椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

追跡!Drカオス


投稿者名:核砂糖
投稿日時:05/ 3/18

記念すべき歴史的快挙、三世界すべてが参加した会議は地球時間に換算して7時間で終了した。

その会議が行われた巨大建造物の一角にその部屋はある。
扉なんぞは『おいおい何故にそこまでこだわる?』と突っ込みたくなるような精密な装飾が施され、床から壁に至るまで少し削って持ち帰っただけで一生遊んで暮らせそうなオーラをプンプンさせている名前すらわからない鉱石で造られていた。

ここは最高指導者達の控え室である。しかし人間界の代表は緊張の連続と疲労により胃の痛みを訴えて会議が終わるや否や帰ってしまい、今いるのは神界魔界の代表者、サッちゃんおよびキーやんのみである。(人間って脆んやな・・・。悪い事したわ。byサッちゃん)

なにやら濃密な霊気と白い光で満たされたその部屋の中で、彼らは一つのテーブルを囲み談笑していた。
「イヤーめでたい。まさかこないな事が可能とは思わんかったなー。これでハルマゲドンの危険性もぐっと縮みおったし、ワイらの仕事もしや易ぅなっていいことばかりや」
サッちゃんはそう言いながらテーブルの黄金の杯を取ると中身を一気にあおった。
「そうですね・・・しかし、皮肉なものですよ。我々が始めて連帯したのが、ただ災厄から逃れるためだなんて」
一方キーやんは豪華なものをむしゃむしゃと食べているサッちゃんと対照的に、上品に粗末な豆のスープをすすりながら言った。

「そや・・・な。ホント、奴には迷惑かけとるわ。
でもまーこればっかりはわりきるしかあらへん。大を救うためには小の犠牲は必然なんや」
「そうですね。私も解かってはいます。ですが心が痛みますよ。
確かに彼は危険ですが・・・許されざる罪を犯したわけでもない。それなのに我々は、世界のためとはいえ彼の幸せを奪おうとしている」
キーやんは深いため息をついた。


およそ十年前突如現れた魔人ヨコシマはその圧倒的な力を持って全世界を脅かした。しかし彼の存在は、三界の上層部の和平派には願ってもない存在だった。

彼の出現により、神族魔族はお互いに争っている場合ではないと言う事に気が付いたのだ。

和平派にとってこれ以上のチャンスはない。
しかも頼まれもしないのに彼は人間界の横島忠夫関係者から自らの記憶を消してくれていた。
なので彼らは一気に、絶対的な全世界共通の敵ヨコシマ対策と言う名のもとに、三界にわたる連帯を作り上げることに成功したのだ。横島忠夫と言う、気のいい青年を知るものがほぼいない世界では・・・簡単な事だった。

例えどんな目的であろうとこの事は平和への重要な潤滑油になる事は間違いなかった。

しかしそのためには、ヨコシマは可能な限り悪人でいてもらわねばならないのであった。


「・・・こら、ワイらの宿命やな」
サッちゃんは突然そんな事を言った。
「宿命?とは」
キーやんはたずねる。
「確かに横島を殺すっちゅー事は道徳的に考えると最低の行いや。
せやけど、ワイらはあえてその道をえらばなあかん。
世界と、信念を天秤にかけるとしたら必ず世界をえらばなあかんちゅーのは、ワイら指導者に纏わりつく避けては通れない宿命なんや」
横島が世界を選んだように・・・。サッちゃんはそう言うとはぁと大きくため息をついた。
「・・・そうですね。しかし彼のために祈る事ぐらいは許されるでしょう。もしかしたら世界をおつくりになった本当の『神』が彼を隠しつづけてくれるかもしれません」
キーやんは、向かい側に座るサッちゃんの口から放たれた何か緑色っぽい息に顔をしかめ、パタパタと手で仰ぎながら言った。

そう、今横島忠夫は完全に潜伏しており、世界中が血眼になって探しても見つけ出す事ができていないのだ。よって今回の会議でもどんなに対策ばかり論じたところで手が出せていない。
しかし、今後彼が見つからなかったとしても三界会議は多少批評を浴びるだろうが、その内持ち直してくれるだろう。三界会議の実現は魅力的だ。そうやすやすと廃止されはしないはずだ。

この二人はできればそうなる事を望んでいた。


キーやんは真面目に。サッちゃんはオーバーな動きで祈りをささげる。

――――横島忠夫に幸あらん事を・・・。そしてどうか彼が何時までも見つからないように・・・。

と、





しかし、彼の平穏は一匹(?)の妖狐に暴かれつつあった・・・。




「・・・尾行はしやすい。尾行はしやすいんだけど・・・」

道端においてある等身大綾波レイのパネルの後ろに隠れながら、自称(他人も言うけど)傾国の美女タマモは一人ややこめかみをヒクつかせた。
「よりによって・・・こんな所をうろついてほしくないわね」

タマモが嫌う場所、そこはオタッキーの聖地『秋葉原』。
こういった小説や漫画の中においては『不死身』『予測不能』などの特殊ステータスを持つ神秘の存在『オタク』達が巣くう場所だ。
そして彼らのパワァは九尾の狐の力をもってしてもそうやすやすと跳ね除けられるものではない。


「おねーさん!!」
バキッ(アッパー)

「ハイチーズ」
ボワッ(狐火)

「ああっ、アナタがそんなカッコするから体が勝手にっ!!」
ずむっ(レバー打ち)


「ええい、突然飛びつくな!勝手に写真とるな!どこぞやの病的なストーカーのようなセリフを吐いて肉体的接触をはかろうとするなぁ!!!

あ〜〜〜っ!もう!!何なのよこいつ等は!」
A,日本の経済を裏で支えるすばらしい方々です。


ちなみにこれだけ騒いでもカオス+途中から合流したマリアに気づかれていないのは、もちろん彼女のすばらしき隠匿術の効果もあるが、それだけこの場に人と物とがあふれているからでもあった。
秋葉原にあふれる強力な意思の塊は、時として霊能者すら狂わせる。ここは一部のものにとって知られざる巨大な隠れ蓑なのだ。よって流石のマリアのセンサーとてココではうまく機能しない。(恐るべし秋葉原)つーわけで気づかれない。

いや、それ以外にもマリアの方も突然飛び掛る野獣たちを殴り飛ばすのに忙しいからなのかもしれない。(時々空を舞う野郎どもが目印で尾行も楽チン)


それにしてもカオスのジジイ、こんなところで何をしているのかしら。
秋葉原(タマモはオタクの生息地ぐらいにしか思っていない)なんかに来て何をするつもり?それともココにシロがいるって言うの?

タマモは一瞬、シロが首輪とメイド服など身につけている姿を想像した。


――――もしそうだったら・・・。


タマモの目つきがキッと険しくなり、ぼぼっと青白い狐火が噛み締められた歯の間から覗いた。

・・・しかしもはや枯れ果てたじいさんがそんな事をするまい。

だが最近はこういう事件が現実にも起こっている。化け猫、犬神族、妖狐などの擬人化能力を身に付けている妖(あやかし)達は、たびたび人間に目をつけられ拉致監禁され(ピーーーッ)で(ピーーーッ)されて(ピーーーーーーーッ)な事になる場合もあるのだ。
ちなみに以前、シロと組んでそんな彼らを救出した際には二人で犯人に(ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(グロテスクな表現)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ)してやった。
この際同行していた、二人の上司である西条のコメント「ん、この二人が何かしたのかい?僕は気づかなかったなぁ」
この人、やっぱりイイ性格である。





じいさんは、PCパーツの購入にきたようだった。
なんだか法律に触れるどころか勢いあまって突き抜けちゃってるような店に入っては大量の怪しげなパーツを購入し、出て行く。

追跡から約一時間。タマモに背後をつけられているという事にまったく気づいていないドクターカオスが、ついに行動を起こし始めた。
あやしげなジャンク屋からかき集めた、なんか霊力まで感じられそうなPCパーツを山のように抱え、人通りの少ない方袋小路へと移動。そして突然視界から消え去る。
目標をロストしたタマモはすばやく現場に走りより、『眼』を凝らした。
すると一見何もない行き止まりなのに怪しげな霊力の揺らぎが感じられる。
「ほとんど霊力は感じられないけど、それすらもカモフラージュだとしたらよっぽど強力な幻術ね」
自分のみの力で幻覚を見破るのは不可能だと判断した彼女は最新式の霊視ゴーグル(外見は殆ど普通のめがね。知的でクール。似合う。イカスぜ!)をすちゃっと装着した。

幻覚打破モードの出力を最大にして目の前の壁をにらみつけると、ぼんやりと壁に掛けられた幻影が薄らいできた。

薄汚れたグレーのコンクリートは溶け去り、暗い地下室への階段が遥か地底まで続いている光景が現われる。

タマモはその階段に足を運ぼうとして、一瞬だけ、迷った。

自分はおそらくとんでもない厄介ごとに足を突っ込もうとしている。しかも犬塚シロの捜索はオカルトGメンが己のプライドにかけて実行し、失敗した事件だ。こうして尻尾を掴んだとはいえ個人の力量で何とかなるものではないかもしれない。



「・・・・はー。私って何時からこんな馬鹿になったのかしら」
彼女はつぶやくとトラップの類を警戒しつつ階段を下っていった。



何故行くかって?




そこに相棒がいるから。
















罠・・・・かな?

自分の知りうる最強の隠匿術をかけ、そろりそろりと足を進める彼女はとある部屋にて爆睡中のカオス、充電中のマリアを発見した。

「・・・・ぐお〜〜〜・・・・ふはははは、すばらしい!・・・が〜〜〜〜〜・・まるで人がゴミのよう・・・・・・・・ぐお〜〜〜・・・・」
天空人になった夢を見ているらしい・・・。

『すや、すや、すや、・・・・・』←マリア、充電中のBGM


どう考えても罠にしか見えない。
見えないがどう見(霊視)てもカオスは完全に眠っているし、マリアに至っては起動していない。


おかしい。



ぴきゃーーーん。

彼女のかけているメガネ(霊視ゴーグル)が某探偵少年のごとく怪しく光を放つ。(そういう機能がついてる)



確かにマリアの今偶然電力が不足していて今偶然カオスがとてつもなく疲れていたという可能性はありうる。

そういえばとある捜査班の人間が言っていた。
『世の中にはおかしな偶然が転がっている可能性がある。それは時として我々の捜査を惑わしたりする。だから普通は偶然なんか無視してもいい。

だが、偶然を許すのは二つまでだ。三つ目の偶然が重なったとき、その裏には何かあるんだよ』と



現在、二つの偶然が重なった。

・・・う〜ん。これは無視してもいいって事かな?




アレ?さっきまでのそれっぽい緊張感は?・・・・ってなノリでタマモ様は謎解きをほっぽりだした。

まぁ尾行を開始してから、完璧な尾行をこなし、自らの気配のカケラすら漏らさなかったのだから、このように判断するのも間違ってはいない。
またタマモの考えとは関係なく、実際、ドクターカオスは尾行されている間からタマモの事を感知できていないのは本当だった。


何か引っかかるような気がしたが、友に会えるというはやる気持ちを抑えきれない彼女はその感情を無視して、脳内でピンクパンサーのテーマを奏でつつ、そろりそろりとその場を後にしてしまったのだった。












こうして、タマモは『そのタイミングに自分が居合わせたという第三の偶然』を見逃したのだ。


それはドクターカオスの思惑に見事足を踏み入れたという事に他ならないという事に、彼女は気づいていない・・・・。




ヨーロッパの魔王の放った蜘蛛の巣は、本人に気づかれる事なく、確実に、何の疑いもなく足を進めるタマモの足に、より複雑により複雑に、絡み付いていくのだった・・・・。













・・・・・いや、実際カオッさんそこまですごい事企んでたわけじゃないんだけど。









ここが、最後か。

カオッさんの秘密基地(仮定)をあらかた調べ終わったタマモはついに最後っぽい扉に差し掛かった。

そして今までもやってきたように、武器の精霊石弾入りのリヴォルバー、ニューナンブ(人間の武器って結構面白いのよね)がすぐ取り出せるようになっているかを確認。扉を僅かに開け、ポケットから化粧用のコンパクトを取り出してそれの鏡を使い部屋の内部を確認。

よし、危険はなさそうね。




その部屋はこれまで見たどの部屋とも違っていた。

今まで見た部屋はどこもごちゃついた機械類か、書物か、実験器具か、ガラクタが『詰め込まれている』ような状態だったのだが、この部屋だけは妙に片付いており、奇妙な直径2mほどのリングがふよふよと浮遊していた。


「こ、これって・・・・・っ!」
思わず声が漏れて慌てて口をふさぐ。


このリングは・・・昔オカGの資料室で見た事があった。
確か五百年ぐらい前にとある魔法使いが自分だけの世界を作るために作り出したという異界へのゲート!
でも使うためには外の世界から空間を切り取ってこないといけないとか言う迷惑なアイテムだ。
当然、今はこれの使用は禁止されている。





この秘密基地はこのアイテムの隠蔽用なのかも知れない。でも、異世界と言う事は当然今までこの中までいかなる捜索は届いていなかったという事になる。


つまり・・・あいつが、シロの奴がいるかもしれない!




もちろん、罠かもしれない。無駄骨かもしれない。

でも・・・・ここで引き返すなんて事は、タマモにはできなかった。


いや、できるはずがなかった。














「そういえば・・・意外でしたね。こんな大掛かりな出来事が起きれば確実に『奴』が引っ掻き回すと思っていたんですが・・・」
「『奴』?・・・ああ。あいつか。確か『奴』なら二年ぐらい前にまた消えおってからしばらく見ておらんから後ちょっとの間ぐらいココも静かに・・・・ってキーやん。
あんさん今回ずっと『奴』の世話ワイにまかせっきりやったな〜。次はそっちが相手するんやで。まったく・・・あの鬱陶しさはロキの比やないで」
「勘弁してくださいよ・・・。さすがの私も『奴』が相手では・・・」

『奴』・・・・それは時折現われては最高指導者を悩ます厄介な存在。
特に恐ろしい事を起こそうと言う気もないようだが、秘める力は計り知れず、サッちゃんキーやんのフルパワー攻撃を受けてもびくともしない。
その実態は、異次元の邪神・・・・という事になっているが真実は定かではない。
また、第1話にちょこっとでていたり・・・。

「そういやあいつ・・・妙な事いっとったな。それも珍しく深刻そうな顔して」
「妙な事?」
キーやんはとても嫌な顔をした。『奴』が何かしでかすたびに想像を絶する仕事の山に涙したのは一度や二度ではないからだ。
それに深刻そうな顔だってそれ自体ただのパフォーマンスという事もありえる。

「確か・・・枝がもう長くないとか・・・」
「枝?何かの比喩ですかね」
「さぁ。でもこれだけは言えるで」
「そーですねー・・・」



――――何か、また厄介な事がおきそうな予感・・・。

全世界の中心とも言える場所で、指導者が二人。頭を抱えた。


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