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復活

誰が為に金はある?(2)


投稿者名:ETG
投稿日時:05/ 4/30

『ただいまから、美神令子選手による、伊達選手のGS実技試験一回戦を開始します。
 プログラムには横島選手と記載されていますが、横島選手、負傷から回復しておりませんので、
 二回戦で、ということになります。悪しからずご了承下さい。では両者中央へ進んで下さい』

まともに攻撃を受けずに勝った横島の方がダウン。
本当は冥子によるダメージなのだが、観客は美神令子の防御力と攻撃力のすごさ、と取ったようだ。
少しどよめく。

正面大スクリ−ンに進み出る令子がアップで映し出される。

雪之丞のプロフィールやこの試合が合否には関係ないこと、ここからは試験試合なので持ち込み可能アイテムに制限があり、
今年から2つまでになった等を説明してゆく美智恵。


『今度は美神選手、気合いの入った顔ですね』

“あんのバカ娘は油断したあげくに弟子に2連敗”とは言わないが、
 そういう雰囲気の念波を込めてアナウンスする美智恵。

大スクリーンに写された令子のひきつった顔を眺める西条。

令子ちゃんの性格はこうやって作られていったんだろうな〜


受験生観覧席。
「ああっ、雪之丞とおねーさまどちらを応援しようかしら」
「横島さん大丈夫かしら?」結局インターバル中にたどり着けなかったおキヌ。
「横島サンならあの程度、大丈夫ジャー」

シロタマは今、回復しきった横島と控え室で戯れていたりする。
「先生、かっこよかったでござる!! これ、お弁当でござる」
「ルシオラの幻術ってホントにわからないわね」
「美神殿はそれでも攻撃を当ておられたでござるからな」

シロ製弁当(重箱入り)を食べながら雑談している。

「先生、拙者と狐はここでずっと観戦してもいいでござるか? 外は人臭と霊波で目眩がするでござる」


試合場。
『・・・・では両者中央へ進んで下さい』

今度は試合場に入ったとたんに、全力で雪之丞が霊波砲をかます。

防御魔法陣に入った時が、試合開始と心得ているらしい。

解説者席の美智恵&西条。
『伊達選手もやる気満々ですね』
『前回試合があれではね〜』


距離があることもあり、令子も平然と鞭で霊波砲を跳ね返す。跳ね返した霊波砲はそのまま雪之丞へ。

観客席は前回のなにやってるか判らなかった&痴話げんかまがいの試合と違い、派手な轟音と閃光に大喜び。
どよめきと応援が絶えない。

しばらく、動き回っての霊波砲と鞭の応酬があった後、両者、膠着状態に陥り、相手の隙を探し出す。


「後々の試合もあるし、私にとっちゃそっちの方が重要だから、とっとと終わらせるわ」
何を思ったか鞭を構えながら淡々と話しかける。

「オレも舐められたもんだな?」雪之丞がちょっと悔しそうに答える。

「別に舐めてやしないわ。私にとっては名誉より現世利益優先なだけよ」令子が淡々と続ける。

「名誉?」怪訝な顔で聞き返す雪之丞。

「そう。さよなら雪之丞。やっぱり、アンタ付き合うには強すぎなのよ」



言葉が終わらないうちに、雪之丞の真後ろから、令子のフルパワーの鞭。




ドスゥン!!  鞭とは思えない打撃音。




「ぐあぁっ」一撃で魔装術の装甲を食い破られ、雪之丞が前へ吹っ飛ぶ。

いままで喋っていた令子が、空中に浮いたルシオラに変わる。


「横島クンはウチの従業員なのよ? アイテムは2個まで持ち込み可、だしね。まだ立てる?」

雪之丞の後ろに姿を現した令子はルシオラを式神符に戻して自身の霊力を元に戻すと、
答えも聞かずにもう一度フルパワーの鞭を食わせる。



ズドオゥン!! 前に倍する威力の鞭が雪之丞に襲いかかる。



「私にここまでさせるアンタは間違いなく強いわ」



雪之丞に、はなむけの言葉を投げかけて、くるりと踵を返す令子。
魔装術を維持できなくなった雪之丞はもはや敵ではない。


「さ、最初に奇襲をかける程度では、まだまだってことか・・・」


プライドの高い美神の旦那にここまでさせたってことだけで満足せねばならないのか・・・
アイツにはなかなか届かねえな。
そういえば旦那もこの程度にはひっかかってねぇか・・・・やっぱり舐められてるてことか。


解説者席の美智恵&西条。
『美神選手も思いきったわねぇ』 
令子、強くなったわね。でも、もう少し、もませてもらうわ。

『前の失敗からすぐ切り替えるところがすごいですね』
西条もあの令子ちゃんが、の思いが強そうだ。



『医務班!』現場審判が指示する。

「いらん! そこまで落ちぶれてねぇ」
よろよろと立ち上がり自力で医務室へ向かう雪之丞。

現場で誰が助けてくれるってんだ。


『勝者、美神令子!』



受験生観覧席。
「ゆ、雪之丞〜!! おねーさまもひっどいー!!!」
「現役GSの戦いはえげつないな〜」
「雪之丞サンは強いし、仕方ないんジャー。はあ〜、またわからなかったんジャー!」
「美神さんがルシオラさん使うなんて!」

観客席も静まりかえっている。2回立て続けに見せられた「反則」。
これこそがアシュタロスにも負けなかった神髄なんだと納得し始めたようだ


横島控え室。
「あ、先生ー、もう試合が終わったでござるよ」モニターを見ていたシロが間抜け声でいう。
「美神さんの勝ちだろ?」見もせずに当然のように言う。
「なんでわかるでござる?」
「さっき、美神さんがルシオラに頭下げてたからな。あの2人のコンビじゃ単純なとこのある雪之丞に勝ち目はねぇ」
「美神殿が頭を、しかもルシオラどのに、で、ござるか!!」
「この試合で体力・霊力使うと、後のトーナメントに差し支えて賞金とりっぱぐれるからな」あくびをしながらいう。
「あいかわらず、金一番なのね」

それだけじゃないだろうけど、とはタマモには言わず、
「美神さんに2発まともに食らって立てるとはさすが雪之丞だな。
 ま、雪之丞がダメージ被れば、次の試合も少しは楽になるか」リプレイを見ながらいう。


そこへ、令子が入ってくる。

「横島クン、ルシオラかえすわ。ありがとう」式神符を渡す。
「あ、わざわざどうもス。さすが美神さんスね、一回であそこまで使えるとは」
受け取って式神符をルシオラに戻す。ルシオラが早速アーンをやって横島に給餌を始める。

「前、冥子に借りたことがあったしね。それにアンタとの魂の連結はこの距離じゃ切れないんでしょ」
「魂の連結が切れたら養生が止まるから、ルシオラ自身がOKでも貸しませんよ」
「その分、アンタの霊力借りたようなもんだから、ホントの反則かもね」

(コイツ、いつもルシオラ出してるって事はアシュタロス以来、寝てる時も今の以上の霊力負荷がかかってんのよね。
 菩薩様の話から想像すると式神として使役するのにかかる霊力より、養生にかかる霊力の方が大きいのよね。
 ホントはどれだけ強くなっちゃってるんだか)

試合時にルシオラを出したとたんにかかった霊負荷の大きさを改めて思い出す。
(そういや、前に冥子が十二神将の合計以上かもって言ってたわね)

今も平然としてルシオラと戯れているのをも見て、目の前の男の成長ぶりに思いをはせる。

横島が話題を換える。
「反則といや、おキヌちゃんに、隊長がどんな反則ワザ授けてるか・・・」
「昨日の戦いでは、おキヌちゃんは普通にネクロマンサーの笛で相手の意志をねじ伏せていたわね」
「あの程度の相手に数分はかかってましたからね」
妖怪ならDかEクラスだったし、手の内見せてないんやろなぁ。

「横島さん、美神さん、お疲れ様。あれ、なに話してたんですか?」

おキヌが入って来るなり言う。自分の名前が聞こえていたのだろう。

「おキヌちゃんの攻略法よ」令子が冗談ぽくいう。

「うぅ、手加減してくださいよ。さっきみたいなことされたら、私ちぎれてしまいますよ」
「フフ、まず勝つのが第一だからねぇ。このGS試験は死んでも事故よ」
「おキヌちゃん、心配しなくても霊力1/3だよ。120マイト出せる美神さんでも40マイト、おキヌちゃんより霊力低いよ。
 実質70マイトの俺なんて、20マイトちょい。ちょっと霊感の強い一般人並なんだから」

そこへ、雪之丞のヒーリングの終わった冥子が入ってくる。
「あ、冥子さんお疲れ様。雪之丞はどうっスか?」さっきの機嫌が直ってるかどうかどきどきしながら聞いてみる。
「ん〜、とくに〜なにもないわ〜、次は〜横島クンと〜全力で〜戦えると思うわ〜」

完調の雪之丞と闘いたくなんてねー!!!
冥子がヒーリングしたのでなければ喚いているところだ。
冥子相手だと下手に喚くと“プッツン、どかーん”で雪之丞に負わされる傷よりトンでもないことになる。

「ルーちゃん〜、連戦でしょう〜大丈夫〜?」クビラでルシオラを霊視。丁寧に診察してくれる。
「よかった〜、別に〜おかしいところは〜無いわね〜」童顔をほころばせて請け合う。
「冥子さん、毎回すみません」ルシオラが頭を下げる。
「ルーちゃん〜、お友達じゃな〜い」

「横島クンも〜〜、次がんばってね〜〜」えらくごきげんだ。


昼の休憩に入っているので、皆ゆっくりしている。こういう時、関係者は一般客より楽だ。外はごった返している。

弓も雪之丞の所へ行っているだろう。たぶんそれで冥子は抜けてきたのだ。





休憩時間も終わり、午後。

『ただいまから、美神令子vs伊達雪之丞による、伊達選手のGS実技試験二回戦を開始します。
 では両者中央へ進んで下さい』


両者中央へ進み出る。

中央で小声で横島が話しかける。
「雪之丞」
「なんだ」
「負けてやるから、手加減してくれねーか?」
「そういう相談は美神の旦那とやんな」
正面を向いて腕を組んだまま素っ気なく答える。

「やっぱだめか」
盛大にため息をつく。コイツと本気で戦うとシャレにナンねー!!!

審判が『はじめ』の合図をする。


やる気のない横島はなにもしかけない。
雪之丞は前にいるのは幻影だろう、と五感を研ぎ澄まして相手の攻撃を待っていた。


見かけは両者、間合いをはずした状態で立ちん坊。な〜んにもおこらない。


今までとはあまりに違う試合展開に観客席がざわめき出す。

「ルシオラ」「なに?」←魂内会話↓
「やっぱり、制限時間内逃げ切っちゃる!! 乗せてくれ」
「わかったわ(美神さんに勝ったから、もうどうでもいいわ)」

幻影に隠れたまま、ルシオラが横島を呑んで空中へ飛び上がる。


解説者席の美智恵&西条がしびれを切らして指摘する。
『横島選手、やる気“全く”ないようね』
『伊達選手が仕掛けても、全部かわす気でしょうね』

「フフっ、そういうことか、たしかにオメーはそういうヤツだったな。なんかなきゃ闘わねぇだろうな。
 なら、こっちからいかせてもらうぜ!!! 」




「くらえ!!!、魔族コロリ!!」 ぷしゅー!!!
神界のスプレー殺魔剤を辺り一面に振りまく。 




「キャー!!!」
ベルゼブルクローンでも一撃の魔族コロリを食らってはたまらない。
「趣味じゃねーが、この場合はしゃあねえな。元魔族の式神といえども女と闘いたくはないしな」



へろへろと墜落する蛍。地面についたとたんに力尽きフェードアウト。幻覚も総て解除される。

実は横島、幻覚+ルシオラのスピード、で絶対逃げ切れる!!と確信して、蛍の中で管につながったちっちゃなちっちゃなルシオラと
「えーやろ、えーやろ?!」「やん♪ 試合中よ♪ むぐぅっ!!(そっか〜、ヨコシマ縮めればキスぐらいはできるのよね!)」
とかやってたのだ。


そーんな体勢で、いきなり2m近いところから放り出されたらたまらない。

「げふっ!あたたたー!!なんてことすんだよ!! 俺のアパートにあったやつ!!何時のまに!!!」
「昼の休憩にとってきた。鍵かかってなかったぞ。いつまでも、女の陰に隠れてるからそうなるんだ。いくぜ!!!」
「タンマ、タンマ!!」
墜落衝撃で立てない。あわてて後じさる横島。


解説者席の美智恵&西条。
『あ、うまいですね。ルシオラさんを封じられましたね』
『横島選手本人も式神のダメージもらって大ダメージね。どうするんでしょうね』

医務室の冥子。
「あ〜!! ルーちゃんに〜〜使うなんて〜〜!!
 横島クンに〜どうしても〜勝ちたいって〜言うから〜シンダラちゃん貸したのに〜〜!!」


受験生観覧席。
「ゆ、雪之丞〜!!」ゆっきーのイメージが、がらがらと音を立てて崩れるかおり。
「あいかわらず、現役GSの戦いはえげつないな〜」
「たしかに横島サンは、いつも美神サンやおキヌちゃん、ルシオラしゃんの陰にかくれて闘ってるんジャー」
「ルシオラさぁ〜ん!!」

解説者席の美智恵&西条。
『あ、横島選手、文珠だしましたね。追いつめられたってことですね』
『あ、雪之丞選手倒れましたね『倒』かしら、いや『粘』ね。伊達選手が地面にひっついてもがいてるわ』
 霊視メガネで視て解説する。
『あ、今度は『重』ね。えげつないわね〜』

大スクリーンで、“文珠:『粘』”や“文珠:『重』”の文字が、共に大きくフラッシュする。
と共に、それにとらわれて赤茶色のツヤのある姿に触覚までつけた、
そのまんま台所の害虫のような姿でもがく魔装の雪之丞が大写しになる。

令子控え室
「よこしまーっ!!!金にもならないのに文珠使うな!!!もったいない!!負けた方がましよ!!!」
モニターを揺さぶって怒鳴っている。


観客席の連中は噂の文珠の反則ぶりをみて、やんややんやの大喝采。
「これを見るために高い入場券買ったんだ!!」


横島は『重』と『粘』で作った隙に、『癒』の文珠で自身のダメージを消す。しかし、ルシオラは少なくとも試合中は使えまい。

左手甲にサイキックソーサー、右手にハンドオブグローリーを剣状に展開して構える。
結構かっこいい姿に観客席から声援が飛ぶ。

「ふぃーっ、思わず3発もつかっちまった。後で美神さんにしばかれるな」


ほぼ同時に粘着捕虫テープと化した地面から脱出した雪之丞も構え直す。
「勝ったと思ったが、さすがだぜ」

「しまった〜〜〜!!! 今、負けとけばよかったんや〜〜!!!」
本気で頭を抱えて叫ぶ横島。
「ルシオラもいねーし、逃げられねー!!!」

今、声援を送った連中がずっこける。
おなじく、わずかにこけが入った雪之丞に、ソーサー投擲。その後ろから同時にグローリーを槍のように延ばす。


「てめ、舐めてるのか? その程度の威力で俺の魔装を貫けるとでも?」
動きもせずに片手の一振りでソーサーをはじき返し、グローリーを叩き折る。

「女抱えてる、てめーが正面から俺に勝てるはずねぇだろう」

「やっぱそうだよな〜〜」
『重』は、ほとんど効いてね〜〜!! なんかと『重』なってるだけか!? 『爆』いや『滅』にするんやった〜〜!!


ゴキブリのよーに逃げるか?ダメ。魔装の相手の方が速いし持久力もある。
後ろから霊波砲かまされて終わるのが落ちだろう。
文珠は?これ以上使ったら勝っても殺されるだろう。


「は〜、これしかねーか」残りの全霊力を込めたソーサーを作り出して構える。さっきのとは輝きも密度も大違いだ。

「フン、前と同じ展開ってか? とりあえず付き合ってやるぜ。くらえぃ!!! 連続霊波砲!!!」


ずどどどど!!爆炎と轟音がどどどど!!!延々とどどど!!横島に襲いかかる。どどどど!!!

「それを投げる隙があるとおもうなよ?」
以前と違い腰を据えてうちまくる。

「あ、相変わらずムチャクチャしやがって!」必死で受けながらも、じりじり押されてゆく。

ずどどどど!!爆炎と轟音がどどどど!!!

しかも、以前と違って、威力の上がった雪之丞の霊波砲は確実にソーサーの強度をけずってゆく。
当たる瞬間に斜めにして力をそらしてるにもかかわらず、だ。

大写しにした大スクリーンを見るまでもなく、観客席にも閃光と轟音が響く。
そらされた霊波砲がグラウンドを覆う巨大防御結界の見えない壁に当たって、観客席間近で盛大に火花と轟音をまき散らしているのだ。
「これがウラでは有名な雪之丞の魔装術か。すっげぇな!! メドーサ直伝+妙神山最難関修行はだてじゃないなぁ」

解説者席の美智恵&西条。
『トンでもない威力ね』
『よくあれだけ連発できますね。力押しもあそこまでくると見事ですね』

受験生観覧席。
「雪之丞の連続霊波砲はいつ見てもすばらしいですわ!!」
「南極の時よりさらに威力が上がってますノー」
「横島さはぁ〜ん!!!!死なないとはおもうけどっ!!」

目と鼻の先で防御結界と霊波砲との攻防を見ながらいつもどおりの3人。
それ以外のほとんどの受験生は目前で防御結界がまき散らす轟音と閃光に顔が引きつっている。

「!!!! これが120マイト級の攻防か!!」

初めて見る人外級の戦闘力に、一文字などは3人の前で弱みは見せまいと虚勢を張っているが成功しているとは言いがたい。
この連続霊波砲に耐えているソーサーを先ほど令子が一撃で叩き割っているのも思い出す。

「それでも、電柱ほどの太さのパピリオの霊波砲に比べれば線香花火じゃノー」
「タイガーさんそれは比べる相手が悪すぎますよ?」

「パピリオってどなたですの?」
弓が知らない名が出てきたので聞いてみる。

「ええと、弓さんたち襲ったちっちゃな女のコですよ。ルシオラさんの妹の」
「あの化け物ですか!?」

改めて目の前の2人そして雪之丞のくぐってきた闘いに思いをはせる弓。



おキヌ達がのんびり話をしてるそのすぐ前では、

ずどどどど!!どどど!!!とどどど!!

「チクショー!! あ〜もうダメだ!!」
横島が危機に陥っていた。


サイキックソーサーにひびが入る。


パリ・・パリ・・・・バリ、パリーン!! ちゅどーん!!!


ずどどどど!!「へぶぅっ!」ドサッ。

横島、なすすべもなく、十数発の霊波砲を受け、吹っ飛んで黒こげ。


「ワン、ツー、・・・・テン! 勝者、伊達雪之丞」
あっけなく終了。

令子控え室
「よこしまー!!!文珠使った上に負けるな!!!!後で折檻よ!!!」モニターはもはや部品と鉄くずと化している。



「へへっ、なんとか勝ったな」



ズゥン。



審判のテンカウントを聞き届け、
あり得ない音を立てて崩れ落ちる雪之丞。

体重増加を魔装で誤魔化したため、霊力を消耗したのだろう。
同時に魔装が解ける。魔装が解ければもはや動けない。



よってきた医務班は、「なんだ、この重さは!! もう3人、いや5人来てくれ!!!」
さらに3人追加して、10人がかりで担架に乗せて運んでゆく。担架の支柱がひん曲がっている。



「ふぅ〜〜!死ぬかと思った!!」
横島、医務班が運ぼうとしたが、もはや回復してきて起きあがる。

十人がかりで運ばれる雪之丞を見て、
「しまった〜〜〜!!『重』は効いていたのか!!逃げまわっとけばよかった!!!」


受験生観覧席。
「おキヌちゃん、雪之丞の体重は戻るんですの!?」
「文珠の効果が切れれば戻りますよ。1時間は保たないと思います」
「横島ってあんなもの食ってすぐ回復かい!!化け物だな」
「さすが雪之丞サンじゃ、体重400kgはありそうジャー」

解説者席の美智恵&西条。
『横島選手、霊能より頭脳をルシオラさんに頼りっきりなのがよくわかりますね』
『全くね〜。今のはどう見ても横島選手の勝ちですもんね』

百合子に『忠夫を思い上がらせないようにお願いします』
という依頼を受けている2人は雪之丞が見えなくなったとたんに容赦なくこきおろす。

あれだけの霊波砲くらってあれだけ保つとわね、とはいわない。西条は喜々としてるが。


「どーせ、どーせ、おれはよ〜〜〜っ!!」
負けた上にむちゃくちゃ言われて、泣きながら走って試合場を去る横島。

医務班があきれて見送っている。


横島控え室
「先生はバカなんでござろうか?」
「たしかに賢そうには見えないわね。でもバカ犬よりはましなんじゃない?」
「狼でござる!! ルシオラ殿より賢いはずはないでござるな」
「相手を単純って言ってて、自分が2度も引っかけられてたら世話無いわね」
稲荷寿司を口に放り込みながら決めつけるタマモ。

「それにしても、プログラム最後の隠しイベント何でござろうか?」
「こういう催し物では結構あるらしいわ。人間てこういうことにかけてはサイコーよね。ちょっと楽しみね」



to be continued


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