『ただいまから、GS実技試験3回戦を開始します。
本日いままで、闘った横島、美神、伊達選手は、ハンデとして霊力が1/3となります。
他の受験生はハンデはありません。アイテム持ち込みは2個まで。これ以降はギブアップは認められません。
では受験生ならびに選手の方々は自分の試合場へ進んで下さい』
その後、試合のリングとなる物理攻撃無効化魔法陣の説明や優勝者に本日の入場料の2/3、14億円の賞金がつくことなどが続く。
優勝者に14億円、の所で皆顔が引き締まる。アイテム多用型の能力者でも、GSの独立資金として意味のある金額だ。
てなわけで令子、横島、雪之丞の3人、一般受験生に混ざってトーナメント開始。
前回と違ってややこしい魔族がらみの事件がないだけに、まあ、お気楽モードだ。
大スクリーンに令子、横島、雪之丞の顔写真と共に、1/3霊力になった時の予想霊力マイト数と予想使用可能能力が出る。
受験生に手の内をあかすこれらもハンデのうち。
解説者席の美智恵&西条。
『受験生の皆さん。このように3人とも皆さんよりも霊力が低く、能力も相当に制限されますがくれぐれも侮らないように』
『彼らの戦い方をよく見て、これからの戦いの参考にしてください』
まずは賞金取る気満々の我らが反則の女王、美神令子。
「霊力1/3(40マイト級)はキツイわね〜〜」
神通棍に念を込めて素振りする。
「ほとんど光らないじゃない」
「著名な美神令子どのと、このような未熟者が手合わせできるとは光栄です」
和装、霊刀大小2本指した大男が丁寧にお辞儀をする。どう見ても霊力70マイト(弓かおり級)はありそうだ。
動きに無駄がない、相当剣の腕も高そうだ。
「はじめ」
「いっくわよ!!」
開始と同時、いや、やや早くに令子が紙束を放り投げる。アイテム1つと言い張るために、一応紐でつないである。
式神ケント紙で作ってあるそいつらは、紐が切れると同時に試合場の結界内一面に自動展開。
そのど真ん中に飛び乗る。
「ほほほっ、かかってらっしゃい!!!」
令子、挑発。
ケント紙に描いてあるのは対人吸霊力結界。もちろん令子は対象外。
物理攻撃無効なところで霊力まで無効化されれば・・・・・。
小学生に殴られただけでも昏倒するしかない。
「ひ、卑怯な!!」
剣を抜いて開始位置で動けなくなった対戦相手。
「一目で見破るとはなかなかね。来ないならこっちから行くわよ!」
足をちょっとでも浮かせると紙どもがもぞもぞと潜り込んでくる。
足下不如意で、動きの鈍くなった相手の後ろに回って首筋に一撃。
「ちょろいわ〜。ホントに未熟って怖いわね〜」
ちなみに令子が会場に持ち込んだ反則(的)アイテム群:
1,マリア(銀の退魔銃弾付き) 2,破魔札マシンガン 3,ヌルの変化の杖 4,パピリオの首輪
5,ルシオラが作った土角結界 まだまだあります。
まあ今のは良心的(なめきってる)って事で。
お次は戦闘センスは抜群の伊達雪之丞。金に興味はないが、勝ち上がると横島や令子ともう一度やれる。
2人に当たったら、全力で闘わせるように主催者にねじ込むつもり。
「霊力1/3だと魔装はやはり1/20以下か」紙のような魔装を纏った自身を見ながらつぶやく雪之丞。
魔装をとき、「横島じゃないがこれで行くか」サイキックソーサーもどきを出して構える。
開始合図と同時に「あばよ」とさほど狙いもせずに投擲して、コントロールして相手に当てる。
今の雪之丞は自分の霊力をほぼ100%変換できるので霊力1/3でも威力は最初期の横島のと変わらない。
「今回は100%の力で相手してやろう!!」とかほざいて無駄に霊波を垂れ流してたヤツは一撃で終わり。
どっご〜〜ん
「待て・・・・まだ・・・あっそうか今のが100%か」ガクっ。
最後に気合いの入りまくっているっているセクハラの鬼、横島忠夫。
なんせ、どういうワケかその枝はほとんど六女の生徒もしくは卒業生。つまり女性。
これには西条も美智恵もラプラスのダイスを恨んだ。
なにがあらゆる霊的干渉を受けつけないだ? 文珠でもかまされたんじゃないの?!
「どうなるんでしょうね」
「早めに誰かに負けるのを期待するしかないかしらね」
マイクを切って、ふたりとも巻いたほつれ毛が頭に目立つ顔を見合わせる。
横島は周りの視線は全く頭に入らず大声で独り言。
「わははは〜〜〜!!! 美神さんも隊長も公認でセクハラのし放題じゃ〜〜〜〜!!!!」
煩悩アップで霊力1/3も意味無しか?
「ああっ、横島の煩悩があがって気持ちいいわ!!」
額に#マークを付けながらも横島絶好調かつ試合なんでなんとか大目に見るルシオラ。
試合場の対面では初戦の女のコが涙目で神様を恨んでいる。
「なんで、業界で有名な煩悩霊力源のセクハラトランペット魔にとっぱちから当たるのよ〜〜!!」
「美由紀、是非そこで止めてね! 相手20マイトそこそこしかないんだから!!」
などと言い捨ててクラスメート達が自分の試合場へ去ってゆく。
「はじめ」
「ううっ。美由紀さんいってたわね。ご主人様には逆らえないのゴメン!!」
ルシオラが正面に浮かんでけん制する。幻術使うほどの霊力はない。
横では「女子高生!!!うふふふ、うふふっ!!女子高生!!!」
と、ドスケベ中年親父のようなよこしまな台詞を吐きながら隙を窺っている。
手つきがやらしい。
「お嬢さん〜〜!!! 僕とめくるめくひとときを過ごしましょ〜〜〜!!!」
どこに隙を見つけたのか両手を広げてよこしまダイブ!!
「いやぁぁぁぁっ!!!」
美由紀、かけ声ではなく、思い切り悲鳴を上げて神通棍を振り下ろす。
バキン!
「ぎゃっ!! きゅうぅぅ」
横島あっけなくダウン。
「え、もう終わり? なんだかんだ言っても霊力20マイトで一般人なみだもんね」
美由紀、模範試合のしぶとさとは全く違うので拍子抜け。
「ゴメンね〜〜!!終わりじゃないの〜」首筋にルシオラ。
「何で!!!マスターが気を失ってるのに?」「ヨコシマは寝てても私を出せるの」
ビッ!「霊麻酔よ。痛くないから」
美由紀が崩れ落ちるのを確認して、
ばちん「ほらヨコシマ起きるの」サイコダイブで目を覚まさせる。
「勝者、ルシオラいや横島忠夫」
あきれ顔でテンカウント後に宣言する審判。
「ああっ、セクハラする前に終わってしまってる!!! ルシオラもなんてことするんや〜〜〜〜!!!!」
よこしま、思わず絶叫。
解説者席の美智恵&西条。
『ルシオラさんのおかげであまり心配しなくても良さそうね』
『ある意味、雪之丞や令子ちゃんに当たるよりはイイかもしれませんね』
安心感でもはや解説というより身内に対する説明になってしまっている。
横島控え室。
「先生〜!!」
恥ずかしすぎるでござるぅ!!
「さすがに応援する気がしないわね。シロ」
タマモもあきれてあんぐり口を開けている。
4回戦試合開始(残り17人)。
「次は魔理ちゃんか。さすがに露骨なセクハラするとタイガーにマッチョを見せられるな」
ちょっと悩む横島。こないだはマッチョの精神汚染を被ってひどい目にあった。
友人の彼女だからセクハラをやめよう、等という殊勝な考えはかけらほどしか脳裏に浮かばないらしい。
「ふー、アノ横島か。おキヌちゃんには悪いが、こっちの貞操も大事だ。叩きのめそう。
美由紀が医務室送りにされてたってことは、簡単じゃないか。
ま、アタシの頭で考えてもしゃあないからガンガンいこう」
両者相対する。セクハラされてはたまらん!! よらば殴るぞ!!とばかりに一文字は開始前からすごいガンとばしをやる。
番はってた経歴はダテではない。
「こ、怖い!!」情けないことに横島、目をそらし、すくんで動けない。
しかぁし!!、よこしまのセクハラはそんなもんでは停まらない。
「はじめ」
一文字のさらしの上の谷間にちらちら目をやっている。
「ちっ!! さらし無かったら、ええ胸やろな〜〜。タイガーのヤツが独り占めかい!!」
近づくのは怖いからルシオラを密着させて感覚をシンクロするかな?
そのへんに思い至って妄想が渦巻き、にへら〜〜っと顔が崩れ、恐怖心が消えてゆく。
美神さんに比べりゃ魔理ちゃんくらい。
目をそらしすくんだ横島に、木刀振り上げて飛びかかろうとした一文字は、
にへら〜〜っと顔が崩れたので、本能的におぞけをふるって引いてしまう。
「いままでやったタイマンの中で一番始末悪いかもな。なにされるかわからんし」
文珠の『裸』やら『脱』でも使われたら・・・!!ブルブルブル!!!
「魔理ちゃん!!ちょっとだけね!ちょっとだけ!!」
とか言いつつ引いた一文字に、結局自分で飛びかかる横島。
「やめろ!!!」
と一文字が霊力のこもった木刀で思わず思いっきりぶん殴る。
バキッ「ぎゃっ!!」コテン。
「え、これで終わり?」
不審顔で遠くから木刀の先でつんつん、のびた横島をつついている。近寄るのは嫌なのだろう。
つつかれている横島の胸ポケットから、ぶ〜〜んと蛍が飛んできて首筋にぴと。
「ごめんね〜」ビッ!霊麻酔。
「・・・勝者、ルシオラ!!」審判も開き直ったようだ。
雪之丞も令子も同じように、それぞれな感じで勝ち進んでます。
解説者席の美智恵&西条。
『ちょっとみんな早く終わってますね。霊力1/3のハンデって緩すぎではないでしょうか?』
『彼らの戦いぶりを見てもらうのが目的だからいいんじゃないかしら?』
5回戦開始(残り9人)
「次は弓ちゃんか、美人やけどセクハラしたら雪之丞に殺されるやろな〜」
横島の脳内では血まみれの自分と、弓のヌードが天秤の上で揺れている。
「今回は、ホントに六女同士でつぶし合ってるようなもんですわね」
いましがたも仲の良い絵里香を下してきた弓は少し顔をゆがめてつぶやく。
「かおり、六女実技最高成績のメンツにかけても、あのセクハラトランペット男叩きのめしてよ!!
六女全員20マイトのヤツに負けたとなれば後輩に示しがつかないわ!! 後、氷室さんしか居ないのよ!」
絵里香が私に勝って、ここで負けたら許さないわよ! とばかりに激励。
「横島は弱いが、倒しても気ぃ抜くな! その式神単独でも動くぞ!!」
美由紀、一文字が自分の経験からアドバイス。
「大丈夫!! 任せてください! 横島さん対策は雪之丞に聞いてきましたわ」
弓がヤモリの黒焼きスティック“ゲッキー”を囓り、闘竜寺の閼伽(仏に供えた功徳水)飲みながら答える。
試合場に入りながら、脳内で雪之丞のアドバイスを反復する。
《ルシオラをまずたたけ、横島本体は後でイイ。本体も厄介かもしれんがな》
《弓、おまえ相手なら、おそらく文珠か霊麻酔しか効かねぇ。
文珠はたぶんつかわねえだろうし、単純な『爆』なんかでも300マイト以上の威力で防ぎようがねえから気にするな》
「要するに霊麻酔だけ。ルシオラさん。アシュタロス事変のとっぱちに雪之丞と一緒に受けた屈辱を今はらしてあげますわ!!」
きらきらした目をさらに鋭く輝かせ、唇をゆがめて宣告する。
「始め!」
横島は結局やる気を無くして、結界の角隅に座り込んでいる。
開始の合図と共によこしまな下心でにじり寄ると、
弓にいきなり水晶観音を発動されセクハラの隙が無くなってしまった。
これも雪之丞のアドバイスだ。
《アイツにセクハラの隙は与えるな。何が起こるかわからんし、俺がたまらん》
雪之丞もこのくらいは横島の正体を悟ったようだ。
横島、しゃあないので、座りこんで世界一もとい宇宙一汚らわしい血走った目で弓をなめ回す。
ジトーっ、もわぁぁ〜〜!! 弓の水晶観音が剥がれ、霊衣が剥がれ、下着が・・・・・。
(気にしない、気にしない!!!かおり! 目の前の戦闘に集中するのよ!!!
あの男は式神を潰した後、ぶん殴ればいいんだから!!!)
ぞわ〜〜っと、体中に鳥肌が立つが、必死に横島を意識から叩き出す。
その弓のまわりを、霊力節約のため、蛍になったルシオラが飛び回る。
霊力1/3でスピードも蠅に毛の生えたほど。
今までと違って相手がルシオラをターゲットにしているので隙がない。
たまに首筋に停まれても水晶観音の手ですぐに叩かれてしまう。
水晶観音の装甲もあり、とても霊麻酔を打ち込めない。
飛び回る蛍をたたきつぶそうと、弓が水晶観音の六本の腕の手のひらを空中でバンバン打ち合わせている。
「蠅叩きか虫とり網の柄に精霊石でも付けて持ってくるんでしたわ!!」
薙刀は何のお役にも立たないので床に転がっている。
『ちょっと、ヨコシマ、自分のことでしょ。手伝ってよ!!』←魂内会話
『かおりちゃんのヌード妄想して霊力上げてるぞ。それにこの俺の自身の霊力ではなんもできへ〜〜ん。ソーサーすらでん』
『おふだくらい持ってきてよ!! もうっ! じゃ、こうして!!』
『へーい』
横島の方へルシオラが飛んできて、そのまま陰に飛び込む。
「ちょろちょろとうっとうしいですわ!!」
逃げたルシオラを捕まえようと、水晶観音の六本の腕を伸ばして、どたばたと弓が追いかけてくる。
座り込んだ横島は自己暗示で頭から叩き出してしまったのでもはや路傍の石だ。
その目の前で横島が飛び起きて両手を打ち合わせる。
パーン「サイキック猫だまし!!」弓の鼻先で閃光が走る。
「な!」
座り込んでいた横島を完全にターゲットからはずしてしまっていた弓は目つぶしをもろに食らう。
しまったですわ!!!
雪之丞のアドバイス《横島本体にも目はくばっとけ》ってのを甘く見ましたわ。
座り込んでるからって意識からはずしてしまいましたわ!!
直後に横島の陰から蛍が出てきて ビッ!霊麻酔。
「勝者、・・・やっぱりルシオラ!!」
「か、かおり〜〜〜!!!」
「六女でのこってんの氷室さんだけよ」
「おキヌちゃんはいろんな意味で勝てるはず無いわ〜〜〜。その前に今、伊達さんに当たってるのよぉ〜〜〜」
こちらはその伊達雪之丞vs氷室キヌ
「始め!」
「旦那のトコのおキヌちゃんか。怪我させたら横島、旦那の双方にぼこられるな」
さすがの雪之丞も迷っている。
「アイツに『弱』やら『脆』やら食わされた上で、旦那にぼこられたりするとたまらんからな」
おキヌも胸の水晶玉でそんな雪之丞を霊視しているが動かない。
そんなところに、弓が倒れるのが見える。
「やっぱり、ちとしんどかったか。しゃあない、ま、あいこか。ここで勝てばあいつともう一度戦えるしな」
霊力1/3だし、大けがはせんだろ。
おキヌは美智恵のアドバイスを思い出す。
《雪之丞君は難敵のなかでは比較的楽。でも、こっちも、一発でKOだから全力で行きなさい。後のことは考えちゃだめよ》
《おキヌちゃんを知ってるだけに油断があるからね。一気にねじ伏せるのよ》
雪之丞がサイキックソーサーもどき、正確には魔装術のかけらを作ろうと、右手に霊気を集めだす。
おキヌの防御力では当たるどころか、かすっても終わりだ。
おキヌは霊視で右手に霊気が集まるのを察するや、心眼を瞬間的に全開、雪之丞の手の霊波とチャクラのつながりを探り出す。
探り終わったら心眼を絞り、狙いの経脈のみを見る。霊視は停止。
おキヌの霊視では生きた肉体に阻まれ経脈までは見えないのだ。
同時にネクロマンサーの笛全力。魔装術の断片からチャクラを経由して入り込み、魂を笛の霊波で包み込む。
美智恵が授けた対霊能者戦闘法。雪之丞や横島のような、霊能をアイテム無しでむき出しにするタイプには特に有効だ。
かつての公彦のように「魂の触手」があればこちらから魂に接続できるがおキヌにはムリ。相手が出してくれるのを待つしかない。
「なに!」
雪之丞が驚くがもう遅い。対策を考えるまもなく闘争心が消えてゆき、手の霊波もちってゆく。
身体も霊能も自由に動くが、闘争心が消え闘う意欲が起こらない。
俺はいまおキヌちゃんのかいなに抱かれているのか・・・・・
あったけぇ・・・
魂に子守歌が響く。
〈――この子の可愛さ限りない。・・・・星の数よりまだ可愛、ねんねや ねんねや おねんねや・・・・〉
ママ・・・・
『雪之丞、今日はもう寝てもいいの。いつも歯を食いしばってがんばってるでしょ』
うん、ママ・・・・
『寝てる間はママが見ていてあげるから』
懐かしい面影が心に満たされてゆく。今まで経験のない、いや遠い思い出の中の多幸感。
おキヌはネクロマンサーマスターの言葉をかみしめる。
「霊の悲しみを理解して心の底から思いやる心が霊を操る極意じゃ。霊に対する深い愛情が必要なのじゃ」
生きた魂にも共通することだったんですね。
雪之丞のさんの心・・・・傷だらけ。
私の力がおよぶあいだは楽にしてて下さいね・・・・。
癒された雪之丞が幸せそうな顔と共に崩れ落ちる。
その雪之丞をおキヌが支えてそっと床に寝かせてやる。
雪之丞さん今はちょっと寝てて下さい。起きたらきっとすっきりします。
そしたらまた前に向かって進んでくださいね。
「勝者、氷室キヌ」
「こ、これがおキヌちゃん?」
「あれがおキヌちゃんが持ってるかもって、うわさだった心眼? ほんの一瞬だけど初めて見たわ!」
「これなら、あの六女の、いや女の敵に勝てるわ!!」
6回戦開始(残り5人、タイガー、おキヌ、横島、令子、+1)
解説者席の美智恵&西条。
『残ってるのは順当というか何というかアシュタロス事変に参加した人物がほとんどですね』
「ほんまに六女の女のコばっかりやなー。次はおキヌちゃんかい!!」
結局一回もセクハラできんかったやないか。
よこしま、チョー不満顔。
「ヨコシマ、おキヌちゃん相手にしないわよね?」
「やったら極悪人じゃ!!! 雪之丞が負けてるってことは、やっぱり気合いいれにゃならんてか」
おキヌちゃんにぼこられるのはイヤ〜〜〜!!!
おキヌは美智恵のアドバイスを思い出す。
《横島クンは、よっぽど警戒してない限り安牌だからね。負けちゃダメよ》
「始め!」
今度は座り込まずに、前方にルシオラ、後方に横島のコンビネーションだ。
雪之丞が負けたので結構警戒している。
美智恵のアドバイス
《ルシオラさん出してたら絶対大丈夫》
おキヌもそう思う。
生きた肉体を持たぬルシオラを笛の一吹きで、横島から奪取。
奪い取ると同時に、笛を最小限に絞って、ルシオラにおキヌから霊力供給。
ルシオラ、直ちに旋回して横島に霊波砲!
「ヨコシマぁ〜〜!!!こんの、甲斐性なしの宿六が!!!何度も何度も私の前で煩悩全開して!!!ゆるさないわ!!!」
冷たい炎が燃えた目で横島を睨んで霊波砲を撃ちまくる。
おキヌも、汚らわしい腐った生ゴミでも見るような目で睨む。
「よ・こ・し・ま・さ・ん!! よくも弓さんや一文字さんにまでセクハラし放題にしてくれましたね! 聞きましたよ〜〜〜!!!
ルシオラさん、おもっきりやっちゃってください!!!!」
「やめて〜〜!!!ごめんなさい〜〜〜しかたなかったんや〜〜〜堪忍や〜〜!!」
未遂や〜〜〜!!! おキヌちゃんどころかルシオラにまでぼこられるのは、いや〜〜〜〜!!!!
逃げ回るがルシオラの運動能力に敵うはずもなく。
ちゅっどーん!!!パラパラパラ・・・・
ルシオラ、黒こげになった横島にさらに容赦なく霊波砲。
ドンドンドンドン!!!!当たるたびに横島の身体が飛び跳ねる。
「ル、ルシオラさん、私そこまでお願いしてないんですけど・・・・」
慌てて笛を止めるおキヌ。
「ヨコシマとの魂のつながりは切れてないから、完全におキヌちゃんの支配下にあるわけじゃないわ」
晴れ晴れした顔で言う。
「もしかして・・・、私が奪い取るの待ってたとか?」
冷や汗を流しながら聞いてみる。
それには答えず、
「おキヌちゃんも怒ると結構攻撃的な霊波出るわね。おかげですっとしたわ。
で、どうするの? 試験中、私を奪ったままにする? 並のアイテムよりは使えるわよ?
ヨコシマの霊力も奪って使うようなもんだから便利よ。残ってる相手は強敵ばかりでしょう?」
美智恵のアドバイス
《ルシオラさんが同意したら、試験期間中、自分のパートナーにしちゃいなさい。有利になるわ》
「じゃ、お願いします」ぺこっと頭を下げるおキヌ。
「陰にはいるわ。これで能力扱いになって、式神符で持つのと違ってカウントされるアイテムにはならないんでしょ」
解説者席の美智恵&西条。
『ルシオラさん、最初から奪われる気だったようですね』
『彼女が自分のことわからないはず無いわ。ま、あのマスターじゃねぇ』
『彼女の以前の闘いで使い魔・キョンシーは御法度だって観てなかったんですかねぇ? 相変わらず頭脳頼り切りですね』
『観てても勝ててないとおもうわ。それにしても、氷室さんもヒーリングどころか声も掛けないわね』
『次のタイガー君、強敵ですし。ルシオラさんのアドバイスもあるんではないでしょうか』
医務班も肩をすくめて近づかない。
「うぅ〜〜〜、ルシオラ〜〜〜、おキヌちゃん〜〜〜〜、待って〜〜〜、行かないでくれ〜〜〜、見捨てないで〜〜〜〜」
捨てられたうえ、またもやむちゃくちゃ言われて焦げた生ゴミが天井眺めて泣き濡れていた。
「勝者、ルシオラ! もとい、氷室キヌ!!」
「「「「「「氷室さんすっごーいい!!!」」」」」」
周りで六女、いや女性の敵を退治した正義のおキヌに歓声を上げる六女の面々。
横島控え室。
「先生ぇ〜!!あおーん!!!」
「ホントに恥ずかしいわね、シロ」
吠える犬とあきれる狐。
to be continued
横島、雪之丞の二人が負けてしまうともうこのあとに期待できるのは美神令子ただ一人。
不安があるとすれば反則技を使いすぎてしまうのでわないかという点です。 (鷹巳)