椎名作品二次創作小説投稿広場


復活

ダイエット大作戦


投稿者名:ETG
投稿日時:05/ 3/12

「お願い!私につくらせて!!ねっ」
「拙者、居候だから3食くらい作るでござる!おキヌどのは高校と仕事で忙しいでござる」
「そうじゃなくって」
「不満があればどんどん指摘して欲しいでござる。味付けも濃くしたし、野菜も増やしたでござる。
 拙者やグータラ狐の分は勘弁して欲しいでござるが」
「料理に不満はないんだけど、ねっ、お願い!!」
「先生も美神殿も喜んで食べてくれているでござる」


ここのところおキヌは事務所はおろか横島のアパートでの料理もしていなかった。
なぜなら、おキヌがやる前にぜーんぶシロがやってしまうからだ。

シロの朝は早くて、おキヌが少々がんばって早起きしても準備が済んでしまっている。
お昼ご飯は一緒に詰めて渡してくれる。もちろんその後、サンポがてらに横島のアパートへ行って渡してくる。
夕方、高校から帰ってきたら、もはや料理の前処理は終わっていて、
横島のアパートで料理している(横島がこない時ね)、という有様なのだ。

はじめは、人間の料理になれず、味付けが無いに等しかったり、肉と野菜のバランスがめちゃくちゃだったり、
猫草が入ってたり、骨付き生肉・生魚が出てきたりした。
しかし、おキヌの指導と横島の人身御供もあって、結構早くまともなものが作れるようになった。

毎日弁当と朝ご飯(事務所のと同じ)がもらえる横島は大喜び。
さすがのおキヌちゃんでも横島の朝ご飯や昼の弁当を毎日作るのは不可能だった。

令子も『これはいい拾いもんだわ、おキヌちゃんも楽になったわね』
とばかりに手放しで喜んでいる。すっかり3食事務所で食べるようになってしまった。
タマモも自分がしなくてもいいなら不満はないようだ。



では、なぜおキヌちゃんが自分に作らせてくれと懇願してるかというと

“うえすとがここ3か月で2cmも増えてしまった。ばすとは育たず”

という絶対に秘密にしなければならない事項のためだった。

しかも、いろいろ探りを入れた結果、
“自分しか増量してない!!”という衝撃の事実だった。


これは当たり前で、3食まともに作るのは結構重労働なのだ。買い物いって、足りないモノがあればまた買いにいって等々。
しかも、おキヌのこと、“レトルトで手抜き”等ということは、全くしていない。
それどころかちょっとでも鮮度を保つために魚なんかのウロコも自分で取り、ミンチも自分で作るというようなやり方をしていたのだ。
毎日毎日。

その労働が一気になくなり、“座ったらご飯が出てくる状態”になれば結果は・・・・

しかも、骨の髄まで日本人なおキヌは“出されたモノは全部食べる”という習慣が染みついている。

さらに、おキヌは除霊では普通後衛。前に出撃する他のメンバーのラストリゾートということで
笛やヒーリング、さらには心眼での偵察などで霊力は消費は多いものの、体の動きは最も少ない。


その上、一食のカロリーが“シロの食欲が標準”になってしまったのだ。では他のメンツはなぜ少しは変化しないか?

横島は簡単。シロのサンポというとてつもなくカロリーを消費する訓練メニューに新たに付き合わされている。
タマモもぐーたらなようで、夜中に結構そこらをうろうろしているし、基本的には育ち盛りなのだ。

では令子は?これも簡単。主力戦車なみのパワーと攻撃力を誇り、
金のためなら山の中、ジャングルもものともせず駆けめぐって戦闘する彼女はめちゃくちゃ基礎代謝が高いのだ。
つまり、寝ててもカロリー消費が高いのだ。
“正月に餅食って炬燵でごろごろしててもプロポーションがくずれない”という世の女性(男も)が理想とするよーな体質。

つまり、晩酌とおつまみの量が減っただけで、意識せずとも(健康的に)帳尻が合ってしまったのだ。
彼女の晩酌は足らないカロリーを補充するという意味合いもあったようだ。
確かに妙齢の女性が食いまくるというのは美意識に反するだろう。


よーするに4人の人外の食欲に付き合わされた常識人なおキヌちゃんだけ肥えちゃった♪

ていう状態なのだ。それで労働量だけでも元に戻し、あわよくば自分の分のカロリーを減らそうと先ほどの懇願になるのだ。

しかぁし、ホントの理由を口外できない以上、おキヌちゃん敗北決定♪
しかも、おキヌには珍しく“孤立無援”。他のメンバーに応援も頼めない。

「おキヌちゃん、料理くらい換わってもらっても罰あたらないわよ。不満があったらシロに言えばいいんだし」
「そうだよ。おキヌちゃんの料理がおいしいんで今まで甘えてたから。俺は料理なんてできないし」
「先生ー、拙者の料理はまずいでござるか?」「そ、そんなことは言ってないぞ」
「わたしはおキヌちゃんの方がおいしいと思うけど。別にシロでもいいわ」
「たまにはグータラ狐も作るでござる!!」

(シロちゃんに言って私の分だけ減らしてもらおうかしら?)
(でも、シロちゃんなんかに漏らしたら即刻、横島さんにつつぬけですよね)



かくして、おキヌちゃんの“ダイエット大作戦!!”が始まったのだ。

ダイエット関連の本を数冊かかえ、壁から顔だけ出してキョロキョロ辺りをうかがう目つきの悪いおキヌ。
こんな格好を“おキヌちゃんフリーク”が見れば血の涙を流すだろう。

心眼発動。周りに誰の霊波もない、確認。

今は事務所に誰もいないはず。令子は他のメンバーを連れて除霊に行った。
人工幽霊一号すらコブラにひっついていった。
雑魚無しのガチンコバトルになりそうだったのでおキヌはメンバーからはずれていた。


無事、誰にも見つからずにダイエット関連の本を自分の部屋に持ち込むことに成功。
「ええっと、だいえっとの基本は食べるかろりーよりも消費するかろりーをふやすこと、か」

この場合、食べる量は減らせない。なんとか消費カロリー量を増やさねば。

「前、グラビトンの時にやったメニューをやれば減るはずですよね」
あのときは令子の体重は増え続けたが、おキヌの体重は確実に減った。

思い出してみる。「却下」横島さんに確実にばれる。
あれだけのことをこっそりやるなんて。

「とりあえず、今日は念入りにお掃除しましょう。ちょっとでも体が動くわよね」

掃除しながら、本に書いてあったことも含めいろいろ考えてみる。
しかし、一緒に住んでる人間に隠れてやるダイエット方法などあるわけない。

おなかの周りにゲル塗ったり、泥塗ったり、もんだりしてもそこだけ痩せるはずがない。

心眼で本に込められた“想い”がそこはかとなくわかるので、
売らんがタメの嘘ないしは効果の低いダイエット法はすぐわかる。

通販の項目などむだに高い機械やら薬を買ってくれー、という念が丸見えだ。


「うう、都合のいい方法はないんですね〜。学校でみんな苦労してるのがわかるわ〜」

「次は神通棍の素振りしてみようかしら。これならみんなの前でやっても不思議じゃないわよね。えいっ、えぃっ、えいっ」

     《10分ほど経過》
「神通棍って軽くて、霊力消費が激しい〜。体は疲れないけど霊力が持たない。だいえっとにはおもっきり不向きだわ」
当たり前です。そういう道具です。


「腹筋と腕立て伏せはどうかしら。これなら室内でこっそり出来るわね」

      《3分ほど経過》
「体は疲れるけど長く運動はできないわね。でも、とりあえずこれ毎日やってみましょう」
王道の一つですな。

あといろいろためしてます。おキヌちゃんファイト!


「あ、もうすぐみんな帰ってくるわ。ばれないうちにだいえっとの本隠さなきゃ。
 横島さんがえっちな本を隠すときってこんな心境かしら」ごそごそごそ・・・・・


「ご飯も作らなきゃ。久しぶりにみんなのご飯作れるわ!!」

トントントン、シャカシャカシャカ、グツグツグツ、ゴーリゴーリゴーリゴーリ、ジャーッ・・・・・

できてきたようです。



「氷室様ただいま帰りました。皆様ももうすぐ着かれます」

「お帰りなさい、人工幽霊一号。じゃ最終調理を開始しようっと」

「「「「ただいま、おキヌちゃん」」」」
「オー、いい匂いがする」
「おなかぺこぺこよねー」
「おなかがすいていると、油揚げの匂いも一段とそそるわ」
「おキヌ殿、今日はすまないでござる」
「それにしても今日の除霊は結構きつかったわね」
「タフでござったからなー。霊波刀で叩いても叩いても弱らなかったでござる」
「今日の大殊勲は俺ッすね」
「アンタというよりルシオラがね。さっすがて感じね。アンタ自身は文珠一発投げただけじゃない」
「一応今はルシオラは俺の式神なんスけど」
「でも、全然使いこなせてないわね。もっと修行しないと彼女に申し訳ないわよ」
「先生はすごいでござる。霊波刀だけでも拙者敵わないのに、文珠に式神でござるからな」
「確かにあの蛍はすごいわ。狐火で焼いてもうわっかわ一枚しかダメージ受けないのに、
 体当たり一発でひっくり返すんだもんね」
「あんな真っ正面からぶち当ててどーすんのよ。
 ルシオラのダメージ直接自分自身にもらって、その後、戦闘不能じゃ冥子並みじゃない。暴走なんてしないでよ」
「まだ、他の能力使えないんスよ。その後、美神さんが止めさして終わったからいいじゃないすか」
「私は使いこなせてないっていってんの!能力もそうだけど真っ正面からじゃなくて、目をねらうとか、
 アキレス腱狙うとかいろいろあるでしょう!」

「あ、おキヌちゃんごめんね。せっかくの料理が冷めちゃうわね。みんな、ご飯にしましょう」

(ついてった方がだいえっとになったかも・・でも私じゃ殴り合いはできないわよね)


「「「「「いただきまーす」」」」」

ぱくぱく、ごっくん、もぐもぐ、ずずずー、ぱりぱり、・・・・・・

みなさんものも言わずに食べています。シロやタマモなどは魚やスペアリブは骨ごとかじってるようです。
今日はみんな走り回っておなかが減っているのです。
運動しすぎると腹も減らないというような軟弱者には美神除霊事務所は勤まりません。


「あー、おいしかった。ごちそうさま。今日のご飯は一段とおいしかった」
「久々のおキヌちゃんのご飯はやっぱりおいしーわね」
「拙者ももっと修行しなくてはいけないでござるな」
「同じお稲荷さんでもこんなに違うものなのね」


というわけで、食事作成権は基本的におキヌちゃん。
朝ご飯(+お弁当)とおキヌちゃんが居ないときはシロ、ということに決まったそうな。

明日から、みんなの分は増やして、自分の分はわからないよーに減らそう。
部屋の中で腹筋したり、腕立て伏せしたり、縄跳びもするけど、それもヒ・ミ・ツ。

その結果、誰にもばれずに無事“うえすと”も前より−1cmになったそうな。

めでたし、めでたし。


to be continued


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