椎名作品二次創作小説投稿広場


そして続く物語

流転する物語


投稿者名:ゼロ
投稿日時:05/ 4/20

 11月7日 15時35分

「それで、ママはこんな事が起きたのにまだ、横島くんを責任者として働かせるつもりなの!?」

「仕方ないわ。今はまだ彼の協力は不可欠だもの」

 オカルトGメンを訪れていた美神は、
 今後の横島の処遇と事務所と国が結んだ契約についての見直しを求めて美智恵と話し合っていた。

「だからって、オカルトGメンよりも立場の弱い横島くんを危険にさらすような場所に置いていくのは彼の雇用主として容認できないわ」

「それなら、対策は練ってあるわよ。彼を正式にオカGに引き入れてもいいし、
 計画に参加中の間は政府からそれ相応の身分に据えてもいいって内諾を得てるわ」

「ママ、うちから横島くんを辞めさせるつもり!?公務員になっちゃったら副業は禁止じゃないの」

「計画に参加中の間だけだってば。それに危険云々を議論するなら、
 令子の横島くんに対する扱いも決して安全に配慮してるとは言えないんじゃないの?」

「な、何の事かしらね?」

 その途端にとぼけたような声を出して目をそらせる娘に美智恵は、追い討ちをかけた。

「それじゃあ、ちょっと事務所のメンバーに話を聞いてみましょうか。
 特におキヌちゃんは横島くんの資格を取る前の事も良く知ってるそうじゃない?」

 痛い所を突かれて黙る美神だが、次の瞬間にはもう顔を上げた。

「ええ、ママがお望みならどうぞ」

 別に今すぐでなければ大丈夫だ。その前におキヌ達を口止めしてしまえばいい。
 嘘の下手なおキヌだが、横島が事務所を辞めさせないためならば「記憶にない」で誤魔化してくれるだろう。

 その様子に娘が対応策を立てた事を読み取った美智恵は、矛先を転じる。

「そうね。でもまず横島くんの意思を確認しないといけないかしら?」

「そんなの決まってるじゃないの。あいつは私の言う事を聞いてくれるわよ」

「あら、優しい彼が八代さんや計画で知り合った存在を見捨てられるのかしら。
 ましてそれが令子の我が儘だと知ったとしたならばね」

「だ、誰が我が儘いってるですって!?私は単に社員の安全を優先するって言ってるだけじゃないの。
 それに、別にママがなんて言おうが、
 何年も私と一緒にバカやってきたあいつが、私のいう事聞いてくれないわけがないでしょう?」

 ほほほほほ、と額に青筋を浮かべながら笑いあう2人のせいで、あたりの緊張感が高まっていく。
 その時、部屋に備え付けてあった電話が音を立てた。
 緊張を緩めると美智恵は受話器を取って会話を始めた。
 数分後に受話器を下ろした美智恵が美神のほうを向くと声をかけた。

「令子、日本GS協会から連絡があったわ。明日の2時から、私と貴方と協会の上層部で会談を行いたいそうよ」

「あら、政府の関係者はでなくてもいいのかしら?」

 軽くからかうように美神は言葉を返した。
 横島に対する契約を握っている以上、現在の彼女はオカルトGメンよりもやや立場が強い。
 いざとなったら、契約を楯に裁判所沙汰に持ち込む事すら出来るだろう。
 しかし、美智恵はそれに対して鮮やかなリターンを返してきた。

「今頃は唐巣先生が、横島くんと会っていると思うわ。
 私達が明日の会談で決めたことも最終的に彼の意向に沿わなければ意味が無いもの」

「ちょ、ちょっと。先生があいつに会うってどういう事?」

「今日、私が協会に連絡した際に、霊能について詳しくない人間を出席しない代わりに、
 第三者である唐巣先生が予め彼の意思を確認しておこうって事になったのよ」

 それを聞いて美神は絶句した。
 藪蛇にならないように、美神は横島に対して今回の騒動によるオカルトGメンとの契約の見直しについては一切秘密にしていた。
 それは、先ほどの発言とは裏腹に、彼が大人しく自分の言葉に従うかどうかは未知数だと感じていたからである。
 母の言うとおり、彼がピートや秋美を見捨てるような形で計画から脱退するかどうかは微妙である。。
 自分とおキヌが懸命に頼めば、或いは首を縦に振ってくれるかもしれないが。

 しかし、ここで協会がこのように積極的に動いてくるとは全く予想もしなかった。
 それは今まで協会がこの計画をほぼ静観していたからである。
 美神は、この計画がGSの仕事を奪うことになる可能性を秘めている以上、協会が公然と計画に関る事はないと睨んでいた。
 また、この計画が打ち出された時に協会が自らの職員を派遣せず民間のGSを関与させるように要請したのは、
 『組み込み計画』が成功しても失敗しても協会が傷を負わないための保険だと考えていた。
 だからこそ彼女は、今回の仲介でも協会は消極姿勢だろうと考えていたのだが、どうやらその認識を改める必要があるらしい。
 横島から何らかの言質を引き出そうとしている以上、協会は計画に積極的に関与する方針に変わったようだ。
 そう思うと美神は明日の会談について一抹の不安を覚えざるをえなかった。





 11月7日 15時55分

「今回は災難だったね、横島くん」

「いやあ、散々追い回されたせいで思いっきり疲れたっす」

 唐巣からの連絡を受けて、横島は彼の教会へと足を運んでいた。
 そこで横島を待ち受けていた唐巣は、彼にお茶を勧めて軽い雑談の後に本題を切り出してきた。

「今回の事件で、また君の周りで動きがあると思うよ」

「どういうことっすか?」

 怪訝な顔をした横島に唐巣は水面下の動きを伝えた。

「君が一時的にとはいえ行方不明になったのはオカルトGメンの責任だ、という声があるんだよ。
 それについて明日、美神くんと日本GS協会とオカルトGメンで話し合いが行われる予定でね」

「そ、そうだったんすか?」

「知らなかったのかい?美神くんは君にも知らせているとおもったんだけど」

 驚いた顔をする横島の反応を唐巣は不思議そうに見つめ返した。

「それは………ある意味美神くんらしいね。
 本来ならば彼女は雇用主として君の安全を可能な限り図る義務があるんだよ。
 だからこそ今回の事件において、その義務を代行するべきオカGがそれを果たせなかった事に腹を立てているんだね。」

「美神さんは、俺のオカGへの出向を辞めさせたいと思ってるんでしょうか?」

「少なくとも、今回の騒ぎがこの計画に絡んでいる可能性が高い以上、好ましく思っていないのは確かだろうね。
 それで、横島くん。当事者である君はどうしたいんだい?
 明日の話し合いがどうあれ、美神くんも、オカGも協会も最終的には一人前のGSである君の意思を優先せざるをえないんだよ」

 その問いを受けて横島はしばし黙り込んだ。
 彼にとっては、今回の事件がすぐさま自分の去就に繋がるとまでは思わなかったのだろう。
 唐巣はそう考えながら、黙って彼を見守った。
 やがて横島が言葉を選ぶようにポツリポツリと話し始めた。

「今回の事件で、俺が最初にオカGに逃げ込んでいれば、何の問題も起こらなかったかもしれないんです。
 あれはオカGの失態じゃない。俺のミスです。
 だから俺自身はオカGに対して問題を感じてはいませんし、出向を中止して欲しいとも思ってません」

「それでは、美神くんが計画から外れるように言ってきたらどうするんだい?」

 その問いに横島は一瞬考え込んだが、すぐに口を開いた。

「美神さんが、それがこの計画にも俺にとってもベストだと判断したんなら従います。
 俺は計画のメンバーである前に美神事務所の社員ですし、
 GSとしての心得を教えてくれた美神さんには恩があります。
 それを踏みにじってまで、美神さんの決定に逆らおうとは流石に思えないっす。
 それに出向がなくなっても、俺が計画に関わる機会がなくなるわけではないでしょうし」

「ふむ。ではオカルトGメンの出向を中止してもいいというわけか」

「あ、いえ。そうなったとしてもすぐに辞める訳にはいかないっすよ。
 俺が抜けた穴を埋める人間を探さないといけませんし、見つかっても引継ぎやらなんやらがあるでしょうから」

「では、君の代わりの人間が見つからない場合は?」

「その時は、見つかるまで待ってもらいますよ。
 ここまで頑張ったのを中途半端に投げ出すような事は絶対にしたくないっすから、最低限のけじめはつけますよ。
 それに、俺だってこの計画は成功して欲しいです」

 自分の名義で出した提案が採用されれば、横島の代役はすぐに見つかる。
 けれどもそれ故に、出向が中止になったとしても横島は自らの意思で計画に協力する道を選ぶだろう。
 横島の言葉に頷きながら唐巣はそう考えていた。
 





 11月8日 14時20分

 その場には四人の男女が緊張感を漂わせながら集まっていた。
 美神事務所の代表の美神令子。ICPO超常犯罪課日本支部の代表として美神美智恵。
 そして日本GS協会会長の藤田昇と協会の上級幹部でありこの会談の進行役を務める唐巣神父である。
 全員が揃い、準備が整ったところで会談が始まった。

「それでは、会談を始めるよ。先日起きた横島くんの拉致に絡んで、
 美神くんが彼の安全の確保の為にオカルトGメンへの出向取り消しを要請したそうだね」

「はい、その通りです」

「それで、美智恵くん。君が提出した案には彼の安全を図るために、
 オカルトGメンと日本政府は一層の配慮を図る用意がある、と言う事だね」

「ええ、そうです。彼の安全の確保の為に計画に参加中に限り、彼に確固たる立場を与える必要性があります」

 唐巣の問いに、美神と美智恵はそれぞれ頷き返した。

「それで、争点となっているのは横島くんの処遇をどうするか、だ」

「その通りです。
 私は半年ほど前に彼と正式な社員契約を交わした瞬間から雇用主として彼の安全を守る義務を負っています。
 しかし、今回の事件により出向先のオカルトGメンに協力している状態では、
 その義務を果たせない危険があると判断いたしました」

「美智恵くん、どうなんだい?」

「はい。明確な証拠はございませんが、
 彼が狙われたのはこの計画の中心メンバーである事が原因だと考えられます。
 しかし、彼の供述から、彼が文珠使いである事も、原因の1つだと考えられます。
 ですからオカルトGメンといたしましては、彼個人の立場を固めて、
 彼に対する外部の干渉を一切シャットアウトするつもりでおります」

 その発言にピクリと反応した美神は棘のある口調で問いただした。

「外部の干渉って何をさしてるのかしら、ママ?
 オカルトGメンこそ、うちの事務所のに余計な干渉しないでよね」

「オカルトGメンと日本政府が進めてる計画に口を出す令子のほうが、よほど干渉しているのではなくて?」

「あいにく私は、私の現世利益と美神事務所の方針を邪魔してくるやつの権利は一切認めてないのよ」

「なら美神事務所が掲げている『人と人外の存在の共存共栄』という素晴らしい方針を実現するために、
 オカルトGメンと日本政府に助力をしてくれてもいいんじゃないの?」

 鋭く切り込んでくる美智恵から目を逸らすと美神は急に軽い口調で喋り始めた。

「よく考えたら、別にあの計画が失敗したって私は困らないのよね。
 そうなったら以前のように私の事務所に人外の依頼者が持ち込んできた依頼を横島君達と片付けていけばいいんだし」

「な、なんて事なの。どうしてこんなに捻れてしまったのかしら。
 五歳の時の令子は、あんなに素直で可愛くて私の言う事をちゃんと聞いてくれたのに。
 今では、業突く張りで素直じゃなくて私の言う事には逆らうし、酒癖は悪いし」

 わざとらしく泣き真似をして娘の弱点を突いた口撃を繰り出す美智恵だが、
 半年前に開き直ったせいで更に頑丈な精神力を獲得した美神は、以前は冷静さを失っていたその口撃をも受け流す。

「思春期に両親から受けた仕打ちで、根のふかーいトラウマができたせいね、きっと」

 本気なのかブラックジョークなのか判断がつかないほどの勢いで、
 激しい言葉の応酬を繰り広げる2人に、さしもの唐巣も口を挟めずにいた。
 なまじ美神家とは親との子供とも付き合いが深いだけに、下手に手を触れると大火傷するのが見えてしまうのだ。

 その時、唐巣の横で藤田が咳払いする音が聞こえ、我に帰った唐巣は慌てて二人を制止する。

「2人とも止めないか。話が本筋からそれているよ」

 唐巣の声と藤田の厳しい視線に気付いた美神たちも、口を閉じる。
 それを見計らって、今まで黙っていた藤田が口を開いた。

「美神令子女史の言うとおり、彼女は霊障や霊能が関わる事象に置いて横島氏の安全を図る義務がある。
 そしてそれは、日本においてGSの手助けを目的としている我々も同様だ。
 その辺りを踏まえて、我々は独自の案を2つ用意した。協会のある幹部が考案した物と、唐巣くんが考案した物だ。
 勿論その目的は、GSとして重要なプロジェクトに関わっている横島氏の身の安全を図る事である」
 
 そう言って彼が唐巣に目配せすると、唐巣は美神と美智恵にそれぞれの案について記されている書類を渡した。
 美神も美智恵もそれに目を通し始める。
 やがて読み進めていくうちに二人の表情がどんどん変わっていった。
 特に美神が唐巣の案を読んだ時、彼女の顔色は面白いほどに赤くなった。

「先生、一体どういうことですか!?
 どうして、私が横島くんと婚約する必要があるというんですか!?」

 美神がつかみ掛からんばかりの勢いで唐巣を問い詰める一方で、
 美智恵は苦虫を噛み潰したような顔で、協会案と唐巣の案を読み直していた。

 唐巣の案は要約すると、
 横島の身の安全のために美神の婚約者としてある程度の期間偽装する。
 アシュタロス大戦の功労者であり様々な二つ名を持つ美神令子の婚約者という立場を得ることで、
 彼と美神事務所に対する干渉を予防する。
 計画の代役には、先月GSの資格を取得した氷室おキヌを立てる。
 なお、計画参加に当たって彼女の身の安全を図るため、彼女に対して日本GS協会は様々なバックアップをする準備がある。
 となっている。

 それに対して、針谷が考案して藤田が取り出した協会の案では、
 横島忠夫の安全の確保並びに『組み込み計画』の成功の為に、彼を日本GS協会の幹部もしくは準幹部として迎える。
 彼がその処遇に賛成した場合、横島氏は唐巣氏の下につく事になる。
 その代わり、彼と美神事務所との契約並びにオカルトGメンへの出向に関しては従来通りとする。
 となっている。


「落ち着いてくれ、美神くん。婚約はあくまで偽装だよ。
 要は、君に断らずに横島くんに干渉することは出来ない、という構図が出来ればいいんだ。
 婚約という結びつきがあれば、今回のように強引な引き抜きに対しても君が対処できる幅は大いに広がるだろう?
 この場合、君の悪名や魔神すら出し抜く狡猾さ。あ、いや、君に対する世間の評判そのものが抑止力となる。
 そもそも、この案で横島くんと計画との関わりが薄くなれば危険も減るじゃないか」

「だからって、どうして先生に私の婚約云々について指図されないといけないんでしょうか?」

「どうしても嫌なら無理にとは言わないよ。
 これは君の、横島くんの出向を取り消して安全を図れ、という主張に対する私のアイデアに過ぎないからね」

 それを聞いて、襟首を掴まんという勢いで唐巣を問い詰めていた美神の勢いが止まる。
 彼女は黙ったまま、もう一度2つの提案に目を通した。そこへ美智恵が質問を投げかけてきた。

「唐巣先生の提案では、横島くんの代役はおキヌちゃんが努める事になっていますが、
 それは一体どのような基準で選ばれたのでしょうか?」

「それは、人外相手の交渉で横島くんとそれほど見劣りしない経験があるGSは、彼女しか心当たりがなかったからだよ。
 私や美神くんが直接計画に加わるわけにはいかないし、そうなると彼と同等の即戦力はすぐには見つからない。
 それでも誰かを選ぶというのなら、私はおキヌくんを押すよ。経験のある彼女なら計画に加わっても戸惑いは少ないだろう。
 美神事務所が例の方針を打ち出してから私がしばらくそれを手伝った時にも、彼女には充分な適正を感じたしね。
 彼女の身の安全に不安があるようなら、計画参加中は協会の職員としての形式をとってもいい」

 自らの経験を元に語った唐巣の言葉に美智恵も咄嗟に反論が思い浮かばなかった。
 言われてみれば、次善の手段としておキヌを横島の後任にするというのはそれほど悪くない。
 美神が言っていたおキヌの「他人の力を100%以上にしてしまう能力」というのも、
 複数で協力して進めていくこの計画ではきっと役に立つだろう。
 何より、彼女が参加する事になれば横島も美神もそれを静観しているわけにもいかないはずだ。
 しかしそれでも横島のように、ぎりぎりの状況でも生き残るしぶとさと悪運を持つ人間が先頭にいないと不安が残る。
 第一、横島の安全を図るためだとはいえ、娘の婚約をどうこう言われたくはない。

 そうして2人が黙り込み、美神が書類に目を通し終わった様子を見計らって、藤田は口を開いた。

「唐巣くんが聞いたところ、横島氏は基本的に雇用主の決定に従うそうだ。
 美神女史が横島氏の安全を図るために、最も良い選択を取る事を期待するよ」

 この狸め!
 美神が奥歯をかみ締めながら藤田を睨みつけた。
 藤田が示した案は、憎らしいほどに自分とオカルトGメンの弱点を突きながらも、
 それぞれの抱える懸念を解決する可能性に満ちていた。
 日本GS協会では、準幹部以上の立場の人間が所属を変えるには、藤田など最高幹部達の承認が必要だ。
 よって、そういった人材を秘密裏に引き抜く事は難しく、強引に引き抜こうとすれば協会を敵に回すことになりかねない。
 それは、霊障絡みの大災害が再び発生することを恐れる各国の首脳にとっては、決して避けねばならない事態だった。

 何故ならば、日本のGSがアシュタロス大戦で多くの功労者を出したことで、
 現在では世界GS本部の中でも日本GS協会の影響力はかなり大きくなっているからだ。
 そんな状態で日本GS協会を敵に回せば、
 万が一霊障による大災害が発生したとき、世界GS本部が迅速な対応をしてくれる可能性を著しく下げる事にもなる。

 そして、一般には知られていないが、
 横島忠夫の同期合体がアシュタロス大戦において大きな役割を果たした事は、各国の上層部にとっては周知の事実である。
 今までに同期合体については南極戦の時と大混乱の東京でのラストバトルにしか使われていない。
 そのために理論は分かっているが、具体的な数値によるデータが残っていないのが現状である。
 それでも「横島と彼と同等の霊力を持つ2人の霊能力者が揃う事で成り立つ、ごく短時間限定の上級神魔族に対抗できる手段」という事は知られている。

 だからこそ、彼に直接危害を加える国などなかった。
 それは、彼の死によって上級神魔に対抗する有効な手段が失われる事を、アシュタロス大戦を経験した各国は恐れていたからだ。
 万が一にもあの時のような霊障による大災害が発生した時に、
 同期合体が出来る彼が利用できる場合と利用できない場合では生じる被害が大きく変化する。
 つまり各国にとって、生きている彼を利用する事にこそ意味があるのだ。

 余談だが、『組み込み計画』がスタートしてから横島達が今まで命を狙われる事が無かったのは、
 各国がそういった動きを秘密裏に取り締まっている事も大きい。
 今回の引き抜きで襲撃者が彼の命を狙わなかったのにはそういった事情もあった。

 ならば、どこぞの国の組織が、彼の知人や親類を人質に取った場合はどうなるか?
 これに関しては単純明快な結論が出ている。
 それは「そんな事を長期に渡って秘密裏にやるのは極めて難しい」という事だ。
 人狼や、鋭い霊感や特殊な能力を持つ彼の周囲に居る霊能力者達の追跡を誤魔化し続けながら、
 長期に渡って人質を隠したり、横島を脅迫するのは、それで得られる利益に比べてあまりにもリスクが高すぎる。
 ばれてしまえば、美神や美智恵を介した世界GS本部からの抗議は激烈を極めるだろう。
 ちなみに世界GS本部やオカルトGメンは、
 アシュタロス大戦において、軍隊が核ジャックされたせいで足を引っ張っていた反面、
 霊能力者達が大活躍した事もあり、情報をある程度オープンにしている国の市民からの支持は厚い。
 美神に様々な便宜を図る約束して、それを口止めとしたために、彼女に対する暗殺計画の存在は闇に葬られている。
 よって、彼らが公式声明としてどこぞの国を非難した場合、多くの人間がそれに注目する。
 それは、その国の国際的な信用や地位の低下に繋がる可能性すらある。


 だからこそ、リスクを考慮した場合、彼に対して干渉しようとすれば、直接彼だけにあたるしかない。
 強引な手段をとるにしても、正体を類推されるような証拠が残らないように小細工は最小限にせざるをえない。
 今回の騒動でも襲撃者は最初の奇襲以降、姿を現していない。
 そのせいでオカルトGメンは『intel』と襲撃者を結びつける証拠が見つからなかったために怪しい点だらけの、
 「テロリストの襲撃かと思い込み、やむなく基地に逃げ込もうとした」という『intel』の主張を覆せなかった。
 それにより、今回の件は「不幸な事故」という事で処理される予定であり、
 今後、この件に関してアメリカが公的に他国やICPOから詰問される見込みはほとんどない。


 そんな状況の下で、横島が日本GS協会の準幹部に収まればどうなるか?
 各国は協会への心証を良くする為に、当分は引き抜きを含めた彼への干渉を諦めざるをえない。
 この先に彼を利用できるチャンスを潰さないために、過激派への密かな牽制も続行するだろう。
 そして協会は、オカルトGメンが主導権を握っていた『組み込み計画』に介入することも、その功績を得る事も可能になる。
 更に、万が一再び横島に何かがあれば、オカルトGメンは、協会からの派遣者の安全を守れなかった責を負う事になり、
 日本GS協会にとてつもなく大きな借りを作ることになる。
 それは、日本におけるオカルト絡みの権益を従来通りにGS達が、そして日本GS協会が握る事につながっていく。
 つまり、ここで横島を職員にしてしまえば彼が生きていても死んでしまっても協会に有利な状況が訪れる、というわけだ。

 その一方で、唐巣の提案を呑んだらどうなるのか?
 確かに横島は自分の許へ帰ってくるだろうが、
 協会の肝いりという形でおキヌが計画のメンバーになってしまえば、それを黙ってみているわけにもいかない。
 自分も彼もおキヌを助けるために、協会やオカGが何も言わずとも、今までのように積極的に計画に関わらざるをえない。
 少なくとも横島はそうすると断言できる。彼がおキヌを差し出す形で計画から離れる事を認めるはずがない。 
 そうなれば、状況によっては自分も横島もおキヌも協会に属さざるをえなくなるかもしれない。
 それで利を得るのは結局、協会なのだ 

 それに……………気に食わなかった。
 唐巣の提案は確かに理に適っている。
 横島自身を暗殺される恐れがない以上、虫除けとして自分の評判を利用する師の提案は、
 協会に属さずとも横島に対するちょっかいを防ぐ手段になりえるかもしれない。
 しかし、気に食わなかった。何故ならば………

「令子。貴方、自分の事を他人の都合で決められてもいいの?」

 美智恵の声が聞こえてくる。
 その通りだった。
 婚約などいう自分にとっての一大事を他人に左右されるのは、負けず嫌いの自分にとってはとてつもなく不快だった。
 選んだ道を最善にしてみせる。それが自分のポリシーの一つでもあったから。
 それに、そんな都合で婚約などしたら
 「安全確保のための偽装」という言い訳が与えられている以上、自分と彼とがぎくしゃくするのは目に見えている。
 本当に欲しいものを、自分の力で手に入れるのでなく、他人から与えられたとしても、自分は自分自身を納得させられない。

 ここで美智恵の提案どおりに横島の所属を変えるのは論外である。
 かといって全ての提案を拒否して横島を計画から完全に手を引かせて、オカG、協会、政府の3者を敵に回すのも得策ではない。
 全てが丸く収まる方法が思いつかない以上、自分達が最も損をしない選択肢をとるしかない。

「もし、横島くんが協会の職員になった場合、私と彼との間に結ばれている契約はどうなりますか?」

「今まで通りで構わんよ。我々は彼の保護の為に準幹部という肩書きを与えるだけだ。
 もちろん、週に一度くらいは上司となる唐巣氏の仕事の手伝いをしてもらうが」

「つまり、現状維持とそれほど変わらない、というわけですか」

「より安全性は高まると思うよ。
 少なくとも彼にちょっかいをかけることが、日本GS協会を敵に回す事になるのだからね」

 そして協会は労せずして横島を手に入れて、彼の生み出す果実を得る事になる。
 しかし、悔しいが今のところ協会の案以上に説得力があり、現世利益を損ねない提案は思い浮かばない。
 己の思考がその結論を導くと、彼女はしぶしぶ告げた。

「分かりました。私は協会の案を支持します。しかし、それには一つ条件があります」

「ほう、何だね?」

「横島くんに関することで、美神事務所や雇用主である私に何か仰りたい事がございましたら、
 必ず唐巣先生を通すようにしてください」

 それは美神にとって譲れない一線だった。
 師である唐巣ならば、たとえ何か言ってくるにしても弟子である彼女の事情に配慮してくれるだろう。
 まして横島は唐巣の孫弟子と言えなくもない。
 だからこそ唐巣は、自分や横島に対してそのあたりの事を必ず考えた上で行動してくれる。
 そういう気遣いの出来る唐巣以外の人間が口出ししてきた場合、自分は笑顔でそれを聞き流す自信が無い。

「こちらとしても、それはかまわない。
 唐巣氏は君の師であり、横島氏が協会の職員になる場合は彼の上司となる予定なのだから。
 ICPOは、この提案を受け入れてくれるのかね?」

 藤田の言葉を聞いて、美智恵はほんの僅かに眉を顰めた。
 提案を受け入れれば、横島の『組み込み計画』の参加は保証される。
 だが、協会からの派遣者という立場になる以上、この計画の功績の一部が協会に持っていかれるのは必至だ。
 また、今後は重要事項の決定などに関しては、協会に伺いをたてなくてはならないかもしれない。
 しかし、横島が「協会からの派遣者」となる事で以前よりも協会からの協力を得られる可能性もある。
 協会の予想外の積極介入により現状維持が極めて難しい以上、
 『組み込み計画』が最も成功する可能性が高い提案を選ぶしかあるまい。
 そういった要素の全てを考慮したうえで美智恵は決断を下した。

「分かりました。オカルトGメンの代表としてその提案を支持いたします」

 ここに横島忠夫の処遇について、三者の合意が結ばれた。
 その後、会談の結論を美神から伝えられた横島は、事前に唐巣に話したようにその結論を受け入れた。




 11月8日 23時15分

 夜の静寂に包まれた教会は厳かな空気に満ちていた。
 その中で、唐巣は今日の無事に感謝するために神に祈りを捧げていた。
 やがて祈りが終わるころ、それを見計らっていたかのように一人の男が教会に入ってきた。
 男は手に持っていたワインのビンを唐巣に差出し、唐巣はそれを手に取って男に話しかけた。

「君からこの提案を受けたときは本当に驚いたよ」

 帽子を脱いで上着を適当な場所に置きながら男は、長髪をたなびかせてその言葉に返答する。

「いえ、それほどでもありませんよ。
 元々連絡した時に言いましたように、この提案は最初から断られるのを前提として作ったものですから」

「それでは、君はあの提案を以前から練っていたのかい、西条くん?」

 その質問に西条は淡々とした口調で答えた。  

「彼に何かがあった場合、その責をオカルトGメンが負うという事は半年前から予想しておりました。
 そうなった場合に彼を引き止めるための手段や提案などについては、以前から何通りかシュミレートしておりました」

「それで、今回の君が私に渡した提案の狙いはなんだったのかね?」

「元々先生のプランでは、政府の同意を得て横島くんを政府でもそれなりに高い地位に据える事を提案して、
 それに反発する令子ちゃんに妥協点として現状維持を選んでもらうつもりでした。
 しかし僕は、政府が『組み込み計画』の進捗について発表した後に、
 協会がこの計画に介入したがっているという情報を友人から聞いておりました。
 それにより、今回、協会がなんらかのアクションを起こしてくるのは予測の範疇にありました。
 そして令子ちゃんがこの事件の後処理で起きたごたごたを解決するために協会に連絡を入れたときに、
 僕は、現状維持を目指した先生の案が通る望みはほぼなくなったと判断いたしました」

 そこまで言ったとき、唐巣は西条の説明を遮って、彼に疑問を投げかける。

「協会が強い影響力を持ってると入っても、『組み込み計画』については、あの時点ではほぼ第三者だったんだよ。
 政府からの圧力でごり押しをすれば、あるいは美智恵くんの案を通す事は可能だったかもしれないよ」

「それでは駄目なんですよ。仮にうまくいっても美神事務所とオカルトGメンとの間にはしこりが残ります。
 その結果、美神事務所の協力が得られなくなるのは、計画にとって大きな損失です。
 先生はそのあたり、時間をかけてどうにかする自信があったのかもしれませんが、
 それでは計画の遂行にとっても横島くんの安全面でも不安が残るんです」

 少し熱の篭った口調で喋る西条を唐巣は珍しい物のように見た。

「君が横島くんの身の安全を心配するとは意外だね」

「仕方ありません。今後もし同様の事態が起これば、日本政府のオカルトGメンへの信用は地に落ちます。
 そうなれば計画どころか日本におけるオカルトGメンの活動そのものに悪影響が出てしまいます」

 そこで言葉を切ると、西条は自らの熱を冷ますかのように、息を吐いてマリア像を見つめた。
 やがて視線を唐巣に戻すと、西条は落ち着いた口調で説明を続けた。

「仮に僕が何もしなかったとしても、協会が提案した案が採用される可能性が一番高かったでしょう。
 ですから、採用される見込みの少ない僕の案を打ち出してもらったのは、
 先生と令子ちゃんが反発する対象を作り上げ、それに比べれば妥協しやすい協会の案をすんなりと選んでもらうためですよ。
 令子ちゃんが、協会から押し付けられたからではなく、自らの意志で、横島くんを協会所属にする選択を認めたい以上、
 美神事務所は今後も『組み込み計画』への協力姿勢を崩さないでしょう。
 ここで手を引いてしまったら、美神事務所が計画の成功で得られるはずだった功績は協会の物になってしまいますからね」

 その説明に頷きながら唐巣は、最も気になっていた事を尋ねた。

「確かに無理矢理横島くんを引き止めれば、へそを曲げた美神くんが計画から手を引く可能性はあっただろう。
 しかし、我々にとっては彼を協会所属にするのはありがたいが、オカルトGメンにとっては面白くないのではないかい?」

「できれば協会の介入は避けたいところですが、
 こうなってしまった以上、何らかのペナルティーは受けざるをえません。
 それでも計画そのものが瓦解して、以前のように現場が深刻な人手不足に陥るよりは遥かにましです。
 それに横島くんが唐巣先生の下につくのならば、彼の身の安全は万全になるでしょうし、
 『組み込み計画』への介入は唐巣先生を通じて行われるのではないでしょうか?」

「おそらくそうなるだろうね。私がオカルトGメンと美神事務所のパイプ役となるのは、協会の中でほぼ内定している」

「やはりそうなりましたか。それならば協会が頭ごなしに計画に介入してくる恐れはありません。
 美神事務所が掲げた方針を軌道に乗せる手伝いをされた先生ならば、
 この計画の理念やこの計画に必要な事を協会の誰よりも分かっていらっしゃるのですから」

 それだけではない。横島の上司でお目付け役という立場ならば、それを利用して美神に鈴をつける事も可能かもしれない。
 少なくとも横島を預けている以上、美神が唐巣の立場を悪くするような行動を取る危険は減るだろう。
 それを見越した上で、西条は唐巣にこの提案を持ちかけて、失敗しても構わないからと彼を説得したのだ。

 唐巣にとってみれば、
 西条の案がうまくいけば美神事務所の中で最も常識のあるおキヌを協会に引き込むチャンスができるうえ、
 婚約を機に美神が多少は落ち着いてくれたならば、それはそれで喜ばしいと思っていた。
 また失敗すれば現状のように、美神を牽制する手段と、影ながら計画に協力する機会を得る事になる。

 一方西条にとってみれば、
 自らの提案を狙い通りに失敗させた事で横島を計画から外さずに済み、彼への警備に神経を使わずとも良くなった。
 更に横島と美神との仲を一時的にせよ遠ざける結果も手に入れた。
 婚約という提案を拒んだ以上、横島はその経緯を聞けば美神に対して僅かなりとも隔意を持つだろう。
 偽装とはいえ婚約するのが嫌なので、彼女は自分を協会に差し出したのかもしれない。
 彼がそのような疑念をほんの僅かたりとも抱かないとは言い切れない。

 尤もそうなったとしても、それは時間と共に解決していくだろうが、
 その間に彼の心に穿たれた間隙をついて誰かが彼をものにしてしまえばいい。
 これでしばらくの間は自分が暗躍する余地は確実に広がった。

「しかし、君は君の持ち込んだ計画が採用されるとは思わなかったのかい?」

「そのあたりは何度も計算と分析を重ねましたから。
 令子ちゃんの性格を考えれば、他にましな選択肢があるならばこの提案を受け入れるとは思えません。
 それに、先生が僕の提案を阻止しようと立ち回ってくれるのは、状況からいって確実でしたしね」

「確かに美智恵くんは君の予想通り、この提案を美神くんが受け入れないようにさりげなく動いていたよ。
 彼女にとって見れば横島くんを計画から外す提案は論外だろうからね」

「ええ。令子ちゃんを抑えるには、先生を動かすのが最も可能性が高いですから」

 前回、あと一歩の所で己の望む結果を逃した事で、西条は何度も計算を重ねながら暗躍の機を窺っていた。
 そして、最もうまくいく可能性が高いのは、美智恵と美神が対立した時にさりげなく漁夫の利を拾う事だと悟っていた。
 今回の事でも、横島の処遇に対する結果は、長い目で見れば決してオカルトGメンにとってマイナスにだけ作用するわけではない。
 『組み込み計画』成功の功績を独占して、日本におけるオカルトGメンの立場を確固たる物にしようという目標は一歩後退したが、
 日本GS協会との協力体制を構築して、それを元に協会内にパイプを通じておけば、
 有事の際は両者が最低限の連携を取れるようにすることも可能になるだろう。
 別にオカルトGメンとしては協会と敵対する必要などないのだから。
 
 話が一段楽した所で、西条はワインを満たしたグラスを唐巣に渡し、自らもグラスを取る。

「では、今後の『組み込み計画』の成就を願って」

「「乾杯」」

 グラスが触れ合い、ワインが2人の喉を通り過ぎる。
 
 やがて西条は帰宅した後、唐巣は彼が持ち込んできた計画を処分しながら呟いた。

「最後になってみないと誰が勝者なのかは分からない、か」








 アメリカ合衆国 某所

「今回は不手際だったな、ピーター?」

「申し訳ございません」

 上司の言葉にピーターは項垂れた。
 ターゲットの確保をぎりぎりの段階でしくじり、
 更に対空ミサイルであわや撃墜されそうになったせいで、3人の顔には疲労と憔悴が浮かんでいる
 それを無慈悲に眺めていた男は、やがて1つ息をつくと言葉を継いだ。

「今回の失敗に関しては、証拠不十分な状態でオカルトGメン日本支部からテロ紛いの違法な強襲を受けた事は知っている。
 それをこちらが追求しない事を条件に、今回の『intel』の横島引き抜きに対して、日本政府とICPOは一切を不問にするそうだ」

 そう言うと、彼は視線を須狩に転じた。

「須狩くん、今回、君たちとは別の方面から有益な情報が得られたのだが、
 その情報を基に君にはある物の培養に関する研究をしてもらいたい。
 多少時間は掛かっても構わないが、一年後までには目途を立ててくれ。
 なに、君の実績を考慮すればそれほど難しい事ではないよ」

「りょ、了解いたしました」

 思いがけない言葉に須狩は緊張に固まりながらも返事を返す。
 それに頷くと男は再びピーターとウォンの方を向く。

「今回の失敗の責任を問わない代わりに、2人には別の任務を与える。
 このリストに載っている者達の現在地と現在の状況を調べ、
 問題を抱えている者がいたら、それを解決する代わりに須狩くんの仕事を手伝うように説得しろ」

「「了解です」」

 口を揃えて返答した後、2人は上司の差し出したリストに目を通した。








 この半年の努力の結晶として示された『組み込み計画』の成果は、様々な方面へ波紋を広げた。
 その波紋は広がっていき、打ち消しあい、更なる波紋を生み出して計画の中心メンバー達を揺り動かした。

 あくまで彼を手元に置こうとした美神。
 彼が計画から外れないように様々な方面へ手を回したオカルトGメン。
 彼の生み出す果実を手中にしようと企んだ日本GS協会。
 そして彼を日本から引き離し、己の利益のために役立てようと画策したアメリカ合衆国。

 それぞれの思惑は複雑に絡み合っては離れていく。
 幾多の出来事を経て動き出した計画は、その流れを止める事は無かった。
 メンバー達は、計画の遥かな果てを目指して、今日もその歩みを続けていく。
 そして、物語は次の舞台へと流転する。


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