で発射されたミサイルを爆発させないように受け止めて、
 更にミサイルのベクトルを反転させた事があります」

 月の周回軌道でのベルゼバブとの攻防では、あるレベル以上の魔族が核ミサイルすらも無効化する事を示していた。
 そして今、ベルゼバブやメドーサを凌駕する戦闘力を持つ魔竜は、
 防御力と身体能力と魔力を駆使してミサイルの直撃を避けてのけたのだ。
 その時、竜とミサイルの様子を観察していたジークフリードが言った。

「どうやらあの魔力放出による瞬間的な高速移動は一瞬しか出来ないようです。
 しかも一度行えば、数秒はかなり動きが鈍るようですね。
 でなければ、我々はとっくに高速移動による攻撃によって全滅しているはずです」

 あれほどの巨体が、実物よりは遥かに遅いとはいえ、超加速を思わせる動きをするとは思わなかった。
 そういえば小竜姫もメド−サも人型の時にしかあの技を使わなかったか。
 説明しながら、ジークフリードは超加速を使える彼女達の事を思いだしていた。

「あいつが今までそれを僕達に使ってこなかったのは、僕と横島さんがいたからですね。
 文珠の『模』の効果を知らないやつは、高速移動で片方を倒しても、動けない間にもう片方にやられる事を恐れたんでしょう。
 せめて今グラムが使える魔力が残っていれば、やつを倒す事が可能かもしれないのに!」

「司令部へ通達。空軍の第一次攻撃班のミサイル爆撃は失敗した。
 ターゲットは傷つきつつも健在。現在その傷を回復させつつある。
 どうやらターゲットは瞬間的にはおそらくマッハを越える速さで移動ができる模様。
 しかし、一度高速移動後に、数秒から数十秒の硬直時間があると思われる」

 ジークの説明を聞きながら、リンツは後に出撃する兵士達のために少しでも多くの情報を送ろうとする。
 
「了解。これより、ターゲット殲滅のために第二次攻撃の規模と編成の考案に入る」

 司令部との交信中に、更に状況が変化する。
 ミサイルを撃ちつくしたF16のうち、一機が果敢にも肉薄していった。
 音速を超えて飛行するF16の姿は華麗で残忍な猛禽類のようだった。
 それは舞い降りる鷹の如く竜に接近しながら、備え付けの20mmバルカン砲を浴びせかける。
 弾丸が次々に竜の体に着弾して、竜が咆哮する。
 その瞬間、パイロットがその咆哮と共に音速で放たれた魔力を浴びてしまったのだろう。
 機体が揺らいでその体勢を立て直そうとした所へ、竜が吐き出した巨大な火焔が迫り来る。
 咄嗟に機首を上空に向けて方向転換して直撃を避けたものの、その戦闘機は不具合を起こしたようだった。
 上空に舞い上がるとF16はそのまま彼方へと飛び去っていく。

「あれでは、接近するのは不可能だ。
 どんなに優れたパイロットでもある程度以上の霊力か、心霊装備を持たなければ不可視の竜の咆哮を防ぐ術は無い」
 
 戦闘機が次々と降下して低空飛行を始めると、編隊を解いて全方位から魔竜に肉薄していく。
 しかし、ミサイルをもかわした竜は、唐巣達という足枷のせいで動きの制限された戦闘機を物ともしない。
 機銃による射撃は竜の外皮を貫けず、咆哮が発せられるたびに竜の近くにいる機体の挙動が、パイロットの心が不安定になっていく。
 数分後、なす術もなく全てのF16は上空に舞い上がり、そのまま飛び去っていった。


 落胆とため息がその場を支配した。
 最新鋭の戦闘機すらも跳ね除ける魔竜の力にその場にいた者達の心が折れていきそうになる。

「空軍は………撤退ですか」

「おそらく、竜についてのデータを取り終えたので、第二次攻撃に備えて帰還命令が出たのでしょう。
 あの頑強な鱗を持つ竜が相手ではミサイルのない戦闘機には有効な攻撃オプションは残されていません。
 あれではこれ以上この場にいても、むざむざとやられるだけです。撤退はやむ終えない判断でしょう。
 ………恐ろしいものですな、竜の咆哮というのは。歴戦のパイロットの戦意と集中を一瞬で打ち砕いてしまうとは」

 それを知りつつも落ち着いた声で尋ねる唐巣に、リンツも淡々と答える。

「EU諸国が次にとるべき方策はどのようなものが考えられますか」

「次は大規模な第二次攻撃が全方面から、戦闘機だけでなく攻撃用ヘリなど空軍や場合によってはNATO軍の総力を挙げて行われるでしょう。
 しかし、NATO軍やドイツ空軍が到着する間、やつは当然ライン川沿岸を自由に飛び回ります。
 それを防ぐには、この地に通常弾頭の短距離ミサイルを大量に打ち込むぐらいしか手は残されておりませんが、
 それを実行するための政治的な合意が、第二次攻撃の前に結ばれるとは思えません。
 このままでは、第二次攻撃で竜を仕留める間にどれほどの被害が出る事か………」

 リンツは言葉を切ると歯を食いしばって竜を睨む。
 ここに至っては取れるべき手段など殆ど残っていない。カタストロフの発生は時間の問題だった。
 剛毅な彼をして絶望感が心を侵そうとするのを跳ね返す術がなかった。

「では、竜に対する足枷として我々がここに残りましょう」

「唐巣神父!?」

 その言葉にその場にいた全員が彼を見た。

「あの竜が今までこの場を動かなかったのは、霊団と同じように私達の霊力に惹かれていたからでもあります。
 それはあたかも光に群がる虫のような習性です。だからこそ我々がその光を放ち続ける間は、竜はこの場から動きません。
 我々がこの場で足掻き続ける間は、少なくともライン川の沿岸の別の流域への被害は抑えられるでしょう」

「しかし、GSの皆さんがこんな事に命をかけるような義務はございません」

 淡々と告げる唐巣にリンツは必死になって反論した。中隊の兵士達も皆その言葉に頷く。
 その言葉に、唐巣は不思議な笑みを浮かべた。

「先ほど、オカルトGメンが北上した部隊を除いて全滅したとの報を受けて、世界GS本部が即座に指令を下しました。
 『現地にいるGSの資格を持つものは事態解決の為に最善の努力をせよ』と。
 それを受けて、先ほどの輸送車に乗らずにこの場にいる者は皆、死力を尽くして竜を足止めする義務を負いました」

 なおも食い下がろうとしたリンツの耳に、通信係からの声が飛び込んできた。
 彼は急いで通信機に向かって、応答する。

《司令部から第1中隊………撤退せよ、撤退せよ》

「こちら第1中隊………救護班は負傷者並びに避難民を連れて撤退を開始、現在安全圏への退避が完了した」

《これは君たち全員への命令だ………第一中隊に所属するものは全員直ちに撤退に移れ》

 リンツは無線に向かって大声で怒鳴った。

「民間人の保護を命じられた我々が、霊能力者とはいえGSの方々を置いて逃げられるはずが無いだろうが!」

 そう言いながら、リンツは手を振って残存部隊を最適の防御拠点に移動させる。

《君達がいて何が出来るというのだ!ミサイルを防ぎきった化け物相手に犬死するんじゃない!》
      
「撤退?何を馬鹿なことを。
 我々にとって、護るべき者を残して戦場から背を向けるというのは最も卑劣な行為だと教えたのが軍だったはずだ。
 …………我々に下された任務の撤回はされてはいない。撤退はそれを果たした時だ。
 それとも司令部は改めて指令を下すのかね?
 ライン川沿岸の人々のために命がけで戦っているGSの皆さんを見捨てて我々だけで撤退しろ、と」

《………》

「それにGSの皆さんはまだ諦めちゃいない。彼らに対して撤退せよとの命令も出てはいない。
 ならば1%でもその確率を上げるために、そして彼らが生還する手助けとなるために、
 最後までこの場に留まるの事が、我々の負った任務である『民間人の救出と護衛』を果たし、
 同時に軍人としての務めを全うする手段であるはずだ」

《撤退するつもりはないと?》

「今から逃げ出したところで、この状況では竜に後背を突かれて死ぬ可能性が高い。
 撤退を遂行するのならば、たとえ効果がないとしても航空戦力による支援がないともうどうにもならん。
 ミサイルが空振りに終わった瞬間、我々が無事に撤退できる可能性は殆ど無くなったのだよ。
 どうせ助かる望みがないのなら、犬死にするよりも戦死したほうがましだ。
 それとも、先ほど竜の咆哮によって戦意を喪失して撤退した戦闘機に戻るように言ってくれるのか!?」

 尤もあの戦闘機を全て失えば第二次攻撃までの時間が一時間は遅れて竜による被害はその分膨らんでいくのだがね、
 そう言いながらリンツが双眼鏡を覗き込んだ。
 既に魔竜は健在振りを示すかのように翼を広げて飛び立つと、去り行く戦闘機に炎のブレスを吐いている所だった。

《わかった………諸君はその場で軍人として最も適切だと思うことを為してくれ》

「了解。司令部に伝えてくれ。第1中隊は少しでも多くの時間を稼いで見せます、と」

 リンツが交信をしている頃、唐巣は世界GS本部の指令を全員に告げた。
 皆、覚悟を決めた眼差しで彼の言葉に頷いていく。もう殆どがその内容を知っていたようだった。
 素早く要点を話し終えると、唐巣は青褪めた顔でこちらを見つめる横島に告げた。

「聞いたとおりだ、横島くん。我々はこの場に留まる事になる。けれど切り札である君には逃げ延びて欲しいのだけれど」

「唐巣さん。俺と同期合体をすればまだ勝機が!少なくとも時間は稼げるはずです」

 その提案に唐巣は首を振った。

「西条くんが言っていたように私と君では同期合体がスムーズにいくかどうか不安がある。
 合体を経験した事のある美神くんが相手ならばともかく、
 私とではお互いが吸収されないようにシンクロを制御するのに時間がかかる可能性が高いよ。
 そして失敗した場合、次に同期合体が使えるようになるのは、君が文珠を二個生成してからだ。
 それを待っている間にも竜の襲撃と戦闘機によるミサイル攻撃でライン川の流域は壊滅するだろう」

「し、しかし、このままでは、唐巣さんたちは…………」

「膨大な量の魔力の後押しがある不死身の竜を倒すのは困難だ。私達の今の戦力では不可能といってもいい。
 でも倒す事は出来なくとも、竜の体からとラインの黄金の呪いを分離させる事は可能かもしれない。
 その二つを引き離しさえすれば、竜はライン川に沈んでいる黄金から送られてくる魔力を失って、その力を著しく弱めるはずだ」

 横島の言葉を遮って話す唐巣の言葉にその場に残っていたGSの何人かが頷いた。

「今から、我々の全てを賭けて分離を試みる。
 どうしても逃げないのなら、君は私に集まる霊力の制御を補助して欲しい」

 その言葉には並々ならぬ覚悟が込められていた。

「唐巣さん、まさか命を………」

「何を言ってるんだい。アシュタロスに比べればこれしきの敵、どうという事もないよ」

 笑いながら横島に答えると、唐巣は両手を広げてGS達に呼びかけた。

「皆さん、今からあの竜の核となっている黄金を、竜から分離します。
 そのために大量の霊力が必要です。皆さんの残存している霊力を私に向けて放ってください!」

 唐巣の顔が、その声が、全身から溢れるエネルギーがGS達を否応なしにひきつける。
 死を覚悟してここに残っているGS達は知っていた。現状では、どう足掻いてもあと30分以内に全滅すると。
 ならば勝算はどうあれ、雌雄を決するべく唐巣と共に博打に出るしかない。
 彼らは唐巣に手を向けると、己の霊力を打ち出していった。
 やがて彼の体が、他のGSからの霊力の相乗によって光を放ち始める。




「やつにGSの皆さんの邪魔をさせるな。ありったけの火器でこちらに注意をひきつけるんだ!」

 リンツの叫びに応じて、次々と重火器が火を噴いていく。

 それを受けた竜はブレスや直接降下などの反撃を繰り出して、中隊の兵士達は1人また1人と倒れていく。

「ブレスは塹壕に身を潜めてやり過ごせ。危ないのは通り過ぎる3秒ほどの間だけだ。
 やつが爪や翼で直接かかってくるようならば、煙幕や催涙弾をお見舞いしてやれ。
 竜といえでも呼吸はするし、目で視界を確保しているはずだ」

 リンツは指示を飛ばしながらも果敢にスティンガーミサイルを手に持って竜への抵抗を続ける。
 その姿は泥と血に塗れ、その顔には微かな笑みらしきものすら貼り付いている。
 それはさながら魔王といった面持ちすら漂い、敵には恐怖を、味方には畏怖混じりの安心感を与えている。
 おかげで竜の攻撃を受け止めているせいで刻一刻と破滅が近づいているにもかかわらず、
 第一中隊の兵士達は、リンツの勇姿に揺さぶられ、その士気は天を突かんばかりに高まっている。



 唐巣は初めて体感した膨大な霊力の集束のせいで僅かに顔を歪めた。
 体がその過負荷に耐えかねて悲鳴を上げている。
 大きすぎるパワーは彼の体の中で暴れまわり、その肉体を内側から破壊しようとする。
 神よ、無力なる貴方の御子達を救うために、御子達の魂の故郷を護るために、我が身に一時の祝福を!
 懸命に祈りながら、彼は集まってゆく霊力をその体から逃さぬように歯を食いしばる。

「これなら、いけそうだ。横島くん、コントロールを頼むよ!」

 周囲のGS達から送られてくる膨大な霊力を唐巣はその身に受けながら叫んだ。
 サイキック・ソーサーや霊波刀など凝縮した霊力や、文珠など力の流れをコントロールする事に長けた横島は、
 唐巣に集まっていく霊力が暴発しないように、彼の体を支えながら懸命にコントロールに努め、
 GS達から放たれる霊力の波動が反発して暴走しないように、必死になってその流れをスムーズにいかせようとする。

 やがて唐巣に集まる霊力が膨れ上がり、彼の体は霊力に包まれて真っ白になってゆく。
 それは香港で美神がエミ達から受けた霊力よりも遥かに大きなエネルギー。
 横島の補助を受けていなければ、唐巣の体はそのパワーの大きさとエネルギーの奔流に耐え切れなくなってとっくに崩壊していただろう。
 腕利きのGS数十人分の膨大な霊力を己の体に集中させた唐巣は、その力に指向性を与えようと集中力を極限まで高めた。
 
「横島くん、リンツ大尉、離れてください!」

 それに応じて横島が飛び退き、リンツ達が伏せると同時に、唐巣の体が一層の光を放った。

「神よ、血の穢れから生まれた無垢なる魂を祝福し、その御手にて彼の者を約束の地へと導かれん、光あれ!!」

 唐巣の叫びと共に、その体から眩い光が一直線に放たれて急降下攻撃を仕掛けた竜の体に直撃する。
 唐巣に霊力を送っているGS達も口々に「光あれ!!」と叫び、唐巣に同調していく。

「ジャギャゴアァァァ!」

 光を浴びた魔竜は突如もがき苦しんだ。
 唐巣から放たれて光は、浄化の聖光。
 その光は、血の穢れによって呼び出された魔の属性を持つ竜の体を徐々に灼いていく。
 竜の力の源はラインの黄金の持つ呪いと、そして宗教的にも自らにとっても上位者であったクリスチャンの母を殺してその血を浴びた事。
 唐巣から放たれた1000マイトを軽く越えた霊力が浄化の光となって、
 その体に染み付いた血の穢れを清めて黄金の放つ魔力を竜から引き離そうとしているのだ。
 もはや攻撃するどころではなくなった魔竜は体をよじり、あらん限りの咆哮を上げて毒のブレスを撒き散らした。

「くらえ!」

 満を持して最後の力を温存しながら機を窺っていたジークフリードが、唐巣と魔竜の対角線上から一撃を浴びせる。
 それは、聖光の影響で爛れていた魔竜の鱗を切り裂き、黄金が埋まっている部分を焼き尽くして竜の動きを止めた。
 やったか!?
 全員が手を止めて竜に注目した瞬間、魔竜は突如翼を振ってジークフリードを跳ね飛ばした。

「こいつ、魂がラインの黄金と完全に融合している。分離は不可能だ。やはりグラムを開放して黄金ごと砕かないと駄目なのか」

 弱々しく呟く彼の前で、傷だらけの体を引き摺りながら黒竜はジークフリードを睨みつける。
 やがて竜は天を仰ぐと、圧倒的な魔力と破壊の意思を込めて咆哮した。
 その下では、最後の力を振りしぼった一撃を受け止められたジークフリードが魔力と精神力の全てを使い切って遂に倒れて地に伏した。


「これまで………か」

 送られてきた大量の霊力を放出していた唐巣が膝を突く。
 膨大な霊力を浴び続けた彼の体や霊気構造は少なからぬ損傷を受けていた。
 その場にいたGS達の多くも霊力を使い果たして倒れていく。

「唐巣さん!」

 慌てて支えようとする横島を手で制すと、彼は儚い笑みを浮かべて告げた。

「倒す事は出来なかったけれど、足止めだけは成功したよ。
 あの様子では竜が回復してこちらに襲い掛かるまでには、まだ時間がかかる。
 それだけあれば君は安全圏に避難できる。これで君は生き残れるはずだ。
 君と美神くんの力があれば、あれしきの竜など物の数ではないよ」

「俺にこの場にいる全員を見捨てて1人で逃げろって言うんですか!?」

「我々の目的は少しでも長く竜を足止めすることだった。
 竜がライン川を飛び回るのは完全に回復してからだろう。
 おそらく攻撃を繰り出せるようになるのは数分後。
 先ほどの光とジークくんの攻撃は竜の体内をも傷つけたから、その傷が癒えるのには1時間はかかるだろう。
 もう我々はろくに動く事すら出来ないけれど、その代償としては充分すぎるほどの戦果だ。我々はその役目を果たせたんだよ」

 そういって弱々しく笑う唐巣に、横島の体も舌も凍りついたように硬直する。

「君と美神くんは、今の私達に残されている最後の希望なんだ。君達なくして竜を倒すのは難しい。
 だから、なんとしてでもこの場を生き延びなさい。本部からの通信によればもうすぐ彼女がやってくるはずだ。
 彼女の到着はNATO軍による竜への総攻撃が始まるよりも確実に早い」

「死ぬかもしれないのに、もう後がないのにこの場に残ったのは、
 全部、美神さんがくるまでここに竜を引きつけておく為の時間稼ぎだったんすか!?
 どうして、どうしてそこまで!?もう俺達は十分すぎるほどに戦ったじゃないっすか」

 それ以上は言葉を続けられなくなった横島に、
 唐巣はその顔に一片の悔いも浮かべずに最後の力を振り絞って諭すように話しかけた。

「ライン川の上流には、大勢の人々がボンやケルンを始めとした大都市で今日も生きている。
 そこに住んでいる人たちは皆、自分達が還るべき場所を、自分達の魂の拠り所を救って欲しいと必死に祈っているんだ。
 そして我々が何よりも大切にしなければいけないのは、霊障のために苦しんでいる存在に手を差し伸べる気持ちなんだよ」

 その言葉は、かつて横島が唐巣に連れられてオカルトGメンの捜査を視察したときに聞かされた言葉だった。
 この極限状態にありながらも、彼の信念はいささかも揺らぐ事がなかった。
 一途に己に使命と課した生き方を貫こうとする彼の姿を前にして、反論する言葉などあろう筈がない。
 項垂れる横島に微笑みかけながら、唐巣はなおも言葉を継いでいく。

「我々が危険を承知でここに残ったのは、そういった人たちの未来を守るためなんだよ。
 そして君も、君の力を必要とする人たちの為に、君だけが助ける事の出来るどこかの誰かの未来のために、今は生き延びてくれ。
 みっともなくても、冷血漢だと、卑怯者と罵られても、君だけは死んでは駄目なんだ。
 たとえ我々が大地に還ろうとも振り返らずにその屍を乗り越えていくんだよ」

 そう言い終ると唐巣の目から光が消え、その体は地に伏せて動かなくなる。
 この場にいたGS達の心の支えであった唐巣が倒れると同時に、浄化の光が消え去っていく。
 …………そうして。
 光が消えた後に、圧倒的な力を誇示して咆哮する黒竜の前で、
 力無き者達を守護するただ1つの盾たらんとする兵士達とGS達の心は遂に折れた。

「ああっ!」
「もう………駄目だ」
「畜生!ちくしょう!ちくしょおぉぉぉ!」

 へたり込むもの、天を仰いで絶叫するもの、怯えた目で竜を見ながら後退りするもの、
 皆が絶望の海と悪しき夢に飲み込まれそうになった瞬間、
 航空機の轟音と共にジョーカーのカードを手に持つ気まぐれで美しい堕天使が現れた。

「待たせたわね!」

 神を脅し、魔神をコケにした最強のGS美神令子の参戦である。


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