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GS〜Next Generation Story〜

GSへの第一歩?


投稿者名:ja
投稿日時:05/ 4/ 1

「一次試験は、霊力の測定を行います」
 試験官の一人が無機質な声で言う。
「はあ?何それ?」
 まったくの素人の英夫は何が何だか解らない。
 周りを見渡せば、数多くの受験者がいる。
「美希、何だよ霊力って?」
「・・・バカ」
 GS試験を受けに来て霊力も知らないのは彼くらいだろう。事実、他の受験者は用意に入っている。
「よし、51番合格」
「やった!」
 優子が飛び上がって喜ぶ。
 何人かの受験者が合格を言い渡され、抜けていく。
 やがて、時間が来てほとんどの受験者が落とされた。

「つぎ、61から71」
 美希が指定された位置に立つ。
「ほう、この女は?」
「ああ、例の。美神事務所の」
 試験官が注目する。
「ふう・・・」
 一気に霊力を高める。
「ほ、ほお・・・」
 試験官が霊力計を凝視する。明らかに周りと比べて群を抜いていた。周りも自分の事を忘れ、注目する。
「やるなあ、お前の娘は」
「ああ」
と、ビデオを回しながら答える。
「68番合格!」
 美希は何事もなかったかのように立ち去る。そして、英夫の横を通り過ぎる時に、
「とりあえず、霊力を高めるフリでもしていれば?」
と、冷たく言い放ち歩き去った。
「つぎ71から81」
 英夫は77だったので指定された位置に向かった。
「始め!!」
「はああ!」
 英夫は霊力を高めた。
「おお!77の霊力計を見ろ」
「ああ、全然上がっていない。不合格か」
と、受験票を見る。
「いや、待て」
 慌てて止める。
「横島?まさか、あの横島忠夫の?」
「そういえば、名前も似ているし」
「じゃあ、仕方が無い。試験時間一杯まで待つか」
「何かの作戦かもしれないしな」
 何かを期待している試験官とは対照的に、
『あほらしい、早く帰らせてくれ』
 英夫は、先程の美希の様子を見ても何の事かサッパリ解らなかった。
 周りの様子を伺おうと、キョロキョロする。
と、横を見ると一人の女性が立っていた。その女性が英夫のほうを向く。
「綺麗な人だな」
 英夫は純粋にそう思った。そして、しばらく見とれていた。
「頭の中を空っぽにするの」
と、女性の口が動いた。
「え?」
 そして、英夫の方を見る。
「見て」
 英夫は女性の瞳を食い入るように見ていた。
 その時、霊力計は一気に跳ね上がった。
「う、うそ・・・」
 外で見ていた美希が呟いた。まるで、信じられないモノを目撃したかのように。それは、美希だけではなかった。辺りの人が一斉に注目した。

「さすがだな。霊力のポテンシャル自体は親譲りだ」
 伊達が横島の方を見る。そこには、皮肉な笑顔が浮かんでいた。
「そうだな、初めてにしては上出来だ」
 対照的な表情で呟く。

「潜り込んだ魔族は3人であることが判明しました」
「3人もか。それが全員受験生として潜り込んでいるというわけか」
「ええ」
 ヒャクメが横島と雪乃丞と西条夫妻の顔を見る。
「現場を離れた美神さんまで呼び出してしまい、申し訳ありません」
「まあ、いいわ。それよりも、あいつは来ているの?」
 令子は、仕方が無い、といった表情で尋ねる。
 『あいつ』というフレーズに横島が反応する。
「いや、あいつはまだ英夫には手を出さないだろう。それよりも、今重要なのは『バランサー』だ」
 そう。全てはそれだ。全員の思いが一致する。
「もし、噂が事実なら大変なことになります。何しろ『バランサー』の力は、史上最強のはずですから」

「今日から実戦よ。三人とも頑張ってね」
 ひのめが激励を飛ばす。
「特に英夫君は素人なんだから、無理をしないでね」
「は、はあ・・・」
 英夫にしても何故一次試験を突破できたか解らない。美希も不思議そうな表情で英夫を見ている。
「やあ、皆さん」
 そこに背の高い男性が立っていた。
「お兄ちゃん」
 優子が声をかける。別に驚いた感じは無い。しかし
「西条・・・」 
 英夫はこの男が嫌いであった。心の底から相性があっていなかった。そして、もう一人。
「やあ、美希さん。相変わらずお美しい。どうです?この試験が終わって私がGSに首席で合格した際には二人でどこかへ行きませんか?」
「・・・」
 無視。が、構わず続ける。
「ああ、もちろん私があなたの相手をする際には失礼のないように対応させていただきますよ。まあ、勝ちは譲るわけにはいきませんが」
豪快な笑い声と共に言うが、そこにはすでに美希と英夫はいなかった。

「うーん、試験はトーナメントか」
 英夫は美希と別れてトーナメント表を眺めていた。こうして、自分の名前が載っているのを見ても、実感が湧かない。
「試験に二回勝てば晴れてGSか。でも、資格なんていらないし適当に怪我しないうちに負けて帰るとするか」
と、その時、
「あら?貴方は?」
 横に昨日の女性が立っていた。相変わらず綺麗な人だ。と英夫は思った。
「横島英夫君だったかしら」
「どうして、俺の名前を?」
 素直に驚く。
「まあ、いろいろとね」
と、下を向く。若干の哀愁を漂わせる。だが、それも一瞬だった。すぐに顔を上げる。
「知っていた?この試験に首席に合格すると助成金として100万円が貰える事を?」
「え?まじ・・・」
 英夫の顔が輝く。
「ええ」
 女性は頷く。
『100万もあれば新しい目覚ましが買える』
「よし」
 英夫は試合会場に走っていった。その後ろ姿を女性は見守っていた。ただ、先程と同じ、若干の哀愁を漂わせて。

「さあ、相手は誰だ?」
 英夫が試合場で叫ぶ。その強気な様子を見て、
「何か知らんが、お前の息子、やる気満々だぞ?」
 伊達が、素直に驚く。
「ああ、優勝賞金に目が眩んだんだろう」
 横島は、全てを理解したかのように答える
「ふ、親の仕送りが少ないからじゃないのか?」
「いいんだ。俺もそうやって強くなったんだ」
「息子が苦しんでいるのに」
と、足元に指を差す。そこには皮肉な表情が浮かんでいた。
「落ちているぞ、キャバクラの領収証」
「・・・」
 横島は慌てて拾う。
「おい、雪乃丞!」
と、顔を近づける。そこには鬼気迫るものがあった。
「この事は内密にしておいてくれ」
と、手を合わせる。
「ああ、俺は別に構わんが。後ろの人は知らんぞ」
「え?後ろ?」
と、ゆっくりと振り向く。そこには笑顔の小竜姫が立っていた。
「あら?久しぶりね?」
 目が笑っていなかった。
「えーっと。何を?」
 横島は冷たい汗を流していた。
「かわいい息子の晴れ舞台を見に来たに決まっているでしょう。忠夫さんその前に少しお話が・・・」
 横島はそのまま引っ張っていかれた。

「ええ、木本選手は棄権のため、横島選手を勝利とします」
 審判が片手を上げる。
「へ?」
 その言葉に英夫は耳を疑った。やる気が一気に失せていく。
「な、何ですと?」
「ああ、だから君の不戦勝だから、もういいよ」
 英夫は試合場から追い出された。
 しかし、英夫は途中で気づく。
「あれ?もしかしてあと一回勝てばGSになれる?」
 表情が明るくなる。
「まったく世も末ですね」
 すれ違いざまに美希が呟く。相変わらず、冷静だ。
 そして、美希が試合場に上がった。すでに対戦者が待っていた。
「では、伊達選手と佐川選手との試合を始める。ルールは知ってのとおりだ。使っていい道具はGSの標準装備である神通棍とお札だけだ。もちろんこちらで用意した」
と、武器を二人に渡す。

「道具は同等として、GS自身の力で何とかしろというわけね」
 小竜姫が確認を求める。
「ああ、いいルールだと思うぜ。何でもありなら精霊石を持った美希に勝てるGSはそうはいない」
 ちなみに伊達はビデオをまわしている。それを見て小竜姫もカメラくらい持ってくれば良かったかな、と思った

「では、どちらかが気絶するか降参するまでこの結界は解けないから、注意をするように」
と、審判が試合場から降りると同時に結界が張られる。
「では、始め!」
 両者が向かい合う。
「・・・・」
 美希は神通棍を握り締め相手の目を見る。そして、冷静な声で呟く。
「あなた、魔族ですね?」
 その声には答えず、目の前の男はたたずんでいた。

「おい、雪乃丞!」
 横島が後ろから声をかける。慌てている。
「ああ、お前の息子、不戦勝で勝ったぞ。良かったな」
 こちらは、何を慌てているのか解らないといった感じだ
「それはいいんだ。むしろ戦って能力を上げてくれたほうが良かった。そんなことより、あの相手だ!あいつ、魔族だぞ!」
「な、何だと!」
 伊達の表情が一変する。
「精霊石があればともかく、今の装備ではつらいかもしれんぞ!」

「おい、美希!」
 父の慌てた声がした。
「何ですか?お父さん」
 美希は冷静に答える。
 伊達が最前列で叫ぶ。
「そいつは・・・」
 叫ぼうとしたところを、横島に止められる。
「よせ!パニックになるぞ!」
「それは、そうだが」
 伊達は、相手の男を見る。
 しかし、
「ご心配なく。この程度の三下相手に、精霊石なんて要りません」
と、神通棍を構える。
「ふふふ、その勇気は誉めてやるがな。できるかな、俺は強いぞ」
 男は第一声を発した。不気味な笑い声と共に。

「さあ、どうかな」
 会場の片隅で二人の魔族が話し合っている。
「あの娘は以前、魔族を撃退していたな」
「それは精霊石の力があったからだろう?今回は・・・」
「まあ、見ていろ。もしかしたら横島英夫の次に面白いかもしれん」

「せいやああー!」
 佐川は切り込む。手に長い爪が生えている。
 それを、あっさり美希がかわす。いたって冷静だ。
「少しはやるな?」
 間合いを詰め、攻撃の嵐を加える。しかし、それの全てを紙一重でかわす。
「な・・」
 佐川も焦りだす。
「攻撃の方は、精霊石に頼りますが、防御は自前ですよ?」
と、余裕を見せる。
「う、うおお!」
焦りと共に、手から霊力を出す。
「それだけですか?」
 お札で相殺する。
「もうお終いですか?」
と、逆に美希が間合いを詰める。
「さよなら」
 神通棍を一閃させた。最後まで冷静だった。

「佐川選手、気絶のため伊達選手の勝利とします!」
「・・・」
 美希はゆっくりと試合場を降りた。
「おお、美希!」
 安堵の声と共に雪乃丞が拍手を送る。

「強いな、あの娘」
「ああ。俺達の障害となりえるだろう」
 二人の魔族が話し合っている。
「あいつはどうする?」
と、担架で運ばれている佐川を見る。
「問題はない」
 その後、医務室で死んでいる佐川が発見された。その顔は恐怖に固まっていたという。

その後、優子、西条と順調に勝ち進んだ。
「あれ、次の相手は・・・」
と、トーナメント表を見る。
「げ、西条!」
 名前を何度も確認する。
「そのようだね、横島クン。まあ、死なない程度に痛めつけてあげるよ!はははは!」
 西条が余裕綽綽な感じで横にいた。そして笑いながら去っていった。
「まったく、げげ、これで勝っても次は優子さんが相手か。まあ、この辺で適当に負けるとするか」
 英夫は肩を落としながら会場へと向かった。

「さあ、二回戦第一試合は西条選手と横島選手との戦いです」
 両者に武器が渡される。
「ふふふふ、この場で死んでも事故だ。心置きなく死にたまえ!」
 西条はやる気満々である。
「こいつ、本気で危ない」
 英夫は一歩後ずさる。

 英夫が身の危険を感じていた頃、
「横島英夫の本気が見られるかもしれんぞ。その片鱗だけだがな」
「はあ?」
「まあ、見ておけ。奴は、この場で少しは覚醒するだろう。してもらわなければ困る」

「やあ、横島クン」
と、こちらは西条の親の方。
「西条・・・」
 こちらも英夫に負けじと西条を睨む。
「君の息子はまったくの素人らしいじゃないか。まあ、私の息子の勝ちは決まりだな」
と、余裕綽綽の態度で挑む。よく似た親子だ
「く・・・」
と、最前列に急ぐ。
「こら、英夫!そんな奴、ぶっ飛ばせ!」
と、叫ぶ。
「無茶言うな。こんな武器、持つのだって初めてたぞ」
と、ドンヨリしながら手の神通棍の柄を見る。
「どうやって使うんだ、こんなの」
と、先程の美希の戦闘振りを思い出す。
「おかしいな、剣が出るはずなのだが」
 まったく変化無し。振っても撫でても変化なし。
「始め!」
 審判の号令が響く。
「死ねー!横島クン!」
 水を得た魚のように西条が飛び出す。そこには、殺気が篭っていた。
「わあ!」
と、手のお札を見る。表情が明るくなる。
「そうか!こいつはさっき美希が使っていたな!」
と、西条に投げつける。
「しまった!」
 西条にお札が張り付く。英夫は西条が爆死した様子を思い浮かべる。
「よし、爆発しろ!」
 しかし、
 ピラリ!
 お札は無情にも地に落ちた。
「へ?」
 両者、目が点になる。
「よ、横島クン・・・。今、霊力をお札に込めたか?」
 恐る恐る尋ねる。
「何だ?それ?」
 こちらはあっさりと答える。
「・・・・」
 西条は固まる。
「おい、美希」
と、リングサイドの美希を見る。
「霊力のこもっていないお札は、火のついてない爆弾と一緒です」
と、冷たく言い放つ。
「悪いことは言わないから、諦めたら?怪我されたら困ります」
「何でお前が困るんだ?」
 満面ハテナ顔で尋ねる。
「・・・・バカ」
 
一方、
「おい、本当に大丈夫か?あいつ道具の使い方も知らんらしいぞ」
「・・・少し不安だな」
 魔族にも心配されていた。

「はははは、君は本当に素人だったんだね!これで終わりだ」
と、大笑いしながら神通棍で切りかかる。
「わあ・・」
 寸前でかわす。
「いい反射神経はしているじゃないか。なら、これならどうだ!」
英夫の反射神経の良さに驚きながらも、数枚のお札を投げる。
「バカ、早く棄権しなさい!本当に貴方・・・!」
と、美希の叫びは爆音で消された。
『やれやれ、力の使い方を、教えてあげましょう』
 その時、英夫の頭の中に女性の声が響いた。
「だ、誰だ?」
 英夫が驚く。そして手の中の、神通棍から剣が伸びた。
「あ、剣が・・」
 呆然と見つめる。
『さあ、これで十分でしょう。前から来るわ!』
 英夫は神通棍を手に向かってくる西条を視界に捕らえた。切りかかってくる神通棍を受け止める。
「な、神通棍を?」
驚き、西条が飛び下がる。西条だって神通棍を使えるまでは苦労をした。それを突然素人同然の英夫が。
「中はどうなっているんだ?」
 先程の爆風のせいで中が見えない。観客たちが不安になる。
『お札を投げるのよ!』
 頭の中の声が響く。
「え?でも、さっき」
『いい、あいつを吹き飛ばしたいと強く思うの』
「あ、ああ」
 英夫は西条の日頃の行いを思い出す。そこには、恨み辛みが重なっている。
「西条!!」
 手の中のお札に霊力がこもった。
『投げて、早く!』
「え、こう?」
 英夫は試すように軽く投げ、お札は西条の近くに飛んでいく。
『ち、近すぎよ!伏せなさい』
 頭の中の声が絶叫した。英夫は言われるがままに地面に伏せた。西条にお札が張り付く。しかし、先程のを覚えているのか余裕である。そして、
「何だ、さっきと同じじゃ・・・」
 西条の言葉は強烈な爆音でかき消された。

「な、中はどうなっているのですか?」
 美希は目を凝らす。すると結界が消えた。
「結界が消えたということは、勝負がついたのですか?」
 急いで役員が煙を消す作業に取り掛かった。
 煙の中からボケーッと突っ立てる英夫が現れた。
「勝者横島選手!」

「だ、大丈夫?」
 美希が声をかける。普段の冷静さはない。
「へ、ああ。何か知らんが勝ったぞ。何慌てているんだ?」
 逆に、のんびりした口調で答える。
「バ、バカ」
と、冷静さを取り戻す。
「で、いったい何をしでかしたんです?」
 中での様子が気になって仕方が無い。
「それが、頭の中に誰かの声がしたと思ったら、こう、ドカーンと」
「はあ?何を言っているのです?」
 英夫としては、事実を伝えているつもりだが、理解されるはずは無い。
「だから、ドカーンと」
「え?」
 2人の押し問答はしばらく続いた。

「今の霊力・・」
 魔族の一人が声をかける。
「素晴らしい!」
 もう一人は喜びを表した。
「まあ、いい。次は俺が確かめてくる。お前が見込んだ力を見極めにな」
「その前に、一人相手をしなくてはいかんぞ」
「問題ない」
「しかし、かつては人間界最強といわれたGS美神の娘だぞ」
「まあ、見ていろ」
と、試合場に下りていった。

「しかし・・・」
 西条が横の横島夫妻に声をかける。驚きを通り越して、呆然としている。
「とんでもないな。君の息子。何なんだ?今の霊力」
「ああ、さすがにびっくりした」
 横島もさすがに驚いている。
「私もです。もしかしたら、封印が」
 小竜姫は心配そうに見つめる。
「封印?」
 その一言に西条が反応する。
「いや、なんでもない」


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