鮮やかなオレンジ色に染まった町の景色は美しかった。
アイツが最後に残した短時間の贈り物。
昼と夜の一瞬の隙間は暗闇に飲まれ消えていく。
オカルトGメンに着いたのはそんな時だった。
中に入ると早速『道楽公務員』が姿を見せる。
「何の用だい?君がナンパするような女性は此処には居ないよ。」
相変わらず挑発的な態度は変わらない。だが、以前に比べるとひどくはない。
それは横島が美神の事務所を出て独立したり、アシュタロス事件後の成長を認めているからだ。
更にオカルトGメンにも協力をしているので少しは仲が良くなっている。
もちろん仕事は西条とではなくその部下ピートとだが・・・。
「隊長に会いたい。」
横島は西条の挑発には乗らなかった。
早く用件を済ませて家に帰らなければ、彼女の機嫌が悪くなるので、いちいち相手にしてられない。それほど怒ったおキヌは怖い。
「先生は仕事中だ。用件なら・・・」
「私が聞くわ。何かしら?横島君。」
奥から現れたのは美神令子の母、美神美智恵。
仕事が大変なのか、かなり難しい顔をしているのが分かった。
「久しぶりっス。今、起こっている事件についてなんですけど・・・。」
それだけで美智恵は理解して小さな部屋に案内してくれた。
西条はお茶を自分の椅子の前、美智恵の前、横島と置くと黒い革で作られた椅子にどっしりと腰掛ける。
横島はそれを確認すると早々と自分の言いたい事を説明した。
「事件の内容は全部知っているのね。で、横島君は何を考えているの?」
「どうせ、依頼が俺にくるのは知ってます。ピートがウチに来ましたからね。」
美智恵と西条は何も言わなかった。おそらく図星だろう。
だけど今回の敵は雪之丞を越える強さを持っているので、少数精鋭で犯人を倒そう。という意見だった。
「なるほどね。けど何でこの事件に関して君は協力的なのかが知りたいんだが。」
西条は当初の疑問を横島にぶつけた。
「別に協力的じゃねえよ。ただ今回の敵は強すぎるから、数で向かっても命の保障ができないってことだ。」
「何が言いたいんだい?」
と西条が横島に詰め寄ったが美智恵がそれを止めた。
「悪いけど西条君、席を外してくれる?」
「し、しかし・・・。」
と言ったものの、逆らえる筈がなくそそくさと席を立ち部屋を出た。
目線を西条から美智恵に戻す際に時計が目に入った。
時計の針は無情にもおキヌがご飯を作り終えてもおかしくない時間帯。
あぁ、怒らるな。どうやって機嫌を取ろうか。と考えたが、今は目の前の話に集中しようと思った。
美智恵はお茶を一口飲むと、ふっと息をつく。もう外は真っ暗だ。
「分かってるわ。おキヌちゃんね?」
彼を傷つけた原因は自分にあると思っている美智恵は横島の気持ちがよく分かった。
彼女をこの事件に関わらせたくないのだ。以前、大怪我をして病院に運ばれて以来、おキヌはほとんどの仕事について来ている。
このことで、横島を失うことに対してかなりの恐怖心ができたからだ。
更に親友の雪之丞がやられた今、自分にもおキヌを失うことに対する恐怖心が生まれてしまった。
危険な仕事と言えば、絶対来るか、止めるだろう。だが今回は断れない。
「はい。」
横島は力無く答える。
「依頼しようと思ってたけど、やっぱり分かってたのね。」
「隊長が俺を独立させたのはこの為ですからね。」
「そうね・・・。けど今回は横島君の力が必要なの。そうしないとGSの被害者が 増えるばかりだわ。」
けど、それだけではなかった。
横島が美神令子の元を離れれば、少しは二人の距離が近付くかと思っていたが、逆におキヌが横島に付いて来た。
しかしその事に対しての恨みや悔しさは無い。
自分の娘が悪いのだから。
「横島君の気持ちは分かるわ。じゃあこうしましょう。」
出された提案は、依頼するときは横島一人だけに伝える。
事務所を通して連絡しない。の二つだった。
これでおキヌに危険な事にあわずに済むし、心配をかける必要がない。
これで横島には断る理由はない。
「すいません。迷惑かけて・・・。」
「いいのよ。頼むのは私達だから。令子にも話とくわ。」
「ただいま〜。・・・うっ。」
部屋に入った瞬間ピリピリとした空気が充満していた。殺気?
見つめた前方にはおキヌが最高の笑みで迎えてくれる。思わず息を呑む横島。
「よ・こ・し・ま・さん?」
後ろから黒いオーラを身に纏いながら手招きしている。
行くしかない・・・。だが足が奮えて動かない。
このプレッシャーは軽く中級魔族ガルーダを越えていた。
相手が動かないならと、おキヌが横島の方へと歩み寄ってくる。
「ナ、ナンデショウカ?オキヌサン・・・?」
次の日・・・。
ピートから携帯電話にメールが入り待ち合わせ場所に向かった。
近くの喫茶店に入って話を聞くと捜査に乗り出すので来てほしいということだ。
ピートも西条から訳を聞いているので横島と二人で話を進める。
「あれ?横島さん、目のくまがすごいですよ?」
誰がどう見ても寝不足と判断できる目のくま。
「あぁ・・・。昨日はいろいろあってな・・・。」
酷く腫れ上がったそこを押さえながら顔を真っ青にする。
「除霊が大変なんですね。」
「おぉ、軽く中級魔族は越えてたぞ・・・。」
その日、打ち合わせを済ませて、明日には作戦を開始する事も聞いた。
メンバーは美神令子、西条、ピート、雪之丞、横島の五人。
そして当日。
一行は東京都から離れた県外に来ていた。時刻はもう夜の7時を回っている。
こんな山道に一般人がいるはずない所を選んだ。
除霊場所の情報は流してあるので後は来るのを待つだけだ。
「西条!早く作戦を言えよ!」
雪之丞は前回やられた悔しさがあるのか、うずうずしている。
怪我は完治してないが無理を言って付いて来た。
「分かった。チームは二つ。吸魔護符を解いて悪霊を逃がしてあるから、まずはそれを除霊してくれ。」
「その後に犯人が現れたら、この信号弾で位置を知らせて下さい。」
ピートが説明に補足を付け加える。
「ペアは・・・」
「美神さぁ〜ん!・・・ぶへっ!」
今の決まり手、コークスクリューブロ−→ガゼルパンチ→正拳突き。
「行きましょ。西条さん。」
ペアは西条、美神と横島、雪之丞、ピートに分かれた。
横島は悔しそうに森の中に消えて行く二人を血の涙で見送った。
「ここです。ダンビールフラッシュっ!」
吸魔護符から開放された悪霊は虚しく1行で除霊された。
そして数十分歩くと不可解な気配がはっきりと分かるようになった。
美神や西条ではない。三人とも気付いたのか、警戒を今まで以上に強くする。
「来たな・・・。次は絶対ぶっ殺す!」
バトルマニアの血が騒ぐ。ますます霊圧が強くなる。
もう敵との距離はそう遠くはない。
「ピートっ!信号弾!」
横島の声に反応して信号弾の尾に付いている白い紐を引っ張る。
先からは、ボッと青白い光を出し上空に上がったかと思えた。
バスンッ!
後方から霊波砲が打ち込まれ、ピートの足元に弾が戻ってきた。
遊び終わった花火みたいに炎を上げると、ふっと消えた。
強力な霊波動が場を制圧する。
「美神さん達を呼ぶんだ!ピート頼んだ!」
予想していた実力よりはるかに上だ。
三人では危険と察知した横島は美神の援護が必要と判断した。
「はいッ!」
ピートはバンパイア・ミストを使い発信機を持って森の奥へ消えていった。
「横島ッ!前を見ろ!」
巨大な霊波砲が横島を襲った。が、魔装術の雪之丞が防ぐ。
そのまま弾かれた霊波砲は散々になり辺りで爆発した。
「サンキュー雪之丞!これ持っとけ。」
そう言うと横島は文珠を一つ投げた。
「文珠か・・・。何に使うんだ?」
「秘密兵器だよ。使うなよ。」
「あぁ。話してる暇はないぞ。」
奥から黒い影が一つ。フードを被って顔は見えないが、身長は横島とそこまで変わらない。微かに見える口元がニヤリと笑った。
「何がおかしい!」
雪之丞はそれが気に入らなかったらしく、強めの霊波砲を打ち込む。
相手は避ける仕種を見せず、そのまま直撃した。
辺りは煙で充満していたが攻撃は仕掛けてこない。
「!! お前は・・・。」
煙が上がると見覚えのある顔が出てきた。
「ふっ、久しぶりだな雪之丞、横島!お前らの事は忘れね〜ぜ!」
二人は唖然としている。その様子に少し相手は満足しているようだ。
「「誰だっけ?」」
どしゃああぁっ!
二人は首を傾げている。
「ふざけんなぁ〜ッ!陰念だ!イ・ン・ネ・ン!」
「知ってるか?横島。」
「ペラペラっと・・・あったあった!ワイド版五巻に出とるぞ!」
ほれっ、と雪之丞にワイド版五巻を手渡す。
「コ、コラーッ!!こうなったらブッ殺す!」
<久々のおまけ>
横島が家に帰って・・・。
「ナ、ナンデショウカ?オキヌサン?」
「なんで遅かったんですか?」(ずいっ)
「・・・・・・(゜o゜;;)」
「よ・こ・し・ま・さ・ん?」
「・・・・・・。」(あうあうっ)
「ハァ、もういいですよ。横島さんが元気になってくれたなら。」(にこっ)
「じゃあ、まず包丁をしまってくれる・・・?」
<おまけ2>
「ペラペラっと・・・あったあった!ワイド版五巻に出とるぞ!」
「おっ懐かしいな!ダサいな陰念の魔装術。」
わははははっ
「って、お前と同じチームじゃねえか?白龍って書いてあるぞ。」
「そうだったな。忘れてた。」
わははははっ
「コ、コラーッ!!こうなったらブッ殺す!」
いろいろと指摘所があるかもしれませんがよろしくお願いします。
やっと敵が出せた!最初はミカ・レイにやられたヤツを出そうと思ったんですが、試験に合格してないので陰念で・・・。
あれって、霊波砲ですよね・・・?体の傷(?)から出るやつ。
今回は文の量を増やしたんですけど・・・う〜ん、まだ短いなぁ・・・。
次回も頑張ります!コメントプリ〜ズ・・・(汗)。 (never green)
っていうか、キャバクラとか行っててしかもそれがばれてる夫婦のやりとりみたいで笑えました。
それにしても陰念よ、見ないうちに火角結界を使えるまでに出世したんだな〜。えらい!!お前は死んだとばかり思ってたよ私は(コラ)
ダサい魔装術は進歩したのか?続きが楽しみです。
(ちくわぶ)
多分嫌われ者のGS初心者です(笑)。
GTYにも書いているとの事で、どうやら既に何十編かの数をこなしていらっしゃるものと考え、今回少々きつい事を言わせて頂きます。
以前にhiroshiさんが仰っていたように視点が定まってない事により、単に出来事を羅列している感じがしますし、読んで分かり難い部分も散見されます。
恐らくhiroshiさんの指摘を無視しているとかではなく、視点の意味が分かっていないのでしょうね。
僭越ながら例を挙げますと、
>目線を西条から美智恵に戻す際に時計が目に入った。
>時計の針は無情にもおキヌがご飯を作り終えてもおかしくない時間帯。
>あぁ、怒らるな。どうやって機嫌を取ろうか。と考えたが、今は目の前の話に集中しようと思った。
>美智恵はお茶を一口飲むと、ふっと息をつく。もう外は真っ暗だ。
というあたりです。
横島の目線、横島の考えを描いている文脈で、突如として美智恵は〜という文。
そして、外は真っ暗とは誰の目で見て?
むしろ例えば
あぁ、怒らるな。どうやって機嫌を取ろうか。と考えたが、今は目の前の話に集中しようと思った。
目線を正面に戻した横島の目に、お茶を一口飲んでふっと息をつく美智恵の姿が映る。
その顔がゆっくりと窓の方を向いたので、横島もつられて目を向けた。
もう外は真っ暗だ。
つまり、誰の目で見ているのかを意識して書く。同じ文脈の中でころころ視点を変えないという事です。
似たような事ですがもう一点。
>美智恵と西条は何も言わなかった。おそらく図星だろう。
>だけど今回の敵は雪之丞を越える強さを持っているので、少数精鋭で犯人を倒そう。という意見だった。
という意見とは、誰の意見なのでしょう?
また、「何も言わなかった」のに「意見」はどうやって伝わったのでしょう?
文章が独りよがりです。読者に伝わらねば意味がありません。
文章の基本であるところの、「誰が」「誰に」「何を」「どうしたのか」がすっぽり抜けていて書き手の感性だけで書いている為、分かり難いセンテンスが目立ちます。
もっと推敲に時間をかけましょう。
以上、嫌われ者のGS初心者でした(笑)。 (GS初心者)
いつもありがとうございます。
え〜陰念が強くなった理由はまた次回になります。
けど昔は雪之丞も確か魔装術ダサかったですね・・・(笑)。
ありがとうございます。
>GS初心者さん
ご指摘ありがとうございます。
・・・こういう事ですね。貴重なコメントと説明とても感謝です。
す、すごい・・・。例えで書かれてるのに・・・(汗)。
次回は同じ文脈の中でころころ視点を変えないという事に注意していきます。
すぐにできるかどうかは分かりませんが頑張ります。
多分、嫌われ者と仰っていましたが、僕はこういうコメントがくるから次回はもっといいものを書こうという意欲が出てきます。
そして自分は今度こそGS初心者さんから、ご指摘が減るように頑張るだけです!
長くなりましたが本当に感謝です。 (never green)