「…遅いわね横島クン。1秒でも遅刻したら給料半分にしてやる。」
美神の声は明らかに機嫌が悪かった。
デスクの上にはいくつもの書類が散乱しており、クシャクシャに丸められた物や真っ二つに引き裂かれている物もあった。
美神は時計の秒針をじっと見つめる。
(あと1分……)
(あと30秒……)
(20……)
(10……)
そのとき。
バン!!と美神除霊事務所のドアが開かれ、息を切らした横島が駆け込んできた。
「ハァ…ハァ…間に合った…おはよーございます、美神さん!!」
(チッ、こういうトコだけは運がいいのね……)
「朝っぱらから暑苦しいわね。そんなに息切らせるくらいなら30分早く起きればいいじゃないの。」
美神は飲みかけだったコーヒーに口を付ける。
「……毎日人をボロボロになるまでコキ使ってるのは誰なんスか?」
「なんか文句でもあんの!?何ならアンタの給料半分にしてもいいのよ!!」
ガチャン!!と乱暴にコーヒーカップを置き、美神はギロリと横島を睨む。
「ど、どうしたんすか美神さん……?」
ピリピリした殺気を感じて横島は思わず後ずさる。
「あ、おはようございます横島さん。」
そのとき美神達の話し声に気付いたおキヌがひょっこりと顔を出した。
朝食を作っていたのかエプロン姿である。
「ああ、おはようおキヌちゃん…あのさ…。」
横島はそっとおキヌに尋ねる。
「なんか今日の美神さん、えらく機嫌が悪いけど…何かあったのかい?」
おキヌはその質問にピクッと体をこわばらせ、横島の耳元でこっそり話し始めた。
「それがですね…何でも急に仕事がキャンセルになったらしいんです。それも今回だけじゃなくて、最近立て続けらしいんですよ……。」
「なるほど…そりゃ機嫌が悪いわけだ。当分は逆らわない方がよさそーだな。」
「…そうですね。」
横島とおキヌは互いに苦笑した。
「あの、ところで横島さん、朝ご飯もう食べちゃいましたか?」
「え?いや、今日は時間ギリギリだったんで何も食ってないんだ。」
「そうですか、よかったぁ。」
その答えを聞いてぱあぁっ、とおキヌの顔が明るくなる。
「実はシロちゃんが里帰りしてたの忘れてて、余計に作っちゃったんです。よかったら食べてください。」
そう言っておキヌは分厚いステーキを持ってきた。
「おおおッ!?こ、これはッ!!」
横島はステーキを凝視したままぷるぷるとふるえている。
「ど、どうしたんですか?」
「思えば時給250円、カップ麺一食で3日乗り切った事もあった……空腹で意識を失いかけた事も一度や二度ではないッ!!その俺がついにッ!!朝っぱらからこんな分厚いステーキを食えるところまで登りつめたのだッ!!今!!俺は何かを制したのだあああッ!!」
ぱこん!!
「あだっ!?」
一人興奮する横島の後頭部にコーヒーカップが直撃した。
「ブツブツうっさいわよ!!いいからさっさと食べなさいっ!!」
美神は額に青筋を作りながらヒステリー気味な声を出す。
「勝利の余韻に我を忘れてしまった…そんじゃ、いっただきまーす!!」
ナイフとフォークを手に取り、横島はガツガツとステーキを食べ始めた。
おキヌも自分の朝食を用意し、横島の隣で食べ始めた。
「おいしいですか?横島さん。」
「ああ、焼き加減もバッチリだし、サイコーだよ。」
「ふふ、よかった。」
おキヌは安心して微笑む。
一方の美神は眉をひそめて横島を見ていた。
「にしても朝っぱらからよくそんなものが食べられるわね…感心するわ。」
「好き嫌い言ってる身分じゃなかったっスからね。ドンと来いっスよ。」
食べながら横島はふと気付く。
「あれ…そういえばタマモはどこ行ったんですか?姿が見えませんけど。」
「あのコは西条さんの所に行ってるわ。」
「西条の?」
「ある事件の捜査に協力して欲しいって頼まれてさー、タマモも構わないって言ってたから貸してあげたわ。」
「シロは里帰り、タマモは捜査の手伝いっスか……ということは、久しぶりに3人だけの美神除霊事務所ってわけっスね。」
「そいえばそうねぇ。」
「美神さん……。」
突然横島は美神の傍へ近寄り、手を握る。
「今までシロやタマモを気にして遠慮してたんでしょうが、今だけはこの横島忠夫の身も心も美神さんの独り占めですよ。さあ!!思いっきり僕の胸に飛び込んで……!!」
「……思いっきりこの窓から飛び込んでみる?」
美神は事務所の窓を開けながら横島に微笑む。
「あああ、ボクはただ寂しい美神さんの心を癒そうと……。」
血まみれになった横島はずるずるとテーブルに戻っていった。
「あのコ達がいない分アンタには働いてもらうわよ。わかった!?」
しくしくと涙を流しながら横島は再びステーキを食べ始める。
「美神さん、新しいコーヒー入りましたよ。」
「あ、サンキューおキヌちゃん。」
トレイを抱えたおキヌはふと思い出す。
「そうだ、お天気の事見ておかなくっちゃ。」
おキヌはリモコンでテレビの電源を入れる。
「……続いて今日のニュースです。○日深夜頃、都内の路上で男性と見られる焼死体が発見されました。遺体は損傷が激しく身元は確認されていません。警察は自殺の線が強いとしながらも、事件の可能性もあるとして捜査を始めました。なお、今月に入ってから同様の事件が都内で多発しており、警察は関連を……。」
テレビでは謎の連続焼身自殺!?と題して盛り上がっていた。
「…こら、人がステーキ食っとる時に焼身自殺のニュースなんかすなんよ……。」
横島はすっかり気分が悪くなってしまった。
「自殺…。」
その言葉におキヌの表情が曇る。
「ま、不景気だからなー。リストラとかヤミ金とか、自殺のネタなんて結構転がってるもんだよな。ところで美神さん、今日の仕事はどうなんですか?」
「とりあえず1件だけね。他に3件あったんだけど、全部キャンセルされたわ。」
「どこかの命知らずが美神さんの仕事を横取りしてるんですかね?」
「それが妙なのよ。依頼主に問いただしても、他のGSに頼んだ憶えは無いって言うのよ。いつのまにか悪霊がいなくなってたって。」
「うーん、確かにおかしいっスね。美神さん相手にウソを突き通せるはずはないし……。」
「人に害をなす悪霊が自然に成仏するなんてありえないわ。誰かが除霊してるに決まってる。必ず見つけ出して私にコナかけた事を来世まで後悔させてやるわ!!」
フフフ…と笑いながらも、美神の目は笑っていなかった。
(こりゃ血ぃ見るな……)
横島は美神の殺気にゾッとした。
美神は書類をまとめ、すっと立ち上がる。
「さて、そろそろ仕事に行くわよ。いつまで食べてんの横島クン!!おキヌちゃんはもう準備終わってるわよ。」
「んぐぐ、ま、待ってくださいよ美神さん!!」
美神達は街外れの廃工場にやってきた。
「んで、今回の相手はどんな奴なんですか?」
「経営難を苦に自殺したこの工場の社長の幽霊らしいわ。今のところたいした被害は出てないらしいけど、気を抜くんじゃないわよ。」
「……。」
ふとおキヌの表情が暗く沈む。
「どうしたのおキヌちゃん?気分でも悪いの?」
「美神さん…どうして人は自殺なんてしてしまうんでしょうか……せっかく生きているのに、自分でそれを捨ててしまうなんて……。」
「…人にはそれぞれ事情があって、誰もが強い心を持ってるわけじゃないわ。そう選択せざるを得ないところまで追いつめられてしまう事もあるのよ。」
「なんだか……悲しいですね……。」
「私たちにできる事はこれ以上霊が迷わないように成仏させることだけよ。わかったら気を引き締めなさい。おキヌちゃんもGSなんだから。」
「……はい!!」
「そんじゃ一丁いきますか!!」
美神達は工場の中に足を踏み入れる。
横島の抱える霊体探知機「見鬼くん」は工場の奥を指し続けている。
割れたガラスやはがれた壁の散乱した通路を3人は進んでいく。
「だんだん反応が強くなってきましたよ……。」
そのとき、工場の奥からウオオ〜ン!!と不気味なうなり声が響き渡る。
「霊気を強く感じるわ…どうやらそこの角を曲がった先にいるみたいね。みんな行くわよ!!」
美神を先頭に3人が飛び出すと、通路の奥に大きな悪霊の姿が見えた。
こちらに背を向けてうずくまっており、なにやらブツブツと呟いている。
美神達には気が付いていないようだ。
「何やってるのか知らないけど…今がチャンスだわ!!」
美神は神通棍をジャキン!!と伸ばす。
「オレハマダシヌツモリナンテナカッタンダアアアアア!!」
「うわっ!?びっくりした!!」
いきなりの大声に横島は思わず声を出してしまった。
(もう、バカ……!!)
悪霊は美神達に気が付き、ゆらりとこちらに振り返る。
「ダレダオマエラアァァァ……。」
美神は悪霊の前に飛び出し、身構える。
「私はGS美神令子よ!!アンタの身の上には同情するけど、いつまでもこんなとこウロウロしてないでさっさと成仏しなさい!!」
「ウルセエェェ、オレハ、オレハアアアァ!!」
「極楽へ逝かせてあげるわ!!」
伸び上がって威嚇する悪霊めがけて神通棍を振り上げる美神。
「だぁ〜から、人様に迷惑かけちゃダメだってとっつぁん。酒飲もうぜ酒。な?」
がくっ。
「横島クン!!ふざけてないで真面目にやりなさいよッ!!」
バキッ!!
横島の頭に鉄拳が打ち込まれる。
「今のは俺じゃないっスよ〜。」
「アンタ以外に誰がいるのよ!!」
「み、美神さん、あれ……!!」
おキヌの指す方を見ると、悪霊の後ろに若い男があぐらをかいて座っていた。
髪は短くN3Bのミリタリージャケット、ジーンズにブーツという男臭い格好。
彼の周りには空になったカップ酒の空き瓶がいくつも転がり、その他にも寝袋や携帯用のコンロなどが置いてあった。
「なんだアイツ、ホームレスか?」
横島はあきれた表情で呟いた。
「ホラホラうなってねーで。飲みなおそーぜ。」
男はヘラヘラ笑いながら悪霊の腕を掴む。
よ、酔っぱらってる!?」
「アンタ何やってんの!?そいつは人じゃないのよ!!」
「ん?おお、お客さんか。ねーちゃんが2人ににーちゃんも一緒か。こいつは盛り上がりそーだなぁ。お前さん達もグイッとやってくれ!!だはははは!!」
男はゲラゲラと笑い、手にしたカップ酒をあおる。
「ダメだこりゃ…完全にできあがってますよ。どうします美神さん?」
「よりによってこんなトコに住み着くなんて何考えてるのよアイツは!!」
美神はこめかみを押さえてため息をつく。
「…しょうがないわ、おキヌちゃんはネクロマンサーの笛で悪霊を足止めして。その隙に私と横島クンで……。」
「グオオオオ!!オレハシニタクナンカナカッタンダアアアアア!!!!」
ほんの一瞬美神が気を逸らした瞬間、突然悪霊が美神に襲いかかる。
ドカアッ!!
間一髪で攻撃を受け止めたものの、予想以上の霊圧にヒザが折れる。
「くっ、コイツ思ったより強い……!!」
「美神さん!?いま援護を!!」
ビタン!!
横島の言葉の直後、悪霊は地面に叩き付けられる。
「サンキュー横島クン、助かったわ!!」
「いや…俺、まだ何もしてませんよ……?」
「えっ?」
「…よしなって言ってんだろとっつあん。人を傷つけたら余計に成仏できなくなっちまうんだぜ……。」
悪霊を押さえつけていたのはカップ酒をあおる男だった。
それもさっき掴んだままの片手で。
(なんなのアイツ…とんでもない霊力だわ……!?)
悪霊は抵抗もできずに男の元に引き寄せられた。
「ウオオオオ……。」
「ほら飲んで飲んで。洗いざらいぶちまければ楽になれるぜ。な?」
「ウ…ウウウ……。」
悪霊は大人しく男の傍らに座り込むと、ちびちびと手渡されたカップ酒を飲み始めた。
……もちろんホントに飲んでるわけではないが。
そして2人(?)は美神達をそっちのけで酒盛りを始めだした。
「ウオオ〜ン!!」
「わかる…わかるぜその気持ちはよー!!」
「ウオオウ、ウオッ、ウオウ!!」
「色々大変だったんだなぁとっつぁん……ヒック!!」
「オオオ〜ン!!」
「ああ、こうなったらとことん飲んでやろうぜ!!どちくしょうっ!!」
そうして泣いたり叫んだりしているうちにだんだんと悪霊の姿は薄くなり、いつの間にか成仏してしまった。
「逝っちまったか……こんどは生きてるときに飲みてーもんだなとっつぁん…。」
男はそう言って最後のカップ酒を飲み干した。
「さ…酒盛りで……。」
「悪霊を成仏させちまいやがった……。」
おキヌと横島は目が点になってしまった。
「ちょっとアンタ!!なんてことしてくれんのよ!!」
だが、美神はものすごい剣幕で男に詰め寄っていた。
「なんだ、ねーちゃんも飲みたかったのかい?残念だけどさっきので最後だぜ。」
「んなことどーでもいいわ!!これは私の仕事なのよ!?こんな勝手な真似してタダで済むと思ってんの!?」
「仕事…何が?」
「除霊よ!!アンタもGSなんでしょ!?」
「GS?なんだそれ?…あれって仕事になんのか?」
「はぁ!?しらばっくれるんじゃないわよ!!素人があんな高度な除霊をできるはずがないでしょうが!!それにアンタの力…半端なモンじゃないわ!!」
実際幽霊を説得だけで成仏させるのは相当な実力者でも難しいのである。
しかもこの男は片手で悪霊を押さえつけるほどの力を持っているのである。
これでGSでないという方が無理である。
「あれはまあ、いわば生活する上での知恵ってやつさ。幽霊はガキの頃からよく出会っちまうもんでね。昔はぶん殴って追っ払ってたが、あいつらとことん話聞いてやりゃ大抵は満足して成仏する事がわかったからな。」
「軽く言ってくれるわね……それができないから苦労してんじゃないの。」
「……。」
男は急に鋭い目つきで美神を睨む。
「な、何よ……。」
「あんた、優しさが足りないんじゃねーの?」
「大きなお世話よッ!!」
「鋭いなアイツ…。」
げしっ!!
横島のみぞおちに美神のヒジがめり込む。
「あがが…!!」
「うっさい!!…それにしても、ほんとにGSじゃないっていうの……?」
「おう、俺の持ってる肩書きはバイクの免許とそろばん3級だけだ。」
美神は愕然とした。あろうことかこの男は素人であると言い張る。
(まいったわ…素人相手じゃ追い込みの後始末が面倒になるじゃないの……)
美神は頭を抱えてしまった。
「アンタ一体何者なの……?」
「俺は瀧谷護(たきやまもる)。さすらいの風来坊ってやつさ。」
「言ってて恥ずかしくならんのかお前は……風来坊て……。」
「あの、どうしてこんな所にいたんですか?悪霊がいるのはわかってたんでしょう?」
おキヌが瀧谷に尋ねる。
「雨風しのげるいい場所だったからな。それに話し相手がいた方が退屈しねーですむだろ。ヤツらの話はなかなかおもしれーんだぞ?ま、全部バッドエンドなのがアレだけどな。わははは!!」
「は、話し相手、ですか……?」
「ただヤツら話すだけ話すと満足して成仏しちまうから、そうなったら新しい話し相手がいそうなトコに移動してるんだ。」
「そ、そうですか……。」
浮遊霊と友達であるおキヌだが、さすがにこの意見にはついて行けないようだ
。
(ちょっと…今の話って……)
美神はハッとあることに気付く。
「ちょっといいかしら…アンタここに来る前どこにいたの?」
「ここの前?港の空き倉庫かな。」
「……その前は?」
「解体途中のビル。」
「……その前……。」
「○×公園」
(ま、間違いない……全部キャンセルされた除霊現場だわ……!!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
美神からすさまじい怒りのオーラが吹き上がり始める。
「お・ま・え・かあああああぁッ!!!!」
美神は神通棍に霊力を流し込み、スパークする切っ先を瀧谷の喉元に突きつける。
「な、なんだぁ?」
「ど、どどど、どうしたんスか美神さん!?」
あまりの殺気に横島はビビリまくる。
「私の仕事がキャンセルになったのは全部コイツの仕業だったのよ!!」
「はぁ?何の事だ?」
「アンタが勝手に悪霊を成仏させてくれたおかげで私の仕事が無くなったのよ!!今日の仕事を含めて総額2億4千万の損害だわ!!どうすればいいかわかってるわね!?」
「……金なら無いぞ。」
「そんなの見りゃわかるわよ!!」
「じゃあ……カラダ?」
瀧谷はポッ、とほほを赤らめる。
だああっ!!
横島とおキヌは派手にずっこける。
「やさしくしてくれよ……(どきどき)」
ぷちん。
「死ねッ!!!!」
キレた美神はフルパワーで神通棍を振り下ろした。
どげしゃあっ!!
霊気の爆風が巻き起こり、あたりは煙で真っ白になる。
「あ〜あ、こりゃ完璧に死んだな……。」
横島は両手をあわせて祈った。
美神はその場で固まっていた。
「美神さん、そんなに気を落とさないでくださいよ。たとえ美神さんに前科ができたとしたも、俺はそんなの気にしな……!?」
「いってええええええ!!!!」
なんと瀧谷は生きていた!!
「おい!!こんなんふつーだったら死んじまうぞ!?俺がちょこっと頑丈だったからよかったものの……あーいてぇ!!」
瀧谷は涙目になりながら頭をさすっていた。
どくどくと血が流れてはいるが、ピンピンしている。
「な、なんなのよアンタ…ホントに人間なの……!?」
美神は目の前の現実が信じられなかった。
間違いなく本気だった。
美神のフルパワーを喰らって仮に生きていたとしても、半年は再起不能になるくらいの破壊力があるはずなのだ。
それを痛いの一言で片付けるとは。
常識外れの耐久力だ。
(思いっきり怪しいわコイツ……何かを隠してるわね……)
瀧谷はすくっ、立ち上がり美神を見下ろす。
意外と背は高く180pはある。肩幅も広く、引き締まったいい体格をしていた。
「ふざけたのは悪かった。けど俺には金がねー。そこでだ……アンタの手伝いをしてやるよ。」
「え?」
「幽霊を成仏させりゃ金になるんだろ?アンタが損した分は働いて返すよ。」
そのとき2人の間に横島がガバッと割って入る。
「なに言ってんだコラ!!お前みてーな得体の知れない野郎を美神さんが雇うわけねーだろーが!!だいたいGS美神の世界にムサ苦しい野郎キャラは必要ないんじゃボケ!!」
ばきっ!!
美神は横島を殴り倒すと、じっと瀧谷を見つめる。
「……本気で言ってんの?」
「じゃあこのまま帰っていいのか?」
「そうはいかないわ。」
「じゃあ決まりだな。」
「いっとくけどウチの仕事は半端じゃないわよ。」
「メシさえ食わせてくれりゃ文句はねーよ。」
しばらく考えたあと、美神は答えた。
「わかったわ……アンタも悪気があったわけじゃないみたいだし。私は美神令子。美神除霊事務所の所長よ。」
「美神さんね……連れの2人の名は?」
「そこでノビてるのが横島クンで、こっちがおキヌちゃん。2人とも見習いGSよ。」
おキヌは瀧谷にペコリとお辞儀をする。
「私氷室キヌといいます。よろしくおねがいしますね。」
「いやあ嬉しいね。こんな可愛いコと一緒に働けるとは。」
「え、あ、可愛いだなんて……そんな……。」
あまりこういう言葉に免疫のないおキヌはかああっ、と赤くなってしまった。
「美神さんにおキヌちゃんと横島か……とにかくよろしくな!!」
こうして美神除霊事務所に奇妙な仲間が加わったのであった……。
けど、途中までの文章は読み易かったです。 (ザクV)
原作にはいないタイプなのでオリキャラになる理由としては十分だと思う。
よくある薄いキャラでなく、キャラも立っているしね。 (むじな)
一つの小説作品として見るならば、それなりに良い評価が与えられる出だしだと思います。
文章力については地の文が少なすぎて判断がつきませんが、話の流れ・テンポは悪くありません。
ただし、二次創作という特殊なジャンル内での評価となると、少なくともこの段階では厳しい評価にならざるを得ません。
原作の雰囲気を壊す壊さないに関わらず、オリキャラをメインに据えるのは原則的にNGです。
メインに据えるというのは、GSで言えば「美神除霊事務所の一員となる」と言い換えてもいいでしょう。
作者が「雰囲気を壊していない」と判断していたとしても、多くの読者にとってはそのオリキャラが存在するというだけで、「原作の雰囲気が壊れている」ということになるのです。
例外は、そのオリキャラが単発エピソードのゲストキャラであり、エピソード終了と同時に物語から退場する場合くらいでしょう。
特に、そのオリキャラが原作の主人公たちの(主人公としての)立場を脅かしかねない場合は注意が必要です。並大抵の力量ではまず無理でしょう。
以上は一般論ですが、現時点でこの作品がすでに「並大抵の力量では無理」な部分に相当してしまっていることはおわかりだと思います。
ただし、これはあくまでも一般論ですのでちくわぶさんがそのハンデを乗り越えられないと言うつもりはありません。
むしろ、そのハンデを乗り越える希少な例外になることを期待しますので、楽しみに続きをお待ちします。 (はくはく)
読んでいただいたみなさんと同じく私は椎名高志先生の作品をこよなく愛する者であり、そのイメージを貶めるつもりなどは全く無いという事だけは信じてください。オリジナルキャラの存在が許せないとおっしゃるのも当然であると理解しています。なぜなら私としてもこのオリジナルキャラがいつまでもGS美神の世界に存在する事を認めてはいないからです。この物語にはテーマを持って取り組んでいるので、そのために必要な新しい登場人物を絡ませたいと思って登場させたのです。
ですので、この話は「美神除霊事務所の遭遇した事件の中の1つ」と思ってください。
ザクV様、むじな様、はくはく様、貴重な意見をありがとうございました。 (ちくわぶ)
いいと思います。 (HF)