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復活

誰が為に金はある?(終)


投稿者名:ETG
投稿日時:05/ 4/30

トーナメント最終決戦。

美神令子vs氷室キヌ。


誰が予想しただろうか?

片やハンデにより霊力1/3で40マイト。霊能者としては最低クラスだ
片やネクロマンサーで打撃戦闘力無し。


「おキヌちゃん。試験前に言ってたことは謝るわ。立派なGSよ。横島クンの時と言い私には原石を観る能力はないみたいね」
(ママぁ!!おキヌちゃんに授けた策はタイガー戦で判ったわ。横島クンじゃあるまいし負けないからね!!!)

「美神さんこそ私より遙かに低い霊力でよくぞここまで。さすがです」
(た、大金が絡んだ美神さんと勝負ですぅ〜〜!!! 美神さんの目つきがこわい!! あうあぅ。幽霊に逆戻りかも〜〜)

「おキヌちゃん相手に反則ワザは使わないわ。横島クンの言い種じゃないけど極悪人になっちゃうからね。
 でも、私は美神令子よ。そこをわきまえてかかってらっしゃい」
(優勝賞金はもらうわよ〜!!! 反則ワザなんか使ったら、勝っても所長の権威丸つぶれよ!!
 あ、おキヌちゃんにはちゃんと後でお祝い金はあげるからね)

「胸をお借りします。横島さんじゃないけどこんな機会は最初で最後でしょうから」
(ひ〜〜ん、横島さんじゃないけどゴキブリのように逃げたいですぅ!!!)


解説者席の美智恵&西条。
一通り解説したあと、美智恵が黙り込む。
『・・・・』
(ここまでの進行は理想的ね。思ったより遙かにうまくいってるわ。おキヌちゃん、お願い。令子を叩きのめしてね。
 あの子はまだ読みが甘いの。いつまでも強運に頼れないわ。それにまた、ルシオラさんみたいに周りにしわ寄せが来るかも)
『・・・・・』
(先生の真剣な顔は久しぶりに見る。この試合にはなにか裏がある?)



「はじめ」



合図と共にルシオラが猛然とおキヌの陰から突進する。
おキヌの式神にいつの間にか戻っていたようだ。

「不意打ちとはおキヌちゃんにしては思い切ったわね」
ルシオラの体当たりを間一髪ギリギリでかわす。と、同時に光幻術封じの霊波の籠もった煙幕弾を炸裂させる。

「でもね、予想範囲なの」
幻術が破れて真の場所を表したおキヌに令子はあっという間に間合いを詰める。

神通棍を捨て、おキヌの腹に拳を当てる。当てた瞬間に拳に全霊力を集中。
「相手を倒す一瞬だけ霊力上げるならこれが一番なのよ」

令子の背後を襲おうとしたルシオラがマスターを失なって式神符に戻り、ひらひらと離れてゆく。

令子は崩れ落ちたおキヌを抱え、床に寝かそうとしながら微笑んで語りかける。
「タイガーとの試合観てなかったらやられてたわ。おキヌちゃん強くなったわね」




ドーン!!

後ろからルシオラの強烈な霊波砲。
「な!」
おキヌを手放せなかったため、霊波砲をよけ損ねる

「美神さん、ヨコシマの試合も観るべきだったわね。この程度の煙幕なら自分の姿ぐらいはごまかせるわ」
ダメージを受けた令子にルシオラが近づく。

反射的に神通棍で薙ぐが霊力1/3+ダメージ。ルシオラに神通棍を叩き折られる。

「し、しまった! 横島クンの式神のままアイテムとして入ってたのね!!」

そういえばおキヌの胸から水晶玉が消えている。さっきのは幻像! 横島クンマスターの時はさすがに強烈だわ!!!
(おキヌちゃんがそこまでの“反則”をするとは・・・!!!)

自らの身体をおとりにした二重の引っかけ。


霊麻酔で令子が崩れ落ちる。
(ルシオラに2連敗とはね・・・)(・・・いいえ、今回は美智恵さんに、よ)
ルシオラの言葉が意識が切れる前に頭の中に響く。


「・・・ファイブ、シックス」

「10カウント内に立ち上がらなきゃ勝ちにならないのよ!!」
おキヌの脳内で語りかけるルシオラ。
「おキヌちゃん! 目を覚まして!!」

誤算だわ。ヨコシマと霊質が違いすぎてサイコダイブが効きにくいわ。
しかもヨコシマと違ってダメージからの回復が遅いわ!!

「おキヌちゃん!!!」


「・・ナイン、テン」
「・・・セブン、エイト、ナイン、テン」


「両者ダブルノックアウトで引き分けです」
審判が宣言する。


しばらくして、ようやくおキヌが起きあがる。大スクリーンの結果を見て理解したようだ。

「・・・・ルシオラさん。ごめんなさい。私が起きるの遅かったんですよね?」
「美神さんからのダメージが大きくて・・・。こちらこそごめんね。ヨコシマを基準に考えちゃったわ」
「美神さん対策は、せっかく隊長さんに細かく教えてもらったのに・・・。やっぱり、私まだまだですね。あ、美神さんは?」
「美神さんもたいしたけがじゃないわ。かすっただけだから」

おキヌちゃん抱えてたこともあって、ど真ん中は狙えなかったわ。


ルシオラが令子も起こす。令子も事態を了解したようだ。


横島控え室。
「シロ、これはルシオラとおキヌちゃんのコンビには逆らうなって事かしら・・・・」
「美神殿と先生が両方負けるという事はそういうことでござるな・・・・・」

モニターを見上げて呆然とつぶやくシロタマ。



解説者席の美智恵&西条。

「西条君」
マイクを切って美智恵が真剣な顔で語りかける。
「ちょっと遊ぶから後始末とフォローお願いね」

西条の答えも聞かずにマイクのスイッチを再び入れる。

『両者、引き分けね。完全に美神選手の油断よね。
 優勝者にでる賞金はこれで無しになってGS協会大もうけね』

「な!!! おキヌちゃんと私が最後まで残ったんだから山分けじゃないの?」
思いもかけなかった美智恵の言葉に令子が引きつる。

『あーら、ちゃんと読んでご覧なさい。優勝者に渡す、としか書いてないわよ?』

『だいたいアンタは詰めが甘くって、今回でも勝てる勝負2つも落としてるわね。
 しかも、よりによっておキヌちゃんに横島クンだもんね。所長の面目丸つぶれよね〜〜』

「おキヌちゃんのは手加減しただけよ!!!」
『負けた者が手加減なんて見苦しいわね〜〜』
「引き分けじゃないッ!!!!!」
『10カウントがなければ負けよね〜。現場なら命無いわね〜〜』

美智恵は、
“ツメが甘いからバチカンで牢屋に”とか、
“読みが浅いからタマモちゃんを”とか、
“GSのくせに近畿君と一般人捨てて飛行機から真っ先に逃げて”とか、
“依頼書間違えて小笠原さん危ない目に遭わせて”とか、
etc.、を言わないけれども、おもっきり念波に乗せながら放送する。


金を取り損ねた上に、さんざんバカにされた令子がぶち切れる。

「現役10年近く離れたママにそこまで言われるこた無いわ!!
 ママこそ、そんな高見で解説してないで降りてきなさいよ!! そこまで言うなら勝負よ!!」

一瞬遅れて、観客席からも賛成の割れるような拍手。
美智恵もアシュタロス事変での英雄の1人。みんな見たいのだ。
しかも、令子はどうみても一回もまともに力を出していない。

『あーら。皆さんも賛成でしたら仕方ないわね。トーナメントに飛び入りだけど参加させてもらうわ』
「ママに勝ったら賞金全額もらうわよ!!」
『クチバシの黄色いヒヨコがさえずるわね。勝てたらね。いいわよ』
さらに挑発を重ねる美智恵。

美智恵が神通棍を握って会場のど真ん中に進み出る。ハイヒールに黒ナイロンストッキングのスーツ姿。

「助っ人認めてあげるわ!! 令子だけじゃなくって全員まとめてでもいいわよ!! どうせみんなヒヨッコなんだから!!!
 トーナメント戦って疲れてるだろうからせめてものハンデよ!!」

神通棍を握って構え、片眼をつぶって笑って挑発する美智恵。


ヒ、ヒヨコ〜〜!!! ハンデ〜〜〜!!!

「ママといえども許せないわ!!!。相手が認めてくれてんですもんね!! 横島クン、全力で行くわよ!!!」
アシュタロスも裸足で逃げ出しそうな顔で命令する。

「た、隊長相手に? おそらく一枚うわてっすよ!」
ギロッ!!!有無は言わせない。

「ママの霊圧見た?どう高くて見積もっても70マイトくらいよ!
 100マイト超える2人+文珠相手になにができるッてのよ!何時までも現役のつもりの鼻をへし折ってやるわ!!」

「オレもやらしてもらうぜ!! ヒヨコと言われては我慢出来ん!!」魔装術を全開にする雪之丞。

「ヨコシマ、あそこまで言われては引けないわ!!」
ヒヨコと言われ、いままでの横島をさんざんバカにした解説も思い出してルシオラも怒り出す。


「それに、美神さんは今回いろんなもの持ち込んでるのよね。この前、私の作ったアレも持ち込んでるんでしょ」
「ルシオラ、わかってんじゃない。ママも、あんなもんまで持ち込んでるとは知らないでしょ」

一転してニヤリと笑うルシオラ&令子。共通の敵出現で意気投合したらしい。


その後、
「マリアは今回あんまり意味無いわね」「パピリオの首輪もつけれるとは思えないわ」
「変化の杖は小細工向きだし使えないわね〜」
などと二人してこそこそと相談しあい、

「「これならまぁ〜ず、防げないわね!! 6万人相手に土下座よ、土下座!!」」
と二人して親指を立てて頷き合う。


その後、ルシオラが細かい作戦を横島と雪之丞にサイコダイブを応用してすり込む(拙SS、平凡な日常の学校編)。
4人きっちり連携しないといろんな意味で危ない。

「だ、旦那!! それでは俺たちもやばいぞ!!」「美神さ〜〜ん!!! 母親を殺す気ですか!!」
どんな計画なのか、雪之丞のみならず、令子やルシオラに付き合い慣れた横島までが引いている。

「大丈夫よ。ごにょごにょ」
ルシオラがさらに詳しく説明する。

その間に、令子が床上の自分のカーディガンからルシオラの作った土角結界を取り出す。
「まず使わないと思ってたけど、持ち込んでて良かったわ! 備えあれば憂い無しね!!!」



「逃げる相談でもしてるの? さっさとかかってらっしゃい!」
と、邪悪な相談をしってか知らずか、美智恵、神通棍を振ってグラウンドど真ん中でさらに挑発。


解説者席の西条。

『防御魔法陣の中にいる受験生および関係者の皆さん。急いで退避してください!
 受験生の皆さんは間違っても参加しないでください!!!非常に危険です!!』

西条が引きつった顔で放送する。
「あの4人が本気で暴れると会場が吹っ飛ぶぞ!!」

「だいじょーぶなワケ!私を信じるワケ」
いつの間にか解説席に来て、平然としてうそぶく小笠原エミ。


おキヌ、タイガーが真っ先にあたふたと逃げてゆく。この辺は間近で見てるのであの辺の怖さをよく知っている。
お互い、いったいなにがでてくるのか。チョーとんでもない物であることは間違いない。

弓、一文字もこの2人が血相かえる以上は、とすぐについて行く。

それを見た、間近ですごいモノが見れんのに、と渋っていた一部の受験生が慌てて退場する。
観戦中の会話でおおよそ4人の関係はみんな知っている。


「シロ、これが隠しイベントよ!!!前の方行かなきゃ!!!」
「わかったでござる。先生〜〜!! 先生のホントの力を見るでござるぅ」

2人横島控え室からダッシュ!



最後の受験生が退避すると同時に、令子、雪之丞、横島(+ルシオラ)が美智恵に襲いかかる。


まず令子が土角結界投擲。土の檻が美智恵へのびてゆく。捕まれば美智恵といえどもオブジェ化する。

土角結界投擲直後に至近距離からの連続霊波砲、鞭、『爆』文珠、サイキックソーサーの4方からの集中攻撃。
ルシオラは文珠を超音速で投げつけた後、自身も霊波砲。

なんだかんだ言っても美智恵の怖さを知る4人は手加減無しの全力。


轟音と閃光。


爆風が吹き荒れ、巨大防御魔法陣内の椅子、旗、バックネットなどが総てなぎ倒され、砕け散る。
受験生用の物理攻撃無効化魔法陣もいくつかが作動不良を起こして爆発し、火花が走る。

美智恵に消されたのか、この攻撃で作動不良を起こしたのか土角結界もいつの間にか無くなっている。



ズン!! 

爆風による埃が晴れぬうちに令子が火角結界を起動する。土角結界をカーディガンから取り出した直後にこっそり布陣したのだ。
「さすがルシオラね。ちょっと金かかったけど便利だわ〜〜」

「フフフッ。土角結界と全力攻撃ははおとりよ。こんなんでへばるくらいならママは挑発したりしないわ。
 でもね、火角結界にいきなり囲まれたらどうしようもないでしょ。6万人の前で謝らせてやるわ!!」
爆風による埃のなかで拳を握りしめて邪悪な笑いをする令子。

「ルシオラ、ホントに大丈夫なんだろうな?」
火角結界で何度も痛い目にあった横島がびびって念を押す。

「だいじょーぶよ。ママが負けを認めればカウントやめればいいんだから。今、残り20秒ね」
へーぜんと答える令子。

「ヨコシマ。これは普通のバカな火角結界じゃないわ。
 瞬間最高出力7500マイト。指向性高いから結界内側ならともかく、外側はほとんど被害でないわ。
 目標自動追尾・スティルス・威力&カウント可変なインテリジェントな火角結界。もはや結界ってより使い捨て兵鬼よ。
 ルシオラオリジナルの暗殺・捕縛・基地内に侵入した敵の一掃などなど、何にでも使用できる“どこでも爆殺くん”よ」

自分の作った“どこでも爆殺くん”に絶対の自信をもってうっとりと解説するルシオラ。

「閉じこめた敵の最大の霊力中心に焦点あわせて爆発するの。だから1000マイトでも小竜姫様を爆殺できるわよ。
 その時は中から破られないように、カウント0か7500マイトに設定しないとね。
 南米で神族、魔族合わせて20人は食ってるわ。あと、通常の火角結界と違って、対象一体しか爆殺できないのが欠点ね」

おっそろしい事をさらっと流す。よーするに逆天号とともに南米で神魔合同捕縛チームをやった主力兵鬼ということだ。

「ペス(ヒャクメ)はこれに囲まれたとたんに座り込んで泣いて白旗上げたのよね。初めから殺す気無かったんだけど」









爆風による埃が晴れる。








美智恵を囲んだ1mほどの火角結界カウント16。

「「やったわね!! 成功よ!!」」
令子とルシオラがハモってさけぶ。


降伏を勧告しようとしたまさにその時、
グラウンドに複雑巨大な魔法陣がストッキングの伝線一本すらない美智恵を中心に浮びあがる。

「ゲ! そ、それは」

電力=神鳴り変換魔法陣。タダの電気を天雷に変換して美智恵に膨大な力を与える。

「隠し魔法陣!! そういえばここ作ったのはエミ!! グルだったのね!!!」



バリバリバリ!!!ズドドドド!!! 美智恵に力が集まっている。

フィン! 美智恵の神通棍が変形する。火角結界のカウント10。

「か、神の牙!?!?!」

変幻自在の妙神山アイテム。二つ合わせれば3姉妹最強のベスパですら敵わず、「本当に人間か!」と言わしめた。


「ほほほ!!! 今回はアイテムは2つまで持ち込み可、だったわね」
誇示するように振り上げた神の牙。力を溜めた美智恵がいたずらっ子のように微笑む。


「文珠―――っ!! ああっ『護』?『壁』?!」
「魔、魔装術の前面防御最大強化!!」
「ルシオラ!!カウント早やめてっ!! 魔法陣つぶすのよ!!」
「変更より爆発する方が早いわ!! あ〜っ! 美神さん!!なにヨコシマの後ろにかくれてんのよっ!!!」
「か弱い女のコを守のは男の義務でしょ!!!」
「旦那は、か弱くもコでもねぇ!! それにこの事態の責任者だろう!!!」
「とか言いながら俺を前面に出すんやない〜〜〜っ!!」
「文珠があるだろうが!!!」
「ヨコシマ、陰に戻るわ!!! それで文珠2個同時に使えるでしょっ!!」

『守』『護』の文珠が輝き、頼もしい光の防壁が防御姿勢をとった3人を包み込む。






火角結界のカウント2。





ブン!! 美智恵が矛状になった神の牙を一振りする。







ピカッ!!
ずっどおぉぉぉぉん!!! 

火角結界が内側から吹き飛ばされ、キノコ雲が巨大防御結界の天井でつぶれる。
結界から漏れた振動が巨大なドーム会場全体を揺るがす。







やがて・・・・・
グラウンド全体を包んだ閃光と轟音が収まる。

爆風できれいさっぱり更地になったグラウンドと共に黒コゲで巨大防御魔法陣の内壁にへばりついた3人。


『守』『護』の文珠も、それぞれの防御もむなしく、グラウンドの真ん中から隅まで吹っ飛ばされたらしい。
黒こげ横島の下では2つの文珠が消滅しようとしていた。

パリン、ボン。ぶしゅう。ぽぽん。




「『合』『体』使ってくれたらもっと遊べたのにね。ルシオラさんが中にいる以上は使えないか」
令子、まだまだ負けないわよ。母を乗り越える日を楽しみにしてるわ。


観客席の連中もアシュタロス事変の真の英雄が誰かよーく理解した。
それと共に、国内外の霊能関係者は美智恵には絶対に逆らうまい、と、心に誓ったようだ。


美智恵の娘をダシにしたたくらみは大成功。
「これで優勝賞金は、私を派遣したGメンのモノね」

GS協会経由と違って8割は裏金に回せるわ。

これで西条君の自腹をすぐ切る悪い癖もなおせるわね。
お金持ちが自腹きってもなかなか尊敬はされないのよ。




解説席の西条&エミ。

「ホントーにめちゃくちゃなワケ。子供より親の方がトンでもないワケ」
エミが肩をすくめてため息をつく。

「小笠原君、君は最初から知ってたのか!!」頬をひくひくしながらたずねる西条。

「当然なワケ。あの魔法陣設計したのも私なら、一昨日、こっそり描いたのも私。
 防御魔法陣も数秒なら10000マイトに耐えれるようにしてあるし、実は2重になってるワケ」

しらけあきれ顔で言う小笠原エミ。完全に成功したら経費抜き2億の裏約束なんだが、美智恵は全額くれるだろう。

「美智恵のおばさまも手加減して、瞬間的に3000マイトくらいだしただけ。
 文珠も最後の方まで保ってたようだし、あの連中ならたいした怪我もしてないワケ」

「じゃ、私、ピート待たせてるから。後始末ご苦労さんなワケ」
片手をあげて去ってゆくエミ。

今更ながら自分の上司の無茶ぶりにめまいのする西条であった。

「あ、そうそう。極上のバナナと最新ゲームソフト用意しといた方がいいワケ」
エミが振り返って付け加える。

「先生には、未来永劫、かないそうな気がしないな」
エミの後ろ姿を見送りながらつぶやく西条。



自分がなんにもしらなかったのは失敗した時の責任問題のためだろう。
今回、唐巣神父がスタッフとしていないのに、事前に気が付かなかった僕も、まだまだヒヨコということか。







グラウンド正面大スクリーン。

美神 令子:土角結界、火角結界。
美神美智恵:神鳴り変換魔法陣、神の牙。
それぞれの性能と映像、および今のリプレイが今更のように示され、観客席のおぞけを改めて誘っていた。

「どのアイテムも、今のが全力じゃない?」「今のがお互い手加減した勝負だってのか?!」
“美神”の名が改めて刷り込まれる。

同時に示された『爆』『守』『護』文珠や魔装術は、もはや誰も注目してなさそうだ。


そして、最後に皆を護った巨大防御魔法陣の性能とテロップ。
【ご用命の際は、総ての霊障を抑える小笠原ゴーストスーイプオフィスへ。連絡先は・・・・】



「小笠原さん、いつのまに!! 一本取られたわ!!」
私もまだまだ油断があるわね。グラウンド中央で微苦笑する美智恵。



「「きゅぅぅぅ〜〜〜」」
防御結界外すぐそこに、3000マイト+火角結界の爆発を間近で食らった子狐と子犬が目を回してのびていた。







美智恵サン、おもっきり伸びをしながら、焦げた娘に近寄って声を掛ける。

「ん〜〜っ。平和っていいわねぇ。ね、令子。今日は親子4人で一緒にご飯にしましょうね」




to be continued


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