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GS美神 アルカナ大作戦!! 〜Endless Expiation〜

Chapter2.HIGHPRIESTESS 『親友>>旧交』


投稿者名:詠夢
投稿日時:05/ 2/22



「…いや〜、参った。今回ばかりは死ぬかと思った。」


とか言いつつ、美神の予想より早く、二分で復活してきた横島。

さすが、ピートも舌を巻く回復力の持ち主である。

テーブルに座る横島の隣に、気遣わしげな表情をした一人の少女がいた。


「横島…ホンマに大丈夫なん?」

「ん、ああ。これくらい、いつものことだから心配すんな、夏子。」


小川夏子。

横島と銀一の小学校時代の遊び仲間で、珍しく女子の中で仲の良かった少女だった。

「平気、平気!」とおどけて見せる横島に、ようやく安心したように笑う。


「せやけど、お前も東京に来とったんやなぁ。しかも、モデルやってるんやて?」

「うん。連絡…したかったんやけどな。うちも忙しかったし…驚いた?」

「ああ。そらもう、驚いたわ。」


頷く横島に、照れたように小さくはにかむ夏子。

若干、頬を赤らめてるところが可愛らしい。


「まさか、あの撥ねっかえりがモデルやっとるなんてな〜。時代の流れを感じるわ。」

「って、ちょう待ちぃ! どーゆー意味やの!?」


しみじみ語る横島に、すかさず的確な突っ込みが入る。


「そこは『綺麗になって驚いた』とか言うところやろ!?」

「アホか。そんなん素面で言える奴おったら、メッチャ恥ずかしいやんけ。」

「へっ?」


横島の言葉に、思わず間抜けな声を漏らしたのは、銀一だった。

慌てて『しまった』という顔で口を押さえるが、もう遅い。


「あれ? ちょっと、銀ちゃん。『へっ?』て何やのん? あれ? ひょっとして…?」

「え、ええやないか、別に!! 社交辞令やろ、社交辞令!!」

「えーッ! 今更、何言うてんの! からかってる違うかて思うくらい、言うとったくせにぃ!」

「そんなん、知らんわ!!」


やいやいと騒がしく、それでも楽しそうに話す三人。

それは、子供の頃に戻った錯覚を、彼らにもたらしていた。

懐かしい感触はとても居心地がよく─。




─ふと。

背中に冷たい空気を感じて、横島は硬直する。

訝しがる二人をよそに、ぎりぎりとぎこちなく振り返れば。


「…楽しそうね。」


半目で一言。

美神のこの一言がどれほどキッツイか。

横島の顔に、ぶわっと冷や汗が浮く。

もっとも美神だけでなく、おキヌやシロも似たような表情で睨んでいるわけで。


「あ、え〜と! 銀ちゃん…は知ってるから、こいつは小川夏子って言って、俺の友達ッス!」


やばい兆候と見た横島は、とってつけたように紹介を始めた。

折角回復したのに、また怪我をするわけにはいかない。


「夏子。こっちが…。」

「どうも。美神令子よ。」


にっこりと笑っているが、その声は刺々しい。

横島が思わず反射で、ビクゥッと頭を抱えたほどだ。


「え、えっと、それでこっちが…。」

「はじめまして。横島さんの同僚の、氷室キヌです。」

「お、おキヌちゃん…?」


健気にも紹介を続けようとする横島を遮って、おキヌが挨拶をする。

これも笑っているが、何だろう。何か凄く怖い笑顔だ。


「あ〜…でぇ、こっちがぁ…。」

「拙者、横島先生の弟子のシロと申します。」


こちらも笑顔で対応。

だが、先の二人と違い、こめかみの血管をひとつ隠しきれていなかったりする。


「って、シロ! 不機嫌そうにするな!!」

「ああっ! 何で拙者だけ!?」


答え。未熟者だから。

その後はタマモ、鈴女、ノースと滞りなく進み…。


「あと一人…あれ? アイツは?」

「お茶淹れてくるって。」


タマモの答えに「そっか。」と横島は頷く。

とりあえず、これで少しは雰囲気も和らぐかなと思ったのだが。

すっと、夏子が居ずまいを正して、美神らを見据える。


「どうも、初めまして。横島の『幼馴染』の小川夏子です。」


びきっと。

どこかで亀裂が走る音を、横島は確かに聞いた。

ゆらりと、美神らの視線がこちらを向く。


「…おさななじみぃ?」

「いやッ、幼馴染つっても小学生の時、たまたま家が近所だったからで…!!」

「そうや。せやから、帰りはよく一緒やったし、お泊りとかもしたもんな♪」


ガタガタッと、美神らが席を立つ。

すでに笑顔の仮面は、ない。


「お・と・ま・りぃ〜っ?」

「だッ、小学校低学年の話ですって!! 銀ちゃんだって一緒だったんスから!!」


横島の必死の視線を受け、こくこくと何度も頷く銀一。

折角の休日を、友人の通夜にされてはたまらない。

とりあえず、美神たちが席に着くのを見て、ほっと安堵する横島。


「そ〜、それで銀ちゃん! 遊びに行くんやったな?」

「あ、あ〜うん! そうや! そういうわけで、美神さん! 横っち、借りてってええ…です、か…?」


銀一の言葉は、最後の方は消え入るように小さかった。

横島の貼り付けたような笑顔も、見る間に引きつって歪んでいく。

美神がジト目で睨んだ。

横島は怯えた。

銀一はフリーズした。


「仕事、終わったけど…ダメッスか…?」


おそるおそる、横島は再度尋ねる。

美神の視線が一瞬、ちらりと夏子を見る。

気まずい沈黙が続き…。


「ふぅ…いいわよ、別に。楽しんでらっしゃい。」

「え? い、いいんですか?」


心底、意外そうな表情をする横島を、美神は軽く睨みつける。


「なかなか会えない友達なんでしょ? それを邪魔するほど、私も野暮じゃないわよ!」


そう言って「フン!」とそっぽを向いてしまう。

何となく、構って欲しいくせに意地を張る子供を思い浮かべてしまう横島。

おキヌたちもそう思ったか、苦笑を浮かべている。


「それじゃ、今日はこれでお先に失礼します。」

「あれ? もう出るのか?」


横島らが席を立とうとしたとき、刻真がトレイにカップを人数分用意して戻ってきた。


「ああ、悪いな。折角、用意してくれたのに。」

「いいさ。ところで、今日は夕飯どうする? 用意しておく?」

「外で食ってくるからいいよ。ほい、鍵。」


そう言って、刻真に部屋の鍵を投げ渡す横島。

軽く頷き返して、刻真もそれを受け取る。


「さて、それじゃ行こうぜ、二人とも─…って、夏子。どうした?」


気付けば、夏子がそんな横島と刻真のやりとりをじっと睨んでいる。

銀一も、目を丸くして驚いているようだった。


「横島…この女、なに?」


ぐさり、と。

夏子が呟いた一言は、そんな擬音が聞こえてきそうなほど、刻真の胸に刺さった。

思わず、カップを並べる手が震え、がちゃんと嫌な音がする。


「横っち…同棲とはやるなぁ〜。やっぱ、あのおじさんの子だけあるわ。」


ぐさぐさっ、と。

銀一の言葉に、さらに追い討ちをかけられる刻真。

完全に打ちのめされ、床に倒れふす。

そんな刻真の様子を見て、不思議そうにする夏子と銀一。


「ど、どないしたん?」

「いや、まあ…なんというか…。」


哀れを止める刻真の姿を気の毒そうに見やりながら、横島は困ったように頬をかいた。


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