椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

謎多き秋


投稿者名:核砂糖
投稿日時:05/ 2/18



ICPO,オカルトGメンにて・・・


そこは、なにやらオカルト界に歴史的な進展があったとかで、やけに忙しくなっていた。

しかしここに就職した以上、多少人使いが荒くとも文句がいえるわけでもなく、
今日も彼女はただ黙々と与えられた仕事をこなすのであった。






タカカカカカカカ・・・・。

はじめの頃は全く訳が解らなかったタイピング。
今は仕事仲間の中でも一位二位を争う技術まで登りつめた。

まぁあたりまえだろう。私に出来ない事などあるはずがない。


「○月○日の○×□の件の書類、出来ました」
「うむ・・・ご苦労」
私は通常の人間なら丸三日間は掛かろうかと言う仕事をたった一日でこなし、ハゲオヤヂ(私の上司だ。皆に影ではこう呼ばれている)にひょいと無造作に手渡した。

「相変らず速いな・・・。しかも内容も充実。実に素晴らしい」
「ありがとうございます」
ハゲオヤヂは肥え太った首周りをしきりにハンカチでぬぐいながらそんな事を言ったので、私は律儀にマニュアルどおりの返答を返す。
しかし次に続くであろう言葉がいやおうなしに想像できてきたので内心げんなりとしてきた。
「ところで・・・・」
そら来た。
「今晩暇かね?良ければ食事でも「けっこうです」そ、そう」

私は彼の誘いを一蹴すると、下心が漏れまくりのハゲオヤヂの目線から逃げるように踵を返した。


――――ねぇねぇ、最近の彼女。さらにきつくなった感じするわよね。

――――あんなに美人なのになぁ・・・。勿体無いよ。でもそれも魅力か。

――――あの女はやめておけよ、おまえにゃ釣り合わん。

・・・きびきびと威厳的な歩調で自分のデスクにつくと、いやでもそんな会話が耳に入ってきた。
奴らには配慮と言う概念がないのだろうか?
まぁ私とて人に好かれるような態度は取っているとは思っていないので、陰口を叩くなとは言わない。
だからと言ってその対象が目の前に居るその状況でこそこそ陰口を叩くのは聞き捨てならない。

人の悪口を言いたければ面と向かって叩き付けるか、本人のいないところでこそこそ言うべきだ。


「・・・・先ほどから何やらぶつぶつと言っていらっしゃいますが、何か私に御用ですか?」
いつもなら別にそこまではしなかったのだが、今日は虫の居所が悪かったので冷たい目線を送ってやった。

とたんにさっきまで陰口を叩いていた奴らは慌てて自分のデスクに向かい、各々の仕事を再開した。

「・・・・・」
・・・・呆れた。

私は小さく息をつき、自分の机に向き直ると、他の仕事に取り掛かる。


――――こわーい。やっぱりアレが原因よね。

――――そうだろうな。アレ以来ほんと機嫌悪いよなー。

――――うん。やっぱりシロさんがいてこそのタマモさんだよね。


「・・・・」
・・・・ウザ。

またもや懲りずにボソボソやり始めた奴らを睨み付けようとして・・・やっぱりやめた。






私の隣にあったはずの席無くなってもう随分たつ。

私が周りと対立するたんびに馬鹿のように笑いながら仲介していたシロは、
私が何度教えてもキーボードのブラインドタッチ出来なくて、しかも人差し指を使ってぎこちなくタイピングをしていたシロは、
時折思いつめたような顔をして、狂ったように修行を続けていたシロは、


半年ほど前に忽然と姿を消した。



皆は・・・シロは魔神に敗れそして死んだんだと言う。







キィ・・・カチャン。

「ただいま・・・・って・・・」そうだ、オキヌは居ないんだっけ?

その日の夜遅く、職場のバカな男どもの誘いを片っ端から断ってタマモは家へと帰ってきた。そしてただいまの挨拶を言うが、今日はお帰りを言う相手がいないことを思い出す。
おキヌも、オカGに就職しているのだ。ネクロマンサーと言う希少な能力を持つおキヌは、こうしてたびたび世界中を駆け回っている。

何だかんだ言っても、世界中捜しても数少ない心を許せる相手がいないと・・・やはり、いくらタマモでも少しばかり寂しかった。

今の彼女らはオカGの寮暮らしである。
美神除霊事務所がオーナー死亡により潰れてから、あの屋敷は人工幽霊ごと唐巣神父に譲ってしまっていた。(おかげで人工幽霊一号は芯からのキリシタンと化した)

おキヌからでは人工幽霊一号が生きるのに十分な霊力を浴びられないから、とか、妖怪の霊波でなくて人間の霊波を浴びないといけないから、などの明け渡しの理由があるが、実の所、居なくなった美神のことを連想するのを避けるためでもあった。

「何か、つまらないわね・・・」

タマモはそう呟き、その日はシャワーを浴びて酒(一本ン十万のスゲー高いヤツ)を飲み、そのまま、寝た。





ピピピピピピ・・・・・・ちん!(スヌーズ機能起動)

ピピピピピピ・・・・・・ちん!(スヌーズ機能起動)


(以下30回ほど繰り返し)


・・・・・・がばぁっ!!(飛び起きた音)


「寝過ごしたわ」
タマモはボサボサの頭でそう呟いた。
時間はもうすでに10時半を回っていた・・・。
おキヌはまだ帰ってきていない・・・。






「・・・・くそっ。せっかく急いだのに」
十分後、彼女はぶりぶり怒りながら、先ほど大急ぎで着た制服を脱ぎだしていた。
起床後大慌てで仕事に行く準備をし、そしていざ出勤しようとしたその時、とある事を思い出したのだ。
「そういえば今日は久々のオフの日だったのね・・・」


――――やっぱり自分の予定を完全に人任せにするのはいけないわね。
その後早速始めた二度寝から覚めた彼女はボォッとした頭で、自分がいかにおキヌ任せで生きているかを再確認していた。
しかし、確認するだけで別段改善する気は起きない。大きくのびをすると、ぺたぺたと裸足で冷蔵庫へ向かい『タマモちゃんへ。ごめんね、帰れないみたい。その間はこれを食べてね』と書いてあるメモがついたものを物色し始めた。
「流石オキヌ。準備がいいわね」
むしゃむしゃむしゃむしゃ・・・・



・・・・それで良いのか伝説の大妖。



朝食(もちろんいなり寿司)を食べ終え、しかしかといってやることもないだらしなくソファーに寝転び、彼女はぼーっとテレビを眺めていた。
・・・これであのプロポーションを維持できるというのだから世の中は不公平だ。
いや、ぶりぶり太った彼女など想像したくないところではあるが・・・。

テレビではよくある飲食店紹介の番組がだらだらと続いていた。
『さーて、続いてのお店はこちら!』
仕事上、別に食べたくもない飯をうまそうに食わねばならない宿命を背負ったタレントが、元気な声を張り上げている。

――――あんたも大変ね。そんなにがんばったところで、その店に行く奴なんてたかが知れてるのに。
タマモはタレントに冷静なエールを送った・・・。

『所でここのお勧めは何ですか?へぇ、狐うどん。それは楽しみですね〜』
タレントのわざとらしい一人演技の後、その店のお勧めメニュー狐うどんについて細かな説明が行われた。タマモの目つきが変わった。
『それを生産するのはもはや不可能とも言われた古(いにしえ)の小麦使用した幻の麺・・・。伝説の最高級大豆を惜しげもなく使い、持ち去る者に不幸が訪れるという悪魔の油で揚げた神秘のオアゲ・・・。これらを使った究極の狐うどん。それがこの狐うどんなのです』
シーンは変わり、解説役の科学者風の扮装をした、町で見かけたら真っ先に通報しちゃいそうな男がゲハゲハ笑いながら美化120%の狐うどんの映像を解説する。

どう考えても嘘っぽい。嘘っぽいが・・・ぼーっとしていたタマモは、やはりその言葉に敏感に反応する。
「・・・・たまには、こういう番組にだまされてみるのもいいかも」

彼女は細かいことは気にしない・・・。





例の店にて、タマモは『何故か長蛇の列を組んでいたお客たちが突然うどんではなくラーメンが食べたくなった』ので並びもせずガラガラの店内で目的のものをすすっていた、

「・・・これは、文句無しにおいしい。またこなくちゃね」
そのうどんは、めったに妥協しない彼女でさえ絶賛するものだったが、また来るたびに客を散らされてしまったらこの店は長くないだろう。

勘定を済ませ、満足した顔で店から出る。
すると・・・

「あれは・・・ドクターカオス?」
前方50mほど先に、黒マントの老人がうろついているのを見かけた。
彼はそのままPCパーツのジャンク屋へと入っていった。
「そういえば何ヶ月ぶりに見たのかしら?奇遇なものね・・・」
そして犬神族のサガか、つい反射的に鼻を利かせる。
「うわっ、ナニこのにおい・・・。数種類織り混ぜた『えいとふぉー』?しかもそれだけじゃないわね・・・」
彼女は普段のカオスらしからぬ香りに顔をしかめた。
だがそれだけでたいした興味も示さず、まっすぐに家へ向かおうとしたが、そのプンプン匂う芳香剤の香りにかき消されかかったソレに気づいたとき、その足がぴたりと止まった。

――――待て、このにおいは・・・。

微かな、ほんの僅かな懐かしいにおいを感じ、その筋をたどってゆく。
そのにおいの筋の先は・・・ドクターカオスだった。

――――そういえば、あいつ。消える直前はやたらとドクターカオスと付き合ってたわね・・・。

懐かしいにおい・・・シロのにおいを感じ取ったタマモはすっと目を細め気配を消した。そして頭を『休日だらだらばーじょん』から『仕事バージョン』の思考に切り替える。


「さっきの芳香剤はあいつのにおいを隠すため?
ふん。猪口才な真似してくれるじゃない。この程度で私の鼻はごまかせないわよ」



尾行開始である。




あいつが生きてる。
そう思ったとき、今までの鬱な気分は虚空の彼方まで飛んでいっていた。







一方・・・。


狭い密閉空間の暗闇の中、一人の男が佇み精神を統一し始める。
溢れ出すエネルギーが彼の周囲を渦巻き、短めのぼさぼさ頭がはためいた。しかしその莫大なるエネルギーは一切外には漏れ出していない。
この男は力を放出すると同時に、まったく等しいエネルギーで外から押さえ込んでいるのだ。
反発しあうエネルギーが散し切れなくなり、淡い光が部屋を埋め尽くしたころ。男は力を解き、静かに目を開いた。


――――潮時か。


体中の傷は完治。霊力も100%どころか120%ともいえるほど貯まっている。
もう、これ以上ここにいる理由も無いし、むしろ自分はここにいてはならない。


・・・。


「何を考えている、魔神ヨコシマ。おまえは元々ここにいちゃいけなかったんだ。半年近くもいい思いができただけでも万歳だろう?」
彼は自分に言い聞かせた。









「せんせー。いつまで便所にいるのでござるか〜?」







・・・。



「・・・待ってくれ。今出る」
横島は下ろしたズボンをあげ、水を流し、便所の個室から出てきた。



「手も洗う!」
「あ、ああ」
そしてシロの叱咤を喰らい、備え付けの水道で手を洗いに個室の中に逆戻りした・・・。









世界でもっとも神聖であり、邪悪である、天より高くちより深いと言われる(あくまでウワサ)某所。そこの中心部で一つの机を囲み、三人(人?)の者達が静かに対話をしていた。

「・・・夢にも思いませんでした。まさかこのような事が可能だとは・・・。いや、実際これで少しながらも世界の夢がかなった。素直に喜ぶべき事なのかもしれませんね」
「そやな。でもわいらは昔からこれを目指してきたんや。もっとよろこびーや。けど実際の話、実現したいうても、なんか実感沸かんな〜」
「ええ。夢のような話ですよ。こうして人類、神族、魔族の代表者達が一つの机に座り、話し合いができるなんて」
上からキーやん、サッちゃんそして誰か人類の偉そうな人だ。

「・・・さて、感動に浸るのはこのあたりにしておきましょうか」
「そや。ここまできた長い道のりを取り返すためにもとっとと始めるで」
「では、始めましょう。記念すべき一回目の三界連合会議(仮名)を」


それが開会の合図となり・・・彼ら三人を取り巻く東京ドームほどもある大きさの円形議席に座る人類、神族、魔族達は、いっせいに拍手喝采をした。

ただの拍手であるはずのその音は、途方もない権力を象徴するかのごとくうねるように響き渡り、なかなか止む事はなかった。





会議内容は、『魔人ヨコシマに対する対策』であった。


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