椎名作品二次創作小説投稿広場


復活

誰が為に金はある?(1)


投稿者名:ETG
投稿日時:05/ 4/30

某、超有名ドーム施設。明日、明後日はGSの資格試験がある。

小麦色の美人呪術師が、会場グラウンドに魔法陣を描いている。


試合場にはグラウンド全体を覆う形で巨大な防御魔法陣。
その中に、物理攻撃を無効化する魔法陣が予備も含め二十数個設営されている。

巨大な防御魔法陣は少々何があっても観客席を護るためのもので、中で数メートル規模の火角結界が発動しても、
外には漏れない強力なモノだ。

なんせ明後日には令子、横島、雪之丞の人外3人のフルパワーのバトルがあるのだ。

霊能戦闘の試験なため、受験生は物理攻撃が無効化する特殊な魔法陣を試合のリングとする。
去年と違い、令子、横島、雪之丞のみはハンデとして霊力が1/3になるようジャミングがかかる設定がされている。


小笠原エミがGS協会からの下請け仕事でまる2週間かかりっきりでデザインした肝いりの魔法陣たちだ。

会場に鼻歌混じりで、どんどん念写してゆくエミ(原作:魔法無宿&拙SS:前衛・後衛参照)。

「あさってが楽しみなワ〜ケ〜♪♪♪ 」
人の悪ぅぃ笑みを魔法陣に向けながら独り言を続ける。

「うまくいけば、令子が横島にもおキヌちゃんにも負けて所長の権威は丸つぶれーなワケね〜〜♪♪♪」




そして試験2日目の当日。去年まで、そして昨日は受験生と、関係者だけのゆったりした状況だったが今日は違う。

去年までと違い観客が多いので、会場を巨大ドームに替えたのだが、会場能力ギリギリ一杯の6万人の動員を記録した。

アシュタロス3鬼の長姉ルシオラが横島の式神としてよみがえったことは数日を経ずして業界隅々まで尾鰭つきで広がった。
それ以外にもほんとーに相当尾ひれがついたらしく、
美神除霊事務所はオカルトGメン日本支部全体にも匹敵する戦力だろうとか、小竜姫に勝てるのではとかは業界での噂だ。

なんせ、『その』アシュタロス事変の英雄の美神令子、横島忠夫(+伊達雪之丞)の全力総当たり戦がナマで見れるのだ。
報道は規制されてるとはいえ、霊能関係者には周知の事実。外野席30000円からの入場料なんてタダ同然だ。


その後、霊力1/3のハンデ付きとはいえ一般受験生との試合も見れるとなれば、
自分の参考にしようというヤツ、単純に楽しもうというヤツetc.で満杯になるのは当然。
日本中の霊能関係者のみならず外国からも相当の客がきている。

報道関係者のカメラもたっぷり。あと数ヶ月に迫った規制解除後に使おうというのだろう。これの料金はもちろん別。

「黒字よ、黒字。大黒字だわ!!どれだけGS協会名目でGメンの裏予算に回せるかしら♪」
令子化した美智恵が大会本部で悦にいっている。

美智恵は、人脈動員して勝敗予想のばくちの許可まで取ったのだ。
霊能関係者はGSから僧侶まで金持ちが多い。優勝者に渡す賞金除いても20億近い純利益だ。

表予算の潤沢なGメンでも、組織を円滑に動かすには潤滑油がいる。
Gメンは天下り先があるわけではないのでその辺がツライのだ。


本物の令子も特別選手控室で「これの入場料の2/3が私のモノ〜〜〜♪」
と、もはや狸の皮をはいでなめし終わったような顔をしている。いや、狸ではなく黒貂か銀狐の皮だろう。


「くくく。横島のやつのみならず、美神の旦那とまでおもっきり戦える!! 
 おもっきり戦えるんだ〜〜〜!!! ママ、ママ、強く美しくなったオレを見ててくれ!!!」
目に星の光を湛えて叫ぶのは別室のバトルジャンキー。


また別の特別選手控室では
「は〜〜。ルシオラ〜〜〜何とか逃げだせんやろか〜〜〜」
「だいじょーぶよ! 私がいるじゃない!」
と、やる気まったくナッシングな横島にスケスケネグリジェ姿(幻像)ルシオラが発破を掛けている。

「美神さんみたいなタイプは力のある男には弱いのよ! ヨコシマはアシュ様も倒した男なのよ。
 これを機会に雪之丞も美神さんも叩きのめして、実力見せつければ、あ〜んなことや、こ〜んなこともできるようになるわよ」


ちょーカッコいい横島に両脇からしなだれかかる、
えらくかわいらしいルシオラ(実物よりかなりスタイル良し)と令子(実物より多少スタイル悪し)。

といった幻像をちらちら出す。

美神さん叩きのめして両手に花!! それで・・・それであ〜んなことや、こ〜んなこと!!

『横島クン、あなたの力には逆らえないわ・・・もう好きにしてぇえん』
『フフフっ、令子、素直になったな。オレについてこい!』『ええ、どこまでもついていくわ!』

いずれは魔族に戻ったルシオラと並べて・・・・、うぅuoぉおおお!!! ハーレムの第一歩じゃ〜〜〜!!!

ルシオラが出した幻像の16.677216倍げどーな妄想を脳のスクリーンと口のスピーカーに出して開始する横島。

「ハイ、アーン♪」ヤモリの給餌。
(ふぅ・・ったくもー!世話のかかる!! でも横島の霊力が騰がってるわ!これなら戦えるわね。見ってなさいよ!)



『お忙しいところ、残暑の中、お集まり頂きましてありがとうございます。
 皆さん、定刻になりましたのでGS試験、2日目を開始したいと思います。
 進行および解説は不肖ながら私、美神美智恵』

『および、私、西条輝彦が勤めさせていただきます』

喜々としている美智恵。
僕もこんな所に座るようになってしまったんだ〜、と、こないだ三十路の誕生日を迎えて落ち込んでる西条。

露骨な宣伝で厄珍は首になったらしい。まあ、写りも悪いしねぇ。
観客席で「よく見える遠視用霊視メガネや水晶玉はいかがアルか〜〜〜〜」と営業活動に励んでるが。



1次試験の霊力測定&2次試験の2回戦までを突破した、つまり、GS資格試験には合格した、
31名の受験生が間近で試合を見れる特別席に座っている。もちろん控え室でのんびりしていても良い。

今から美神令子vs横島忠夫、美神令子vs伊達雪之丞、横島忠夫vs伊達雪之丞の
巨大防御魔法陣内≒ドーム内グラウンド総てをリングにした試合が始まるのだ。

控え室に行くヤツはまずいまい。

『ただいまから、美神令子vs横島忠夫の模範試合を開始します。両者中央へ進んで下さい』

正面大スクリ−ンに進み出る令子と横島がアップで映し出される。
両者のプロフィールを説明してゆく美智恵。スクリーンにも映し出されてゆく。


観客席では最も注目のカードだ。興行的には最後にすべきだが名目は模範試合なのでそうもいかない。

(さてっと、この試合はてきとーにやって力温存しないとね。どーせ横島クンはやる気ないだろうし。
 どっちが勝っても賞金と関係ないしね。途中で話し合って、横島クンに負けてもらえばいいわね)

令子は¥やら$やら£やら¢がちらかって、別世界に逝ったままの頭で横島に声を掛ける。

「横島クン、てきとーにがんばりま・・・・、えっ??!!」

「美神さんとやれるなんてこんな機会でもなければありませんし、おもっきりやらしてもらいます!!」
目をギラギラさせて宣言する横島。両手に文珠。
その前方空中でルシオラが完全に戦闘態勢に入っている。


解説者席の美智恵&西条
『横島選手、気合いはいってるわね(やたっ♪ なにげにルシオラさん焚きつけたのは成功ね!)』
『令子ちゃん相手に本気みたいですね(隊長にかかっちゃ自由自在だな)』
意外さにおもわず美神選手ではなく令子ちゃんと言ってしまう西条。

受験生観覧席。雪之丞もきている。
「横島さん、どーしたのかしら? 美神さん相手に本気だわ?信じられない!!」
「旦那と横島の本気カードなんて、たぶんもう一生見れん。参考にさせてもらうぜ」



本気の横島を見て、金のことは忘れ瞬間的に沸騰する令子。

「よこしまぁ〜〜ッ!!!」ルシオラ養生しながら私に勝てるとおもってんの!!!

「はじめ」の合図を待たずに神通棍がうねり、横島を襲う。

逆らうつもりね!!!ルシオラに踊らされたわね!! どっちの丁稚か思い知らせてやるわ!!!

ブン!! 横島の位置を鞭が通ったとたんに、横島が消える。

解説者席の美智恵&西条。
『横島選手、開始位置に進んだ時にはもはや幻像だったようね』
『両者スポーツマンシップにはほど遠いですね』

満足そうな美智恵とちょっと不満そうな西条。もちろん仕切直しになんかにはならない。


鞭を巻き戻そうとする令子の後ろから霊波砲が、左横からハンドオブグローリーが伸びる!!

今のアイツのハンドオブグローリーやルシオラの霊波砲なんて怖くないわ!!!
鞭を戻しながら、霊波砲を左前ワンステップでかわし、グローリーを左手肘打ちで叩き折ろうとして、ぞくっとして飛び退く。

ズドゥン!!

グローリーではなくルシオラの体当たり。へたしなくても腕一本使い物にならなくなっているところだ。
床をえぐった後(防御魔法陣のため実際はえぐれない)、すぐに再び姿を消すルシオラ。

「やってくれるじゃない!!」

解説者席の美智恵&西条。
『これは厄介ね』
『なぜ体当たりなんですか?』
『今のルシオラさんの霊波砲では美神選手の防御やぶれないからよ』
『横島選手、アシュ戦の時の霊力半分程度だから、ということですね』
『そう、美神選手を倒すには、ああやって体力や霊力を削っていくか、文珠か霊麻酔を叩き込まないとダメでしょうね』

横島はかなりの霊力をルシオラの養生に食われており、残りの霊力をルシオラと横島で分け合っている。


しばらく、横島とちっちゃなルシオラが姿を消したまま攻撃し、
攻撃時にわかる横島存在予想位置に、令子がかわしざまに攻撃をくわえるという攻防が続く。

横島&ルシオラは2対1ということもあり、グローリーや霊波砲を数発令子に当てていたが、
令子の反射的な体内霊波移動による防御でほとんどダメージをあたえられない。服も焦げてないほどだ。

ルシオラの直接攻撃はスピードが遅いため、警戒された令子には当たらない。使う隙がないのか文珠は使わない。

しかし、あいての神出鬼没ぶりで、令子の方も総てが空振りか至近。


「横島クン本体叩いて一気に勝負つけようってのが間違いだったわ」
相手は横島。逃走ならゴキブリの上をゆくことを思い出す。その上、幻覚による隠蔽。

頭に血が上っていたようね。まず、ルシオラ叩いて横島クンいぶり出すべきね。


次の体当たり失敗の瞬間に、幻覚が破れたルシオラに鞭を振りむきざまにあてる。

ブン!! パーン。

クリティカルヒットではないが、手応えあり。


「きゃっ」ちっちゃなルシオラが吹っ飛んで何回か床でバウンドする。ダメージで立ち上がれない。

同時に横島の姿が現われる。数発かすっているので、頭が多少血に染まっている。


「次はアンタよ、観念しなさい」鞭を引き戻しながら宣告する。

「初心に戻るだけですよ。美神さん」サイキックソーサーを展開しながら答える。
「ルシオラ、もうムリだ陰に戻れ」「ハイ」なんとか飛んで陰に戻る。

ルシオラが戻ってその分、横島本体の霊圧が上昇。ソーサーの輝きが増し密度が上がるのが観客席からも判る。


「フン、私を昔の雪之丞程度とでも思ってるの? まさか文珠も使わずにそれだけで勝とうなんて思ってないでしょうね。
 ソーサーごと叩きのめしてあげるわ!!」

言うなり、鞭をおもっきり振り下ろす。
ブン! バリーン!! 横島、ソーサーで受けるが一撃で砕け散る。

ソーサーの輝きと密度から堅さの想像がつく雪之丞が目を見張る。「さすが旦那だぜ!」


横島はソーサーを砕かれた瞬間に横に飛びすさって、後ろからうねってきた鞭をさける。

その後、美神をちら、と、おびえた目で見た後、


「ドチクショーっ!!! やっぱり勝てねー!!!」
さっきまでのシリアスとは別人のように横島、ゴキブリのよーに逃走。

「アンタの初心てのはそっちのほうかい!!!」
令子もちょっとの間あきれたが、すぐにぶんぶん鞭を振り回しながら追いかける。

「あんな攻撃力反則や〜〜〜。どないせいというんじゃ〜〜!!!」涙、鼻水を垂れ流して逃げ回る。
「おまちなさい!!」令子の方も“初心に返って”横島をしばこうとして、追い回す。
「美神さーん、もーしません!!! 許して〜〜〜!!!」恥も外聞もなく、走り回る。
「よこしまぁーっ! またんかーい!!」もはや鞭ではなく、棒になった神通棍を振り回して追いかける。


受験生観覧席。
「ああっ、横島さん!!!」
「雪之丞、やっぱりあの男はあんなもんですわよ」
「最初はかっこよかったですケンノー」
「パワーが半分じゃねー」
「フフ、あれは陽動だ。アイツはあそこから必ず勝つ!!」

解説者席の美智恵&西条。
『・・・』『♪(ふふっ。やはり令子ちゃんには僕の方がふさわしい)』こめかみを押さえる美智恵&ほくそ笑む西条。

観客席でもずっこけてるのが続出している。こ、これがアシュタロス事変の英雄、横島? タダのバカ?


ドタバタと2人でグラウンド全面を走り回ってる。

「ああっ、もう許して〜〜〜」
10分ほど逃げ回って、とうとうへたり込んだ横島。

「はー、はー、はー、ようやっと観念したわね」
令子も息が上がりつつも、近寄ってしばこうと神通棍に念を込める。

バチバチバチ!!!神通棍を鞭状に伸ばし、慎重に歩を進める。文珠でもぶつけられてはたまらない。


後一歩で射程距離。令子、鞭を振りかぶる!

「ヨコシマ、成功よ!!」受験生用の物理攻撃無効化魔法陣の中央、令子の足下でルシオラが姿を現す。

同時に魔法陣が起動して令子を光で包み込む。元々の1/3ジャミングは1/99ジャミングに書き換えられている。

「しまった!!」

起動はしていなかったのでついつい結界内に踏み込んでいた。
結界から飛び退こうとするが起動した結界に阻まれて果たせない。

それでも慎重に姿を消して近づいた、ルシオラが令子の首筋後ろに現れる。
霊力1/99では反撃のしようがない。神通棍も縮んでしまっている。

「美神さん、今度は私とヨコシマの勝ちね」宣言して令子の首筋に手を当てるなり、

ビッ!!霊麻酔。
「おぼ・・・え・・てなさい・・・よ」美神令子ともあろうものが嵌められるなんて・・・!!!

令子があっけなく崩れ落ちる。その後、あらゆる幻覚が解かれる。


横島、頭のみならず満身創痍。服も所々破れて血が滲んでいる。鞭が何回かかすっただけでこの有様にされてしまった。
一回でも直撃を受ければ終わっていただろう。

解説席の美智恵&西条。
『彼が手に持ってるのは式神ケント紙ですね。やられて陰に戻ったように見えたのは身代わりだったんですね』
『文珠も使ってないし、横島選手の圧勝ってトコかしらね。GSは最後に立ってる方が勝ちよ』

受験生観覧席。
「よかった。霊麻酔ならほとんどだめーじないですね」
「また判らなかったんジャー!」
「やはりオレのライバルだぜ! オレも旦那に勝たないとな」
「お、お姉様が〜〜〜」「信じれん」



会場ではブーイングの声と賞賛の声が混ざっている。
たしかに見せ物としてはおもしろくはなかった。



「フフッ。魔法陣の術式をわかりやすくしといた甲斐があったワケ」
スタッフ席の机にもたれてつぶやくエミ。
「それでも3分で令子用のを見つけ出して6分で書き換えるとはさすがなワケ」


試合場。
「ルシオラのおかげで初めて美神さんに勝てたよ。ありがとう」

(ヨコシマらしいわね。私の養生がなければ正面から勝てたでしょうに)
「・・・・でも、本気で逃げてたわね?」

「やっぱり、美神さんは怖いからなぁ」

やれやれと言う顔で横島の横顔をみやるルシオラ。
(美神さんは手強いわねぇ)


よっこらせっと、流れる亜麻色の髪の眠れる美女を両手で抱えあげ、立ち上がる。

「・・・・美神さんって、思ってたよりずっと軽いや」
令子の顔を見ながら、ふっとつぶやく。

右肩上に式神を従えた横島が令子を抱きかかえて闘技場からゆっくりと引き上げる様を正面大スクリーンが映し出す。

その様子を見て、出動しかけた医務班も微笑して引き上げる。




『勝者、横島忠夫! 模範試合終了!』





念のために令子を控え室ではなく、医務室に連れて行って寝かす。

「10分しないうちに目を覚ますと思うわ」
「じ、じゃあ、眠れる姫に、今の内に目覚めのキスを!!!」

タコのように唇を伸ばす。まあ、あくまでよこしまだ。

「流れを読めっていってるでしょ!!!ったく」
横島の頭に膝蹴りをかますちっちゃなルシオラ。



そこへ今回も医務室付けの冥子が入ってくる。

「横島クン〜、すごいわ〜〜! 令子ちゃんに〜、鑑賞するなんて〜」

「え、ここで美神さん鑑賞していいんですか?」
思わず令子の服を脱がそうとする横島。

「令子ちゃん「に」〜、「完勝」よ〜〜。わざとでしょ〜〜」
ビカラとバサラで横島を押さえつけて、それでもアンチラで切断せずにショウトラで横島をヒーリングしてくれる。

「ダメージは〜、横島クンの〜ほうが〜、大きいのよ〜? じっとしててね〜」
クビラで霊視・診断した冥子。
「令子ちゃんは〜ダメージ〜、ほとんど〜無いわね〜」
ショウトラがひとなめして横島に戻る。

ルシオラの方を振り向いて「ルーちゃんも〜結構な〜、ダメージでしょ〜〜?」

「わかってたの?」ちょっと驚くルシオラ。

「私は〜、六道〜冥子よ〜。式神のことは〜よ〜く、わかるわ〜。
 きっと〜最後の〜令子ちゃんの鞭〜かわし切れ〜なかったんでしょ〜? ハイ、これあげる〜」

袋から飴を取り出してルシオラと横島に渡す。

「冥子さん、私、もの食べられないんだけど?」けげんな顔をするルシオラ。

「これはね〜、六道家秘伝の〜式神飴よ〜。術者と一緒に食べれば同調率が〜上がって〜、え〜っと、え〜っと、なんだったけ〜?」
説明できなくなって、あたあたしだす冥子。

「とにかく、美味しいわよ〜。お母様には黙っててね〜」笑って誤魔化す冥子。

大体理解して横島と一緒に飴を押し頂く。式神奥義のこといい、
冥子には世話になりっぱなしだ。(拙SS:式神ルシオラ、ありえない!!)

横島との同調率が上がって、みるみるダメージが回復してゆく。
もちろん、横島にダメージがいってるわけだが、それは冥子がヒーリングを続けてくれているわけで。


ヒーリング終了。

「久しぶりの食べ物、美味しかったわ。ありがとう冥子さん」
極上の砂糖水の味がしたわ。ものが食べられるって・・・
久々の「食事」にも感激するルシオラ。

「冥子さん。たびたびスンマセン」
式神奥義を横島に教えたことで、冥子がこっぴどく怒られたらしいことを思い、頭を下げる横島&ルシオラ。

「いいのよ〜。んっとね〜〜、んっとね、じゃあ、横島クン〜。冥子、お礼が欲しいの〜〜」
冥子にしては珍しく、お礼のおねだり。

「オレにできることなら」
いくら給料あげてもらってても、六道家のお嬢さんになんかできるかな〜〜と思いつつもそう答える。



「簡単なことよ〜〜」

冥子、横島の正面にゆっくり歩いてゆくと、目をつぶって心持ち顔を上げる。
横島にも誤解しようのない「流れ」。

「えっ??」

おもわず、ルシオラ、令子(意識不明)、冥子の顔を順繰りに見ながらあたふたする横島。

こ、これは伝説の“キスして♪”? 冥子ちゃんいきなり告白?!

おいしい!! 美味しすぎる!!! でも、み、美神さんがいつ目を覚ますか?!!!
それより前にルシオラの視線がつき刺さる!!! 俺はどの道に進めばイイのだぁ〜っ!!!
ああっ どれが罠で、どっちが崖なんだ〜〜!!!


カチーン!! 横島、固まりつつ目だけはせわしなく3人の顔を。


チッチッチッチッチッ。


置き時計の秒針の音ってなんて耳につくんや〜〜!!


「いつまで恩人ほっとくつもり?」
ちっちゃなルシオラ、横島をつめた〜いジト目で見ながら小声でいう。

こんな冷や汗をかきながらやるもんか?と思いながら決心して冥子に顔を近づける。

直前にルシオラをちら、と見るがプィッとそっぽ向かれてしまう。
ハーレムとはまだまだ距離のある横島だ。

冥子のきれいな睫毛がふるえている。か、かわいい!!!
据え膳食わぬは男の恥!!えいっ。 

すっと重なり、唇にちょん。すっと離れる。
(こ、これ以上ヤると理性が飛ぶ、飛んでしまう!! こんなトコで最後までヤったらルシオラと美神さんに殺される!!!)

必死の思いで身体を冥子からもぎはなす。
(もったいねーー!!! 俺にはこんなチャンスはもう一生ねーーー!!)


ぷくーっと頬を膨らませた冥子が目を開ける。
「横島クンの〜ケチ〜〜」
目つきがメチャこわい。

バードキス1回だけなんて!!
しかもキスした後、手も触れずにサッと離れるなんて!!
冥子は手を触れる価値もないの!!
横島クンなら式神たちごと冥子、受け入れてくれると思ったのに!!
いつものダイビングはナンナノよ!!!
ずーっと愛してましたって何回言ったのよ!!!

「アンチラぁ〜、や〜っておしまい〜!!!!」

ジャキッ! ヒュン!サクっ、ヒュン!ザクッ、ヒュン!ズパッ

ドタッ・・・・ドクドクドク・・・・・   と〜て〜と〜て〜と〜て〜。 ギィーーーバタン。




ずる〜〜〜ずるずるずる〜〜〜〜・・・・・

「ひ、ひぃぃぃつ!!!」

遠くから籠もるような外の歓声が聞こえてくる。

ほとんど人の来ない薄暗い関係者専用通路。

20cm程の無表情の美少女人形が人の形、人の大きさの血まみれの肉塊の髪の毛を片手でもって引きずってゆく。

途中その光景を目撃した、何人かがあまりの不気味さに腰を抜かすが人形は歩みを止めない。

ずる〜〜〜ずるずるずる〜〜〜〜・・・・・

ギィーーーバタン。表札:【横島忠夫選手控え室】





3人が居なくなると、令子がむっくりと起きあがる。
「冥子もやるわね〜」ふうぅっとため息をつく。「冥子らしく周りも相手もお構いなしね」

横島クンに2連敗。何時の間にあんなに強くなっちゃったんだか。書類仕事にまみれて私が弱くなったのかしらね。

つけっぱなしだった医務室のモニターでの試合のリプレイを眺めながらさらにため息をつく。
ルシオラにやられて崩れ落ちる自分。

「霊麻酔とはね」
嵌められた上に、手加減までされちゃうなんてね。

「ルシオラがいるから、アイツの霊力、アシュタロスの時より遙かに低いのよね」
前にシミュレーションルームで殴り合いに負けて、今回嵌め手にかかったら、横島クンに勝てるのはもはや金勘定だけ?


「ふううぅーっ」
またため息をつく。


映像は流れ、気を失った令子が横島に両手でだき抱えられて引き上げていく。



「ちょっと、なによあれ!!! まるでナイトに助けられたお姫様みたいじゃない!!!」
もしかして、あのかっこで衆人環視の中をここまでっ!!??

思わず1人真っ赤になる令子。


「このままだと、横島クンの丁稚に成り下がっちゃうわ!!!」
ぶんぶん頭を振る。私はルシオラじゃなぁーい!!!!

美神令子は神にも悪魔にも屈しない!! ましてや横島クンにっ!!!





「とにかく次の雪之丞には何が何でも圧勝で勝ぁつ!!!」

拳を握りしめて誓う令子。




その頃、おキヌは「へーん、ここ、広すぎて医務室がわからないわ!!」

「すっごい人混み、しかも霊能者ばっかりなんで気分が悪い〜〜〜」
「鼻がバカになって先生の匂いも判らないでござる〜〜」

会場内にこもった霊波と人間臭に当てられのびてるシロタマ。




to be continued


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