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GS美神 アルカナ大作戦!! 〜Endless Expiation〜

Chapter1.MAGICIAN 『反撃>>叫号』


投稿者名:詠夢
投稿日時:05/ 1/26

横島たちの参戦により、形勢は一気に逆転した。


「ブフーラ!!」


ノースの冷気が、一体のウコバクを氷像と化す。

どうもウコバクは冷気に弱いらしく、ほとんどが一撃で倒されている。

逆にノースは炎に弱いらしいが、今まさにノースめがけて放たれた火炎は、呪符によって散らされる。


「助かったヒホ〜…ありがとうヒホ!!」

「どういたしまして。」


感謝するノースに返礼しながら、美知恵は目の前のウコバクを叩き伏せる。

初対面で見事な連携を成せるのは、やはり美知恵の力量の高さか。

次から次へと沸いてきていたウコバクたちも、残るは三体ほど。

それも、すぐに屠られるだろう。

ウコバクは二人に任せ、美神、西条、横島はエリゴールを追い詰めていた。


「くっ…ハァ、ハァ…ッ!!」

「だいぶ息が上がってきたわね。さっきまでの余裕はどうしたの?」

「もう、勝ち目はないぞ。降伏したまえ。」


馬上で荒い息をしているエリゴールに、西条が呼びかける。


「ぐっ…舐めるな、人間がぁッ!!」


エリゴールは一声叫ぶと、大きく槍を振りかぶる。

だが、出来たのはそこまでだった。

右足が騎馬ごと斬りつけられて、馬が大きく嘶き、その血をしぶかせる。


「ぐおぉッ!?」

「いい加減に観念しやがれ、この野郎!」


背後から斬りつけた横島は、霊波刀の切っ先をエリゴールに突きつける。

もはや勝負は決まった。


「もう一度だけ言おう。降伏したまえ。」


西条がやや語気を強めて言う。

だが、エリゴールの言葉に含まれていたのは、苦い敗北感ではなかった。


「…フッ。あいにく、そういうわけにはいかないので…な!!」

「な…うわッ!?」


エリゴールの眼光が強さを増した瞬間、横島との間に鋭い電撃が奔る。

横島はたまらず弾かれ、その隙にエリゴールが騎馬を駆って逃走に入る。

いや、それは逃走ではない。

少年の方に向かって、一気に跳躍する。


「少年は連れて行く!! 我が主君の命を果たさせてもらうぞ!!」

「しまった…!!」


だが、エリゴールの腕が伸ばされる前に、その前方に人影が飛び出す。


「そうは…いかないのねー!!」


ヒャクメがその手に持った鞄を、ぐるんと遠心力を利用して、騎馬の横っ面に叩き付けた。

騎馬が、たまらず進行方向を変えたため、エリゴールの腕が空を切る。


「ちぃッ…!!」

「もう、役立たずとは呼ばせないのねー!!」

「でかしたッ!!」


「どーだ!」とばかりに、胸を張るヒャクメ。

エリゴールは、そのままベッドを通り過ぎると、その向こうの壁を突き破って外に出た。


「逃がすかッ!!」


だが、その直後。


「キャアアァァァァーッ!!」

「この声は…おキヌちゃん!?」


外から聞こえてきた悲鳴に、美神たちは後を追って飛び出す。

そこには、エリゴールに首を抱え込まれて、苦しそうにもがく見知った少女の姿があった。


「よ…横島…さ…ん…!」

「おキヌちゃん!! テメェ…おキヌちゃんを放せッ!!」


横島が駆け寄ろうとして足を踏み出すと、それを制するようにエリゴールの腕に力がこめられる。

おキヌの口から、苦しげな声が漏れた。


「動くな。この娘を死なせたくはあるまい。」

「う…!」

「……引き換えだ。少年を渡してもらおう。」


横島が足を止めたことに頷きながら、エリゴールが要求を述べる。

その声には、怪我からくる疲労以外のものが滲んでいる。


「…か弱い乙女を盾にするなんて…騎士道精神も堕ちたものね。」

「……私としてもこのような手段は不本意。されど、我が主君のためなら、それも已む無し。」


ぎりっと。

さらに力が込められ、おキヌの表情が苦しげに歪む。


「くぅ…ッ!」

「待って!! …ママ。」


振り返る美神に、美知恵はかすかに顎を引いて首肯する。

それは、要求をのむという意思表示であるとともに、隙を見て反撃するという意味でもあった。

美知恵の目配せを受けて、西条が室内へと戻っていく。


「…わかったわ。彼は渡す。だから、おキヌちゃんを放しなさい。」

「少年が先だ。」


刹那。

エリゴールの両脇にあった鳥居の陰から、二つの影がそれぞれに飛び出した。

一つは銀色の影。もう一つは金色の影。


「おキヌ殿を…放せェーッ!!」


銀の影は大きく跳躍すると、エリゴール目掛けて、その手に輝く霊波刀を振り下ろす。

その速度は常人の比ではなく、剣の軌跡を残像として空間に焼きつける。

あまりの速さに対応できず、肩口を斬りつけられたエリゴールが苦鳴を漏らした。

その手の拘束が緩み、おキヌの体が支えを失くして落下する。


「ぬぅうっ!?」

「タマモ!! 頼むでござるよ!!」

「了解!」


銀の影に応え、金の影は低い姿勢で騎馬の下をすり抜けると、落ちてきたおキヌを受け止める。

そのまま駆け抜け、エリゴールから距離をとる。


「シロ!! タマモ!!」


銀色の影持つ人狼の少女、シロ。

金色の影持つ妖孤の少女、タマモ。

おキヌとともに本部を訪れた二人は、いち早く内部の異変に気付いていた。

そのため、おキヌを後方で待機させて、自分たちが先行していたのだが、それが失敗だった。

悲鳴を聞いて戻ってみれば、おキヌは人質にとられ、横島たちは手を出せなくなっていた。

そこで二人は、その状況からすぐに飛びださず、今まで機会を窺っていたのだ。


「自分たちのミスは、自分たちで責任を取らないとね。」


タマモが美神たちのもとへと戻ってくる。

シロはいまだ霊波刀を、エリゴールの肩口に喰い込ませ、そのまま押し切ろうとしていた。


「よくもおキヌ殿を…!!」

「ッ! いけない!! シロ、離れて!!」


美神が警告を発したとき、エリゴールの体から紫電が迸る。

バチィッ、という音とともにシロの体が弾かれ、エリゴールは自由を得る。


「この…小娘があぁぁぁーッ!!」

「ぐ…ふッ!?」


勢いよく振り回された槍の一撃に、シロの体が鳥居に叩き付けられる。

そのままエリゴールは大きく槍を振りかぶると、衝撃に立ち上がれないシロに向かって投擲した。


「シロッ!!」


美神が駆けながら神通鞭を振るう。

おキヌを美知恵に預けていたタマモが、それに気付いて駆け出そうとする。

だが、誰よりも早く飛び出した者がいた。


横島。


今にもシロを貫きそうな槍を睨みつけながら、横島は必死に手を伸ばす。

また失うのか…あの時みたいに…!?

嫌だっ!!

あの時誓った!!

もう何も失わない!!

今度こそ守って見せると!!


「やめろぉぉぉぉーッ!!!」


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