どうか泣かないでください。
貴方がどんなに僕を憎んでいたとしても、
どんなに僕を傷つけたとしても僕は貴方を恨みません。
どうか嘆かないでください。
世間が貴方を許さなくとも、僕は貴方を許します。
だから教えてください。
愛して欲しいなんて望みません。
でもどうすれば貴方はあの明るく綺麗な笑顔を見せてくれるのでしょうか、お母さん?
「結界の出力安定しています」
「竜の魔力が推定値ならば、これでここから東は安全圏に入ります」
「現在、避難者の数を確認中です。ライン川の西側付近の住民の避難は円滑に行われているようです」
次々と飛び込んでくる報告を聞きつつ西条は指示を返していく。
「当面の目標は達した。結界の監視と維持の為に、5人はここに残ってくれ。
現在、竜はGSの方々の霊力とジークフリード少尉の魔力を目印にして動き回っている。
彼らが陽動を続けている間に、北上しつつ結界の展開範囲を広げてマンハイムに住む方々の避難を行う。
避難者に出会った場合は、安全圏になった場所を説明。場合によっては避難を手伝うように」
西を見ると2km向こうのライン川の東側の畔で、竜がジークフリートや横島と戦闘を続けている。
唐巣達は、時折援護を繰り出しながらも、川辺に点在する家に人が残っていないかどうかを探索しているようだ。
結界の向こうにいる人はまだまだ多い。しかも竜の咆哮や毒のブレスで気を失った人や動けない人がまだ大勢残っているはずだ。
その姿に、彼らを残していかなければいけない事に僅かに苛立ちながらも、西条は結界を展開する準備を整えるように言う。
「西条警部。ドイツ支部が、閉じ込め型では最強出力の結界展開装置をこちらに輸送中だそうです。到着はあと30分後の予定。
現在、フランス支部が国境を越えたそうです。こちらもあと30分後にはライン川の西側に広域結界を展開できる模様です。
またドイツ陸軍の先発隊がすでに近くまで来ているようです」
西条はその報告に頷きながら瞬時に計算した。
横島の『模』の文珠の効果の及ぶ時間の長さは不明だが、それほど長時間、『模』しているのは無理だろう。
彼が持っている文珠はあと3つ。
ジークフリードがいつまで粘れるか分からないが、
万が一のことを考えて、美神との同期合体のために彼はあと数時間は2つの文珠を温存しなければならない。
ドイツの空軍の戦闘機がこちらに辿り着くのは、基地を出てから5分はかかる。
市民の避難が完了するまで戦闘機からの攻撃はできないだろう。
やはり結界の展開範囲を広げて、一刻も早く、GS達の霊力が尽きる前にマンハイムの市民の避難を完了させるしかない。
「西条警部、出発準備完了いたしました」
それを聞いて捜査官達を出発させようとした瞬間、耳に飛び込んできた声が彼を凍りつかせた。
「向こうへ行かせてくれ、家に息子と娘がまだ残っているんだ。お願いだから向こうへ私達を行かせてくれ!」
それはまだ若い夫婦だった。
切羽詰った声で叫びながら、2人はオカルトGメンの捜査官や他の避難者に抱きかかえられていた。
竜の毒のブレスの影響を受けたのだろう。2人の顔は青褪めて汗びっしょりとなっており、体は軽い痙攣に襲われているようだった。
治療を受けなければ、後遺症が残る恐れもある。いや、それ以前に既に立つ力も残されていまい。
それでも2人は必死になって立ち上がろうとする。その行為は人の持つ原初の感情。
即ち大切な者を命に代えても護りたいという尊き祈りだった。
我慢の限界だった。どうして自分がそれを切り捨てる事が出来よう。彼らの元に駆け寄っていく。
「しっかりしてくだい。貴方たちの家はどちらですか」
その問いに返って来た答えは、最悪の位置を指していた。現在、人気の少ない場所に誘導した竜から最も近い家屋の1つだ。
横島や唐巣のような高い霊力と、圧倒的な強者との戦闘経験が豊富で、
土壇場でもパニックに陥らない者でなければ、救出などとても出来ないだろう。
竜と魔族と規格外のGSが死闘を繰り広げる場所の近くでは、他のGS達も戦闘から抜け出して救助に赴く事など出来まい。
そして、この場にいる中でその場所に辿り着いて生還できる可能性が高いのは自分だった。
更にこの場の結界の維持と、北のマンハイムの中核へ結界を展開していく作業の手間を考えた場合、1人でも余計にさけない状況だった。
だからこそ西条は即座に判断を下して、その場で最も経験の豊かな者を呼んだ。
「僕は今から、子供たちの救出に行ってくる。
君は僕の代わりに結界の展開を指揮してくれ。何か変更があれば追って指示を出す」
そう言って彼に後事を託すと、西条はおキヌと秋美へ振り返っていた。
2人とも、避難を手伝っていたGS達と共に戦場へ向かうつもりのようだ。
まだ戦場付近には大勢の住民が取り残されている。
早く助けなければ彼らは竜の咆哮による恐怖で押し潰されて発狂するかもしれない。
「戦場へ向かうぞ!」
西条はそう叫ぶと迷いも恐怖も焦りすらも見せずに結界を通り抜けて走り出した。
その後をおキヌたちが続いてく。
夫婦の家はここから南東に約2.5km。ライン川からは500mも離れていない。
竜の脅威がいつ襲い掛かってもおかしくない場所であった。
必死に西条と併走しながらおキヌは彼に声をかけた。
「西条さん、先ほど美神さんと美智恵さんから連絡が入りました。
世界GS本部は美神さんの派遣を認め、私達もGSとして目前の危機に対処するように求められました。
美神さんは本部の要請を楯に、横須賀の米軍基地から航空機に乗ってそちらに駆けつけるそうです」
「こっちまでって、航空機では一回のフライトでは日本からここまではとても届かないよ」
「それは世界GS本部がこれから各国に働きかけて、乗り継ぎの航空機を用意させるそうです。
領空侵犯がどうこうって話も、本部の威光で捻じ伏せるって言ってました。
あと、もし相手を倒す手段が見つからない場合は。
美神さんが到着するまでなるべく文珠を2つ温存するように横島さんに伝えろって」
その言葉に頷くと西条は黙って走るスピードを上げた。
途中で、竜を避けて迂回しながら生存者を探しだす役目のおキヌ達と別れる。
送信能力を持つ秋美ならば生存者に意識さえあれば、容易く彼らを見つけ出すはずだ。
そう思いながら走り続ける西条の耳に、次第にあの恐ろしい竜の唸り声が聞こえてくる。
彼の鍛えられた霊感が否が応にも竜が放出する魔力を肌で感じ取ってしまう。
それでも、全身に霊力を行き渡らせながら、彼はあの夫婦が祈るように自分に願いを託した姿を思い浮かべながら恐怖を振り払う。
走る。走る。走る。竜が放った炎で生じた熱風が、彼の頬を撫でる。
ようやく夫婦の家の家らしき物体が見えてきた。
夫婦の話では子供たちは地下室にいるはずだ。
生きている。子供たちは絶対に生きている。堅く信じながら、西条は視線を斜め右に転じた。
ジークフリードと横島と唐巣と数人のGSが700m程向こうで竜と対峙している。
次の瞬間、竜が口から激しく炎を吹き出した。
それを、唐巣の聖とジークフリードの魔、更にGS達の霊力で補強された複合結界がそれを防ぎきった。
そして竜がブレスを吹き終わって空気を吸い込んだ瞬間、
横島が放ったサイキック・ソーサーが吸気と共に竜の鼻の中に入って爆発し、竜をのた打ち回らせる。
走りながらそれを見ていた西条は、僅かに口を緩める。あれは人間の戦い方だった。
かつて南極戦で見せた、パワーに劣る相手と戦うために彼らが編み出した完璧なチームワークを駆使した戦法。
それが、この地に住む市民の盾となるべく今、目の前で機能している。
胸を熱くしながらも、西条はスピードを緩めずに目的の家に辿り着いた。
そこは酷い有様だった。屋根には大穴が開き、壁は半分崩れかけ、もはや家の原形は残していない。
ひしゃげて開かなくなったドアをジャスティスで切り裂いて強引に中に入ると、西条は地下室の入り口を探し出した。
夫婦の話では、リビングの切れ込みのある部分の床が開いてそこから階段が下に続いているそうだが、
家が崩れかけているおかげで床が乱雑としていて、とてもではないが切れ込みが見えない。
必死に目を凝らす西条の耳に家が軋む音が僅かに届いた。
時間がない。もし家が崩れれば救助は絶望的だ。その認識は西条から即座に躊躇いを捨てさせた。
彼は霊力を、ほんの少しも無駄にしてはいけない己の霊力を高めて床に沿うようにイメージすると一気に放出した。
床に落ちていた大量の瓦礫が霊波の放出を受けてほぼ全て壁まで吹っ飛んでいく。
目を瞑って屈み込んで舞い散る粉塵をやり過ごすと、汚れるのも構わずに西条は地べたを這うように切れ込みを探す。
そして1分後、ついに彼はそれを見つけた。夢中でそれを開いて中に入りながら西条はあの夫婦が言っていた2人の名前を叫んだ。
「アリス、ケルド、無事か。助けに来たよ。」
明確な返事はないものの、人の気配はある。それを確かめて歩を進める西条の耳に再び竜の咆哮が聞こえてくる。
「ひっ」
小さな悲鳴が上がった。急いで地下室に走りこんだ西条の視界には、
尻餅をついて脅えた表情を浮かべる男の子とぼんやりと座り込んで虚ろな目をする女の子が映った。
7歳のアリス、9歳のケルドの二人に間違いがなかった。急いでおかしな様子のアリスの許へ駆け寄る。
「大丈夫だった?」
気遣うように声をかけながら西条は彼女の顔を覗き込んだ。
恐怖で泣く事も出来なくなったか、少女は感情の抜け落ちたような顔でこくんと頷いた。
いけない、早くこの子を安全な場所に連れて行かないと、この子の心が竜の思念に壊されてしまう。
そう感じた西条は、防御のために高めている霊力を手に集中させると彼女の顔に触れた。
アリスがほんの少しだけ身動ぎする。
「温かい」
そう呟くと彼女は西条の手を握った。
その小さな手を優しく握り返してやると、彼は近くで尻餅をついていたケルドにもとっておきの声で話しかけた。
「立てるかい?」
「ちょっと、膝が震えてるけど大丈夫だよ。僕はアリスの兄ちゃんなんだから。アリスを守らなきゃ」
涙の滲んだ目をしながらも少年は気丈にも立ち上がった。
西条はアリスと呼ばれた少女をそのまま片手に抱きかかえ、少年の手を取ると、さも楽しげな声を出した。
「それじゃあ、ちょっと向こうまでかけっこだ。合図をしたらスタートだよ。アリスちゃんは僕にしがみついていてね。
ゴールはちょっと遠くにあるけど、急がなくてもいいから、止まらず真っ直ぐにいくんだよ。さあ、スタートだ」
そして西条達は駆け出した。つないでいる手から少年の熱が伝わってくる。抱いている少女の荒い呼吸が感じ取れる。
ああ、生きてる。この2つの小さな命はこんなにも熱く、懸命に生きようとしているのだ。
その認識は西条に感動を、守りたいという想いを、そして圧倒的な喪失への恐怖を植えつけた。
畜生。頼むから頑張ってくれよ、横島くん。
今、あいつの目をこちらから逸らしてこの子達を無事に逃がせたら、後で土下座でも何でもしてやるから。
家を出て、竜に背を向けてひたすら走る。腕の中にある命を守る為に。
少年が足を縺れさせると、西条は彼をも片手に抱きかかえて霊力で包み込むように保護しながらも走り続ける。
霊力を放出し、往復5km以上の距離を、さらに二人の子供を抱えて走っているのに、まるで疲れを感じない。
いや、それどころか羽が跳ねるかのように体が軽い。
しかしそんな事は今の西条にとってはどうでもいい事にすぎない。少しでも早く、幼い命の未来のために、ただ前へ。
やがて安全圏が見えてきた。2人ともまだ無事だ。結界越しに大勢の人間が恐々とこちらを窺っている。
「頑張れ!」
「あと少しだ」
そのエールを受けた西条は、いっきにその中へ駆け込んだ。
「もう、安心だよ」
2人を下ろすと、西条はしゃがんでハンカチを取り出すと彼らの顔の汚れを拭ってやった。
「うああああああぁぁぁん」
「大丈夫かい?………どこか怪我してないかい?」
西条の問いかけに、アリスは感極まったらしく、泣き出して彼の胸に飛びついてきた。
その小さな背中を優しく抱きとめ、背中をさすってやる。
「大丈夫、大丈夫だよ………」
そう言って西条はアリスの頭を撫でる。
「よく今まで頑張ったね」
「頑張ったけど………怖かった………パパとママ、来てくれると思ってたけど、家が崩れて怖い声が聞こえてきて………」
「もういい………何も言わなくていいよ。君達のパパもママも無事だからね」
ここまで来る事が出来て緊張の糸が切れたのだろう、アリスは再び大声で泣き始めた。
慌てたケルドが、立ち上がった西条の代わりに彼女の肩を抱いて懸命に元気付けようとする。
その光景は西条に多大な安心感を与える。あんなに元気に泣けるのならきっと彼女は立ち直れる。
今はまだ頼りなくとも、妹を守ろうとする意志を持つ兄が側についているのだから。
踵を返して戦場に舞い戻ろうとする西条に少年の声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん。あんな怪物、倒せるの?」
「任せてくれ!」
西条は明るく元気な声を出した。自分は頼れる大人なのだ、少なくともこの2人にとっては。
霊障に苦しめられているか弱き市民の安全を守ろうと志した自分が、どうしてその信頼を裏切れよう。
「あんな図体がでかいだけの怪物なんてすぐに倒して、君たちを家に返してあげるからね。何も心配はいらないよ!」
なんて、偽善!
なんて、無力!
通信用の装置まで走りながら、西条は己の不甲斐なさを実感させられて自嘲した。
それと同時に何かが彼の胸に湧き上がってくる。
泣き出したアリスを抱きとめたときに感じた命の鼓動。
竜の咆哮を受けながらも妹を守ろうと頑張り続けたケルドの幼く純粋な勇気。
西条は心底から彼らを、そしてまだ戦場で竜の脅威のせいで苦しんでいる人々を守ってやりたいと感じた。
「北上した部隊はどうなっている?」
「現在、順調に結界を展開中です。
既にマンハイムに住む住人の殆どは、結界の東側の安全地帯に避難した模様です」
「竜の行動範囲の危険域に残っているのはどの程度だ?」
「まだ100人以上の人数の避難が終わっていないようです。
竜の咆哮と毒にやられて動けなくなった者を背負いながら避難しているため、
竜がいる限り、全員の避難終了には最速で1時間かかります」
それを聞いて西条が歯噛みした瞬間、後方から車が大量に近づいてくる音が聞こえました。
ふりむくとICPOの制服を着た男と野戦服を着た男の姿が視界に映る。
「西条警部ですね、応援にきましたベンハルト・シュナイダーです。
マンハイム局とその周辺から派遣されたのは10人。これで全てです。これより貴方の指揮下に入ります
要請された閉じ込め型結界展開装置は三基運んできました。
一基で5000マイト級の結界が約1時間、展開可能になっております。
残念ながら精霊石弾頭ミサイルは、フランクフルトから取り寄せなければいけなかったので、到着まであと6時間はかかります」
「ご苦労様です。では直ちに結界装置を現場まで運搬します」
ここで閉じ込め型結界とは、起動させた巨大な破魔札を貼り付けたまま前後左右に素早く動ける特殊車両の事である。
これを活用する事で局地戦においては、結界の展開する範囲を素早く変化させられるのだ。
西条がシュナイダーと話し終えると、野戦服を着ていた集団から1人の男が進み出て敬礼を施した。
「ドイツ陸軍第3師団所属、第一中隊、到着いたしました。自分は指揮官を努めるカスパー・リンツです」
「こちらICPO超常犯罪課日本支部所属の西条です。
現在、魔竜はここから西南西に3kmほど離れたライン川の中流で、
GSの方々と魔界の仕官のジークフリード少尉によって足止めされています。
民間人の救助はここから上流と下流では、竜への足止めが功を奏してかなり進んでいるようです」
「了解しました。中隊に与えられた任務は、
オカルトGメンと協力して民間人並びに負傷者の救助と避難を行え、というものです。
そのために300人分の輸送トラックを用意しております。
またオカルトGメンの協力で中隊全員は心霊装備を身に付けております」
「御協力感謝します。
失礼ですが、ドイツ軍にはどのような作戦方針が取られたのか、差し支えなければ教えていただけませんか?
現在、現場では大勢のGSの方々と魔界軍のジークフリード少尉が戦闘中です」
「魔界軍………魔族がこの地にいるというのですか!?」
「彼はアシュタロス大戦の折にも我々人間の共にアシュタロス一味と戦ってくれた軍人です。信用できますよ」
「………とりあえず今は、竜を何とかする事が先ですな。
軍の方針は我々の部隊による民間人と負傷者の救出と避難。然る後に戦闘機によるミサイル爆撃です。
現在、政府はNATOに出動準備の要請はしているようです」
「では、NATO軍による総攻撃もありうると?」
「竜を阻むものがなくなり、竜がヨーロッパ中を飛び回るという事態になれば、そうせざるをえないでしょう」
「それについては、魔界軍所属のジークフリード少尉から有益な情報を得ております」
「では、後ほど詳しくお聞かせ願いたい」
そこまで言うと、リンツは振り返って指令を下した。
「第一中隊。これより戦場へ向かう」
兵士達が次々に車両に乗り込んでいく。
西条もシュナイダーに指示を出すと、リンツと共に車両に乗り込んだ。
オカルトGメンと第一中隊の混合部隊が、戦場を目指して走り出す。
到着までの僅かな時間を使って西条は、ドイツ支部に竜がライン川に沿って移動してくる可能性が高い事を告げ、
リンツにはヒャクメとジークフリードの分析を伝えた。
「つまり、竜はライン川沿岸とその付近しかうろつかないという事です。
しかし、何もしなければ、マンハイム、ヴィースバーデン、ボン、ケルンなどの都市は全滅するでしょう」
「では、これ以上の被害の拡大を防ぐには、どうにかしてこの場に竜を足止めするしかありませんな」
そこまで話し合った瞬間、彼らの前で地獄の扉が開いた。
「見えてきました、竜です!」
その場所にはすでに昔日の面影はなかった。
ライン川の畔の美しい自然と散在する家屋が織り成すのどかな景観は消えうせ、
残されたのは赤茶けて、幾つもの抉られた痕のある大地。
そこには濃密な死の気配が漂っている。
それなのに、その場で奮戦を続けるGS達に屈する気配など何処にもなかった。
放たれる霊波やお札、そして響き渡る竜の咆哮。
攻撃を受けるたびに、竜は忌々しげにブレスを吐き、或いは長く堅い尾を振って彼らの存在を消し飛ばそうとする。
それを何人ものGS達が霊力を合わせて防御を張って食い止めていく。
負傷したものは即座に後方に下がって治療を開始。
残った者は、竜の狙いを絞らせないように動き回りながら攻撃を続けていく。
竜が虚空に身を躍らせる。上空からの急降下による一撃。
直撃すれば絶体絶命。
だがその状況を、ジークフリードが、そして彼を『模』した横島が空中戦を仕掛けて竜を地に落とそうとする
その姿は、その戦いは、今までのどんなものよりも激しく凄惨で、なのに何故か神々しかった。
交互に攻撃と離脱を繰り返す2人の連携に一分の隙もない。
それは当然だ。今、ジークフリードが考えた作戦は瞬時に横島に伝わり、会話を交わさずともそれが実行される。
完璧なコンビネーションは竜を翻弄し、その攻撃を封じ込めながらじわじわと痛めつけていく。
2人の攻撃を嫌がって、竜は翼を振ってダメージを覚悟して強引に地上に降下しようとする。
その瞬間、轟音と共に竜の体が大きく揺れる。
「西条くん!」
つい先ほど到着した陸軍とオカルトGメンからの援護射撃である。
「撃て!」
リンツの声と共に、迫撃砲、ロケット砲、ガトリング砲等が火を噴く。
発射された弾は次々に命中して魔竜の体をゆるがせていく。
しかし、その攻撃が終わり硝煙が晴れた後に現れたのは、外皮に全く傷跡が見られない竜の姿だった。
「効かないのか!?」
「いえ、効いてはいます。魔力に揺らぎがありました」
リンツの驚いたような声に西条が冷静に答える。
しかし彼も内心は焦っていた。
現在魔竜は、予想外の方向からの攻撃を受けて混乱しているが、
もしダメージ覚悟でこちらに突っ込んできたら、塹壕も無いこの場所では多くの兵士が死ぬだろう。
自分達が住民を救い出すための時間稼ぎ、否、捨て駒に過ぎぬ身とはいえ、むざむざと死ぬわけにもいかない。
「リンツ大尉。部隊の半分は散開して移動しながら間断なく攻撃を叩き込んでいってはどうでしょうか?
一斉射撃に比べれば、威力も命中力も落ちますが時間を稼ぐためには最適だと思います。
我々は結界を展開して竜を足止めします。その間に簡易塹壕を構築してはいかがでしょうか?
これだけ抉られた場所ならばすぐにできると思いますが」
リンツが生粋の軍人だったならば、こちらの攻撃能力を疑うような西条の作戦は採らなかったかもしれない。
プライドの高い軍人ならば、自分たちが時間稼ぎに過ぎないと言う事に反発したかもしれない。
しかし、目の前で暴れている竜という幻想を前に、リンツはそれまでの常識をかなぐり捨てた。
餅は餅屋に任せるべし!
刹那、リンツは思案すると西条の提言に頷いて部隊を再編した。
自走式の重火器をメインにした足止め部隊を出撃させ、塹壕設置のために後方に兵士を裂き、
更におキヌや秋美ら住民の避難を手助けしている者達の許へも部隊の三分の一を赴かせた。
火器が四方から火を噴いて竜を襲う。
「ガアアァァァ!!」
「させるか!」
魔竜がリンツ達や足止め部隊に襲いかかろうとするのを、ジークフリードが射撃と霊波砲で牽制する。
「構え!……撃て!」
そこで生じた隙を狙って、兵士たちが次々に銃弾を浴びせていく。
竜の炎のブレスが邪魔者を焼き尽くさんと奔るが、
「神よ、その御力をもって邪悪なる力を遮り給え!」
「霊力集束、展開、防御、破ぁぁぁぁぁぁ!」
その一撃を、攻撃している兵士達の支援に回ったGS達が己の全てをかけて防がんとする。
そうして作り上げた貴重な時間を使って、後方では兵士達が塹壕を構築し、
西条たちは、兵士達から離れて結界装置をそれぞれ移動させると展開する機を窺っていた。
やがてジークフリードと横島の連携攻撃を立て続けに受け、翼に迫撃砲の直撃を受けた竜が地に落ちる。
その瞬間、
「展開せよ!」
西条の声が響き渡り、再び宙に舞い上がろうとしていた竜の動きが鈍くなる。
そこへ加えられる攻撃により、竜は動きを封じられて怒りの咆哮を上げる。
数人がその魔力のせいで顔を顰めるものの、人類側の攻勢は止まらない。
「結界が作用している間は、竜は素早い身動きが取れません。今が住民救助のチャンスです」
「分かりました。塹壕設置班、半分は住民の救助へ向かえ」
10人ほどの兵士が弾かれたように、竜を迂回してこの辺りに住む住民の救援に回っていく。
それをちらりと見て確かめるとリンツは後方に声をかけた。
「塹壕設置にかかるのはあとどれくらいだ?」
「8分ほどで屈めば身を隠せる程度にはなります」
「それで十分だ。どうせ、どんなに掘ったところであのでかぶつの落下には耐えられん。やつの吐く炎と毒がやり過ごせればいいんだ」
それから数時間で行われたGSとオカルトGメンと兵士達の奮戦と竜との死闘、
そして動けなくなっていた住民の救出劇は後の世までの語り草となるほどまでに激しく、そして鮮やかだった。
殆どの攻撃は鋼鉄よりも遥かに頑丈そうな鱗に弾かれて傷つけることが出来ず、
うまく傷を負わせることが出来ても、ライン川から流れ込こむ魔力が不死性を発現させ続けているせいで竜の傷を回復させていく。
そんな絶望的な状況を前にしても、誰一人諦めることなく為すべき事を為そうと足掻いていた。
攻撃班のGS達や兵士は倒す事を諦め、足止めに専念する。
救出班は救助者を運ぶと、塹壕の更に後方で待機している輸送トラックに乗せて、一杯になると出発していく。
輸送トラックは結界の向こう側まで行ってから停車し、救助者と治療班を下ろし終わると再び戦場へと舞い戻っていく。
竜の咆哮がどんなに大きな魔力を込めて彼らの心を折らんとすれども、
覚悟を決めて戦場に留まる者達はそれを跳ね除ける強靭な覚悟を心に宿していた。
しかし、いくら連携を完璧にして竜を翻弄しても、精神力と集中力が彼らの動きを鬼神に負けぬほどに研ぎ澄ませていったとしても、
人間である以上、そのスタミナと霊力、そしてこの場に持ち込んで来た物量には限界があった。
陸軍はライン川全域の住民の迅速な避難のために各地に部隊を展開させたために増援を送ることが出来ず、
空軍は人を巻き込まずに援護する術がないために、戦闘機の発信準備を整えてからはひたすらに機を窺っていた。
手持ちの簡易結界を使い果たして竜のブレスを防げなくなったGSは、
極限の緊張状態の中で霊力が尽き疲労しきって倒れていく。
疲労はジークフリードや横島にも及んだ。
最前線で竜と戦い続けるうちに次第にジークフリードも体が重くなり、残存魔力も少なくなっていく。
こうなるとジークフリードを『模』している横島の戦闘力もそれと共に落ちていく。
また横島の文珠の残りはあと2つ。現在の文珠の効果がなくなれば、美神令子が此処に来るまで1つも使えなくなる。
それに比して、竜の動きに変わりはなかった。
ライン川そのものがラインの黄金として機能している以上、
竜のスタミナが切れるのは、ライン川がなくなるか、ライン川の中に含まれる魔力が枯れる時だろう。
そして遂に均衡が崩れた。
体力魔力と消耗して動きの鈍ったジークフリードに、竜の一撃が直撃したのだ。
「ぐっ」
音速で動く鞭の如き尾の攻撃がジークフリードを捉えて数十メートルも跳ね飛ばす。それと同時に、横島の動きも止まる。
その瞬間、竜は大きく息を吸いながら西条たちの方へ跳躍し、着地と同時に爪を振り下ろす。
至近距離からの魔力を込めた爪による一撃に結界が軋む。更に一撃。再び結界が軋んだ。
次の瞬間、竜が背を向ける。それと同時に目にも止まらぬ速さで飛来した尾が結界にぶち当たり、遂にそれを打ち砕いた。
「しまった!」
複数の叫びが戦場に木霊する。
そのまま体を1回転させて西条達へと向き直った竜の口が開いている。
「伏せろ!」
叫びながら西条は素早く霊力を高めて体を倒した。
彼の頭上を何かが通り過ぎ、そして激しい熱と光を感じた。毒と炎のブレスによる二段攻撃。
転がりながら熱から遠ざかると西条は顔を上げた。
視界には、横島が苦悶に顔を歪めながらも霊波砲で竜を跳ね飛ばしている姿が映る。
竜はその直撃を受けて、再び西条たちから遠ざかっていった。
我に帰った西条が辺りを見まわすと、周りには惨状が広がっていた。
竜を封じ込める結界を展開していた兵士や同僚達の姿は地に伏して、無事に立っている者は誰一人として存在しない。
毒のブレスと炎のブレスによって荒廃して褐色に染まった大地に、壊れてしまった結界装置群が置き去りにされている。
呆然とした彼の耳にうめき声が僅かに聞こえてくる。急いで駆け寄って確かめてみると全員まだ息があった。
「毒素にやられただけか」
一安心して辺りを見回した瞬間、西条の体が凍りついた。
視線の先には焼け焦げた灰の塊。
もはやなんの燃えカスなのか判断しようもない灰と黒焦げの中で僅かにICPOのマークが判別できた。
それはシュナイダーの着ていた制服だった。それがこうなっている以上、彼は…………
「畜生!たとえ神が許しても、宇宙がお前を許容しても、僕は貴様を絶対に許さん!」
怒りと助けられなかった悔恨がないまぜになって西条を侵食し、彼はそれに身を任せて竜のいる方角を射殺さんばかりに睨みつける。
しかし、もし西条が竜の事を知ったらどんな顔をしただろうか。
竜が、先ほど西条が助けた少年達とさほど変わらない外見と精神を持った少年だと分かったならば。
幸いといっていいのだろうか。
真実は闇の中に沈み、それ故に彼の体は怒りに突き動かされて、為すべき事を為そうと走り出した。
倒れているものを抱き起こして、応急手当を始める。手当てを受けた男は、その苦しげな顔を和らげた。
「とても手が足りない」
呻く様に呟きながら西条は手を休めずに負傷者を確認する。
そこにいる10人以上に霊的な応急処置を施す事も彼らを安全圏へ運ぶ事も、西条1人では何時間かけても不可能だ。
絶望的な思いを抱きながらも必死で何か方法がないのか頭を働かせる西条に、救いの手が差し伸べられた。
気配を感じて振り向く西条の視界に、迷彩服を着用した15人ほどの集団が、担架と薬品らしきものを手に近づいてくる。
「こちら、ドイツ陸軍第一中隊所属の者です。我々はこの付近の負傷者と避難民の収拾と誘導に当たっておりました。
私は臨時にこの分隊の指揮をしておりますライナー・キスリングと申します。
これからこの方達の救助と避難に当たらせていただきます」
1人の仕官が敬礼しながら早口で用件を述べる。
両手がふさがっている西条は敬礼する代わりに目礼してそれに答えた。
「よろしくお願いします」
「貴君らの奮戦によって、この付近の住民の救出作業は滞りなく終了いたしました。
現在、住民の方々は輸送トラックに搭乗している最中です。
彼らの避難はもうまもなく完了いたしますので、後はお任せください」
「いえ、僕はたいした傷も負っておりませんし、霊力まだ充分残っています」
そう言うと、西条はオカルトGメンの通信機を手にとって報告を始めた。
「こちら西条。オカルトGメンの救援部隊は全員戦闘不能になった。
残っているのは、広域結界の展開と維持に当たっている者のみ。至急応援を求む。
現地の住民の避難はまもなく終わる予定。
世界GS本部への応援要請も必要ならば行ってくれ」
オカルトGメンへの報告を終えて振り向くと、西条はキスリングに強い口調で話しかけた。
「オカルトGメンが運んできた結界展開装置自体は、まだ使えるものが残っています。
僕はこれからそれを動かしに向かいますので、負傷している捜査官達をよろしくお願いします」
そう言い終わると西条は、辺りを見回して素早く現状を把握した。
横島の背後では、まだ大勢の人間の輸送トラックへの搭乗が完了していない。
従ってこれ以上竜をあちらに行かせるわけにはいかない。
既に指揮する部下は皆倒れ、残っているのは自分だけだ。
そこまで確かめると彼は、まだ壊れていない結界装置へと走り出す。
指揮官として最後まで生き残って指揮を続け、そして一番最後に守るべき者の盾となって己の使命を全うするために。
無事に残っていた結界装置へと辿り着いた瞬間、竜の咆哮が間近にいる西条を貫いた。
これまでとは比べ物にならない魔力と共に強い思念が、霊的なガードを固めた精神の中に流れて来る。
それは負の感情の塊だった。嘆き、苦しみ、喪失感、そして圧倒的なまでのラインの黄金への執着心。
まるで灼熱の地獄で精錬された鋼鉄の如き思念の渦が、その中の純粋な殺意が彼の心を打ち砕いていこうとする。
それは西条の心に柔らかく絡みつき、得体の知れないどろどろとした不気味なものを纏わり付かせる。
いや、知っている。GSの資格を取ってから何度も危険を味わってきた彼はこの感覚を知っている。
これは………恐怖だ。死への恐怖だ。圧倒的な相手と対峙したときに否応なく感じてしまう死への恐怖。
「負けるものかあぁぁぁぁぁ!」
襲い掛かってくるそれを振り払わんとして、西条は雄たけびを上げる。
その姿に普段のエリートとしての姿はない。
着ているスーツはぼろぼろになり、自分と部下の流した血に塗れている。
その姿はまさしく人間だった。そこには無様でも足掻き続けようとする人間がいた。
泥に塗れても戦う意志を捨てない戦士がいた。
結界装置を素早く点検して動く事を確かめる。
目を上げると、ジークフリードを『模』した横島が竜の猛攻を何とか単身で凌いでいた。
ジークフリードは先ほどの衝撃でまだ立ち上がれずにいる。
そんな状態なのに、そんな状態を『模』しているのに、横島に退く気配など微塵もない。
当たり前だ。横島の後方には、未だおキヌや秋美達が負傷者を輸送トラックに運び込もうと頑張っている。
あの戦うのが嫌いで臆病な横島は、引けない理由があるのなら誰よりも戦士としてしぶとく戦い続けるのだ。
そんな彼を死なせるわけにはいかない。
この魔竜を倒すには横島と美神、自分にはない彼女達だけが持つ何かが絶対に必要なのだ。
ならば自分がやるべき事など決まっている。
『模』の効果がきれて、横島のスピードが鈍る。そこに襲い掛かる魔竜の爪。
ジークフリードは漸く立ち上がったところだ。とても彼の助けには迎えまい。
その瞬間、西条は無事に残っていた最後の結界装置を起動した。
魔竜の前に結界による壁が生じて、その動きを妨げる。それによって横島への攻撃は照準がずれて横島から外れていく。
攻撃の風圧で地面に叩きつけられそうになった横島をなんとかジークフリードがキャッチした。
「うおおおぉぉぉ!」
横島たちへの追撃を食い止めんと、西条は己の霊力をも結界装置に注ぎ込んで結界の強度を少しでも上げようとする。
それは危険極まりない行為だった。
それでも止める事など出来なかった。
すぐ近くに圧倒的な力を持つ竜による蹂躙から逃れようとする人々がいた。
彼らを助けるべく命をかける兵士達がいた。
脇では、竜を食い止めんと死力を尽くすGS達がいた。
後方では、負傷した捜査官を乗せた輸送トラックが走り出そうとしていた。
そして此処に、市民の力になりたいと、市民の安全を守ると志した自分がいた。
「僕達は、負けられないんだよ!」
そう、負けるわけにはいかない。自分たちは今、竜をこの場に食い止める最後の砦なのだ。
ここが崩れれば、EU諸国はライン川全域の荒廃を防ごうと、
竜の足止めの為に避難民の犠牲を承知で戦闘機によるミサイルの飽和攻撃をかけてくるかもしれない。
決して、決してそんなことはさせられない。
まだ多くの市民の避難が終わっていないのだ。
その中には先ほどの兄妹のように恐怖に震えながらも必死で大人の助けを待っている子供だっているだろう。
だからこそ、自分達は負けられない。自分がかつて志し、これからも守りたいと願った事は変わらずにこの胸に。
たとえ自分にこの竜を倒す力がなくとも、自分の志したものに背を向けることだけはできなかった。
だから、できれば100年ほど刑務所に叩き込んでやりたい相手だとしても、自分は横島忠夫に希望を託す。
悪運と実力を兼ね備えた煩悩の塊であるあの男が健在ならば、
輸送トラックが結界を通り抜けて安全圏に達するまで竜の攻撃を阻止して、そしてきっと美神と共にあの竜を打ち倒してくれるだろう。
そのために、自分は最善と信じることをやりぬくだけだ。
それが西条輝彦が選んだ、最後の最後までオカルトGメンとして市民の味方としての生き方なのだから!
霊力を吸われて重くなった体を、それでも西条は酷使し続ける。後方にいた輸送トラックのエンジン音が遠ざかっていく。
それを聞いて安堵した西条の目の前に巨大な影が差し込んだ。
結界装置の妨害に苛立った魔竜は、横島とジークフリードへの追撃を諦めて、彼の方に狙いを変えたのだ。
その目が妨害者の姿を捉えると、竜はその腕を振り上げた。直後に瀑布の如き一撃が振り下ろされる。
西条の前に展開された結界が、その一撃を受けて軋みをあげながら崩れていく。そこへ追い討ちの一撃が奔る。
もはやろくに動けぬ西条は、最後の最後まで決して心だけは屈さぬようにと、目を見開いて竜の姿を睨み続けた。
「キリストもアラーもブッダも照覧あれ。この西条輝彦、己の生き様に悔いなど無し!」
魔竜の一撃で破壊された結界装置の爆発に巻き込まれながら、西条は絶叫する。
流れていく彼の視界に、横島とジークフリードが再び銃を手に取り、立ち上がる姿が微かに映った。
ああ、まだ大丈夫だ。我々はまだ戦える。まだ市民を護る最後の盾は失われていない。
それを確かめた瞬間、快い感覚が彼の胸に溢れてくる。
耳に竜の咆哮とジークフリードの銃撃が、横島の叫ぶ声が聞こえてくる。
途切れそうになる西条の意識の中で先ほど助けた子供達が彼に笑いかける姿が浮かんできた。
2人は西条の手を取って一緒に家に来て欲しいとせがんでくる。
「お兄ちゃん」そう呼ばれた気がした。くすぐったくなって西条はその兄妹に微笑み返した。
良い気分だった。何故かとてつもなく良い気分だった。
子供のように純粋な笑顔を浮かべたまま、西条の意識は光の中へ消えていった。
原作での彼の綺麗事のような発言を実践させようと書いたのがこの話でした。 (ゼロ)
そして可哀想な子供と母親に愛の手を( ̄人 ̄)そして読者にはこの話の続きを〜〜
〜o(><;)(;><)o ジタバタヾ(・・;)ォィォィ凄い予想だにしていなかった展開です
ね静かな話が一気にバイオレンスな展開そして引き金は横島の心に傷を残す、この
傷がまた横島を苦しめそして新たな活動へとみちびくのでしょう、続き楽しみに待
っています (しんちゃん)
このまま意識を失ってリタイアなのか、最後に復活して良い処を攫っていくのか。
せっかくだから、もう一活躍して欲しいかな? 酷か?
しかし…ドイツ陸軍カスパー・リンツ? キスリング?
となると後はシェーンコップとかブルームハルトとかデア・デッケンとか出て来るんか?
っつーか是非出して下さい。 (ぽんた)
これで全てが終わった後、何事もなかったかのように女性を口説いていれば完璧!・・・? (キリュウ)
13話で予兆を示していたとはいえ突然シリアスにしてしまったという自覚はあります。
>>ぽんた様
自分の筆力では無理です。
あの伊達男をGSのキャラ達に割を食わせないように活躍させるのは難しすぎます。
>>キリュウ様
なるほど、そういうオチの付け方もありましたか。 (ゼロ)
それにしても関係各省の手際が見事ですね。事件発生から対応までのタイムラグのなさは北のミサイルにおびえる某日本にも見習ってほしいです。
ええと、ケチをつけるつもりもないのでスルーしてもらっても結構なのですが、横島君はジークを「模」したままでサイキックソーサーを使ってますよね?ジークってサイキックソーサー使えましたっけ?それとも誰かを「模」したままでも自分の能力は使えるのかな? (西山)
>それにしても関係各省の手際が見事ですね。
第二部で世界GS本部や、日本GS協会の権力について描写したのは、
ここをなんとかするためでした。
>ジークってサイキックソーサー使えましたっけ?それとも誰かを「模」したままでも自分の能力は使えるのかな?
すみません。確認してきましたが私のミスです。
あの場面でジークを『模』している横島にジークの霊波砲を使わせれば済んだ話でした。
私個人の見解では『模』している間は以前の能力を使えないと思っております。
さもないとハヌマンを『模』して、その圧倒的な霊力を使って文珠を増産、等という事も可能になってしまいますから。 (ゼロ)
だとしたら『模』の対象を『模』使用中に変えるのは不可能では? (R/T)
これについては、発動中の文珠の方向性を変えた、というイメージです。
文珠を作り出す事は素の横島にしかできなくとも、発動中の文珠のコントロールについては可能かな、と思って描写しました。
この場面で唐突に入れるのもどうかと思って10話で同じような使い方をさせたりもしました。 (ゼロ)