椎名作品二次創作小説投稿広場

復活

蛍vs美神事務所（下）

事務所からルシオラが飛び出した直後、ルシオラ蛍の中。

「ルシオラ、どういうつもりなんだ？あんな誤解される行動して？俺もホントに食われるかと思ったぞ」

横島は寝っ転がってくつろいでいる。というより狭いので寝転がらないと頭がつかえる。

「ごめんねヨコシマ。どうしても確認しときたかったのよ」
ルシオラ蛍の中、どういう機構か下半身が管になったちっちゃなルシオラが出てきて、横島に説明している。

メフィストが高島を呑んでいたときより狭い上に調度は無いに等しい。
これは式神、しかも復活直後のルシオラでは仕方ないだろう。

「なにを？」
「ヨコシマがあの事務所でどのくらいの重要と思われてるかね。ぶっちゃけどれだけ必死で追ってくるかってテストね」

（あとで、美神さんには殺されるな・・・・しくしく、短い人生だったがルシオラと会えたからよしとするか・・）

（今生ではヨコシマの式神に過ぎない私としてはヨコシマの最大幸福をはかるだけよ！
　 嘘ついて苦しめたお詫びと生き返らせてくれたお礼も含めてね）

ルシオラの背後には真っ赤な炎が燃えさかっている（ひのめの炎比約５千倍）。
（その中で横島の印象に強烈に残れば、来世でのつながりも強化されるってもんだわ！！）

ルシオラは横島の魂と同化・融合したために“魂の記憶”を相当部分知っている。
もしかすると横島本人よりも知っているかもしれない。

（千年前の、しかも数日の幼稚園児の恋程度に負けてたまるもんですかぁ！！
　千年の絆ってから、身を引こうかなぁなんて思った私が愚かだったわ。
　あっちが蛾の魔族なら私は蛍よ！なぁんにも負けて無いじゃない！！）

もちろん某煩悩魔と違って、声に出たりすることはない。当たり前か。


「それに、自我ができたらすぐに妙神山で検診受けろって言われてるのよ。インプットされてたって方が正確かしら」

「てことは、今、妙神山に向かってるのか」「そうね。もうすぐ着くわ。それに妙神山なら誤解はすぐ解けるでしょ」

「えらく早いな。３０分くらいしか経ってないじゃないか」
「現状での最速スピード出してるわ。今おおよそ時速７８０ｋｍよ」

「最高どのくらいまで出るんだ？」
「ヨコシマ次第ね。昔の魔族の私なら高空直線で短時間ならマッハ３、巡航ならマッハ１．２ってとこね。それ以上は出ないわ」

「もっとゆっくり飛んだ方がよかったしら？　ね　ヨコシマ。二人っきりだもん♪」



「たのもー」

顔が扉に着いた、首から下だけの２人の大鬼が応対する。

「おお、横島とその式神か、待っておったぞ」「ルシオラです」
「小竜姫様は今日来ることを知ってるってことかい？」
「文殊様がみておられたらしいのでな。神界から連絡があった。早くとおるがよい。他に待ち人もおるでな」

二人して門をくぐり中へはいる。

「ルシオラちゃん！」「姉さん」
まず出てきたパピリオとベスパがルシオラに抱きついて涙を流す。言いたいことはたくさんあるのだろうが３人とも声はない。

「横島さん、がんばりましたね。文殊様が感心しておられました。こんなに早いとはって」
「その分、みんなに迷惑かけちゃいましたけど」
「スクルド様も感心しておられたぞ」
「ワルキューレ、なんでおまえまで」
「ベスパの付き添いだ。まだ監視対象からははずれてないんでな。もうすぐしたらジークも来るはずだ土偶羅と一緒にな」

「みなさん、部屋の中へはいりましょう。つもる話はそれからでも遅くないでしょう」

ジーク、土偶羅到着。ヒャクメも現れる。

「ルシオラ、復活して何よりじゃな。ベスパやパピリオはもう知っているが、アシュタロス様が無事輪廻に入られて転生されたようじゃ」
「どこに転生したかは機密で言えないのね〜。ベスパにはかわいそうだけどね〜。ま、転生したら別人だけどね〜」


「それより、今日の用はポチとルシオラの検診じゃからな。そろそろとりかかりたいのだがな」
「ルシオラさんは私から見るのね〜」

「ポチはわしじゃからな」

「詐欺だー！！！何でこれだけの美女に囲まれた中で、なんで中年のおっさん土偶の検診受けんといかんのやー！！！
　何でヒャクメと違うんやーー」

「文句いうとらんと、隣の部屋へ行ってとっとと服を脱げ」
「検診といえば美人の女医さんと決まってるんやー！！！男はイヤやー」逃げ出そうとする横島。

ぽくっ「横島さん、大事だからおとなしく検診受けてくださいね」と笑顔で鞘付き神剣で横島を殴る小竜姫。

「すまんなー。ワシではコイツは取り押さえれんからなー」「よろしくお願いしますね」
隣の検査室へ引きずって行かれる横島。


「ルシオラさんの検診も始めるのね〜」
「あ、その前にベスパにお願いがあるの」
「なんだい、姉さん」
「実はね」美神除霊事務所を飛び出してきた経緯を説明する。

「はー、姉さん相変わらず、ポチのためなら見境無しだね」
「でね、ベスパには美神さんたちを“お出迎え”してほしいの」
「美神さんなら東京郊外でヘリコプターに乗ってるのね〜。こっちへむかってるみたいなのね〜」
「そういうことなら行ってくるよ」
「私も行こう。一応付き添いでもあるし、より誤解が解けやすいだろうな」ワルキューレも立ち上がる。

「お待たせしました。ではお願いします」といって意識を失うルシオラ。式神符に戻ってしまう。
ヒャクメはその式神符に虫眼鏡を近づけて、目を全開にしてなめるように見る。


「じゃ、私たちは向こうでお茶でもしましょうか」
「そうですね、なにかできるわけでもありませんし」
「わたちはルシオラちゃんについてるでちゅ」
「じゃまになるからやめときな。もし異常を見落とせば下手すれば姉さんはなくなっちまうよ」
ベスパが振り返って言う。

「それと妖バチじゃ手が足らないかもしれないから、パピリオの眷属の指揮権貸してくれないか」
「いいでちゅよ。でもなんでそんなに眷属がいるでちゅか？」
「帰ってからのお楽しみだね」


一時間ぐらいしてヒャクメと土偶羅が出てくる。

「お疲れ様。お茶どうぞ」
「ちょっと疲れたのね〜。今のところ異常ないのね〜」「ポチも特に問題なさそうじゃな」

ヤモリの黒焼きのお茶うけをつまみながら答える二人。ヒャクメの口からヤモリのしっぽがはみ出している。

もぐもぐ、ごっくん。ヤモリの黒焼きは霊力の回復に良い。

「こういうときはヤモリは美味しいのね〜。
　とりあえず、二人のデータをコピーして今までのわかったところを検算するのね〜」


目の付いた旅行鞄からケーブルを土偶羅に渡すヒャクメ。数分間データ交換後、二人演算。
「特に問題なさそうじゃな」「そうなのね〜」

「じゃ交代ね。横島さん見てくるのね〜」「少し休んだ方がいいぞ」
「さっさと済まさないと横島さん目を覚ますのね〜」

神界では評価されたヒャクメだが、実際は役に立たなかったことが頭から離れないようだ。
通常状態でも人間界では心眼を１００％動かせば１０分ほどで３日分の神通力を使ってしまう。
ましてや、神界とのチャンネルを閉じられ、人間の作った施設のみからでの神通力。
心眼を働かせるに十分なエネルギーがない状態ではどうしようもなかったと頭ではわかっていても・・・・

「ヒャクメ。気持ちは私もわかりますがちゃんと休んで見落としがない方が重要ですよ」
小竜姫が声をかける。こちらも結構気にしてる顔だ。
「そうかもね〜」と元に戻って、またヤモリを口に入れる。



その一時間ほど前、妙神山の門の前。

「妖バチ達、蛍火は持ったね」「アネゴ、全員がもちやした」

「これで姉さんにみえるかい。この前はポチに一発で見破られたからね」

南極で令子の“汚くてばかばかしい罠”に引っかかって壁に潰されそうになったことを思い出す。
（あれ以上のギャグにしてやるからね）

「少なくとも私にはわからんな。しかしおもしろい“歓迎会”になりそうだな」
「じゃ、ぼちぼち行きますか、ワルキューレ大尉殿」


妙神山を飛び出す妖バチ、妖蝶の大群と魔族２人。

しばらく飛行後、美神一行のヘリを探知した。

「よし、妖バチ達、蛍火をつけな！！半分くらいのスピードであのヘリに近づくんだ。
　攻撃はするな。敵が近づいたら全速でバラバラに妙神山まで逃げろ。その時は蛍火は廃棄していい」
「「「「がってんです」」」」

その後、ワルクキューレとベスパで妖バチに魔力を与えて“強そうな霊圧”をほんのしばらく放つように細工する。
　
「妖蝶は急いであのヘリの下１００ｍ位の所に潜り込んでヘリの動きに会わせな。気配は消すんだよ。
　落ちてきた生物は全部受け止めるんだ」
「「「「わかったでちょ。まかしてでちょ」」」」


妖蝶の大群がヘリの下方へ回り込み、ヘリと同期して動き始める。妖バチもそろそろ感づかれるだろう

「じゃ、そろそろ我々はヘリに直行だな」
「ワルキューレは念のため後で妖蝶と混ざっててくれないかい？」
「気配は消したままでいくか？」
「その方がおもしろいかもね」

二人がヘリへ飛び出してゆく。
「イッツ　ショータイム！！」


ヘリでは結構ぱにくっている。探知鬼で会話はおろか表情まで丸わかりだ。

『霊体レーダーに反応多数。妖怪もしくは魔族です！！』
『ルシオラ、眷属いたの？！！！一気に全員亡き者にしようっての！』
『こんな〜お空の上で〜、襲われたら〜、ひとたまりも〜ないわよ〜』
『拙者、飛べないでござる〜」
『は〜、居心地考えるよりとっとと逃げた方が利口かも？』
『死んでも幽霊には戻れるかしら』

『とにかく、ヘリではどうしようもないわ。飛べるタマモは外に出て！冥子もシンダラ迎撃にだして！』
『わかったわ〜』『まとめてやられるよりましね』


ワルキューレ、ベスパ大笑い。探知鬼の記録鬼能もフル回転。


まもなく、ヘリからシンダラとタマモが妖バチの群れの方向へ飛び出してゆく。

「これで、空中戦はさけられるな。じゃ、一丁南極での借りを返すかね」ベスパが人の悪い笑顔で言う。
「では、私は妖蝶に混ざるぞ」ワルキューレも笑いながら離れてゆく。

一方ヘリでは
『他の人はヘリを防御結界で護るのよ！　おキヌちゃんはネクロマンサーの笛の有効射程に入り次第迎撃して！』
『やってみます。心眼は使わない方がいいですよね』
『笛の出力を上げた方がいいわね。冥子も全力で結界強化して！』
『わかったわ〜』
『パイロット、高度下げて。メキラの移動能力範囲まで下がれば降りるわ！！降りたら勝負よ！』


「さて、人界最強の美神事務所のメンバーはどのくらいやってくれるかね？南極でのお礼はたっぷりしないとね」


美神一行が乗ったヘリの真正面にベスパ改偽ルシオラが穏行を解いて、突然現れる。

「ほっほっほっ、引っかかったわね。蛍はおとりよ！
　ヨコシマは私のもんよ！！ヘリごと消えなさい」
（姉さんならこんな感じかね？）

『最後まであきらめちゃダメよ！！』『冥子さん暴走しないでー！！』『もうダメ〜』
冥子は涙目でふるえ、おキヌは走り回り、美神は必死で防御結界を強化、シロは『人生５０年でござる！！』。
『シロ、悟ってないで結界強化するの！』

ベスパ改偽ルシオラは強烈な霊波砲（光のみ）をヘリに浴びせる。

『もうダメ！！』『令子ちゃん〜〜〜』『もう幽霊しかないわ』『心頭滅却すれば火もまた涼しいでござる！！』
令子も頭を抱えて両目から水平に涙をとばし、冥子はぷっつん寸前、おキヌは幽体離脱しかかり、シロは座禅を組んで悟っている。



数秒。



「何で生きてるでござるか？」



『あーこちら、魔界正規軍大尉ワルキューレだ。美神除霊事務所応答を請う』

『君たちは実戦なら全員転生課程に入っている。訓練で良かったな』

『それと、心眼があるなら使うべきだったな。情報は大事だぞ』

『一部始終は記録したので後で参考にしてくれ』

「どういういこと？ワルキューレ」青筋を浮かべた美神令子がマイクにがなる。

『我々は、妙神山に来たルシオラと称する魔族の要請で、君たちを迎えに来ただけだ』

「ルシオラの要請？　さっきのはルシオラじゃないの？」

『やあ、メフィストいや美神令子だったっけね。久しぶりね。なかなか楽しませてもらったよ。
　あ、この“訓練”は私が姉さんに迎えに行くように言われて思いついたんだ。そっちは楽しんでもらえたかい？』

「ベスパ！！アンタだったの！！　ルシオラと横島クンは妙神山にいるの？」

『今、土偶羅様とヒャクメの検診を受けているよ』

「なんですって？」

『姉さんは復活したら、横島と一緒にすぐ妙神山へ来るように言われてたのさ』

『皆さんお待ちかねだ。妙神山へ向かってくれ』



通信機は沈黙した。後はいくら怒鳴っても反応しない。

「一杯食ったわ！！美神令子をなめるんじゃないわよ！！あんの害虫娘ども後で憶えてなさいよ〜〜！！！！！」

そうこうするうちにタマモ、シンダラが帰ってきた。
「何がどうしたのよ。行ったら敵は影も形もないし、こっちのヘリは無事飛んでるし」

怒り心頭に発した顔で令子がタマモに説明する。

「ま、冥子が暴走しなかったのは不幸中の幸いね。全員死んでたかも」

通信機から突然声がする
『大丈夫だ、気が付かなかったか？下で妖蝶がちゃんと受け止めてくれる』

「あいつらまだ見てるのね！！くっそー！！！！」



先に妙神山に着いたワルキューレとベスパは笑い転げている。

「どうしたでちゅか？」「今見せてやるよ」
「美神さん達は無事にこちらへ？」「ああ、無事にヘリで向かっている。まあ、これを見てくれ」

探知鬼を映写鬼に接続し、再生する。
「美神さんの顔がおもしろいのね〜」
「おキヌちゃんってかわいー」
「南極でのいやらしいロン毛がいないのが残念でちゅ〜！」
「このコ妖狐ね、狐が狐につままれたような顔してる〜」とかなんとか。

ちなみに妖バチ、妖蝶達も控え室の大スクリーン前でハネをふるわせて転げまわってたりする。

「こ、こんないたずらしちゃいけませんよ？ぷぷっ」小竜姫やジークまでが腹を抱えて笑っている。
もちろん美神令子の顔が一番人気だ。


そこに、目を覚ました横島とルシオラが入ってくる。

「あのー皆さんどうしたんでしょう？　で、それと俺とルシオラの検診結果は？」

「あ、横島さん。異常は何もないのね〜。安心していいのね〜」
涙をふきながらヒャクメが答える。

その後、皆が大笑いしているわけを話す。

「ベスパったら、そんないたずらしたの？私は誤解を解くようなつもりで言ったのに」
「大丈夫だよ、姉さん。誤解は充分に解けてるよ」


一人頭を抱えてふるえる横島。
「あぁぁぁぁ、死刑確定や〜〜〜！！ベスパなんてことするんだよー！
　簡単には死なせてもらえんやろな〜。経験もないままこんな山奥で美人に囲まれて死ぬのか〜。
　ぐふふっちょっといいかも」
あっちの世界へいってしまいまいした。


しばらく後、令子、おキヌ、冥子、シロ、タマモが妙神山にぞろぞろ入ってくる。

おキヌまでふくれっ面だ。

お互い、知らない者がいるので自己紹介。
妙神山側は笑いがこらえられない。事務所側は至って非友好的。

「さっさと横島クンはどこ！　小竜姫様まで一枚かんでたの？」
「横島さんは異常ないんですか？」「横島クンはどこ〜？」
「先生は何処でござる！」「・・・・」

「私は後で見せてもらっただけです。ジークさんもパピリオも知らなかったんですから」

「とりあえず、あちらでお茶にしませんか？横島さんとルシオラさんは検診が終わって
　詳しい結果を土偶羅さんから聞いてます。特に問題はないそうです」
と、うながす小竜姫。

みな、応接室（茶の間）へ。
そこで、横島（＋ルシオラ（＋土偶羅））発見。


「あら、みなさんお早いお着きね」

ルシオラが笑顔で迎える。
横島はプレッシャーで声も出ない。土偶羅退避。タマモも部屋の入り口で停止。

ヒャクメやジークは「さっきのデータもう一度検算しましょうか」「そ、そうなのね〜」
「わ、わしもいくぞ」と土偶羅と共に別室へ逃げてしまう。


「おかげさまでね。うちの丁稚をいきなりひっさらうとはいい度胸じゃない」
「ご主人様、第一ですから。なるべく早く検診受けたかったの」

横すわりで大降りの湯飲みを傾けながらしれっと答えるルシオラ。

うそや〜っと心の中で叫ぶ横島。金縛りにあって口が動かない。

「検診受けるのに横島クン食べると魔族に戻れるだの美味しそうだのという？」
「本当のことですわ。それに一言も『食べて魔族に戻る』とは言ってないわ」

二人の放つ霊圧で「ゴッー」という擬音を伴って部屋に気が充満してゆく。

「それに『私の』ヨコシマを丁稚扱いしないで頂けません？ベスパの仮装ですら見破れない方が」
「『ウチの』丁稚の式神の分際で、私に指図する気？」

擬音は「ぐぉおぉおおおー」に変わってきている

「この中に入らなきゃ、横島さんの側には・・でも私にはああぁぁっ」令子vs百合子から進歩のないおキヌ。
「怖いでござる、怖いでござるぅぅ」しっぽが完全に巻かれてしまっている。
「おキヌちゃん、シロ、中にはいるな！！逃げろ、危ない！！下手すると部屋が爆発するぞ！」

自身は動けないが必死でなんとか言葉を紡ぐ横島。

擬音はもはや「ドゴオオオ！！！！！バチバチバチ！！！」である。


にらみ合いの中、冥子が横島に近寄ってゆく。

というか皆、駆け足で部屋に来たため、歩いてきた彼女は最後に部屋に入ってきた。

その歩みをとめずに横島に歩み寄る。

だき！

「横島クンよかった〜。冥子心配したのよ〜。食べられちゃったって聞いたから〜」
それからやっと部屋がおかしいのに気が付き

「なんで〜、瘴気が〜お部屋に満ちてるの〜？バサラちゃんお願い〜〜」
ぐもーーーー！！バサラに吸われて一瞬にして部屋の霊圧が下がる。

「令子ちゃん、これで安心ね〜」と横島を抱えた冥子がにっこり笑いかける。


横島は霊圧と冥子の胸とふとももの感触、および身に降りかかるであろうことの想像で白目をむいてしまっている。

（鈍感も捨てたもんじゃないわね）と変なところに感心するタマモ。
（（あ〜！！積極的とはこういうこと（なんですね）（でござるか）））
二人の心の叫びを顔から読み取ってこめかみをおさえるタマモ。（こいつらって・・・）


「はぁ〜なんか毒気抜かれちゃったわ。おキヌちゃん、いきなりヨコシマさらってゴメンね。
　毎日私のこと気にしてくれてたわよね？　ありがとう。９か月ぶりね」
「えっえぇ？どういたしまして？」いきなり謝られて思考がおっつかない。


「シロちゃん、タマモちゃんあらためて初めまして。これからよろしくね。ヨコシマの式神のルシオラよ」
「先生いや横島殿の命を救って、亡くなったっていうのは本当でござるか？」
「ええ、でも今、後悔してるわ。結局、私がイヤだったことをヨコシマに押しつけただけだったのよね。それもより悪い形で」

「どういうことでござるか」
「ヨコシマはあのとき死んでも転生できたの。でも私はヨコシマに霊基構造分けちゃったのよね。
　だから、転生も出来なくなってヨコシマを苦しめたの。ベスパやパピリオ、他の人たちもね」
「でも、えらいでござる。拙者そこまでできるかどうか・・・」

「やっちゃダメなの。死んでも思い出に残るし、転生は新たな可能性なのよ。生き物はいずれ皆死ぬけど、魂はそうじゃないの。
　作られたばかりの私にはその重さがわからなかったの。タマモちゃんあなたならわかるでしょう？」
「そうね、私は何回も死んでるけど、やっぱり金毛白面九尾の狐だもんね。毎回別人ではあるけどね。
　私の一存で次の九尾の可能性を絶つことはできないわ」

「とういわけで、ヨコシマと一緒なら私の回復に付き合ってね。よろしく」


「最後になっちゃったけどえーっと、六道・・・・冥子さんだったけかしら。よろしくね」
「そうよ〜、ルシオラちゃん。横島クンとぉ〜、これからずーっとぉ〜一緒なのよね〜」
「おそらく、少なくとも今生はそうだと思うわ」
「じゃ、私も一生〜横島クンとは〜付き合いたいから〜ヨロシクね〜。ルーちゃんって呼んでいいかしら〜」
（うっ、このコ手強いかも・・・・）「ええ、いいわ。ありがとう」
「やった〜、お友達ね〜」


まだ、横島は白目をむいたままの冥子に体を預けている。
「ヨコシマ、そろそろ目を覚ましてくれない？」ぺちぺちとほっぺたを叩くルシオラ。

「・・・・・ところで、なんで私には挨拶無しなのよ？」
おもっきりわざと無視された令子が相手の思う壷だと知りつつも、聞いてしまう。

「あら、さっきたっぷりしたと思いましたけど。」
「あれが挨拶だっての？」
「挨拶は相手に合わせてするものですわ」

「うーん・・・」その時、横島が目を覚ます。


「あっ、ヨコシマおはよう。そういえば復活してから、キスもしてなかったわね」
といって、横島に顔を近づけるルシオラ。

「「「「「あー！！！」」」」いきなりの奇襲に一同声も出ない。


しかし、横島はゆっくりルシオラから顔を遠ざける。
「ヨコシマ？」
「気持ちはうれしいけど、これ以上は・・・無理してんだろ。今でも相当きついはずだよな」
「わかってたの？」
「おまえの嘘はこりごりだからな」

「ルシオラ、なるべく俺や冥子さんに触らないようにしてただろう。
　小竜姫様やベスパは気にしなくても」

「ふふっ、ヨコシマの前では見栄張りたかったけど、ばれてちゃしようがないわね」

『ぽん』という音がしてルシオラが縮む。身長１５ｃｍくらい。
アシュタロス事変の復活直後のベスパよりまだ小さい。

「あーあ。いいかっこも疲れるわ。じゃ続き」

といって今度は横島のほっぺたにかわいらしくキスをする。


令子、シロタマの目が点になっている。
おキヌは「か、かわいい！！ルシオラさん触っていいですか？いいですよね！！」
冥子はしばらくして「あ〜〜〜〜！！ルーちゃんかわいい〜〜〜」

「これがホントの体よ。今までのはまあ幻像みたいなもんね。触れたところは念力てか力で押してごまかしてたのよ。
　だからなるべくみんなに触れないようにしてね。キスなんて複雑な行為はちょとしんどいわ。

　でも体はまだましね。
　なんせ思考はまだほとんどヨコシマの霊基構造借りてるのよ。魔力も見かけだおしね」

「じゃ、事務所で横島クン呑んで、急に魔力が上がったのは・・・」
「一種の幻覚よ。戦闘時に視覚だけごまかしてもしようがないでしょう。霊力そのものを感知できる相手は多いわ」
「事務所でいきなり暗黒になったり、いきなり変なこと言い出したのも」
「そう、正常な判断をしてもらったらばれちゃうからよ」

「しばらく前から意識あったのね。そこまでして何がしたかったわけ！！！」

「ヨコシマに対するみんなの反応かしら。充分堪能したわ美神さん。特にあなた８０００万の仕事ほって飛び出してきたんでしょ」
思わず真っ赤になる令子。

「じゅ、従業員が気になるのは雇用主としてあたりまえでしょ？」

「そういうことにしときますわ。ヨコシマ！雇い主に損害かけれないわ！　この業界信用第一なんでしょ。
　内容は憶えてるから今すぐ片付けるわよ」

ルシオラは振り向いて、
「美神さんも行くんでしょう？」
「もちろんよ！！丁稚と式神にまかしとけるもんですか！！！」
「拙者も」「私も行くわ」
「じゃ、縮めるわ。ベスパ、パピリオ少し分けて！　４人じゃヨコシマの霊力じゃ不足なの。」

横島の口にヤモリの黒焼きを３匹つっこんで、手をかざして縮めて呑み込んでしまう。横島5mm以下。
「むぐっむぐむぐっ・・・おれの了承は無しかいっー！！ああっ小竜姫様の入浴姿もまだ覗いてな「ごくん」」

呑まれてしまったようです。
「さあ、お次は誰？」

「やれやれ、姉さんも久しぶりに再会した妹より、ポチなんだからね」
「まったくでちゅ」
ルシオラに魔力を分けながらぼやくベスパとパピリオ。

「ありがとうベスパ、パピリオ。これなら、マッハで飛べるわね。
　小竜姫様、ワルキューレ殿ありがとうございました。土偶羅様やヒャクメ様にもよろしく」
「気をつけていってきてくださいね」

残り３人のみこむと蛍になって、妙神山を飛び出してゆくルシオラ。


狭くしかも急加速、急減速するルシオラの中で、念願の“美女にもみくちゃ”にされ、
煩悩が限界まであがった横島（＋その式神）により、その日の依頼は一瞬で片づいたことは言うまでもない。




展開について行けずに取り残された冥子。「なにがどーしたの〜」

「ゆっくり休んでから帰ーえろっと」とタマモ。
「じゃ、ゲームでもやるでちゅ！サルとばっかりじゃあきてきたんでちゅ」
「ここって油揚げある？」

静かに妙神山の夜はふけてゆく。





「ここで一番偉いのにせりふ無しか？30KB以上あるのに」
仮想空間のゲーム機の前で「の」の字を書く猿が一匹いいたそうな。
「老師、私も１行未満です」と竜殺しの英雄が慰めていたとかなんとか。



to be continued