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横島の長い人生

プロローグ 横島の一番長い日・その5


投稿者名:銀
投稿日時:05/ 2/15

外は戦場だった。
式神達が暴れまくり、美神の幻影に攻撃を仕掛けているものたちも多い。
ピートと唐巣が必死に教会を守ろうとしているようだが焼け石に水だ。
「さぁ一気に突っ切るわよ!」
そんな中を一気に駆け抜ける美神。ちなみに横島は引きずられているままである。
その時おそらくは流れ弾であろう、誰かが放った霊波が美神を襲う
「ふ、こんなもの…横島クンシールド!」
「ぐべら!?」
横島クンシールドとは文字通り横島を盾にして身を守る美神の得意技だ。
「亭主を盾にするな〜〜〜!」
「仕方ないでしょ、このウェディングドレス高いんだから!」
「俺はドレス以下か!?」
その後も何発か流れ弾が飛んでくるがその度に
「横島クンシールド!横島クンシールド!横島クンシールドォ!!」
「ぐべら!はべら!ぶべら!」
得意技が炸裂する。おかげで美神は傷一つないが煙幕を抜け、教会の外に出た頃には横島はぐったりとしていた。
「ふう…後は車に乗ってハネムーンに出発するだけね。さ、とっとと出発しましょう」
横島の返事は無い。
「だらしないわね…ま、いいわ。さっさと行きましょ」
人事のように言い、そのまま襟首を掴み引きずりながら車に向かおうとしたその時
「待つでござる!」
と、背後から声がかかる。そこにはシロ、タマモ、エミといった面々がいた。
全身ボロボロではあるが冥子の暴走には耐え抜いたようだ。
「あら?何かようかしら?」
「先生を追いていくでござる!これ以上の暴挙は美神どのとて許さぬ!」
「そうよ!ハネムーンなら一人で行きなさい!」
それはハネムーンではなくただの旅行だ。
「エミ、あんたまで横島クン狙ってたの?」
「違うわよ!こうなったらあんた一人を幸せにするなんて許せないワケ!!徹底的に邪魔してやる!」
「いやねぇ、女の僻みは醜いわよ」
「おたくが幸せそうな顔してるかと思うと、はらわたが煮えくり返るおもいなワケ!!さっさと不幸になりなさい!!」
本当に醜い。
「仕方ないわねぇ…こんな事もあろうかと、ゴーレム!!」
「ガゴォォォォォォン!!!」
その呼び声に反応するかのようにシロ達と美神の間の地面から巨大な人影がいきおよく出てきた。
「こ、これはゴーレム!?」
「そう!以前ある事件(コミックス23巻参照)で敵が使ってたのを後で回収しておいたのよ。中身は例によって人工幽霊1号だから再インプリンティングは無理よ。人工幽霊1号!こいつらを食い止めなさい!」
『了解しましたオーナー』
ジャキンと全身から銃器が出てくる。そして一斉射撃。
「わ〜〜〜」
「きゃ〜〜」
逃げ惑うシロやタマモ。
「ボディも石から鋼鉄に変えてあるからそう簡単には倒せないわよ。ここでゆっくり足止めされてなさい」
その様子を満足げに見ていた美神だったが突如鋭い視線で背後を振り返る。そこにはいつの間にかエミが回りこんでいた。
「おたくの考えることはお見通しなワケ!立ち位置から地面に何か仕込んでるって事はね!!さぁくらえ!霊体撃滅…な!?」
とそこまで来て突然背後から物凄い力ではがいじめにされ、そのまま地面に押さえつけられる。
「く、一体誰が…マリア!?」
はがいじめにしたのはマリア。その後ろにはドクターカオスが控えている。
「カオス、どこ行ってたのよ」
「いや〜すまんすまん、式がぶち壊しになると解ったから今のうちに披露宴用の料理を食いだめしとったのじゃ」
「カオス!?なんでおたくが令子の味方を!?」
「こんな事もあろうかと、既にカオスのおっさんは買収ずみなのよ。家賃三ヶ月分と駅前の立ち食いソバ屋のタダ券でね」
ヨーロッパの魔王も地に落ちたものである。
「く…この、マリア離すワケ!このままじゃ令子に逃げられるわ!」
「ノー、ミス小笠原。マリア離さない」
「奥の手ってのはね、一つだけじゃ駄目なのよ。常に複数は用意しておかないとねぇ…」
くくく、と邪悪そのものの笑みを浮かべる美神。
「じゃ後は頼んだわよマリア、人工幽霊1号。追ってくる奴らは半殺しにね♪」
「イエス、ミス美神」
『了解しましたオーナー』
二つの人工霊魂は忠実に任務を実行する。
「令子〜〜〜〜覚えてなさいよ〜〜〜〜必ず不幸にしてやるワケ〜〜〜〜〜〜〜」
どす黒い炎を背負いながら一流の呪い屋に相応しい台詞を言うエミだった。


そのまま走り目指すゴール地点である美神の愛車のコブラが見えてきた。
横島を助手席に放り込み、いざ出発しようとしたその時
「そこまでです!」
最後の抵抗勢力がやってきたようだ。
「あの冥子のプッツンやゴーレム、マリアを抜けてこられるのはあんた達だけだと思っていたけどね」
小竜姫、ヒャクメ、ワルキューレ、パピリオといった神魔族が美神の前に立ちはだかる。ちなみにジークは後ろのほうでどうしたものかという表情で立っている。
「さあ!横島さんを渡してもらいましょうか!」
小竜姫がチャキと剣を構える。ワルキューレも精霊石銃を美神に向ける。
「結婚式場にまで武器を持ち込むなんて非常識ね、あんた達」
「式場にトラップを仕掛けまくってる奴に言われたくないでちゅ!!さぁはやくヨコシマをわたすでちゅよ!」
「はいはい、いくら私でもあんた達を同時に相手して勝てると思ってないわよ」
素直に降参する美神。激しい抵抗を予想していただけに、そのあまりのあっけなさに一瞬拍子抜ける。
そしてその隙を美神は見逃しはしなかった。隠し持っていたある物を小竜姫達に投げる。
ほいっと軽い感じで放り投げたそれが何かと確認する前にギシリと空間が歪む音がしたかと思うと、凄まじいまでの重圧が襲い掛かる。
地面が半球状にへこみそのまま小竜姫達も押しつぶされる。
「う、動けん!何だこれは!?」
「重いでちゅ〜」
「こ、これは竜神族に伝わる秘術、超重力結界!?何で美神さんが!?」
「天竜童子にデジャブーランド年間フリーパスあげたら、喜んで譲ってくれたわよ」
「殿下め〜〜〜〜〜〜〜〜」
帰ったら折檻だと心に誓う小竜姫だった。
「さすがのあんた達もこの重力では動くこともままならないようねぇ」
オホホホと小竜姫達を見下ろす美神。
「お、おのれ〜〜〜」
不屈の闘志をもってワルキューレが美神に向けて銃を撃つ。が、その弾丸すらも重力によって地面に落ちる。
「無駄なあがきはよすのね。もう勝負は決したのよ」
不敵に笑う美神。
「どうやら思惑通りになったようね…うまくいったわ」
死屍累々が横たわる式場を見渡して、美神は満足そうに呟いた。
「お、思惑?」
「どういうことなのね〜?」
「うん?ああ、気にしなくていいわよ。こっちのことだから」
そう、美神がわざわざ結婚式を行った目的はここにあった。
ただ横島と夫婦になるだけならば皆に気づかれないよう籍を入れるだけでいいし、そのほうがリスクも少ない。これは後の事を見据えてのことであった。
後々横島の浮気相手になりそうな連中を一堂に集め、罠をしかけておき、完膚なきまでに叩きのめす。
横島に手を出したらこうなると皆の心に刻み付けるのが真の目的だった。
「それじゃそろそろハネムーンに出発させてもらうわね。皆の祝福ありがたく頂戴するわ」
そういって車を発進させようとした。しかし…
「そうは…そうはさせません!!!」
気力を振り絞り小竜姫が立ち上がる。ズシン、ズシンと一歩一歩地面にめり込みつつも美神に近づいていく小竜姫
「横島さんは…横島さんは渡しません!!」
それは純粋なる想いの賜物だったのだろう。一途な想いが彼女に恐るべき力を与えていた。
が、目の前の女にはそんなものはまるで通用しなかった。
「凄い根性ね〜感心しちゃうわ。そうだ、ご褒美にこれあげるわね♪」
そう言ってポイと小竜姫の頭上に放り投げたのは…ブーケだった。
「げふぅ!」
本来ならばたいした重さでもないブーケ。だが超重量結界の中、さらには加速も付いていたため簡単に小竜姫を押しつぶす。
「ブーケを受け取った人は次に結婚できるそうよ、よかったわね〜」
それはそれは優しい声と満面の笑みで、最早身動きの取れない小竜姫に話しかける美神。
「それじゃハネムーンに行って来るわ♪お土産期待してていいからね〜〜〜オ〜ホッホホホホホホホホ」
アクセルを踏み込みホイルスピンをさせながら車を発進させる。
「ああ!横島さん!横島さ〜〜〜〜〜〜ん!!」
教会が音を立てて瓦解していくのをバックに、小竜姫の悲痛な叫びと美神の高笑いがいつまでもこだましていた…


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