椎名作品二次創作小説投稿広場

横島異説冒険奇譚

閑話

　一挙手一動ごとに地球の貴重な資源である森林が失われていく。
最早あの耳障りな高音ですらない、凄まじい突風すら発生させるその轟音は辺りを逃げ惑う動物たちの困惑と恐怖に彩られた悲鳴をも遮った。
バキバキと音を立てる樹木の倒れる音さえ聞こえづらく。
地面を小刻みに揺らす振動ですらあの羽音に拠るものではないかと考えてしまうほどだ。
巨大化したベルゼバブ、その余りに埒外な変化は見るものに畏怖と絶望を与えた。
「たたたたた助けてマジ○ンジャー!! いや、この際カクレ○ジャーでもいい!!助けてケイン・○スギーーーーー!!」
　いくら非日常に慣れているとはいえ、いくらあの戦いで現れた究極の魔体に比べれば象と蟻程にも大きさが違うとはいえ、流石にこの事態に横島はパニックを起こした。
　失禁寸前。
テンぱってさっきから○禁ワード全開で飛ばしまくる、すると巨ベルゼバブによる暴風に飛ばされた木片やら石やら岩やら殺生石やらが飛んでくる。
○禁ワード全開で横島全壊、みたいな。
　飛んできたものほとんどの直撃を受け、ボコボコになりながらもなんとか全員が固まっているところに到達する横島。
相変わらずメデューサの陰に隠れながら巨ベルゼバブに対峙する。
「どどどどどどうすんだよメデューサ!!いきなりデカくなったぞコイツ!!
こういうのは戦隊モノの専売特許だろ!?
　はっ!もしやこれは夢!?
この臨場感溢れる場面展開も!鼓膜を叩く轟音も!鼻腔を擽るエエ匂いも全部夢やというのかぁ!!
　ならば!ならばいっそ夢から覚める前にとりあえずこの感触を脳に焼つげっ!」
　もう何度目かわからない『セクハラ→撲殺』という黄金コンボを繰り広げる横島、そしてメデューサ。
息ぴったり、もうなんか上方ドツキ漫才のノリ。
ちなみに、そろそろメデューサには撲殺天使の名が冠されるくらい殴っている。魔族だけど。
　その横ではいまだに自分にはセクハラしてこないという事実にそろそろ女として何か悲しみを感じ始めているグーラーが軽く殺人光線を目から発射していた。嫉妬全開。
「パニくるんじゃないよこのスットコドッコイ!!これは全部現実なんだよっ!
あとね!!さっきから気安くメデューサ、メデューサって呼ぶんじゃないよ!!















　あたしの名前はメドーサ(女蜴叉)だよっ!!」





『そんな事言ったら俺は『蠅』の王、ベルゼブルだぁーーーー!!』


　・・・・・・

　・・・・・

　・・・・

　・・・
　
　・・

　・



「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーてーーーてーーてーーえー!?」




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　本当にすいませんでした。




　魂を削るかのようなメドーサの熱い叫びと、何故か理性がないはずのベルゼブルの心の雄叫びを聞き、関係者各位に謝りる横島。
真に申し訳ありませんでした。
次からはこのようなミスは致しませんと誓いつつ仕切りなおし。

「メドーサ、どうすればアイツを倒せるんだ!!

メドーサ、アイツかなり強そうじゃないか!?

メドーサ、勝てっこないんじゃないかあんなやつに!?

メドーサ、逃げないか!?

メドーサ、俺逃げる!!」

　言い逃げで遁走をかまそうとした横島の首根っこをグーラーと共にガッシリと掴みつつメドーサは溜息をついた。
「はぁ、アンタのその台詞に凄い作為を感じるんだが・・・・・・まぁいいか。
　良くお聞き、あれは義眼といってね、装着者の人間界での活動を円滑に行えるよう魔界から直接魔力を引けるようにするモンだ。」
「ギガンってお前もつけてたじゃん。」
　首根っこを猫よろしく捕まえられたままの横島のもっともと言えばもっともな発言に、日本語ってむずかしいなー、とか、同音異義語ってぶっちゃけダルイ、とかかなりコギャルっぽい事を考えるメドーサ。
肉体も若返って思考も少し若返った様子。　
「あのね、アタシが着けられてたのは疑う『疑』眼。
アイツがつけてんのは忠義、義理人情の『義』眼。全然違うモンだよ。
第一効力が正反対だ。
疑眼は相手の力を殺ぐ物、義眼は相手の力を増やす物だからねぇ。
ま、増やすっていっても死に掛けたら強制的に魔力を注ぎ込んであんな風にするだけだけどねぇ。アタシゃどっちも御免だよ。」
　視線の先にさっきのシャウトはどこへやら、好き勝手に暴れるベルゼブルを捉えたままメドーサは吐き捨てた。
「あんなんになっちまったらもう終わりさ。中に詰まってんのはパンパンになった魔力の塊で、理性なんかひとっ欠片も残っちゃいない。
理性なんか残ってないから本能だけで破壊するだけであとは主から送られてくる命令どおりに行動するだけ。
中に詰まってる魔力も不安定でいつ弾けるかわからない代物だ。
もう魔族としてのアイツは死んだようなもんさ。
　見な、あの胸元にでっかい目玉があるだろう？
あれが義眼のなれの果てだ。あれさえぶっこわしゃアイツを倒せる。」　好き勝手暴れる四肢とあっちこっちに向く体躯にも関わらず常に横島たち、正確にはメドーサをギヌロと睨む巨大な眼球を指差す。
「なるほど!!言うなればウルト○マンのカラータイマー!!
パタ○ン青に対するコアみたいなもんかべろっ!!」
　調子に乗って○禁ワード発動の横島の横っ面をガルーダがいい加減にしろと言う目付きで殴る。
　そして、それを合図とするかのように巨ベルゼブルがメドーサに向かって突進してきた。
「良いかい!あの目玉さえ潰しゃアタシらの勝ちだ!!とにかくどんな攻撃でも良いからアレを叩き潰すんだよっ!」
　今までの欝ムードを何処かに忘れてきたようなメドーサが威勢よく巨ベルゼブルに立ち向かう。
横に流れる景色の端にそれを捉えた横島は、
(ああ・・・・・年下美少女にキツク命令されるのって・・・・・・・萌。。」
　と考えていた事がまたもや漏れ、二対の魔力砲の餌食となった。