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願い

記憶の喪失   (1)


投稿者名:シャント
投稿日時:05/ 2/21

 <<<記憶の喪失  (1)>>>


ここは、ゴースト・スイーパー 美神令子の除霊事務所。

美神令子 GSの世界で現在トップに君臨している。

「人工幽霊壱号、もっと冷房効かして!!」

『分かりました。』

そう言って、人工幽霊壱号は、冷房をいれた。

人工幽霊壱号 AIで事務所自体の建物である。

今日は仕事の依頼は入っていなかったが、夕飯目当てで、助手の横島忠夫は今日も来ていた。

横島忠夫 現在唯一の文殊使いであるが、普段はただの変態にしか見えない。

「サンポッ、サンポッ、サンポッ、サンポでござる〜。」

「アシタ、アシタ、アシタ、サンポはアッシタ〜。」

ソファに寝そべりながら、横島は、冷たく言い放った。

「横島さん、シロちゃんが可哀想ですよ。」

おキヌが、横島のためのコーヒーを入れながら言った。

氷川キヌ 幽霊だったが美神たちに助けられ、再びこの事務所で働くようになった。

「酷いでござる〜。昨日も、一昨日も、その前もそう言っていたでござるよ〜。」

犬塚シロ 犬塚ポチとの戦いで共に戦い、いま事務所に居候している人狼の女の子だ。

「そうよ、さっさと連れて行ってよ。こいつ夜もワンワン五月蠅いんだから。」

タマモ 九尾の狐で美神に殺されそうになった所を横島とキヌに助けられた。

「むっ、拙者は狼でござる。グータラ狐に言われたくないでござるよ。」

「私だって、力任せの馬鹿に、言われたくないわよ。」

両者が戦闘態勢に入ろうとする。

「ま〜ま〜2人とも。」

おキヌが、仲裁に入る。

「あ〜、五月蠅い!!
横島クン、さっさと連れて行きなさい!!」

書類が山積みに、なっている机から、叫びを上げた。

この頃、仕事がはいらないため苛々している様だ。

「だって美神さん。こいつのサンポっぷりっつったら…………う!!」

横島が振り向くと無言で睨み付ける美神の姿があった。

この状態で、この美神に逆らえる者など地球上、いやこの宇宙にいなかった。

(やばい。これは、無言の威嚇攻撃!?逆らったら……。)

そう瞬時に判断した横島は、しぶしぶシロのサンポの準備をし始めた。

そうというのも、シロのサンポのスピードは半端ではなかった。

女の子と言えども人狼、しかも武士の子だと言うことが自慢で脚力が強い。

人間離れした横島の回復力でさえも、危ういくらいの事故は星の数である。

「あっ、横島さん。晩御飯作りますので、帰りにジャガイモと人参買ってきてください。」

「あい、ジャガイモと人参ね、ほれ行くぞ、シロ。」

そういって横島とシロは散歩に出かけた。

「あっ、コーヒー……。」

すでに、一人と一匹の姿は無かった。

3分後、もの凄いスピードで走り去る何かから絶叫が聞こえたと言う。





「……シロ。」

「何でござるか?せんせい。」

シロは、横島とサンポが出来たことが嬉しいらしく、上機嫌だった。

がつんっ

「てめぇ、どこまで走ればきが済むんじゃー。さっさと事務所に戻らんかー。」

「痛いでござるよ〜。何もぶたなくても……。」

丸くうずくまって、泣きべそをかきそうになるシロ。

(ちょっと、言い過ぎたかな。体は大きくてもまだ子供だからな。)

「シロ、そこの自動販売機で缶ジュース飲ませてやるから、な。」

「拙者、○ァンタがいいでござる!!」

大声を出し、尻尾を大きく振るシロ。

「お前、泣いたフリしてただろう……。俺は今、金欠病なのに〜!!」

「せんせい、お金が足りていた時はあるのでござるか?」

シロが不思議そうに聞く。

「ないな、一度も。」

美神は、はっきり言ってお金にかなりの執着心を持っている。

長年、その助手を務めている横島の給料は、ずっと自給250円である。

それより、下がる事はあっても、上がる事はないのである。

ちなみに、おキヌは、普通にもらっている。

シロと横島は、事務所から少なくとも40kmはあるという公園にいた。

ベンチに座り、残り少ない横島の財産で買ったジュースを飲む。

日は、西の空に傾いている。

そろそろ帰らねば、飯抜きという事態も起こりかねない。

「(はぁ、)シロ、帰るぞ。ゆっくりな。」

「さっきも、ずいぶんゆっくり来たでござるよ?」

「ほう、お前そんなにサンポしたくないのか。」

横島は、この前サンポした時に、危うくトラックに轢かれそうになり、その時シロは3週間サンポには連れて行ってもらえなかったのだった。

「うぅ、分かったでござる……。ゆっくりでござるな。」

そう言って走り出すシロだが、まだ明らかに速い。

しかも、進むにつれだんだんとスピードが速くなるのである。

「シロ待て、速い、速いぞ!」

しかし、シロには聞き取れない。それどころか、喜びの声に聞こえたらしい。

(せんせいが喜んでいるでござる。よ〜し。)

シロは、さらにスピードを上げた。

「こら〜、とまらんか〜。」

「分かったでござるよ。」

横島の叫びを聞きとったシロは、急ブレーキをかけた。

キッキーーー

「だ〜!!急に止ま、ブッッ。」

横島は、シロの急ブレーキによって電柱と正面衝突していた。






一方、事務所では……

「ん〜、どうしたの、おキヌちゃん。」

さっきから、窓の外ばかり気にして仕事になっていないおキヌに声を掛けた。

「いえ、美神さん。なんでもないです。」

あっそうと言う風に、デスクワークに戻る美神。

その時おキヌは、胸騒ぎのようなものを感じていた。

(なんでだろう?まさか横島さんに何かあったんじゃ……。
 そんなはずないわよね、大丈夫、大丈夫。)

自分を落ち着かせるようにして、窓から離れる。






「せんせい?大丈夫でござるか?」

「せんせい?」

「せんせ〜?」

「せんせ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

シロは、さっきから気を失っている横島に呼びかけていた。

必死になめて、ヒーリングするが起きる気配は無い。

(これは、事務所に戻ったほうが良いかも……。)

シロは、背中に横島を背負って走り出した。猛スピードで…






「横島さんとシロちゃん、おそいですね。」

「ど〜せ、遠くのほうまで行って戻れなくなってんじゃない。」

美神とタマモは、いつものことだと、まるで気にしていない。

そこに、

「たいへんでござる〜。」

シロが、部屋にとびこんできた。

「遅い!いつまで待たせるの?買うものは買ってきたの?!」

美神は帰ってくるシロを叱り始めた。

「それどころでは、無いでござる。せんせいが、せんせいが〜。」

「横島さんが、どうかしたの!」

「実は………。」

横島をベッドに寝かせると、さっきあった事を美神たちに話し始めた。






「で、起きないのね。」

美神が確認するようにいった。

「そうでござる。」

「大丈夫なんでしょうか。」

おキヌは心配そうに、意識の無い横島を看病している。

「大丈夫なんじゃない?殺そうとしても死なないんだから。」

そうは言いながらも、横島のことを気にしているのか遠目でみている。

「そんな風に言うことないでござろう。」

シロが突っかかる。

「こうなったおおもとは、あんたでしょうが!!
 でも、怪我はないし、ホントにただ気を失っているだけだと思うから
 タマモの言うように死ぬことはないでしょうね。
 おキヌちゃんも休んでいて、いいわよ。」

「いえ、大丈夫です。」

窓の外は、すっかり暗くなっていた。

横島はまだ、起きる様子は無い。

「ちょっと休憩しましょう。おキヌちゃんお茶いれてくれる?」

「分かりました。」

おキヌが台所に向かうと、入れ替わりにタマモが入ってきた。

「タマモ、シロの様子はどう?」

「ん〜、相当おちこんでいるみたい。さっきから布団かぶってぶつぶつ言ってるの。」

「シロちゃん、きっと責任感じているんですよ。」

おキヌは、三人分のお茶を入れてきた。

「まったく、これで横島クンが起きなかったらどうするのよ。
 仕事にならないじゃない。」

「「こっ、ここまできて、仕事の心配してる。」」

2人は呆れ顔で、美神をみているが、当の本人は全く気付いていない。

「あっ、横島さんが!」

おキヌが声を上げると、横島がうなされている。

意識が戻った?!

すかさず美神がタマモに言った。

「はやく、シロをよんできて。」

「は〜い。」

しかし、ここでもタマモは、マイペースだった。

心なしか急ぎたいのを無理しているようにもみえる。

屋根裏部屋からシロが、稲妻のようにおりてくる。続いてタマモも。

「せんせいが、起きたのでござるか?!」

「まだ分からないわ。でも、意識が戻りかけているのは、確かね。」

「横島さん!!」

おキヌが呼びかける。

すると、横島がベッドから起き上がった。

「横島さん!!」
「せんせ〜〜〜。」
「まったく、やっと起きたか。」
「電柱と、ぶつかったなんて、ダサい。」

感激なのか罵りなのか、とにかくみなホッとしているようだった。

「ふ〜、あしたは、仕事が入ってるから、今日は、速く寝なさいよ。」

「横島さん、大丈夫でしたか?」

目覚めた横島であったが、何か様子がおかしい。

しきりに辺りをきにしている。

「どうしたんですか、キョロキョロして?」

横島は、呆然としていた。

そして言った。

「あなた達は、誰ですか?」


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