「ええ、分かりました。今すぐそちらに向かいます。」
ここは美神除霊事務所。今日は仕事はないが緊急のため横島は出勤していた。
もちろん飯にありつくために来ている。
「また仕事っすか?」
「今回は五百万よっ!横島っ!君に決めたっ!」
えっ?ポ○モン!?
「え〜っ!まだ7行目ですよ!!?何でおれ一人なんすか?死んでもいいんですか?」
「ここで死にたい?」
「いえ…。」
横島が出勤してすぐの事だった。
まだ事務所のドアをくぐって5分しか経っていない。
「私が付いて行きましょうか?今日はお仕事ないし…。」
「じゃあ頼んだわ。これでいいわね、横島君?」
「いいですけど…。何で五百万の依頼を受けるんですか?」
確かにそうだった。たいていの仕事はもう一桁多い。
「簡単だからよ。」
「へっ?そんなに簡単なんですか?」
「ただの映画のヒィルムの確認。」
美神の言葉からはGSの仕事ではないように思える。
「そんな依頼が何故ウチに?」
「実は、ヒィルムのどこかにモンタージュが居るかもしれないの。上映中に事件が起きたら大変でしょ?」
「じゃあ、おれ達にまた映画の中に行けと?」
まだ横島が霊能力に目覚めてないころ、くだらない時代劇に飲み込まれてしまった事がある。
そのときは新撰組と共にモンタージュと戦い、見事に映画から脱出した。
結局、横島と総司は閉じ込められたが・・・。
「まだモンタージュが居ると決まったわけじゃないわ。けど見つけて仕留めたらその十倍!」
「居ない可能性は究めて低いな…。」
「どんな映画なんですか?」
「幕末の狼2(ツー)よ!」
前回流された映画は「幕末の狼」。つまり続編だ。間違いない。
「よ〜続いたな、あの映画…。」
「まぁ、いいじゃないですか。じゃ美神さん行ってきます。」
「行ってらっしゃい。気をつけるのよ。」
二人はとりあえず、新極楽シネマ座に……。
スクリーン室
「じゃあ、お願いします。」
関係者は部屋を出る。部屋には横島とおキヌの二人だけだ。
「あっ、始まりましたよ。私、時代劇好きなんですよね〜。って横島さん?」
横島はすでに寝ていた。の○太じゃないんだから…。
ーバンっ!−
「ご、ごめん。こういうの好きじゃないから…。」
「そうですか?私は好きですけど…。」
三百年以上生きているから、分かる気がする。
「おぉ、久しぶりだな!」
始まってすぐ、横島とおキヌは滑った。
「ふざけんな〜!狙って出ただろ今の!?」
「いや〜すまぬ。監督の斬新な解釈がまた裏目に出たようだ。」
歳三は笑ってごまかす。
「じゃあ、またモンタージュが出たんですか?」
「そうじゃ。」
「自慢するなよ…。とりあえずそっちに移してくれ。」
−カッ−
「またここかよ…。って事はもちろん居るよな…。」
向いた先には歳三を前回刀で刺した張本人、総司がいる。
さらに言えば、横島と共に最後まで閉じ込められた人物。
「きっ斬りたい!人斬りたい。」
「いかん!なれない人間を見て興奮している!」
同じ展開かよ…。おい…。
結局、二人は新選組の羽織りを着ることになる。
「ううう…同じ…同じ〜!?」
「申し訳ない。監督が…」
「だぁぁああっ!もういいよ!ワイド版5巻で読んだから!」
「そうか?すまぬ。」
辺りを見渡しながらおキヌが一言感想。
「全く変わってないですね。」
とりあえず江戸の町を歩くことに。
「暗いな。どの場面だ?」
辺りは暗く、店は閉まっている。
「えぇっと…池田屋襲撃の後でござる。」
どっから出したが知らんが、台本をめくりながら歳三は呟く。
「じゃあ前回の続きって事だな。」
横島とおキヌは状況確認を済ませる。
ページをめくりながら歳三は言う。
「次は、池田屋襲撃が終わって宴会じゃ。」
「歳さん、早く行きましょう!」
総司は急かす。
「お前、酒なんか飲んで持病はいいのかよ…?」
確か前回来たときは、総司は持病の労咳を持っていたはずだ。
「2(ツー)では直った事になっておる。」
台本を見ながら歳三は説明する。
「本当かよ…。」
先がかなり思いやられる。
「おっ。真っ暗になった。」
「こうやって場面がかわりましたよね?」
おキヌの言う通りに、気付けば居酒屋に居た。
四人は座っていて、テーブルには料理や酒が沢山置かれている。
「さぁ、飲みましょう!歳さん!」
「あ、あぁ。そなた達も飲め。」
おキヌに酒を飲ませようとする。
「私、お酒弱いですからお水でいいです。」
そう言っておキヌはコップに入った水を飲む。
一方、仕事の事など忘れた横島は酒を大量に飲んでいる。
「ぎゃやぁああああ!」
居酒屋の店主の声が聞こえる。
四人がすっかり忘れていたモンタージュが店主を飲み込んでいた。
「いたぞ!かかれっ!」
横島は霊波刀を作り出しモンタージュに斬りかかるが、ステッキで防がれる。
そこに酔った総司が飛び掛かる。
「斬る斬る斬る斬る斬るーッ!!!」
しかし千鳥足の総司の攻撃など無に等しかった。
「まずい!次のシーンに飛んでしまう。」
もう諦めようとしたその時だった。横島の頭から名案が浮かぶ。
「そうた!おキヌちゃんのネクロマンサ−の笛ならいける!」
勝利を確信した横島だったが、最悪の展開が待っていた。
「ふぁい。」
ふぁい?まさか…。
「くわぁくごぉぉお〜!」
男性三人の酔いは完全に覚めた。
さっきおキヌが飲んだのは言うまでなく日本酒だった。
おキヌは腰に付けてある刀を抜き取り、モンタージュに斬り掛かる。
三人は揃って綺麗に滑った。
しかしおキヌを止めないと危ない。返り討ちにあうだけだ。
「お、おキヌちゃん。危ないって!」
必死におキヌを止める横島。
その間にも歳三と総司がモンタージュと一進一退の攻防を繰り広げる。
「ふぇ?こっちにも敵が…。」
横島の方向を向いたおキヌは眼がかなり諏訪っている。
「ぎゃぁあああああああ!!!」
横島の悲鳴が江戸にコダマする。
ふっ、と明かりが落ちる。
「惜しい。シーンが変わってしまった。」
眼を開くとそこは戦場。周りには建物はなく草原の真ん中に居た。
「誠」の旗を掲げて新選組が横島から右の方向で闘っている。
歳三が横島の方を向くと、頭から血だらけだった。
酔ったおキヌに斬られたのだ。
「だ、大丈夫か!?」
「あ、あぁなんとか…。マンがじゃなかったら死んでいた。」
「確かにそうだな。」
変な所で納得した二人。おキヌは横島を斬った後にそのまま眠ってしまった。
「で、ここは?」
もう、どうにでもなれって顔で歳三に質問する。
「ついに来てしまった。鳥羽伏見の戦い…。」
「なんだ?その、とばふしみの戦いって。」
「ご存知ないのか?この戦いで新選組が消滅するのだ。」
「ふ〜ん。ってぎゃああああああ〜!お前ら死んだら現代に戻れね〜じゃねえか!」
「そういうことになるな。」
「ふざけんな〜!台本持ってんなら知ってただろ!モンタージュどころの騒ぎじゃね〜!」
泣きながら総司に怒鳴る。
「ああっ、持病の労咳がーっ」(ごほごほっ!)
「直っただろうが〜ッ!!」
そうしている間にも政府軍が攻めて来る。
「居た!あそこだっ!」
総司が指差す先には政府軍の人間を食べているモンタージュ。
「知るか!!おれはも〜知ら〜〜ん!!」
横島は文珠で「爆」を三つ作り出し、政府軍に投げ付けた。
−チュドォォオオン!−
辺りは一掃される。もちろんモンタージュも消滅した。
「か、勝ったのか?やったぞ総司!勝ったんだ!」
「やりましたね歳さん!」
二人は抱き合って喜びを分かち合う。
歴史が変わった事に気付く事もなく。
「いいから戻してくれ。」
横島はもう喜ぶ気すらしない。おキヌを連れて早く帰りたかった。
「すまなかった。また今度も頼む。」
「今度って、3(スリー)があるのかよ…。」
横島と眠ったままのおキヌはようやく現代に戻って来た。
二時間前に居たスクリーン室には関係者が拍手で迎えている。
「ありがとうございます。これ報酬です。」
横島は報酬を貰い、新極楽シネマ座を後にした。
背中に気持ちよさそうに寝ているおキヌを乗せて。
帰り道。背中からおキヌの心地良い寝息と温もりが伝わってくる。
「ま、いいか。」
ポツリと呟き、横島はおキヌを乗せて美神除霊事務所に戻った。
〈終〉
〈おまけ〉
ある横島が休みの日の事務所で…
「美神さん。何ですかそれ?」
「この前、おキヌちゃんと横島君が行った新極楽シネマ座からビデオが届いたのよ。」
「えっ。幕末の狼2(ツー)ですか?」
「えぇ。一緒に見ましょうか。」
「喜んでっ!!」
見ること30分。
横島『お、おキヌちゃん、危ないって。』
キヌ『ふぇ?こっちにも敵が…。』
・
・
・
・
・
バシュュゥウっ!!
横島『ぎゃあああああ!!!』
「きゃあああああ!!!横島さ〜んっ!!」
おキヌは事務所を飛び出し、横島のアパートまで飛んで行く。
無抵抗の横島を斬った事が余程ショックらしく幽体離脱してしまった。
その後おキヌは泣きながら横島に謝り続けたらしい。
「うん。この映画、面白いわね!次回作が楽しみだわっ!」
こっちで投稿するのは初めてです。あと短編も初めて。
あんまりうまく書けなかったなぁ・・・。
この話はワイド版の5巻にあったものの続きを書いてみました。
できれば漫画を見て、この小説を読んでくれるとうれしいです。
って、最初に書くべきだったな・・・。
これが二作目なのでまだまだ未熟ですが、コメントよろしくお願いします。
まぁ、前回の長編「おキヌの夕焼け」よりはいいかな・・・?
暇だったらそちらも読んでください(GTYにあります)。 (never green)
良かったですよ〜!!(グッ
ちゃんとおキヌちゃんの状態や、場面の展開もしっかりしていて
次回が楽しみになる作品です。
これからも頑張ってくださいね。
追伸
僕のところにコメント下さいましたか?
間違っていたらすみません。
もしそうなら返事を書かせていただいたので
また、暇な時にでも読んでいてくださいね。 (雅樹)
そうですよ、第三話にコメントを書かせてもらいました。
次回作も頑張って書きますのでお付き合いお願いします。
雅樹さんの横島ドタバタ恋物語の次回作を期待してます!
すいません。「マンガ」の所が「マンが」になっていました。
つぎは気をつけるので折檻だけは・・・。 (never green)
それでは他の事で、
>ヒィルム
>覚めた
>諏訪っている
何よりも、新撰組は江戸ではなく京都ではないかと。 (GS初心者)
た、確かに・・・。これは私の勉強不足でした。
言われてみれば誤字が多いな・・・。指摘感謝です。
次は誤字数0でいきたいです! (never green)
少々ありきたりですが、それなりにうまくまとまっています。
誤字誤用等は他の方が指摘されているので省略しますが、問題は地の文です。
起こった出来事や人物の動きだけを淡々と描写する、という作風も有りなのですが、それと考えても少々拙い印象を受けます。
小説というより、演劇の脚本を読んでいるようです。
意図的にそういうスタイルを選択して書くのと、技量が未熟でそういうようにしか書けないのでは、まったく話が違います。
この作品の場合、少なくとも私には後者であるように見えました。
短編は初めて、とのことですが、是非これに懲りずまた短編に挑戦してください。
短編を書くということは、その短い話の間に起承転結を入れなければならないので、構成能力が鍛えられますし、なにより、前回の反省をすぐに次回に反映させることができます。
次回作に期待します。 (はくはく)
沖田総司の
>「斬る斬る斬る斬る斬るーッ!!!」
>「ああっ、持病の労咳がーっ」(ごほごほっ!)
にも笑ったわけだし(今さらだが沖田をこういうキャラにした椎名先生も凄いと思った)
台詞は多いけど登場人物の個性も際立って下手に説明文が多いより読みやすかったです。
今回はネタの勝利ですが、このドタバタぶりを次回以降にも期待します。 (みずいろ)