椎名作品二次創作小説投稿広場


Wonderful world

トモダチ


投稿者名:ちくわぶ
投稿日時:05/ 3/23

 美神除霊事務所の休日。




「横島先生、今日は一週間ぶりの散歩でござるから、いつもより余計に走り回るでござるよー!!」
「だあああっ!!せっかくの休みだというのに何でお前の散歩に付き合わなきゃならんのだああっ!?」
「先生、別に照れなくてもいいんでござるよ?」
「照れとらんわッ!!わああっ、止まれ止まれッ!!」

 早朝の住宅街を爆走する2つの物体があった。
 シロは朝一番の電車で東京に戻ると、事務所より先に横島の元へ立ち寄っていたのである。

 シロと横島(を乗せた自転車)が砂埃を巻き上げて走り去るのを、ちょうど窓拭きをしていたおキヌが見ていた。
「あ、シロちゃん帰ってきたのね。」
 でも、あのぶんだと2人とも一緒に買い物行けそうもないかな…と思いながら雑巾をバケツに放り込み、パタパタと事務所の奥に戻っていった。


「ふぅ、ちょっと買いすぎちゃったかな…。」
 スーパーマルヤスと書かれたビニール袋にはずっしりと食材が詰め込まれ、おキヌはうんしょっ、と腕に力を入れ直す。
 とはいえ女の細腕ではさすがに重く、近道のために通りかかった公園のベンチで一休みする事にした。

 一息ついて顔を上げると、公園の上に何やら人だかりができているのが見える。
「あれ、あの人達……。」
 よーく目を凝らして見てみると、それは幽霊だった頃に知り合った浮遊霊達だった。
 大声を上げたり笑ったりとずいぶん楽しそうである。
 おキヌは不思議に思って近づき声をかけてみた。
「みなさん何をしてるんですか?」
 すると眼鏡に黒いハットの老人の幽霊が振り返る。
 以前おキヌが他人に憑依するきっかけとなった人物である
「おお、ちょうどいいところに来たおキヌちゃん。」
 老人はおキヌの手を取り人垣(?)をかき分ける。


「このジェームス伝次郎、歌わせてもらうぜッ!!」
「わっははは、いーぞー!!」

すっかり盛り上がったその中心に、カップ酒を手に幽霊と談笑している男がいた。
「た、瀧谷さん!?」
「よお、おキヌちゃんか。こんな所で何してるんだい?」
「私は買い物の帰りですけど…瀧谷さんこそ一体……。」
「この若者はこないだからここに住み着いておっての。なかなか話がわかるんで宴会をしとったんじゃ。おキヌちゃんも寄っていきなされ。」
 老人の幽霊も芝生に座り込み、隣の幽霊と話し込み始めた。

「えーっと……。」
 おキヌがリアクションに困っていると、瀧谷がすくっと立ち上がる。
「まぁ、ここじゃ何だ。そこのベンチで話そうぜ。」
「でも、みなさんを置いていいんですか?」
「平気だよ。幽霊同士でえらく盛り上がってるからな。」


 瀧谷はオレンジジュースをおキヌに渡し、自分はブラックの缶コーヒーを空けながらベンチに腰掛ける。
「いやしかし、昼間っから幽霊と宴会するってのも面白い話だよな。」
「そう言えば瀧谷さん、最初に出会ったときも幽霊とお酒飲んでましたよね。ここまで幽霊と仲良くしてる人って初めて見ました。」
 おキヌはくすっと微笑む。
「おキヌちゃんもずいぶん幽霊に好かれてるみたいじゃないか。」
「あ、それはですね…私もともと幽霊だったんです。」
「えっ?」

 おキヌは自分が300年前の幽霊だった事や日給30円で美神のアシスタントとして働いていた事、そして晴れて現代に生き返った事を瀧谷に語った。

「なんつーか…マンガみてーな話だな。」
「でもそのおかげで今は毎日が楽しいんです。本当に…生きてるって良い事ですよね……。」
 遠くを見つめながらしみじみと語るおキヌ。
「ああ…そうだな。」
 ふと寂しげな眼差しを空に向け、瀧谷はぽつりと呟いた。


「あの…1つ聞いてもいいですか?」
「ん?」
「さすらいの風来坊だ、って言ってましたけど…どうして旅をしてるんですか?」
「ああ、そのことかい。」
 瀧谷は空になった缶コーヒーをゴミ箱に投げ込み、フッと笑う。
「俺には帰る家が無いんだ。親父もお袋も死んじまって施設に入れられたけどよ、どうも集団生活ってヤツになじめなくてな。んで、15の時に飛び出してあちこちフラフラしてるってわけさ。」
「ご、ごめんなさい…私知らなくて……。」
「謝らなくていいさ。今更気にする歳でもねーし。」
 申し訳なさそうなおキヌに瀧谷はニカッと笑って見せた。
 だが、おキヌは相変わらず沈んでしまっている。

(まいったな…何か話題変えねーと……)
 色々と考えを巡らせていると、ある事を思いつく。


「なあおキヌちゃん。」
「はい。」
「横島の事……好きなんだろ?」


 ぶはっ!!
 思わずおキヌはオレンジジュースを吹き出してしまう。

「な、ど、どうしてそれを……!?」
「お、やっぱ図星か。う〜ん、青春だねぇ……。」
 おキヌは真っ赤になって顔を伏せる。
 その様子を見て瀧谷はカラカラと笑う。
「あ、あの…どうしてわかったんですか?」
「見てればわかるさ。俺は一応オ・ト・ナ・だからな。」
 わっはっはと瀧谷はおキヌの肩を叩く。
 ハァ、とため息をついておキヌは苦笑する。
「けどよ、ぼんやりしてると横島のヤツ他の女とくっついちまうぜ?」


 ぎくっ!!


 ……鋭い。
 これがオトナのカンなのだろうか?
 美神にシロ、小鳩に愛子……
 そのフシが感じられるのは把握しているだけでも4人。
 もしかしたら他に伏兵がいるかもしれない。
 おキヌの心にどよよ〜んと暗雲が立ちこめる。

「でも…横島さんはいつもあの調子だから、私の事なんて眼中にないのかも。」
 すっかり肩を落としてしまうおキヌ。
「いや、そんな事はないと思うぜ。ただ、アイツは女に対する態度がいつも同じだけなんじゃねーのかな?」
「え……。」
 よくよく思い出してみれば横島は人によって態度を変えたりしない。
 それが美神であっても初対面の女性であっても。
 なるほどその通りだとおキヌは感心してしまった。
「何はともあれ行動してみたらどうだい?電話するとかデートに誘うとか。応援してるから頑張りなよおキヌちゃん!!」
「うふふ…ありがとうございます。私…頑張りますね!!」


「ところで……。」
 おキヌは少しいたずらっぽく笑いながら瀧谷の顔をのぞき込む。
「瀧谷さんには恋人とか、好きな人はいないんですか?」
「俺か?俺は……ほら、こんな暮らししてるから恋人どころかダチもいないんだよ。」
「……友達もですか?」
「ああ、こんなに人と話したのだってずいぶんと久しぶりだ……。」

「だったら。」
 おキヌは立ち上がると、瀧谷の正面に回って右手を差し出す。


「今日から私達、トモダチになりましょう?」


「え?い、いや俺は……。」
 思いもよらない提案に瀧谷はとまどいの色を隠せなかった。
「きっと美神さんも横島さんも瀧谷さんのトモダチになってくれますよ。だから、ね?」
「……変わってるな、おキヌちゃんは。」
「困った事があったら何でも言ってくださいね。トモダチなんですもの。」
「ああ…ありがとう。」

 2人は互いの顔を見合わせて微笑み、ゆっくりと握手を交わした。



「これから事務所に帰るんだろ?送ってくよ。」
「いいんですか?」
「俺のハーレーのタンデムシートでよければ。」
「それじゃあ…お願いしますね。」

 瀧谷がサイドバッグにスーパーの袋をしまい、振り返ったときだった。


 どんっ。


「おわっと!!」
 たまたま近くを通りかかったサラリーマン風の男にぶつかってしまう。
 丸々と太ったその男は尻餅をついてしまう。
「悪かったな。大丈夫……。」
 瀧谷が手を差し伸べようとしたその時だった。
(!!!!)
 男を見た瀧谷の目は見開かれ、顔面は蒼白となっていく。
 瀧谷の表情に驚いた男は慌てて立ち上がり、その場を走り去ってしまった。

「どうかしたんですか瀧谷さん?」
 立ちつくしたままの背後から、タンデムシートのおキヌが声をかける。
「いや…なんでもない。」
 振り返った瀧谷の顔はいつもの柔和な表情に戻っていた。
「さあ、行こうか!!」
 地響きのようなエンジン音をうならせ、ハーレーは走り出した。




 おキヌが帰ってくると、事務所はにわかに騒がしくなっていた。
 散歩から帰ってきたシロと燃え尽きた横島、そして警察の制服を着たタマモと西条がオフィスにそろっていた。
「お帰りとただいまでござるおキヌちゃん!!」
 しっぽをぱたぱたさせ、目を輝かせて近づいてくるシロ。
「お帰りおキヌちゃん。帰ってきて早々悪いんだけど、シロのゴハン作ってあげてくれないかしら。さっきからうるさくて……。」
 ソファーで西条と向き合っている美神が言う。
「ちょっと待っててねシロちゃん。すぐ作るから。」
「荷物は拙者が持つでござるよ!!」
 おキヌとシロは台所に向かっていった。
「……。」
 横島は壁にもたれかかったまま真っ白になっていた。


「やっと静かになったわ……で、どこまで話したんだっけ?」
 美神は紅茶に口を付けながら西条を見る。
「連続焼殺事件の事で目撃情報を集めているという所までだよ。」
「ああ、いつぞやにテレビでやってた事件ね。」
「タマモ君の協力で犯人は炎を使う妖怪の可能性が非常に高いと言うところまでは漕ぎ着けたんだが、何しろ情報が少なすぎてね。どこかでそういった話を聞いた事はないかい?」
 美神はしばらく顎に手を当てて考え込む。
「炎を使う妖怪ね……悪いけど聞いた事ないわ。ごめんなさい西条さん。」
 西条はふーっとため息を漏らす。
「…そうか。もしそれらしい妖怪を見たら連絡してくれ。」
「金一封が出るなら喜んで。」
「……君らしいな令子ちゃん。考えておくよ。」

 西条は立ち上がり、傍らで話を聞いていたタマモに話しかける。
「タマモ君、今日の所は君の超感覚を使う仕事はない。また必要になったときこっちから連絡するから、それでいいかい?」
「いいわよ別に。」
 抑揚のない声でタマモは答える。
「僕は他のGSにも聞き込みを続けるつもりだ。資料のコピーを追いてくからよかったら目を通しておいてくれ。それじゃ……。」


 西条が帰ったあと、おキヌとシロが戻ってきた。
「西条さんもう帰っちゃったんですね。どんなご用だったんですか?」
「こないだ焼身自殺がどうとかってニュースあったでしょ。あれが妖怪の仕業なんじゃないかって聞き込みに来たのよ。」
「そうですか……。」
「ま、私には関係ないし、お金にもなりそうもないからどーでもいいんだけど。」
 全く興味がない、といった感じで美神は伸びをした。





 太陽が西に傾き、空はオレンジとダークブルーの混じり合った複雑な色合いを見せていた。
 昔からこういう時間には魔物がはびこると言われ、魔に出会う時間「逢魔が時」と呼ばれている……




 薄暗い河川敷の鉄橋の下でそれは起こっていた。

「ひいぃぃぃぃ!!ボ、ボクが何したっていうんだッ!?」
 恐怖に顔を引きつらせているのは丸々と太ったサラリーマン風の男であった。
 顔には青アザができ、鼻は折れて変な方向に曲がってしまっている。

 彼の前には黒い影が立ちはだかっていた。

 男は腰を抜かしながら、カバンの中から財布やファイルなどを手当たり次第に投げつけて抵抗する。
 だが、それらがぶつかっても黒い影は身じろぎ1つせず、何事もないようにゆっくりと男に近づいていく。
「た、助けて……昼間の事は謝るからっ……!!」

 黒い影はピタッと足を止める。
 そしてゆっくりと男に向かって右手をかざす。

「……?」
 その瞬間……


 ……ボッ!!


「!!!!」

 男の体はすさまじい業火に包まれ、文字通り火だるまとなって地面をのたうち回った。
 男は叫び声1つ上げぬままその場にうずくまり、真っ黒な灰となった。



 夕日が川の水に反射してキラキラと神秘的な光を放つ。
 黒い影にその光が当たったとき、その顔が一瞬浮かび上がった。






 それは……まるで地獄の悪鬼のような顔をした瀧谷護であった……




 光が差すたびに、フラッシュ写真のように瀧谷の表情は元に戻っていく。
「…ハァッ…ハァッ……もう限界だ……早く……美神令子を……ッ」
 全身から脂汗をにじませ、瀧谷はフラフラと去っていった。





 時計の針は6時を周り、あたりはすっかり闇に包まれている。
 美神達が夕食を食べていると、事務所の電話が鳴り響いた。
「…はい…あ、西条さん…ええ、いるわよ。」
 美神はきつねうどんをすすっているタマモを手招きする。
 最後の一本をちゅるん、と吸い込みタマモは受話器を取る。
「かわったわ…そう、わかった…すぐに行く。」
 それだけ言うとタマモは受話器を置く。
「何かあったの?」
 美神が尋ねる。
「ついさっき新しい焼死体が見つかったって…今から行ってくるから。」
 そう言ってタマモは事務所を出て行く。
「何か忙しそうっスねタマモのヤツ。」
 横島はコロッケをもぐもぐと食べながら喋る。
「アイツは何をやっているんでござるか美神どの?」
「西条さんに頼まれて妖怪がらみの事件を追いかけてるらしいわよ。」



 しーん……



「なんで拙者を呼んでくれないんでござるかっ!?タマモだけずるいッ!!」
「アンタは里帰りしてていなかったんだからしょうがないでしょ!!」
「でも、でもーッ!!」
 それからシロをなぐさめるために小1時間程かかったのだった……




 河川敷には非常線が張られ、何台ものパトカーや救急車が土手の上の道路を埋め尽くしていた。
 現場から50メートルほど離れた所で西条とタマモは合流した。
「犯行直後なら妖気も死臭もたっぷり残ってるはずだ。頼んだぞタマモ君。」
 しかしタマモはそこから現場を凝視したまま動こうとしない。
「……どうした?」
「どうもこうもないわ……ものすごい怨念のニオイがここまで匂ってくる!!」
「なんだって!?」
「それにおかしいわ……全く妖気を感じないの……」
「どういう事だ……犯人は妖怪ではない……?」
 西条は腕を組んで考え込もうとした瞬間に重要な事を思い出した。
「そうか、犯人は念力発火能力者だ!!くそっ、僕とした事がこんな簡単な事を忘れていたなんて……!!」
 歯ぎしりをする西条の元に、鑑識官が駆け寄ってくる。
「被害者の遺留品を発見しました。財布、身分証明書に携帯電話。身元がわかるものは一通りそろっています。」
「よし、本部に連絡してこの身分証の人物の確認を急いでくれ。」
「はッ!!」

(しかし……)
 西条の脳裏には未だ疑惑が渦巻いていた。
(連続焼殺事件……現場に残された怨念……一体どういうつながりがあると言うんだ……)


「うーん……。」
「どうしたんですか美神さん、そんな難しい顔して。」
 美神の事務所では美神が西条の残していった資料とにらめっこをしていた。
 シロは時代劇に夢中で、おキヌはお茶を入れに行って席を外している。
「なんとなーくこれをめくってたんだけど、どうも気になるのよねぇ……。」
「何がですか?」
「どうも聞き覚えのある言葉があるような……。」
「どれどれ……あ、これは一週間前に除霊に行った工場のすぐそばの住所っスね。事件のあった日付は……除霊の日の前日か。」
「!?」
 それを聞いて美神は大慌てで地図を取り出し広げる。
「横島クン!!最初に焼殺事件が起こった日から順番に日付と場所を言って!!」
「え?あ、はい、じゃあ言いますよ……。」

 横島が事件の日付と場所を言うと、美神が地図にマジックで印を付けていく。

「……やっぱり!!」
「何がとうなってるんです?わかるように説明してくださいよ。」
「いい?まず最初に事件が起こった場所がここで……。」
 美神は地図の印を指す。
「私の仕事が最初にキャンセルになった場所がここ。」
 今度はすぐそばの印を指す。
「ずいぶん近いっスね……。」
「次の事件がここで、キャンセルになった場所がここ!!」
 やはり印と印の間隔は近い。
「と言う事は……。」
 横島はいくつかの印を見るが、事件のあった場所と美神の仕事がキャンセルになった場所はどれも500メートルと離れていない。
「そして最後がここよ!!」
 美神が指したのは一週間前に瀧谷と出会った工場のすぐそばであった。
「さて……私の仕事がキャンセルになった原因は何だったかしら?」
「それは瀧谷が……ま、まさか!?」
「焼殺事件があったとき、彼は毎回現場のすぐ近くにいた事になるわ。日にちのズレは全部2日以内……偶然にしちゃ出来過ぎてるわ。」
 美神はデスクをバン!!と叩いて立ち上がる。
「瀧谷護……アイツが連続焼殺事件の犯人と見て間違いないわ!!」
「あ、あの野郎!!俺達をだましてやがったのかああッ!!」


 うそ……


 ドアの向こうで2人の話し声を聞いたおキヌは自分の耳を疑った。


 あんなに優しい人がそんなことをするはずがない。
 きっと何か理由があるに違いない。
 そうでなければ……
 悪霊を説得して成仏なんてさせられない。
 浮遊霊達とあんなに仲良くなれるはずがない……!!


(確かめなくちゃ……!!)
 そう思った瞬間おキヌは事務所を飛び出していた。






 夜の公園に人の気配は無かった。
 ぽつんとたたずむ街灯だけが闇を静かに照らしていた。

 公園の真ん中にたどり着くと、誰かが火を焚いていた。
 赤い炎に照らされ、瀧谷が傍らで座り込んでいた。


「瀧谷さん……。」
「よお、おキヌちゃん……どうしたんだこんな時間に?」
「私、あなたに聞きたい事があってここまで来ました……。」
「へぇ…なんだい?」

 おキヌは唇を噛み、ぎゅっと手のひらを握り締めた。
 人を疑う……それはおキヌにとって何より勇気のいることだった。

「瀧谷さん……あなたが人を殺したっていう話を聞きました……。」
「……。」
「うそ……ですよね?そんなこと……!!」




「そうだ。」




「え……」




「俺は……人殺しなんだよ。それも、何人も殺してる……。」




 おキヌは自分の足下がなくなってしまうような錯覚に陥った。
 頭の中がうまくまとまらない。
 自分が闇の中にふわりと浮かんでいるような気がした。



「本当は俺の方から事務所に行こうと思ってたんだけどな……手間が省けた。」



 瀧谷はゆらりと立ち上がる。
 それが炎のせいでそう見えたのか、おキヌにはわからなかった。



 目の前に瀧谷の姿が迫ってきたとき、おキヌの意識は闇に溶けた……










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