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横島の長い人生

プロローグ 横島の一番長い日・その3


投稿者名:銀
投稿日時:05/ 2/13

その頃式の出席者達は庭先で思い思いに話しなどをしつつ過ごしていた。
しかし、結婚式というお目出度いイベントにも関わらずその場はドロドロとした雰囲気に包まれていた。


「うう〜〜〜せんせぇ〜〜〜〜、どうして拙者が成長するまで待っていてくれなかったでござるか〜〜〜〜〜〜」
目の幅涙でストレートに感情を表しているのは事務所の居候1号シロである。
「うるさいわねバカ犬、いい加減あきらめなさいよ。結婚知ってからずっと泣き通しなんだから」
うざったそうにシロに言うのは居候2号のタマモだ。
この二人何かとケンカをするが一緒に行動する場合が多い。
「そういうお主も話を聞いてからはずっと不機嫌ではないか」
「ほっといてよ…まったく何で美神なんかと…私のほうがよっぽど…」
後半のつぶやきは無意識だったのだろう。それだけに本音でもあるのだろうが


「はぁ…横島さんと美神さんが結婚かぁ…はぁ」
先ほどから10秒に一回はため息をついているのおキヌだった。
無論大好きな二人だから結婚を素直に祝いたい。
しかしどこかやりきれない気持ちがあるのも事実なのである。
「私って嫌な娘だな…素直に喜べないなんて…はぁ、どうしたらいいんだろう…」
彼女のため息はまだまだ続く。


「横島さん…小鳩は小鳩は泣いたりなんかしません。きっと笑顔でお二人の結婚をお祝いします。だから…だから今だけは…ううう」
「小鳩〜泣くんやない。泣いたらあかんのや。いつか必ず明るい明日がやってくるんや」
夫婦漫才としか思えない会話をしてるのは、横島の隣人の薄幸少女の小鳩と貧乏神の貧である。
「そうよね…笑顔を忘れないって一番星さんと約束したんだもん!」
「小鳩ぉ〜〜〜」
「貧ちゃ〜ん」
この二人は相変わらずだ。


「認めん!!こんな結婚は認めんぞ!!令子ちゃ〜〜〜〜ん!!今からでも遅くはない!考え直すんだ〜〜〜〜!!」
この場で一番是絶叫しているのは言わずと知れた西条だ。
二人の結婚を出張先で聞いたときは何の冗談かと初めから信じもせずにいた。
そのため今日になって半ばパニック状態である。
「こうなれば令子ちゃんの目を覚ますしかない。きっと横島君に催眠術か何かで騙されてるに決まってるんだ…やはり消すしか…」
愛刀ジャスティスの柄に手をかけ段々追い詰められた表情になっていく西条だった。


「青春って何だろう…若さゆえの過ちって何だろう…」
机の上に座りぶつぶつ呟いてるのは愛子だ。そしてその背後では
「横島〜〜〜てめぇ学生結婚とはいい度胸してるじゃねぇか」
「裏切り者〜〜〜〜」
「奴は敵じゃ〜〜〜」
クラスメイトの怨嗟の声が響いている


「ルシオラちゃんを生むのは私のはずだったのに〜」
「横島さんが結婚なんて早すぎるのね〜美神さんてば酷いのね〜」
「ヒャクメ、パピリオ、今日はめでたい席なんですよ。そんなふくれっ面では横島さんや美神さん達に悪いですよ」
妙神山からは小竜姫、ヒャクメ、パピリオが来ている。
「そう言う小竜姫だって横島さんの結婚を聞いてから情緒不安定なのね」
「そうでちゅよ。昨日一睡もしてないの知ってるでちゅ!」
「う…そ、そんな事ありません!昨日はぐっすり寝てました!」
「…昨晩の午前2時28分、寝返りを打ちながら『横島さん…』とつぶやき一粒の涙を流して枕をぬらしていたくせに…」
「な、な、何でそれを!?あ、あなたまた覗き見していたのね!?許せません!人のプライバシーを、神族の一員として恥ずかしくないのですか!お待ちなさい!」
「もっと素直になったほうがいいのね〜」
神様二人の追いかけっこが始まった。


「姉上、何故そんなに機嫌が悪いのです?」
「…どういう意味だジーク?」
魔族からはワルキューレ、ジークの姉弟が出席していた。
そして余計な事を言った弟をギン!といった効果音つきで弟を睨むワルキューレ。
「い、いえ何か横島君の結婚を聞いてから異様に殺気立っているというか、何と言うか…ヒィ!?」
ジークの鼻面に精霊石銃がおしつけられる。
「機嫌が悪くて悪いか?殺気立っていて何か問題あるか?そしてそういった状態の者に不用意に話しかけるリスクを知っているのか貴様は?」
「も、申し訳ありません姉上!」
「…弟でなければ銃殺しているところだぞ」
(弟だろうが何だろうが銃殺はまずいだろう…)
声に出せばそれこそただではすまなそうなことを考えるジーク。
「まったく…何でこんな事になっているのだ」
彼女のイライラはつのるばかりだった。


「しかし横っちがもう結婚とはな〜、しかも相手は美神さんか」
人気アイドル近畿剛一の姿もあった。
彼は純粋に幼馴染の結婚を祝福するために忙しいスケジュールを縫ってきていた。
周りを見渡して、数々の負のオーラを目にして呟く。
「予想通り凄まじい事になっとるな〜。気づいてないのは当人だけというのが傍から見れば笑えるところだが」
これから先横島の身に起こるであろう出来事を想像するとさすがに同情をする。
しかし手助けしてやろうとかはまったく思わず、温かい目で見守ってやろうとしている心優しい幼馴染であった。
「成仏せえよ、横っち…」


「行くぞマリア、今日で最低2週間分の栄養を確保するんじゃ。ぬかるでないぞ」
「イエス、ドクターカオス。タッパの準備もOK」
まったく別の目的で着ている者もいた。


「さぁさぁ新製品の簡易呪術セットあるよ〜。憎い恋敵、又は自分を捨てたろくでなし男に復讐、あいつだけ幸せに成りやがって〜、という感じにピッタリの品あるよ〜」
よりによって結婚式の会場でとんでもないものを売っているのは厄珍だ。
すでにいくつか売れているのがこの式を表してるだろう。


嫉妬と怨念、憤怒と悲しみ、数々の負の感情が蠢いているすさまじい場となっている。
それは最早瘴気といえるほどで、空を飛んでいた鳥が墜落してくるくらいになっている。


そしてそのテンションを維持したままいよいよ式本番が始まろうとしていた…


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